軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第562話 神界闘技場

アレンは何度も行き来して、山のような大量の岩石を霊障の吹き溜まりの傍に積み上げた。

竜人たちは、この岩石を石材に切り出して、神界で販売することになる。

「ただいま」

アレンとセシルは魔導船の中に転移する。

神界人のピヨンがここにいるので、何をしてきたのか細かく話すつもりはない。

ピヨンのことを疑っているわけではないが、配下でも仲間でも何でもない天空王の使いで仕事をしているだけなので、信じすぎるのも良くないだろうという考えだ。

商売を始めるには最初が肝心だ。

販路を拡大する過程で、アレンたちが何をやっているのか、天空王が知ることになるだろうが、売り始める前から何等かの規制をかけられても困る。

「あら、もういいの? もうすぐ着くわよ」

「そうなのか」

アレンはララッパ団長に声をかけられて、操舵室前方に取り付けられた画面を確認する。

魔導船が進んだ先には「神界闘技場」と呼ばれる巨大な円形状の大陸が存在する。

ここにきた目的は、精霊の園で大精霊神イースレイの出した試練を越え、力をつけたフォルマールとルークの更なる強化だ。

ソフィーは、アレンのスキル強化のために当面付き添ってもらう予定だ。

ここには剣神を筆頭に八柱の武具に係わる神々がいる。

(クレナたちも特訓が進んでいるのだろうか。この前行った時は寝落ちしかけていたけど……)

既に神界闘技場にクレナや勇者たちがいるのだが、クレナの修行に一抹の不安があった。

(ふむ、魔導書も整理しておくか)

アレンは到着前に、ここ1、2ヵ月でばたばたしてしまった状況を魔導書に記録する

【人間世界】

・ロダン村

ロダンやミュラや村の住人の希望者を、アレン軍の協力のもと転職を進めている。

・学園都市

年数制の変更に伴い、5大陸同盟の技術力を元に都市を拡張している。

アレン軍の協力の元、生徒たちの訓練と転職も勧めている。

【神界】

・神界闘技場(剣神、弓神など)

クレナ、ハク、勇者パーティーが訓練中。

・原獣の園(獣神ガルム、獣神ギランなど)

シア、十英獣が訓練中。

・大地の神の神域

メルル、タムタム、ガララ提督パーティーの訓練中。

・歌神の神域

ロザリナ、ドゴラ、キール、イグノマス、レペが訓練中。

・商神の神域

ペロムス、フィオナが訓練中。

・シャンダール天空国

ソメイ族長とアビゲイル守人長が首長と守主目指して石材を販売中。

(ふむ、こうしてみるといい感じにばらけているな。イグノマスは槍使いなんだから、危険じゃないなら神界闘技場に入れてあげたいな。それでいうとドゴラはもっとか)

精霊の園で神級の精霊獣との激しい戦いになったため、巣の設置個所の見直しをせざるを得なかった。

現在、どのようになっているのか、仲間たちの成長を信じることにする。

アレンのパーティーに入ったマスの魚人のイグノマスが、歌神の神域に居るのは勿体ないような気がする。

危険ではないなら、神界闘技場で訓練させた方が良いのではと考察する。

アレンの思考とは他所に魔導船は、神界闘技場の発着場に着いた。

ララッパ団長と操舵士ピヨンは魔導船に残るようだ。

「ここの後はどこに行くの?」

航空経路も確認してくれるようだ。

「次は大地の神ガイアのところに行ってくれ」

点検があるなら航行中に行ってほしいと言う。

「あら、そうなのね。……ああ、神聖オリハルコンね」

「そうだ。必ず最強の剣を手に入れるぞ」

アレンはワクワクしながら答えた。

「アレンは、何も変わらないわね……」

アレンの目的がすぐにセシルも分かったようだ。

アレンが必要なものは、決して折れない剣だ。

セシルはアレンの姿勢が従僕のころから一切ブレていないことに安心するような、呆れるような複雑な表情を見せた。

ララッパ団長の返事を受け、船体のサイドから突き出た階段を降りていく。

降りた先には、ボディービルダーが大会直前にパンプアップしたような筋肉ムキムキのバッキバキの天使が胸の前に腕を組んで立っていた。

「これは、ケルビン様、態々のお出迎えありがとうございます」

剣神セスタヴィヌスに仕える主天使ケルビンに挨拶をする。

『うむ。問題児が来ると聞いているからな』

「そんな、滅相もない」

謂れのないことを言われたので、へりくだりながらも反論はしておく。

『ふん、剣神様は大精霊神様ほど甘くはない。ふざけた態度をしていると、その首、胴から離れるぞ』

「それは、試練の内容次第でございます」

『き、貴様!?』

ケルビンは思わず腰に差している剣に手をやろうとする。

「……なんでしょう?」

アレンは無防備な状態を崩さないまま、静かにケルビンを見据えている。

「ちょっと、何で険悪になっているのよ!」

いきなりの状況にセシルが割って入る。

『ふん、まずは剣神様の闘技台を案内する。ついてまいれ』

ケルビンは一瞬真っ赤な顔になった、深く息を吸って自らを落ち着かせたようだ。

アレン、セシル、ソフィーたちが発着場に降り立つのを確認したケルビンは、アレンたちに背を向ける。

肩幅の広い背中の筋肉を見せつけるようにケルビンが歩き出したので、アレンは後ろをついていく。

発着場は巨大な円形の闘技場の大陸の端に出島のように取り付けられている。

アレンたちはケルビンの背から幅100メートルほどの渡り廊下に視線を移す。

(レンガのような石畳がどこまでも続いていると。それだけ、たくさんの信仰を集めているってことか。なんたって魔王軍に攻められている世界だからな)

闘技場の床石は赤褐色の石板で統一されていた。

天空王が石材で巨大な城を使っているが、剣神を筆頭に武具8神の支配する神域は、大陸全体に石材が利用されていた。

長い通路を渡ったところでアレンは口を開く。

「申し訳ありません。さすがに、歩いてクレナたちの下に行くのはいささか時間が掛かりすぎているように思えます」

『ふむ、たしかにそうだな。飛んで行くぞ』

全長数千キロメートルにもなる円形の闘技台の中央に剣神の訓練施設がある。

さすがに歩いていくのは何年もかかるというアレンの言葉は汲み取ってくれたようだ。

ケルビンが3組の翼を広げたところで、クワトロに特技「浮遊羽」をアレンたち全員に発動させる。

ケルビンが真っすぐに、すごい勢いで神界闘技場の中央を目指し始めたので、その後ろを離されないようについていく。

(なるほど、中央に剣神の訓練施設が、残り7武具神の訓練施設は中央を囲むように均等に配置されていると)

クワトロに特技「万里眼」を発動させて神界闘技場全域を確認する。

全長数千キロメートルになる神界闘技場の中央には、全長数百キロメートルにもなる剣神の支配する神域がある。

格闘場やドームのような建物など、数々の訓練施設が、上空から見ると円形上に配置されている。

さらに中央の剣神の神域を囲むように、全長100キロメートルほどの残り7武具神の訓練施設が配置されている。

アレンたちは羅神くじの剣神と弓神を引いているので、剣と弓は足を踏み入れても問題ないはずだ。

(次に引くなら斧か槍かな。斧を引いたらドゴラも呼ばないとな。くじ2回引けるし、どっちか引けたらいいな。魔法神も引いちゃうんだからね。って、ん? 天使たちか?)

アレンは様々な神域を上空から覗き込むと、多くの天使たちが、それぞれの武具神の元で訓練を受けている様子が目に入る。

「なるほど、天使たちはこうやって訓練を受けているんだな」

「そうなの? じゃあ、ここは天使たちの修行の場なのね」

横で飛んでいるセシルがアレンの言葉に反応した。

「たしか、魔王軍と戦ったのも天使たちと聞いているからな。なるほどな」

槍を握る者、弓を引く者など、天使たちは皆修行に励んでいる。

アレンはこの状況にメルスの言葉を思い出す。

ローゼンヘイムの侵攻を受けている間、魔王軍の主力部隊は火の神フレイヤの神器を目指して神界を攻めた。

主力とも呼べる戦力で攻め立てたのだが、魔王軍は無事では済まなかった。

魔神も含む魔王軍の半分ほどの勢力を、火の神フレイヤの神殿に駆けつけた神々や天使たちが倒したという。

大地の神ガイアなど、神々の手で葬ったと思っていたが、思った以上に天使たちが活躍したのかもしれない。

そんな考察をしながら、長い時間を飛行し、ようやくアレンたちは剣神の神域の前に降り立った。

施設の前には大きな門があり、複数の天使たちが門番のように佇んでいる。

『ケルビン様、お帰りなさいませ!!』

『ケルビン様、お帰りなさいませ!!』

『うむ、戻った』

(体育会系だな)

絶対にこんなに大きな声で叫ばなくても聞こえているであろう叫び声を、ケルビンは平然と受けている。

『人間たちはこっちにいる。ついてこい』

どうやら1つの大きな屋根付きの施設でクレナたちは修行をしているようだ。

「ようやくクレナたちのいる場所ね。強くなっているといいわね」

「そうだな。って、なんだかここは武道場みたいだな」

(道場やぶりしちゃうんだからね)

入口の横には剣神武道場と書かれた厚板が張られてある。

『ここだ。ここで皆、精神統一をしている。我は剣神様に新たな来訪者が来たことを報告にいくのでな』

(精神統一だと? も、もしかして……)

巨大な引き戸を開くと、あまりにも広い木材の床張りの武道場が姿を現す。

ケルビンは案内はここまでだと、剣神に来訪者の報告に行くため、この場を後にするようだ。

「中にはいっていいってことですわよね。……あ、ハクだわ」

神域でめったなことはしてはいけないと慎重なソフィーたちは、だだっぴろい木材の床の上に天使たちが均等に胡坐を組んで座る先に大きなハクの横姿を見る。

『……』

ソフィーの声にも返事をしないハクは胡坐をかいて、目を瞑り、座っている天使たちと同様に、首をたれ無言で座っている。

アレンたちが目の前を歩いて通り過ぎても目を開けようともしない。

遠くの方で、兄弟子なのか師範代であろうか、武道着をきた天使が座禅を組む天使たちの後ろをゆっくりと歩いている。

ハクの元に行くと、さらに奥にクレナや勇者ヘルミオスのパーティーが座禅を組んで精神統一をしていることが分かった。

「すー……、すー」

「寝てるわ……」

天使たちや勇者ヘルミオスのパーティーの誰もが集中する中、座禅を組むクレナは寝息を立てており、セシルが絶句する。

「あ、アレン」

勇者ヘルミオスたちがアレンたちの気配に気付いているものの、我慢して目を瞑る中、クレナはアレンを見て明るい表情になる。

「おい、クレナ。もしかして、ずっとここで座禅を組んでいたのか?」

「う、うん……」

明るい表情からどれだけ辛かったのか、しょぼくれてしまった。

(さてと)

アレンは深呼吸をするように、大きく息を吸い込み始めた。

何が始まるんだろうとセシルやソフィーは静観する。

「何、ふざけたことをしているんだ。いや、させているんだ!」

全ての息を吐き出すようにアレンが声を荒らげた。

『な、そこで何を騒いでいる!?』

アレンたちが静寂を遮り、騒いだため、師範のような天使が駆けつけるのであった。