軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第853話 理よりも大切なもの

アレンは魔王を倒すことも戦況を覆すこともできないと判断し、時空管理システムの魔力が100%充填する前に撤退を決断する。

仲間たちが魔神オルドーや死神クリーパーと戦いながらも、魔王城の壁を破壊し脱出を試みる。

『さ~て、魔王様に「本当の配下」もできたことだし、ささっとせん滅しちゃおうね~』

キュベルはまるでこれまで死んだ者たちが取るに足らない存在だと言わんばかりで、ようやく魔王に真の配下ができたという態度だ。

『むん!!』

『ぐぐ!?』

メルスは天使C「大盾」に変え、天使Dの指輪を体力に変え、魔神オルドーの大剣を必死に耐える。

(通常の攻撃でこれならスキル使われたら「一心同体」で体力が繋がっている俺も死にかねないな)

魔神王から上位神となったオルドーのステータスはクワトロの特技「鑑定眼」で見れなくなったが、2倍以上になっているのは間違いないようだ。

『いつまでもまとわりつく! 貴様のような小娘にこの儂が!!』

「さっさとくたばりなさいよ、骨野郎!!」

セシルが神技である時空魔法、古代魔法を使ってダメージを与えても、膨大な神力を使い、メキメキと回復されてしまう。

「うおおお!!」

『は!!』

ギンッ

カンッ

ドゴラとシアの2人がクリーパーと、ヘルミオスとメルスとリオンがオルドーと戦い、アレンもサポートに入っているのだが、2柱の上位神相手にダメージは全く通らない。

バチバチ

「こ、壊れない」

『これは骨が折れますね』

クレナと調停神が破壊しようとするが、キュベルが抜け目なく既に結界を貼りなおしていた。

その状況をオルドーの視線が向いた瞬間、ヘルミオスは一気に跳躍し神器オハバリの剣に全魔力を込める。

「うおおおおおお! 神聖煌剣(ディバインソード) !!」

オルドーの視界の外から首元目掛けて切りつけた大剣は、避けることもなく命中する。

キイイイイインッ

だが、甲高い音を上げた斬撃はオルドーの首を少しも切りつけることもできない。

『目障りだ。むん、ダークネスショック!!』

「ぐは!?」

その上で、ヘルミオスを見ることもなく漆黒の神力で覆われた大剣を床石に叩きつける。

漆黒の神力で練られた衝撃波が四方八方に広がり、オルドーの側にいたヘルミオスに体力の半分以上を一気に減るほどの大ダメージを与える。

アレンとリオンもヘルミオスだけでは、サポートできないと攻撃を加えるが、こちらの攻撃はオルドーにほとんど通らない。

鑑定はできないが明らかにクリーパーよりも攻撃力も耐久力も高いように思われる。

(メルスでギリギリ倒されないくらいの強さだから勇者だから相手にならないぞ。セシルのところも同じ感じだな)

『くたばれ! 死曲演舞(エターナルスリープ) !!』

「むが!?」

『ぐ!?』

大鎌を円状に振ると神力が漆黒の髑髏を象り周囲にいる者たちに襲い掛かる。

セシルのサポートに入っているドゴラとシアが体力の半分以上一気に減らすダメージを負う。

「オールヒール! く、くそ!! このままじゃ……」

キールは必死に陣形が壊れないよう戦っているが前衛たちが1人でも死に始めたら壁役が瓦解して全滅しそうだ。

(くそ強いな。ハクをアレン軍撤退のために向こうに残してきたことが失敗だったか。ファルネメスは結界の破壊急いでくれ。これで長期戦はありえないな。って、おい、ルークは何しているんだ?)

戦闘に長けた上位神2体がいる中、アレンが戦闘に参加しないと全滅が加速しそうで、行動が大きく制限されている。

打開策を考えていると、ルークが何かファーブルに声を荒げて訴えていた。

「おい、このままじゃ全滅するだろ! 何で一緒に戦ってくれねえんだ!!」

『何度も言うけど私は精霊神で神になったの。神は人の営みには参加できない』

「だから言ってんだろ! 向こうは上位神が戦闘に参加してんだろ! 何が問題あんだよ!!」

『それは神の理を犯すことなのよ。エルメア様が定めし理は絶対なの。前回は試練を超えたことで許してもらえたけど、今度こそ私は大精霊神イースレイ様に裁かれるわ! そうなったらあたしだけじゃなく、あなたもよ、ルーク』

「どっちみち、このままじゃ全滅するだろ! 俺は自分が裁かれても仲間たちを救いたい!!」

『……ルーク、分かったわ。あたしはダークエルフの未来を思うもの。グルルルッ』

メキメキ

頭に乗っていたルークがピョンと床石に降りると、メキメキと漆黒のイタチの姿から精霊神本来の姿である黒豹に姿を変えていく。

「ぐぐ!? 何か全部、も、持っていかれる……」

精霊神の本来の姿を取り戻したファーブルにルークは魔力や霊力はもちろんのこと体力の全てを持っていかれそうになり足元がふらついた。

『大丈夫!? ルーク!!』

「これくらいへっちゃらだ!ソフィー! キールやアレンが俺を蘇生する余裕なかったら棺桶袋に入れておいてくれ。いくぞ! ファーブル!!」

『ええ、最後まであなたたちダークエルフと共に……』

死ぬ覚悟で戦うルークの言葉に、ソフィーはローゼンに向かって真剣な口調で話しかける。

「ローゼン様、本来の姿で私たちと共に戦っていただけないでしょうか!!」

『はは、そうだね。そう言ってくると思ったよ。祈りの巫女の末裔よ。ファーブルとダークエルフにだけ全てを背負わすわけにはいかないね』

「本当ですか! ありがとうございます!!」

『これを乗り越えなきゃいけないんだ。理よりも大事なものが僕にもあるんだ。はは、そのために僕はこの場で……。グルル』

メキメキッ

モモンガの姿をした精霊神ローゼンが灰色の熊のような姿に変えていく。

『儂らはお役御免じゃの』

『こいつら全員ぶっ飛ばせよ!!』

本来の姿を取り戻したローゼンとファーブルに代わり、この場に顕現しているトーニスやカカといった大精霊たちを含めて全ての精霊たちの存在が淡くなり消えていく。

顕現できる精霊を絞り、2柱の精霊神に全てを賭けるようだ。

「行きますわよ!」

「行くぜ!!」

2人が歯を食いしばり、他の精霊たちの権限を止めて全ての意識を集中させ、2柱の精霊神に全ての力を注ぎ込めるようだ。

『グオオオオオオオオオオオ!!』

ドンッ

シュルシュル

クリーパーはローゼンの巨躯で体当たりされ、吹き飛ばされる。

さらに、吹き飛ばされた先の壁から蔦が無数に生えて、クリーパーを拘束する。

『む? 新手か? ……知らぬ神だな。最近神になった程度の雑魚に世界を支配していた儂がこれしきの攻撃で! この程度の蔦など切り裂いてくれる!!』

だが、クリーパーは容易くローゼンが神力を込めて生み出した蔦を切り裂いていく。

「はああ!! 極性崩壊(オメガバースト) !!」

宙に浮いたセシルがクリーパーの正面にいた。

『し、しまった!? ぐひゃあ!!』

「ちっ!? 魔力玉の魔力が減っていて倒しきれなかったわね。ローゼン様、しっかり縛ってね! 今度こそ!!」

『精霊神の扱いの荒いお嬢様だ。頑張るとしよう。ははっ』

ほとんどセシル1人でクリーパーを抑えていたが、捕縛に秀でたローゼンが参戦してくれたことでセシルが魔力を練り、強力な古代魔法を放つ時間ができるようになった。

クリーパーはズタボロになりながらも、セシルと距離をとりながらもダメージを負った自らの体を、神力を使って回復させる。

『おお、怖い、怖い。精霊神のお二方が神の理を無視して攻撃してきたね』

黒豹の姿となったファーブルはオルドーに迫る。

『なんだ貴様は! 神切剣(インフェルノブレード) !!』

「ば!? ファーブル様、避けて!!」

オルドーの「神切剣」が、ヘルミオスはどれほどの威力があるか知っているため絶句してしまう。

ザバッ

避けようともしないファーブルは頭から真っ二つに叩き切られる。

だが、スライムかアメーバのように原形を失ったファーブルがオルドーに大剣ごと絡みつき動きを封じる。

『ふざけた攻撃を!!』

腕に絡みついたファーブルを引き千切ろうとするが、千切った粘性の体は何度も絡みつき、オルドーの体にジュウジュウと酸でもかけたかのように体力を削る。

上位神相手にどこまでダメージが通じているか分からないが、酸による腐敗や消化と拘束を一度に行っているようだ。

「ううっ」

「ぐっ……」

精霊神たちがメリメリとソフィーとルークの体力も魔力も全てを奪っていき、既に足に力が入らないのか、2人は意識が朦朧としながらも戦闘が始まって1分もしないうちに膝が床についてしまった。

それでも歯を食いしばり、必死に精霊神たちに自らの命を送り続けて顕現を維持している。

戦線から外れた魔王城の壁ごとキュベルが作った結界を破壊し、この場を全員で脱出しないといけない。

(くそ、そんなに持たないぞ! クレナ行けるか!!)

「 超突撃(ディープインパクト) !!」

ビキビキッ

ファルネメスに跨るクレナが神技「超突撃」を繰り出した。

クレナの神器アスカロンとファルネメスの角が一気にぶつかったため、壁が大きく波紋上にヒビが入った。

シュルシュル

「ああ、壁が元に戻っていく」

『……キュプラスの仕業でしょう。引き続きこの壁を破壊し、皆で脱出しましょう』

『ふふ、やはり。アレン君の判断は逃げの一手だね。僕も頑張って魔王城が壊れないよう修復しなくちゃだ』

ルキモネと一緒に魔法障壁の内側から魔力を込めて、クレナとファルネメスが攻撃し続けている側から、魔王城の破壊を塞ごうとする。

(魔法障壁の中でコソコソしやがって。ん? 天井に魔法陣が?)

『……おい、メルル。「迷宮神降臨」を使え。俺も調停神様ほどじゃねえが、ダンジョン空間を司る俺は結界の破壊は得意な方だ』

「え? うん、分かったけど……」

どこかダンジョンマスターディグラグニの口調が普段のふざけたところがなく緊張感があることに気付く。

『こりゃあ、かなり不味い状況だ。お前ら詰みかけているぞ。俺の神力も使っていいから、さっさと脱出するぞ』

「分かった。みんなで脱出しよう! 迷宮主降臨(ディグラグニ・オン) !!」

石板で超身兵の100メートルとなったタムタムに同じ大きさのディグラグニがパーツに分かれて合体する。

『魔力充当率99・4%まで充填されました』

まもなく時空管理システムの魔力が完全に充填される状況の中、アレンと魔王軍の戦いは続いていくのであった。