軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第567話 大地の神ガイアの試練

疲れ果て寝てしまったメルルを抱き上げる。

どれだけ必死な思いで手にしたものなのか、握りしめた木の棒を離そうとしない。

(召喚獣を仕舞ってからも頑張ってくれたみたいだな)

アレンたちが精霊の園で試練を受けている中、メルルたちは大地の迷宮攻略に向けて頑張ってくれていたようだ。

「ちょっと、ハバラクを連れてきますので、ガララ提督たちも休んでいてください。食事は私たちで準備しますので」

ゆっくりするように言う。

「おう、分かった。それは助かるぜ。皆も休んでくれや」

「へい」

「へい」

「へい」

大地の迷宮側には仮設で用意している拠点用魔導具が立てられている。

迷宮の入り口には製水の魔導具など、長期的な大地の迷宮攻略のために必要な物が完備されていた。

(神界にある最高難度のダンジョンかもしれないからな。おら、わくわくしてくっぞ)

城ほどある魔導具感あふれる一室にメルルを抱き上げて運ぶ。

「グラハンは、セシルとソフィーと一緒に飯の準備をしてくれ」

(さすがに拠点だとグラハンは狭いか。野営だな)

天井に頭が届いて、グラハンが窮屈そうなので、外で皆の夕食を準備するように言う。

『昔とったなんとやらであるな』

召喚獣になったグラハンはなぜか料理する機会が多い。

「任せた。俺はちょっとハバラクさんを神界に連れてくるから」

「そうね。いってらっしゃい」

それから半日ほどが過ぎ、空の日の光が西の果てに沈む頃、拠点用魔導具の一室の窓から明かりが灯った。

廊下に灯るので、どうやら、誰かが目覚め、外に出てくるようだ。

「今起きたぜ……。おお! 料理かって、ハバラクじゃねえか」

焚火に当たって、酒を楽しんでいるハバラクを寝起き顔のガララ提督が見つける。

かなり時間があったお陰で豪勢な料理を作ることができた。

「おう、先にやってるぞ。こっちにこい」

(ガララ提督は寝起き早々に酒か。ドワーフ感半端ないな)

アレンが神界に連れてきた名工ハバラクの横に腰掛け、手渡された木のコップを握ったガララ提督は酒を飲み始めた。

「ハバラク、お前もこっちにきてしまったか」

「そうだな。まさか、こんなことになるとはな。神界だってよ。やっぱりあったんだな」

人間世界に住む人はそんな世界があると神々や天使から聞いても、見たこともない世界だった。

「まったくだぜ……アレン殿、何やってんだ?」

「……創生のスキルを鍛えています」

アレンがガララ提督の問いに端的に答えた。

アレンは、アビゲイルから貰った霊石を使いつくす勢いで、草Gの召喚獣から「秋の味覚」を創生し続けている。

鳥Hの召喚獣の覚醒スキル「金の卵」を使って、最大魔力上昇からの最大霊力を上げたり、旬の味覚を創生して秒間霊力1000自然回復することも忘れない。

ガララ提督が起きてきたとセシルやソフィーが料理を温め直し始める中、一心不乱に創生スキルのスキル経験値を上げている。

(地面の岩がめっちゃ硬いんだけど)

アレンがちゃぶ台くらいの大きさの小さい花壇を作って創生に励んでいる。

「……お前はそういう奴だったな。最初に会った時は2階で何してんのか分からなかったけど。そうだな、アレン殿は変わらなかったんだな」

S級ダンジョンにいたころも、拠点にガララ提督が入り浸っていたことがあった。

あのころは、召喚士のスキルを秘匿していたこともあったので、黙っていたが、それからは見慣れたいつもの光景だ。

ガララ提督は何か思うことがあるのか手に運ぶ木のコップを止めて、静かにアレンの作業を見つめている。

何か言いたいことがあるのか、何かの決意が固まったのか、難しい顔が思考の中でゆっくりと変化していく。

「アレン殿もここでダンジョン攻略するのか?」

「いえいえ、ちょっとお手伝いをしたら、次の場所に行く予定です。ただ、ここだと強い剣が手に入りそうだったので、情報もあればいいかなと」

アレンはここに来た目的を伝える。

「そっか。武器も必要だな……」

ガララ提督がハバラクを見て何かを悟っているようだ。

「おい、お前、何しんみりしてんだよ。ほら、寝ぼけてんならもっと飲め」

「うるせえよ。ああ、ありがとな。くっはああああ!!」

「ちょっと、アレン。ガララ提督がちょっと変よ」

「そうみたいだな。落ち込んでいるんじゃないならいいんだけどな」

溢れるほど注がれた酒精の強い酒を、迷いなく一気に流し込んだ。

ガララ提督がどこか変だなとセシルやソフィーも心配そうに見つめている。

迷宮攻略に苦戦しているからなのか、ガララ提督の感情の変化が読めなかった。

「お、ハバラクさんじゃないっスか」

少し遅れて、ガララ提督のパーティー「スティンガー」の皆がぞろぞろと起きてきた。

当たり前のように樽から酒を木のコップに移して、酒盛りをしながら、セシルたちが用意した料理をモリモリと食べ始めた。

その光景を静かにガララ提督は見つめている。

(ガララ提督は結構疲れてしまっているのか。ん、メルルもお目覚めか。1日一睡もしていないだろうに)

ガララ提督のパーティーが全員揃ったところで、アレンがメルルを運んだ一室の明かりが灯る。

寝起きにシャワーを浴びて、少し髪の濡れたメルルが拠点用魔導具から外に出てきた。

「おはよ。おお、ハバラクさんだ! これで鍛冶エリアに行けば、スコップを強くできる!!」

「何の話だ? だが、俺が呼ばれる理由があるって話だよな」

「うん、そうなんだよ。鍛冶場も材料も揃うから……」

「こらこら、メルル。細かい事は後でゆっくりしよう。とりあえず、これからの話をするぞ」

細かい話の前にすることがあると、パーティーリーダーのアレンがメルルの話を預かる。

「ありがと。これもおいしい。ぷっはああああ!!」

メルルにも木のコップに酒樽から酒を注いであげると、礼を言って口に運ぶ。

セシルたちが作った料理は酒のつまみになったようだ。

手が止まらず、つまみを酒で流し込んでいる。

パチパチッ

酒を飲み、腹を満たしたところで、果実水を飲むアレンが口を開いた。

「迷宮攻略は結構厳しそうだな」

「うん、……18階が限界だったよ」

「いいね。もう少しでエクストラモードが手に入るな」

精霊の園での試練が厳しさを増す中、途中でどうなったか分からないが、落ち込むメルルの頑張りを褒め称える。

「あ! これも手に入ったよ!!」

メルルは魔導袋から3つの霊晶石と無数の霊石を取り出した。

「お! これで羅神くじが3回引けるぞ!!」

アレンは自らの汚名をそそぐときが来たと喜ぶ。

「霊晶石じゃない。じゃあ、このダンジョンって霊獣が出るの?」

「うん、いっぱい出てくるよ。だから時間がかかるんだ」

「ちょっと、あまりガイア様の試練が良く分からないわ。私にも分かるように説明してくれないかしら」

「簡単に言うと、1日24時間以内に99階を目指すタイムアタックだな。RTAだぞ」

「なによそれ。タイムアタックって何だったかしら。あーる? それはもっと分からないわ。それで、報酬は攻略したら貰えるってことかしら? 剣神様とは何か違うわね」

(いや、言葉のまんまだが)

「そうだ。この大地の迷宮の攻略度合いで報酬が変わる。せっかくガイアが報酬を用意してくれたんだからな。それで、魔導書に記録したガイアの報酬だけど……」

「ガイア様ね。それで報酬って?」

様をつけるように言うセシルは、アレンが以前、霊Aの召喚獣をメルルと同行させていたときに記録した魔導書の内容を確認する。

大地の迷宮

なお、各階層を攻略すると、別途試練攻略報酬が参加人数に限らず1回だけ貰える。

【大地の神ガイアの試練の報酬】

・20階層に到達すると、エクストラモードになれる

・40階層に到達すると、神技を貰える

・60階層に到達すると、大地の加護を貰える

・80階層に到達すると、神器「大地のハンマー」を貰える

・99階層を脱出すると、大地の神ガイアに願いを1つ叶えてもらえる

先ほどの神界闘技場でひたすら瞑想の訓練を1ヵ月もさせられるのに比べたら、とても分かりやすい報酬となっている。

(まあ、この試練も曲者なんだがな)

「それぞれの階層に到達すると、モード変更や神器も手に入れることができるそうだ」

メルルたちだけで18階層まで行けるようになったが、後もう少しでエクストラモードになれる。

「なるほど、これは攻略しないといけないって話ね」

「そのとおりだ。メルスも呼んで本腰入れて攻略をするぞ」

『ああ』

メルスからはいつも通り熱のこもっていない返事が返ってくる。

(ん? メルスも何か様子が変か? 妹のルプトと会って何かあったのかな?)

久々に帰ってきたメルスも何か考え事をしていた。

思考に耽る仲間たちだなとアレンは思う。

「ごめんよ。僕らで攻略したかったんだけど」

「何、メルルのお陰で、攻略方法が次第につかめてきたからな。目指せ99階層まで攻略だ」

「ありがと」

メルルは、アレンたちが精霊の園の試練を超えたのに、自分らがまだまだ前半の18階層までなことが悔しいようだ。

途中まで、霊Aの召喚獣をメルルたちに同行させていたお陰で、アレンもこのダンジョンの攻略法を考える十分な時間が出来たと言う。

アレンたちは大地の迷宮入り口側で一晩を明かし、次の日早々には出発の支度をする。

「メルスはここには来たことあるんだよな」

『もちろんだ。そして、もちろん天使として99階層の攻略を目指したことはない』

(これが何なのかを大体知っているが、詳しい攻略方法までは分からないってことか)

大地の神ガイアが何万年生きているのか知らないが、10万年生きたメルスは大地の迷宮を知っているし、大地の神と会うことも天使時代は多かったのだろう。

メルスからも攻略時に気付いた点や、思い出したことがあるなら確認させることにしよう。

身支度を済ませたドワーフたちも拠点用の魔導具から出てくる。

ハバラクの歓迎会とばかりにガララ提督たちはかなり夜遅くまで飲んでいたが、2日酔いという存在を知らないのか、元気いっぱいの顔つきだ。

「じゃあ、行きましょう」

「おう」

気合が入っているのかガララ提督が真っ先に返事をする。

入口はらせん状の階段になっている。

遥か先に続く階段を降りた先は、降りると天井は遥かに高く、広さは一辺1キロメートルほどの部屋だった。

部屋の中央には入り口にも佇んでいた土偶がぽつんと立っている。

『大地の迷宮への挑戦ですね。大地の神ガイア様は99階層の先におります。皆さまの勇気と力を試させていただきます』

アレンたちが近づくと口は開かないが、置物のような土偶が語り掛けてくる。

大地の迷宮への挑戦が始まったのであった。