軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第605話 アレンの政治①

竜人のカタクチがアレンの顔を覗き込むように見る。

「アレン殿、いかがされましたか」

「ちょっと、アレン。失礼よ」

無言で固まってしまったアレンを、セシルが起動させる。

「え? ああ、12万個ですか。そんなに集めていただいてありがとうございます」

(これでは、到底、目標の個数に到達しないぞ)

アレンは創生スキルを9まで上げたいと考えている。

クレナは神界闘技場で天騎士を目指して修行中だ。

メルルたちは大地の迷宮で、竜神マグラの探索と攻略目指して奮闘中だ。

シアは今も必死に獣神ギランを追いかけている。

ロザリナやキール、ペロムスなども同様だ。

仲間たちがそれぞれの思いで、必死に神の与えた試練を目指している。

アレンにも、自らに課した目標があった。

創生スキルの1巡目をまずは9まで上げたいと考えている。

そのために必要な霊石も目標数は1億個だ。

「では、ソメイ様にアレン殿が到着したことを連絡してきますね」

「ああ、ありがとうございます。私もお話があると伝えていただいてもよろしいですか?」

しっかり、目標数の共通認識を持たせることにする。

「もちろんです。では!」

カタクチが部屋から出て行く。

(これはがつんと言わねばならないな)

このまま原獣の園に戻っても、鳥Aの召喚獣が幻鳥レームの元に到着するのは明日くらいになりそうだ。

ソメイに霊石の収集状況について、発破をかけようと思う。

アレンはセシルを見る。

「ちょっと何よ!」

いきなり見つめられて、セシルが一瞬顔を赤らめ身構える。

「どうしても1億個の霊石が必要だからな」

「だからって何よ」

セシルは構えを崩さず、警戒を怠らない。

「それはアレン様のスキルを上げるためでしょうか?」

「そうだ。ソフィー」

(人のためにやり込みをすることになるなんてな。俺も成長したのか)

やり込みのためにアレンはこの世界にやってきた。

ただただ、強くなった自らの未来を想像することだけに頑張ってきた。

それは自分のためだけだったのだろう。

仲間ができ大切なものが増えて、アレンは自らの考えに変化が出たことに笑みがこぼれる。

【創生スキル経験値と霊石の必要個数の関係】

・スキルレベル6まで、霊石10万個

・スキルレベル7まで、霊石100万個

・スキルレベル8まで、霊石1000万個

・スキルレベル9まで、霊石1億個

※現在、創生のスキルレベル5

(この霊石でスキルレベル6までは上がるんだろうがな。霊力回復リングのおかげで霊力の方はなんとかなったんだが、霊石はどうしても人力が必要だな)

セシルのお使いクエストには、獣神ガルムの尾やネスティラドの心臓がある。

獣神ガルムの尾もそうだが、ネスティラドとの戦いは必須だと考える。

ルバンカを獣Sの召喚獣にすることができたが、少しでもクエスト達成の確率を上げたい。

Sランクの召喚獣の開放と並行して創生のスキルレベルをカンストさせたい。

セシルのためにも、創生スキルを上げたいと考えている。

「でも1億体も霊獣を狩るなんて無理じゃない」

「まあ、1体あたり3個くらいの霊石を落とすみたいだからな、実際は3000万体かそこら、霊獣を狩ればいけるはずだ」

「だからそれが多いって言ってるわ……」

セシルが絶句しかけたところで、外の床石を歩く音がドカドカと大きくなってくる。

「おお、アレン殿、戻ってきたか。聞いてほしいのじゃ!!」

引き戸を命いっぱいの力で開けるなり、老齢なソメイが部屋に入ってきた。

結構な年だと聞いていたが、元気だなとアレンは思う。

「どうしたんですか? そんなに血相を変えて」

「どうしたも何も、族長のトクガラとノンフラが明日乗り込んでくるのじゃ!!」

ソメイが状況を教えてくれる。

アレンの依頼もあって、ソメイは9つに分かれた全ての竜人族の統合を進めてきた。

「トクガラとノンフラとは、現在と1つ前の天空国と関係が深い族の長ですね」

統合を進めていく上で最も抵抗しそうな部族の予想は立てていた。

「そうじゃ。明日にもボアソの街に守人長たちを引き連れやってくるというのじゃ!!」

(なるほど、とうとう障壁になるところまで話が進んでくれたか。この感じだと素直に軍門に下るつもりはないってことだな)

アレンはソメイの表情と2人の族長の名から状況を概ね理解した。

9つに分かれた竜人族は、神々の寵愛を受けたシャンダール天空国の王家と、関係が深い部族もあれば、そうではない部族もある。

竜人たちの部族を分けたことも、1つの竜人族としか王家が取引をしないのも、竜人族を分断し、力を削ぐために行われてきたようだ。

王家との取引とは、物品の売買や、王族の道中の警護依頼など多岐に渡る。

ソメイの元に下れという話に、王の寵愛を最も受けた竜人族と、1つ前に受けていた竜人族が反発したようだ。

「なるほど、分かりました。自分らが最も力ある竜人の部族であると思っている方々にとっては、嬉しくない話なのでしょう」

「そのようなのじゃ。儂らは争ってまで、部族を1つにまとめるつもりはないぞ」

「たしかに。ですが、神界人の圧政に対抗する意味でも竜人の各部族を1つにすることに意味があると思いますが……」

この世界は綺麗事だけでは成り立たない。

「たしかにそうなのじゃが……」

「良かった。ソメイ様とは目標が同じで助かりました。明日の話し合いにアビゲイルさんも呼んで、備えようと思いますがいかがですか?」

「そうしてほしいのじゃ」

前線で霊獣狩りをしているアビゲイルも、この館に呼び出して、明日の話をしようとアレンは言う。

こうして、ソメイとアビゲイルと共にアレンたちは明日に備える。

***

翌日の昼前には、2人の族長がそれぞれの守人長を引き連れ、ソメイの館にやってきた。

「こちらです」

「ふん、たいそうな館に住んでおる」

「恐縮です」

威圧的な態度の族長のトクガラが、館での案内係を務めるカタクチを威圧する。

応接間に4人を通し、テーブル席に横1列に座らせる。

「ほう、部屋で待っているかと思っていたが、おらんのか。我らを待たせるとは随分偉くなったものだな」

部屋の様子を隅に置かれた観葉植物の枝に停まる鳥Gの召喚獣が見つめている。

インコの姿をした召喚獣なのだが、2人の族長は、これからどんな話をしてやろうかとコソコソと打ち合わせをしている。

トクガラ族の横にいる守人長はヒヒイロカネの鎧をまとっている。

ノンフラ族の横にいる守人長はミスリルの鎧をまとっている。

2人は守人長とあって、筋肉隆々で眼光は鋭く、それぞれの背に立てかけた武器をすぐにとって襲い掛からんとしているようだ。

(ふむ、なるほど、やはりソメイのことは良く思っていないってことだな)

「どんな感じよ」

アレンの様子を、別室に待機しているセシルが尋ねてくる。

この場所は応接室の隣の部屋で、アレン、セシル、ソフィー、ソメイ、アビゲイルが待機している。

「かなりお怒りのようだな」

「それはまことかの!? 早く行かなくては!!」

「ふむ」

争いごとが苦手なのかソメイがソワソワとしている。

その横ではアビゲイルがただただ静観している。

2人はあまり政治を得意としていないようだ。

(王都ラブールから最も離れた場所に置かれた部族だ。こんなことになるとは思ってもみなかっただろうし)

もっとも冷遇された部族とも言える。

「そんなに慌てることでもありません。なんだかんだ言って我らと争っても、相手方に旨味もありませんですし」

こっちは既に7つの部族をまとめ上げている。

既に6つの部族はソメイを首長に、アビゲイルを守主である旨、署名を済ませている。

5人がいる部屋の扉が開き、カタクチが入ってくる。

「お見えになっております。お待ちですので……」

不安にあるソメイと、ただただ流れに身を任せているアビゲイルを後目に、アレンたちは行動に移した。

アレンとセシルが最初に待たせている部屋に向かう。

引き戸を開け、部屋に入るなり、4人の視線がアレンたちに降り注ぐ。

「この度は遠路お越しいただきありがとうございます。ソメイ様は間もなくお越しになります」

アレンは恭しく頭を下げ、2人の族長とそれぞれの守人長に挨拶をした。

セシルもアレンに合わせて頭を下げる。

「ほう、お前がアレンか。我ら竜人を口八丁に揉めさせたいようだな」

「滅相もございません。ただ、私たちは竜人たちがこのような神界人からの圧政に我慢ならないと思っただけです。皆さんもそうでしょう!!」

アレンは片手を握りしめ、胸の前に当て語気を強めて語り掛ける。

「ふ、それはどうかな」

族長のトクガラはニヤリと笑い、その横では族長のノンフラも「ふっ」と口元を緩ませた。

この状況にセシルは呆れそうな表情が出ないよう、自らを諫めた。

(ほう、タダでここに来たわけではないと。向こうには切り札があるとみて良いな)

アレンの知力が、トクガラの状況を分析する。

「では、お2人を呼んでまいります」

「もちろんだ。いつまで待たせるのだ。出てきたお茶も冷えてしもうたわ」

トクガラが呆れて、お茶を淹れ直せと言う。

どうやら、このトクガラが全てを語り、残りの3人は静観する姿勢のようだ。

アビゲイルはセシルに引き連れられ、返事と共に応接間に入った。

ズンズン

「な!?」

大柄なアビゲイルが歩くたび、基礎の地面の雲がしっかりしていないのか、軽く床石が揺れる。

アビゲイルは全身を金色に輝くオリハルコンの鎧を身に纏っていた。

さらに手には身の丈の倍近い巨大なオリハルコン製の 錘(すい) を握りしめている。

これだけで何百キロのオリハルコンが使われているのか分からない。

座っていた2人の守人長が、あまりの緊張で思わず壁に立てかけている武器を持とうと立ち上がった。

(ふふ、ビビってるな。このために俺らは装備のランクを落としているんだからな)

アレン、セシル、ソフィーはソメイとアビゲイルの装備が目立つよう、装備品のランクをかなり落とした。

「では、首長のソメイ様をすぐにお連れします。セシル」

「はい」

昨晩から決めた打合わせのとおり、セシルに指示をすると、応接室から出てソメイを呼びに行く。

アレンの言う「首長」の言葉に、4人ともいらつきを覚えているようだ。

それから何分もしないうちに、再度扉が開き、ソフィーに引き連れられたソメイがやってきた。

「いや~遅くなって申し訳ないのじゃ」

豪華な装束に身を纏ったソメイがやってくる。

魚人で魔法具師のカサゴマに仕立てて貰った。

アレンたちが竜神の里で試しの門挑戦時に神技を獲得した彼だが、美的センスが向上しているようだ。

美意識に関しては魚人や鳥人が他の種族を圧倒している。

あまりの優美さに、2人の守人長は殺気を奪われてしまう。

2人の族長も、一瞬息を飲んだが、自らを引き締め直したようだ。

全ての竜人の部族をまとめる会議が始まるのであった。