軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第842話 魔王の間

アレンは他の2チームが手に入れた戦利品についての話が続いていく。

魔導書には芳しくない報告がログとなって流れる。

『交渉に失敗しました』

『けっ』

『交渉を拒絶されました』

『ルプト様の帰還を優先してください』

(速攻で諦めたな。まあ、ビルディガも交渉に応じてくれないし。魔王の間に行く前に強化できたみたいに都合の良いことは起きないか)

「……どうやら、すぐに召喚獣にするのは難しいようだ。ルプト様を帰還させることを優先しよう」

『そうか。アレンが強くなるって思ったのだがな』

上手くいかなかったとシアは残念だと言う。

「いや、シアのおかげで石Sの素体を聖獣石に取り込むことができたんだ。おいおい、問題を解決していこう」

今は魔王城の中で、地上で戦うメルルたちのことを考えれば、これ以上解決策の見つからない石Sの召喚獣候補についてあれこれ模索する暇はないとアレンは考える。

そして、ヘルミオスの言う戦利品という物に視線を移す。

「それで、リオン。腰に何つけてんだ。なんかそれ見たことあるぞ」

ウネウネ

『ん? これかこれは……。何か分からぬが儂から離れぬのだ』

リオンが困った顔で腰に手を当てる。

「アレン、私が宝物庫を見つけて手に入れたんだからね」

「ん? ああ、思い出した。たしかバスクが海底で装備していた奴だな。それが宝物庫に? だが、鍵も手に入れて魔王との戦いに挑むんだから、こんな邪魔なもの着けてたってしょうがないだろ」

召喚獣は創生スキルなど専用の武具しか装備しても効果がでない。

実際、リオンのステータスを魔導書で確認したが変化がなく、アレンは手を伸ばして剥がそうとした。

「む? 結構強くまとわりついているな。むむっ!!」

「ちょっと、アレン。大丈夫なの。そんな無理やり……」

強引にはがそうとするアレンの行動にロゼッタは問題ないのかと心配そうにする。

ビキビキ

「いて!? うお!! こっちに来たぞ!!」

漆黒の腰帯が茨のトゲを大きく伸ばし、シュルシュルとリオンの腰から外れ、アレンに向かって襲い掛かってきたのであった。

リオンにまとわりついて宝物庫からやってきた漆黒の黒帯がトゲトゲしい茨を逆立て、アレンに襲い掛かる。

「くっ!?」

「アレン様!!」

戦闘時ではなかったため剣は鞘にしまっており迎撃することができない。

ソフィーも突然のことで声を上げてしまい、休憩している者たちも何事だと視線を向ける。

シュルシュルッ

ブチブチ

「ん?」

漆黒の黒帯は元々装備していた腰帯を茨のトゲで引き裂き、サイズを調整してアレンの腰に収まっていく。

逆立っていた茨のトゲは落ち着き、アレンに痛みはない。

「おお! アレンが装備した!!」

クレナがモルモの実を頬張りながら驚く。

「……装備みたいだ。元の 腰帯(バンド) を割かれてしまったんだが、なんかよく分からないな……。ペロムス、鑑定してくれ」

「うん、分かった」

横で様子を見ていたペロムスが鑑定してくれて、アレンに教えてくれる。

【ゲヘナバンドの効果】

・耐久力50000

・暗黒属性耐性

・ブレスダメージ半減

・魔法ダメージ半減

「ぶっ!? すげええ。」

効果を魔導書にメモしながらアレンは吹き出しそうになる。

「ちょっと、アレン。何勝手に自分の物にしてんのよ。その宝物庫を探し出したのは私よ」

ペロムスの鑑定結果を聞いてアレンの装備品になることをロゼッタが待ったをかける。

「え? そうなんですか。ありがとうございます。刺々しい見た目の割に大変着け心地最高です」

(何か知らないが、返せと言われても返品は不可だと言っておこう。なぜなら装備したからだ)

「ちゃんと、後でお礼頂くわよ」

「もちろんです」

ロゼッタの言葉を軽く受け流したアレンは、何故自らの腰に最強の腰帯が収まったか分からない。

だが、考えるより優先すべきことを思い出す。

イグノマスから貰った魔王の間に入る鍵を握り締め、仲間たちを見た。

「さて、地上で戦っている仲間たちのためにも先を急ごう。クレナ、それで良いか?」

「もちろん、アレン。先を急ごう。ハクが心配だよ」

クレナは既に両手に持っていた干し肉もモルモの実も食べきっており、既に臨戦態勢だ。

ほかの仲間たちも全員同じでいつでも出発できるようだ。

アレンの周りに集まった仲間たちの前でこれからのことを話す。

「この鍵を使って、俺たちは魔王と戦わないといけないだろう。どうやら魔王軍もそれを望んでいるようだし」

魔王城に閉じ込め戦力分散のために3チームに分けさせた。

結果、それぞれの奮闘もあって魔王軍総司令オルドーを筆頭に強力な魔王軍幹部を倒し、魔王軍の弱体化させることができるようになった。

魔王城を目指した一番の目標は「第一天使ルプト」を救出することだ。

これは仲間たち、アレン軍の幹部、5大陸同盟の盟主とも共有されており、何なら、救出したら脱走も考えられていた。

戦略艦を3艦用意したのは、ヘビーユーザー島を失う可能性も考慮して、彼らを無事に帰還させる手段でもあった。

だが、手にしたのは魔王の間へと繋がる「鍵」だった。

アレンたちは現在魔王城からの脱出の方法を見つけられていない。

元々、キュベルたちの手によってこの城からは脱出できないかも分からない。

倒せていないキュベルがまだ何か企んでいるのだろう。

「この戦いを終わらせようってことだね」

「敵もあれこれ策略を練っている。我らはまた集まったのだ。皆で倒そう」

ヘルミオスもシアも魔王との戦い前向きで、恐れる者はだれもいないようだ。

(本来であれば、必要な中ボスを倒すなり、攻略ルートを発見したらセーブするなりして魔王との戦いに備えたいところだが、そうはいかないか)

「よし、皆出発だ!!」

すごい勢いでアレンたちは移動を開始する。

通路を抜けて3つ目髑髏の扉にやってくる。

(目の前に魔王がいたらすぐに戦闘になってしまうな)

「よし、皆、戦闘準備だ。ソフィーは精霊神の祝福を発動し、仲間たちのクールタイムの解除をしてくれ。キールは魔王との戦闘開始後、すぐに神技を発動し、回復の手段を増やしてくれ」

「分かりましたわ、アレン様」

「おう、誰も殺させないぞ。さっさと倒してアレン軍の加勢に向かおうぜ!」

アレンは扉の前で仲間たちに指示を出し、一通り済んだことを確認したら、扉に近付くと扉の髑髏が反応する。

『2階層にある全ての封印の魔法陣が破壊されたことを確認しました。3階層へ移動しますか? それとも魔王の間へ直接転移しますか? 直接転移するためには魔王の間への鍵が必要です』

髑髏の3つ目が点滅し、見た目とは裏腹に丁寧な口調でアレンに語り掛けてくる。

「もちろん、鍵を使い魔王の間へ飛ばしてくれ。皆、油断しないでくれ。何が待っているのか分からないからな!」

『鍵の所有が確認されました。鍵を使用し、魔王の間へ転送します』

アレンは自らの剣を握りしめ、全員臨戦態勢になるように言う。

カッ

扉に掘られた髑髏の3つ目が光ると全員がその場から転移する。

「ここが魔王の間か? 随分広い空間だな。先に階段があるな。……背後にも巨大な階段か」

アレンたちが魔王の間に入ったのは18時前だ。

速やかに鳥Eの召喚獣を展開し、その他の召喚獣たちの視界を駆使してここがどこなのか確認する。

(S級ダンジョンの最下層か。それとも大精霊神の大空洞か。随分な広さだな。背後にある階段の下の階層は同じく大広間になっているのか)

アレンは大きな広間で、強力な敵たちと戦ってきた。

それらとそん色ないくらいに魔王の間の圧倒的に空間の広さがある。

床石が敷き詰められ、明かりの魔導具はないが十分な明るさで満たされている。

そして正面には登り階段があり、この大広間にはそれしかないようだ。

(巨大な窓もあるな。逃げれるのか。だが結界が強力で出れないとみて良いか)

アレンは瞬時に内部構造の把握に努める。

大広間は確かに広いが、2階層の大迷宮みたいな非常識な広さにはなっていないようだ。

遥か彼方にある壁には窓があり、外の景色が鳥Eの召喚獣の外の猛吹雪を捉えることができる。

だが、おそらく外へ出るには強固な結界を破壊しないといけない。

最悪を想定しながら、必要な情報を整理しているとクレナが思ったことを口にする。

「ファルちゃん。目の前に大きな階段があるよ!」

『本当です。そして、その先に禍々しい力を感じます』

ファルネメスの声に引っ張られるように、アレンたちはゆっくりと階段の上を見上げた。

階段の先は玉座となっており、1体の男がそこに座っていた。

「魔王か!」

「そうみたいだね。いきなり突っ込まないようにね」

「分かってるわ!」

ジャガイモ顔のドゴラが勇ましく声を上げると、ヘルミオスは落ち着くように言う。

「……随分遅かったな。アレンよ。そして、この世界の英雄たちよ、我の配下を倒し、良くこの場まで来てくれたな」

玉座に座る魔王ゼルディアスがアレンたちに語り掛けてくる。

ドゴラを無視して魔王はアレンに語り掛けてくる。

魔王城を攻略してきたことを誉めてくれるようだ。

「ああ、随分余裕そうだな。お前の期待する幹部たちは皆やられた。悪いが全員で倒させてもらうぞ」

3チームが武器を取り、会話のどのタイミングでも戦えるよう準備する中、アレンと魔王の会話が続く。

「期待? 誰を期待するのだ? 余は誰にも期待していない。期待しても裏切られてばかりだからな」

アレンに対して冷酷なまでの視線を注ぐ魔王の目は絶望で満ちていた。

(なんだ? 前回もテンション低くやってきたが、オラオラ征服するぞ系の魔王じゃないんだよな。どこか達観しているというか、感情がないというか、支配できて当然と思っているというか)

アレンたちが魔王と会ったのはこれで2回目だ。

覇気がないところが何かに達観しており、逆に恐怖を与えるとアレンは思う。

「そうだな。魔王よ、お前はグラハンに裏切られて死んだんだからな」

「グラハン? 誰だそれは?」

神界にやってきて冒険をする中で、どうしても魔王に合わせたい者が1体いた。

だが、魔王は期待通りの答えが返ってくることはなかったので覚醒スキル「憑依」でアレンの中にいるグラハンに語り掛ける。

(覚えていないとか言っているぞ。前世は恐怖帝じゃなかったのか?)

『そんなことはない。全てを見下す。何もかもを支配した言わんばかりの口調。どうやら魔族になっているが恐怖帝のままだ』

「……どうしたのだ?」

アレンがグラハンに確認していると、魔王が表情の変化を捉えたのか、訪ねてくる。

「いや、お前を殺した親衛隊長のことを忘れたみたいだからな。確認していたんだ」

「何を訳の分からぬことを……。そうか、だがグラハン親衛隊長のことだったのか。おかげで余はこの世の理を知ることになった」

魔王は前世で人族だったころ1000年前に恐怖帝としてギアムート帝国が中央大陸全土を支配していたころ、親衛隊長グラハンより誅殺されている。

(表情に変化なしか。さて、悠長な会話で何かを得られる感じはしないな)

「魔王よ。貴様は世界にいてはいけない存在のようだ。もう一度倒されてもらう……」

アレンは一歩前に歩みより、戦いの合図を送ろうとしたら、話に割って入るように魔王は口を開く。

「もう良いか? お前の言うとおり時間を稼いでやったぞ。準備は整ったか? キュベルよ。全くこんなくだらない指示を余に出しおって……」

『もちろんですよ。魔王ゼルディアス様。大変お待たせしました』

アレンの正面の空間に何度も聞いた声がしたのであった。