軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第854話 大魔王との戦い

第一天使ルプトが魔王ゼルディアスに食べられ、魔王軍がかつて世界を支配していた2体の上位神であり古代神を出してきたということもあり、アレンたちは魔王城からの脱出を試みる。

ズンッ

ディグラグニ・オン・タムタムが調停神ファルネメスに跨るクレナの背後に移動する。

「メルル?」

「一緒に破壊しよう!! タムタム、魔導砲だ!!」

『魔導砲発射!!』

神技「迷宮主降臨」を使ったことにより使用できるようになった魔導砲(大)を使い、クレナとファルネメスが攻撃する両端からレーザービームの砲撃により破壊しようとする。

ピシ

メキメキ

クレナとメルル、調停神とダンジョンマスターが魔王城の壁を破壊し、脱出経路を作ろうとすると、ゆっくりと魔王城の壁がひび割れ始める。

『ちょ!? 魔王城が破壊されるんだけど。ルキモネ君も結界の支援に回って!!』

『申し訳ありません。時空管理システムを守ることが最優先事項です。魔王城の防壁の維持や修復はとても厳しいです。防壁維持に回った際の時空管理システムが破壊される確率は……』

『もう聞かれていないことまで計算しないの! むぐぐ! このままじゃ、アレン君たちに逃げられちゃうよ!?』

『よし! このまま外壁が破壊されるまで耐えるぞ!! 皆、無理な戦いはするなよ!!』

鳥Fの召喚獣で仲間たちに指示を出しながらも、オルドーを見せた背後に向かってアレンは斬撃を繰り出す。

「ふん! 霊斬剣・改!!」

ガリリッ

メリメリ

アレンの剣で切りつけると余りの固さで火花が散り、隆々の筋肉を断つことは出来ず薄皮一枚切り裂いたが、それも何秒もしないうちに自然回復してしまう。

(くっ! ファブラーゼのデバフの効きが足りないな。って、魔王がまた降りてきたぞ!?)

ヘルミオス、リオン、精霊神ファブラーゼと共にオルドーと戦っているのだが、視界の端でルキモネの魔法障壁から魔王が出てくることに気付いた。

カツカツ

「ふん、このままでは計画通りならないのだろう? 大魔王となった余も手を貸してやろう」

時空管理システムに絡みつくルキモネの作った魔法障壁の中にはキュベルやシノロムがいるのだが、大魔王だけが障壁の外へ出ていた。

拳を握り締めルプトを吸収して魔王から大魔王になった自らの力を試したいと言わんばかりの態度だ。

(……魔王が出てきた。これはチャンスか)

何十万にもなる知力がアレンの頭の中で一気に巡る。

魔王を倒せば、これからの魔王軍と戦う人類全てにとって大きな弾みになるだろう。

少なくとも一戦交えることで脱出前に、魔王の強さや弱点、特徴などを知れたら今後の魔王軍との戦いに向けて有利に準備を進められる。

そもそもこのまま新たな敵戦力が加わることを放ってはおけない。

この動きも大魔王の策略による挑発で、選択肢はないのかもしれない。

「ふん……」

何が正解か考えるアレンを見て魔王は鼻で笑い、ニヤリと笑いながらツカツカと魔王城を壁を破壊しようとするクレナたちの下へと向かっていく。

(リオン、俺が大魔王の相手をする。ヘルミオスのサポートを!!)

「させるか! 霊斬剣・改!!」

アレンは指示するなり魔王へ向かって上空から一気に降下しアレンの剣を振り下ろした。

ギンッ

(腕で防いだだと? 固いな。鑑定眼は……できないか? 俺が斬撃を喰らわしてもキュベルたちは加勢に来ないのか。絶対に俺には負けない自信があるということか。余裕なのか。罠なのか)

魔王の動き、周りの敵たちの動きや表情の変化など入ってくる情報の全てを知ろうとする。

剣などの武器を持たず格闘するタイプなのか、拳を握り締め前腕でアレンの斬撃を受け止めると甲高い音が響いて火花が散る。

ブンッ

「くっ」

喉元目掛けて、アレンの攻撃を受けた方とは反対の左手で突いてくるが、素早く首の薄皮一枚切り裂かれ、鮮血を四散させながらも躱した。

(なるほど、さすがに上位神ほどは強くないか。だが悠長に分析している暇はないぞ。完璧な状況ならネスティラドだって倒せるんだからな)

魔王の徒手によって風を切る音を耳で受けながら、オルドーとの動きの違いを知る。

1回の攻防の動きから魔王であっても配下の上位神がステータス的にも発動するスキル的にも数段強く感じる。

アレンがこれまで戦った中で一番強いのは霊獣ネスティラドだ。

神界では剣神セスタヴィヌスと2度ほど剣を交えたが、この場にいる魔神オルドーや死神クリーパーが強く感じる。

ステータスだけなら魔王は剣神よりも弱いようだが、脱出が迫る中、攻撃の手段やメンバーは限られ、確実に倒すのは難しいかもしれない。

「むん!」

迷いを振り払うかのように、アレンは自らの拳を振るう。

時間の差し迫った状況の中で、アレンは顔面目掛けて斬撃を浴びせるが、魔王は手のひらで受けるようだ。

「 冷血地獄(アイスヘル) 」

ピキピキ

「ぐっ」

魔王の手が冷気で覆われると、アレンの剣が一気に氷はじめると、咄嗟に後方に逃げた。

「良い剣だな。神界で手に入れたのか。……だが、随分な慌てようだな。始まりの召喚士アレンよ」

「ああ、お前らのせいで余裕がないんだ。何かの時間稼ぎか?」

「まあ、そうなるな。これを失敗するとキュベル曰く、後がないらしいからな。せっかく数多のスキルと魔法を用意して100年もお前たちを待っていたのだが、いくつ使えることか。 耐性破壊(レジストブレイク) !」

会話の流れの中で一気にナックルで拳が剣を回り込むように、アレンの肩に向かって振るわれる。

「ぐっ」

『アレンの全ての耐性が一段階下がった』

魔導書が現われ、アレンの状態異常を表示する。

(オキヨサン、香味野菜を)

『ケケ、はいよ』

『香味野菜はアレンに効果がなかった』

天の恵みなどの回復薬を使うため召喚している霊Aの召喚獣に指示を出して、アレンの耐性を元に戻そうとしたのだが香味野菜は効果がない。

「ぐっ」

「ほう、どうしたのだ。焦っているようだな。何か上手くいかないことでもあったのか? 耐性破壊(レジストブレイク) !」

ドンッ

『アレンの全ての耐性が一段階下がった』

(避け切れぬ。突然攻撃が飛んでくるぞ。どんな動きだ。体の捌きから動きが読めないのは体術系のスキルレベルが高すぎるのか? これ以上くらうのはまずいぞ。耐性をいやらしく下げる系のボスか。リオンと代わるか? だけど、盾役をやっているリオンを下げると)

覚醒スキル「輪廻転生」で死んでも復活するリオンを盾役にヘルミオスたちが戦っているため、アレンには代わりはできない。

体力が繋がっているアレンだとオルドーの範囲攻撃をメルスと一緒に受けると2人とも共倒れしかねない。

前世の健一だったころの記憶の魔王の中には、混乱や睡眠などのデバフをかけたり、耐久力や耐性自体を下げてくる者もいた。

長期戦を求められる中、デバフを解除したり避けたり、もしくは装備枠を消費してでも耐性の防具するなど、事前準備で勝負が決まっていた記憶がある。

剣と拳がぶつかり合いながら、目の前にいるアレンに対して魔王は感想を漏らし続ける。

「霊斬剣・改!!」

「むん!!」

耐性があるためほとんどノータイムでアレンの斬撃を浴びせるが、それは魔王の拳でいなされる。

(ルプトや邪神の尾のように、こいつは対象を食べてスキルや魔法を得るタイプだ。 数多(あまた) とか言っているが、数百、数千のスキルや魔法が使えると思っていて良いのか)

待っている100年以上の時の中、どれだけの者たちを食べてきたのか、無限に近いスキルや魔法を使えると想定する。

(選択眼は利くのか。これまで使ったことのないデバフ攻撃を使用するのか。警戒しないと)

【魔王ゼルディアスの選択する次の行動】

・ 冷血地獄(アイスヘル)

・ 耐性破壊(レジストブレイク)

⇒他のデバフ攻撃

・通常攻撃

獣神ガルムのおかげでクワトロは覚醒スキル「選択眼」を発動して、後衛たちの上空に飛ばして戦況を確認させている。

現在使用したスキルを選択肢に入れているのだが、魔王はかなりの数のスキルを持っていると予想される。

攻撃手段が多すぎて「選択眼」で絞ることも、その余裕もないことがさらに起きた。

「……まだ、だ。まだ倒れるわけには……」

「ええ、頑張りましょう。私たちがこの戦いを……」

精霊神たちとそれぞれ繋がっているルークとソフィーが限界を迎える。

『ソフィアローネは倒れた』

『ルークトッドは倒れた』

「お、おい! ソフィー!? ルーク! オールヒール!!」

キールが回復魔法をかけるが、無情にも床石に力なく倒れ込む2人は既に死んでおり、効果はないようだ。

「おい、アレン! ペクタン使って蘇生させてくれ!!」

『ソフィー!? ぐるる!!』

『ルーク!! ガルル!!』

2人の死に慌てるローゼンとファーブルの全身に光る泡があふれ出す。

(……ペクタン、ソフィーとペロムスに復活茸を!!)

『プッププ~!!』

パアッ

パアッ

特技「復活茸」を順次使用し2人を蘇生させる。

「危なかったぜって……」

「ローゼン様?」

ソフィーとルークが倒されたタイミングで2柱の精霊神の全身から光る泡があふれ出す。

『……どうやら顕現できる時間は終わったようだよ』

『それでも残った神力を使い、少しでも……』

パアッ

ソフィーとルークは蘇生できたが、ローゼンもファーブルの体は限界を迎えていた。

ローゼンは熊からモモンガへ、ファーブルは黒豹からイタチへと姿が戻り精霊神としての力を失ってしまったようだ。

それでもアレンの仲間たちと戦うが明らかにオルドーやクリーパーが押し始めている。

「打つ手が足りなくなってきたな。そろそろ終了だ。 魔素破壊(マナブレイク) !!」

「ぐは!?」

アレンの意識が後方に向いた一瞬の隙を狙ったのか、魔力を込めた魔王の拳はアレンの剣をするりと抜けて腹に決まった。

ブンッ

『アレンの魔力は回復しません』

「なんだと!?」

アレンが思わず声を上げる。

(魔力回復しないだと。香味野菜を! 天の恵みを!!)

『ケケ、はいよ』

『ケケ、はいよ』

パアッ

『アレンに香味野菜の効果はなかった』

『アレンの魔力は回復しなかった』

霊Aの召喚獣に魔導書の表紙に非常なログが流れ続ける。

(魔力が無くなってしまった。召喚獣の再召喚に魔力は使えないってことか)

ガシッ

魔王の手がアレンの首に迫り、身動きが取れなくなる。

グパッ

さらに、魔王の腹部が再度大きく開き、身を引き寄せられアレンの体を飲み込もうとする。

アレンは魔王に食べられると思い必死に抵抗する。

だが、魔王の行動を止めたのはアレンでも仲間たちでもなかった。

『ちょっと、魔王様! 計画が違います! 何食べようとしているんですか! 時空転移システムでアレン君を飛ばす手筈のはずですよ!!』

ピエロ姿のキュベルが全身を使って魔王の行動を止めようとする。

「ふん、冗談だ。あまりにも上手くいくので拍子抜けしてな。それで時空管理システムは起動できるようになったのか?」

(俺を飛ばすだと!?)

『魔力充当率100・0%まで充填されました。転移先の指定は一ヶ所のみ登録されています。転移範囲の指定が済んでおりません。転移する者を設定し、指定の範囲に移動させてください』

魔王の問いに答えるように時空管理システムはアナウンスが鳴ったのであった。