軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第843話 時空管理システム②

大広間の中央に上に上がる階段があり、昇った先に置かれた玉座に魔王が座っていた。

魔王の言葉に答えるように階段に上がる手前に魔法陣が生じ、魔王軍参謀のキュベルが何もない空間から突如現われた。

(先手必勝だ。この道化野郎が!!)

策を講じる相手に待ちの姿勢は下策だとアレンは考える。

ダッ

『ちょ!? え? うっそ!! 待ってってば!! まだ話が終わってないんだけど。むん、 魔法障壁(エビルシールド) !!』

アレンは剣を振り上げて、キュベルの顔面目掛けて襲い掛かる。

両手を前に突き出し、必死に懇願するがアレンは容赦しない。

だが接近するアレンよりもキュベルが魔力を込めて生じさせた魔法障壁による防御が早かった。

ガンッ

「ぐ!? くそっ!!」

「アレン!? 大丈夫!!」

「ああ、大丈夫だ。こざかしいことしやがって。俺たち全員とそんな魔法のシールドだけで戦えると思っているのか!」

音速を超えた速さで突っ込んだアレンが同じ勢いで元来た場所に弾き飛ばされてしまった。

アレンが床石を粉砕しながら着地すると、側にいたクレナが心配そうに声を上げる。

ビキビキッ

キュベルが魔力を込めた魔法障壁はアレンの強力な一撃で大きく破損している。

『もう、慌てん坊だな。アレン君は。もちろん、こんな障壁だけで戦うつもりはないよ。ささ出てくるんだ。いや~パーティーを分けても準備がぎりぎりだったね~』

キュベルは仮面越しにやれやれと呆れながら、襲い掛かるアレンのために正面を向けていた手を、今度は床石に向け魔力を込める。

パアッ

キュベルの足元に魔法陣が現われ、ゴトゴトと地面から何かが這い上がっていく。

金色に輝くキューブ状の物体が浮かび上がり、触手のようなものが無数に絡みついている。

下から這いずる無数の触手はあまりにも多いため、キューブをツル植物が幹に絡んでいるように見える。

『転移先の座標の固定を確認。転移するためには魔力が足りません』

『魔力充当率12・0%。最大量まで魔力を充填してください』

『転移先の座標の固定を確認。転移するためには魔力が足りません』

『魔力充当率12・1%。最大量まで魔力を充填してください』

キューブ状の物体が点滅しながら警戒音を鳴らし同じ言葉を繰り返し発している。

「……これは時空神の神域から奪った『時空管理システム』だな。魔改造されているのか?」

アレンは魔王軍が神界に進軍してきた際、あと一歩でシノロムを倒せるというタイミングで時空管理システムを前の前で盗まれた。

「大事に扱ってほしいのじゃ。集合知力の配線ごと転移させおってからに。調整は済んでおるが、予定通り起動しなくても儂を責めるでないぞ」

『私はルキモネです。転移は無事成功しました。時空管理システムは正常に起動していますので、シノロム様の不安は当たりません』

シノロムより自らを「集合知力」ではなく「ルキモネ」と呼ぶように言う。

ギロリッ

ギョロギョロ

魔法陣からさらにシノロムという白衣を着た老齢な魔族が続けて転移されてやってくる。

シノロムの声に応えるように触手から目玉や口が現われ、自らをルキモネとそれぞれの口で同じことを言うのでハモって聞こえる。

「おいおい、何なんだよ」

「これが魔王軍の奥の手か?」

ドゴラとシアがアレンの側で他の仲間たちと同様に困惑している。

魔王城の魔王のいる場所までやってきたが、魔王軍はまだ何らかの作戦か隠し玉はあると思っていた。

または、魔王との激しい戦いを予想していた。

(時空管理システムを起動させてどこかへ行こうってことか? この日のために神界から盗んだと。魔力が足りないから起動できない? なんのことだ? これの準備のためにチームを分けた? 俺たちと戦っている最中に何がしたいんだ。だが、やるべきことがあるな)

そういえば、この時空管理システムを準備するのに10日かかるという会話をキュベルとシノロムがしていたことをアレンは思い出す。

『よし、あれを無視して魔王を叩くのは良くないな。俺が魔法陣の結界を破壊する。皆もフォローしてくれ。キュベルの攻撃には注意だ』

ダッ

軽く作戦を鳥Fの召喚獣越しに伝え、自らの剣を握り締め、吹き飛ばされた先から一気に駆け抜ける。

キュベル、シノロム、時空管理システムにまとわりつく目玉の触手を無視して玉座に座る魔王を攻めれば、背後をキュベルたちに狙われる恐れがある。

倒すべき敵の優先順位を決めるのはリーダーの務めだ。

『え? もう、向かってくるの? ルキモネ君、防壁と 魔素吸収機構(マナドレイン) の起動を早くね』

『はい。キュベル様、つつがなく』

再度、アレンがまっすぐ走りだしたことに、キュベルは首を傾げてしまう。

さらに時空管理システムに絡みつくルキモネに対してあれこれ指示を出した。

ビュルビュル

幹のように絡んでいた時空管理システムの一部が解け、アレンに向けて数本の触手が迫る。

「むん! 霊斬剣!!」

ザバッ

数本の目玉まみれの触手が高速で迫るがグラハンと憑依合体したアレンは特技「霊斬剣」を発動させて、瞬く間に切り裂いていた。

さらに、時空管理システムに絡みつく触手の束に迫る。

「うらあああああ! 霊呪爆炎撃!!」

『 魔法障壁(エビルシールド) 』

絡みつく触手を炎に燃えるアレンの剣が迫ろうとするが、今回も触手が発動する魔法障壁の発動が早かった。

ビキビキッ

ビュン

魔法障壁を今一歩で破壊できそうなところ、無数の触手がアレンに迫るので、時空管理システムの角を蹴り上げて後退する。

『エビルリカバリー』

(この目玉触手は攻撃、防御、回復を同時に行うのか)

何十、何百の触手が時空管理システムに絡みつく。

「皆が一斉に戦わねえとキリがねえ感じか」

「四方から攻撃しよう!!」

アレンの一連の攻撃でドゴラやクレナたちもどうやって攻略すべきか分かったようだ。

『このままじゃ、多勢に無勢だからね。時空管理システムの起動のためにも魔素吸収を優先してね』

『はい、キュベル様。 魔素吸収(マナドレイン) !!』

カッ

カッ

カッ

触手についている目玉が見開き無数の魔法陣が生じた。

パアッ

(ん? 何だ? 体から魔力が?)

「まあ、これは?」

ソフィーが驚いて声を上げた。

この場にいるアレンたち、精霊や召喚獣を含めて、全員から魔力が溢れ始めた。

溢れた魔力が大きな泡のように固まり、触手の目玉の前に生じた魔法陣に吸収されていく。

無数の魔力を吸った時空管理システムがチカチカと金色に点滅を開始する。

『魔力充当率12・3%まで充填されました』

『魔力充当率12・4%まで充填されました』

『魔力充当率12・5%まで充填されました』

魔力を吸収するカウントのタイミングが早くなった。

(魔力を吸われているだと?)

『全員の魔力が秒間1000ずつ吸われています! 香味野菜を使います!!』

魔導書を使って自分も含めて仲間たち全員の魔力が減り始めた事態に、状態異常を治す香味野菜を咄嗟に使用する。

『……効果がない。魔力切れにならないよう後衛たちは定期的に天の恵みを使ってくれ。キールたち回復役は魔力回復系の魔法具を装備して、魔力切れを防止しろ』

(バッドステータスの効果がそもそもないからな。そういうスキルか何かか)

原因不明な理由で魔力が吸われる状況に、仲間たちの中に動揺が広がらないよう、鳥Fの召喚獣を使って対応策を伝える。

「キュベル、どういうことだ? 俺たちの魔力を吸って何がしたい」

防御と回復を使う触手を一瞬で倒すには時間が掛かると判断したアレンは、冷静にキュベルに問うことにした。

『え? 気になる? 知りたくなったの? アレン君、さっきは問答無用で襲ってきてのに』

「状況が変わったからな。だけど、教えてくれるだろ。これは状態異常ってわけでもないのだが」

(お前たちの優先事項は時空管理システムの魔力の充填なら会話を続けない理由はないからな)

『……じゃあ、シノロム所長、説明を』

「なんじゃ、儂が説明するのか。……まあよい。実はお前さんたちが2階層で3つの魔法陣を壊したはずじゃが、あれには特別な細工があっての。あの場にいた者たちの魔素を吸収するための波長を調査する特別な魔法陣だったのじゃ」

ルキモネの魔法陣を使って、強制的に魔力を吸うことができるとシノロムが説明してくれる。

(結界を魔法陣ごと破壊した時、よく分からない幾何学模様の文字が弾けたが、これの布石だったのか。デバフではないため、解除は不可能と)

『魔力充当率12・6%まで充填されました』

会話中の時空管理システムへアレンたちの魔力が注ぎ込まれていく。

「随分、膨大な魔力が必要なようだな。時空管理システムを使って何をしようって言うんだ?」

膨大な量の魔力が注ぎ込まれる中、仲間たちはアレンが会話を続けて良いのかと心配そうだ。

だが、この目的も知っておきたいと魔力が吸われる原因の分かったアレンは会話を続ける。

なぜなら、この場にいるアレンたち、召喚獣たち、精霊たち合わせて50人以上いるのだが、秒間5万も魔力が吸収されていうのに、秒間に1%も魔力が充填されない。

パーセントから計算しても1000万を軽く超える膨大な魔力が必要なようだが、それを使って何をしたいのかと問う。

「それは、そうじゃの……。キュベル様、これも儂が答えるのかの?」

『アレン君。魔王様が新たな世界の支配者になるため必要なことだと言っておこうか。僕たちの願う新たな理を築くにはどうしても、この時空管理システムが必要だったんだ』

「分かった。俺たちはお前らを倒してその計画を邪魔したらいいんだな」

『そういうこと。僕の計画は完璧だから、できないと思うけどね』

「いくぞ、皆。一斉攻撃だ!!」

「分かった。いくよ、ファルちゃん!!」

『ええ、これ以上、キュプラスの暴走を止めないといけません』

クレナがぺんぺんとファルネメスの首元を叩くと力強い返事が返ってくる。

仲間たちが一斉に攻撃を開始したのであった。