軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第556話 引退宣言?

アレンたちは、ペロムスの取引に立ち会った後、神界側の審判の門へ向かった。

地上への転移は、神界と人間世界のルールから審判の門を必ず経由しないといけない。

だが、今回の目的は審判の門自体なので、目的地に到着したことになる。

「あら、もう始まっているわね」

「そうだな、セシル。大きさは問題なさそうだな」

(解体せずに運べてよかった)

アレンもセシルも今の状況が良く分かった。

返事したのはセシルだけで、ソフィー、ルーク、フォルマールはアイアンゴーレム狩り中だ。

既に休暇は終わり、エクストラモードに突入した3人は現在レベル上げ中だ。

アレン軍にはいくつもの部隊がある。

その中でもアレンが頻繁に要請するのは魔導技師団だ。

ララッパ団長率いる100人ほどの部隊ではあるのだが、S級ダンジョンの最下層ボスなどから手に入る高級な魔導具を加工し、アレンの作戦に必要な物を用意してくれる。

【アレン軍の部隊】

・人族部隊

・獣人部隊

・エルフ族部隊

・ダークエルフ部隊

・魚人部隊

・ゴーレム団

・魔導技師団

全長100メートルの竜王が余裕を持って潜り抜けることができる巨大な審判の門は解放されており、何か巨大なものがゆっくりと神界へ潜り抜けようとしている。

アレンと審判の門を越えてきたアレン軍魔導技師団のララッパ団長と雲の上で目が合う。

巨大な魔導船がさらに巨大な重機のような魔導具で、ゆっくりと審判の門を越え神界へ運ばれてくる。

竜王に仕える神兵と神官たち竜人は、何が行われているのかと固まっている。

「あら、総帥。ちょっと手が足りないの。手伝ってほしいわ」

アレン軍の総帥のアレンにも決して物怖じをしない女王気質のあるララッパ団長は、配下だけでは足りないから手を貸してほしいと言う。

(さて、神聖オリハルコンを手に入れるための情報収集はするとして、こっちも順調だな。つうか、今まで贋作を掴ませやがって。これからは神聖を真なるオリハルコンと、これまでのやつを贋作オリハルコンとする)

別の事をしていても怒りで手が震える。

最強のオリハルコンを手に入れたと思っていたが、魔法神イシリスによる模倣だと分かった時の怒りが止まらない。

なんか、アホみたいにダンジョンから大量に出るなと、竜神の里で挑戦した審判の門のあたりからずっと思っていた。

「ほら、アレン。重そうよ」

魔導具の重機で運び込んでいるのだが、魔導船の重さに耐えかねて、思うように前に進んでいない。

「……そうだな。オロチたち、ちょっと手伝ってくれ」

セシルの言葉に我に返る。

『あい、分かった』

『あい、分かった』

2体の竜Aの召喚獣を、魔導船の両サイドに召喚する。

5本ある長い首を全て魔導船の船体の底にくぐらせて、圧倒的な力で魔導船を持ち上げ、神界へ運んでいく。

「大丈夫なの? 神界にこんなもの持ち込んでしまって。私、神罰とかいやなんだけど」

セシルがいつものアレンの調子に、何をしているんだと呆れている。

「魔導具は神界でも当たり前のように動いたからな。魔導船も神域を飛べるはずだ」

「そういう話してるんじゃないのよ?」

神界に魔導船を搬入しているのだが、これには理由がある。

アレンは神技の創生スキルを手に入れた。

このスキルのレベルを上げようと思ったら霊石を大量に消費しそうだ。

霊獣は魔獣ほどの数はいないし、Sランクの魔石のように霊石にはランクがない。

急いで移動すれば鬼のように霊石を消費する天空船では、アビゲイルたち竜人たちの霊獣狩りによる霊石の確保スピードでは間に合わない。

アレンが神技を覚えたことによって、天空船はお役御免となった。

これから神域を活動するための行動手段は地上から持ち運んだ魔導船に変更する。

「入ってきたな!」

「ああ、ここまで運んだら問題ないだろう」

神界の雲の上まで、魔導船を運んできた。

神界に入るには条件があって、竜人の里の竜王の神殿にある巨大な審判の門を越えないといけない。

条件は満たされたと判断し、アレンは神界に運ばれてきた巨大な魔導船に手を触れる。

(まあ、手を触れなくてもいいんだけどね)

鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」を発動させた。

アレンたちもララッパ団長らドワーフたちの視界も、一気に変わり、魔導船もこの場から姿を消した。

すぐさま、アレンたちの視界が巨大な建造物の中に変わる。

「ここが、神界の王城ね。なんかすごいところね。どこの王様も大きい物を造りたいのかしら」

アレンは仲間たちとララッパ団長を連れて、シャンダール天空国の王都ラブールにある三層構造の巨大な王都の3階層目に移動した。

目の前には魔導船があり、少し離れたところには天空王から貸し与えられた天空船もある。

ララッパ団長は地上でも見たことないほどの巨大な建物の中で、天空船を横づけするために断崖絶壁のようになった王城の外壁を見ながら呟いた。

「よし、明日には出発したいからな。今日中に羅神盤の移設と、魔導炉の起動実験を済ませておいてくれ」

相変わらずアレンの魔導技師団への指示の日程は厳しい。

「分かったわ。天空船の動力源もどんな風になっているのか知りたいわ。少し解体をしてもいいかしら?」

「全く問題ない」

(誰の許可もとってはいないけどね。俺らしか天空船は使う予定ないみたいだし)

アレンたちが巨大な魔導船を運び入れ、作業指示をする中、何事だと神界人の兵たちが集まってきた。

「あ、あの、これは何をしているのでしょうか……」

見覚えのある神界人が天空船から降りてきて、アレンたちの元に駆け寄ってくる。

「ああ、ピヨンさん。今度から神域への移動はこの魔導船に変えることにしました。人間世界で優秀な魔導技師の方々です。ご助言いただけたら助かります」

「は、はぁ」

アレンは天空船の操舵士をしてくれていたピヨンという神界人に説明をする。

魔導船を持ってきたので、各種機器の移設工事を行い羅神盤を取り付け、神域を移動すると言う。

状況はゆっくりと飲み込んでいるようだが、王城の兵たちも何も言ってこないので黙々と作業を進めることにする。

「ララッパ団長、オキヨサンを出すから、手伝いに使ってくれ」

「ありがとね」

霊Aの召喚獣を10体ほど召喚し、高い知力と攻撃力で力仕事も細かい指示も理解して休みなしで作業をさせることにする。

(さて、そろそろ、神域で亜神級の霊獣を狩らないとな)

故郷に戻り、ミュラたちの転職などを手伝っている間も、亜神級の霊獣を探すことに余念はなかった。

現在も鳥Aと霊Aの召喚獣を2体一組にして神域を飛び回っている。

亜神級の霊獣はエクストラモードなら1体レベル10アップする。

また、新たな神へ会うために必要な羅神くじを引くためにも、霊晶石が必要だ。

亜神級なら1体で1回のくじを引くことができる。

セシルのためにも魔法神イシリスの名前の書かれた羅神くじを引き当てる必要がある。

さらに、精霊獣との戦いに苦労したアレンたちだが、フォルマールは亜神級の霊獣の霊晶石を矢に変えることができる。

今後の強敵に備えて霊晶石をフォルマールのために取っておくためにも、亜神級の霊獣を狩るのは必要だ。

それから丸1日が経過した。

「やっぱり僕たちも行くのかな」

昨日はいなかったラブールの王城にいたペロムス夫妻もこの場にいる。

(まだまだお金がいるみたいだからな。神界は関税をかけてきやがって。ただではおかねえ。これは戦争だ。経済戦争じゃ!)

今回の学園の制度を変えるためにも莫大なお金が必要となった。

物の値段の違う神界はそうやすやすと金儲けができそうにない。

神界の商人たちには、誰を相手に高い関税を吹っかけてきたのか分からせる必要がある。

期日がある中、ペロムスには新たな力を手に入れ、神界の商人たちと有利に取引を進めていく必要がある。

なお、ソフィーたち3人は、このままギリギリまでアイアンゴーレムを狩ってレベル上げをしてもらっている。

レベル89まで上げたら、亜神級の霊獣を1体倒すだけで、レベルがカンストするのでそこまではアイアンゴーレムで上げておきたい。

「そうだぞ。ペロムス、契約は終わったんだ。俺が引き当てた羅神で商神マーネに会うんだ。目指せ、エクストラモードだ」

「……分かったよ」

(テンション低いな。結婚してモチベ下がったのか!)

「廃ゲーマーのペロムスよ」

アレンは口調が変わった。

「え? 何、アレン」

アレンはがっしりと両手をペロムスの肩を掴み、力強い視線でペロムスの両目を見る。

「このパーティーは結婚しても就職しても、大学に入っても抜けることはできない。引退宣言はできないことを知っておいてくれ」

「何の話? 引退って?」

アレンは前世で健一だったころ、夢中になったネットゲームを思い出す。

サービスが始まったころ、参加者も増えていき大きなパーティーが出来上がっていっても、1人また1人とプレイヤーのリアルの都合で引退していったものだと記憶している。

同じパーティーでなくても、いつもいる友達がずっとオフライン状態を見るのはさみしいものだ。

アレンはペロムスが長年思い続けたフィオナと結婚して、1つの大きな目標を達成し、無気力状態になっていることを危惧したようだ。

ここは気合の入れ時で決してパーティーを引退させてはならない。

この場にいる仲間たちに対しても、加入後は引退不可で絶対に抜けられないと改めて宣言する。

「そんな話聞いたことないわね……。そういうのは最初に言うものじゃない」

長い事、廃ゲーマーのパーティーにいたセシルが初めて聞いたと言う。

これまで、最初は4人で始まったパーティーだが、今では10人を超えている。

その中で、加入後の脱退条件の話は一度もしてこなかったことにセシルは呆れている。

「なんかすごいことになっていますわね。ペロムス、一緒に頑張りましょう」

「そうだね。頑張るよ」

(うむ、頑張ってくれ。理解ある良き妻をもって幸せ者だな)

妻のフィオナが及び腰のペロムスを励まし、やる気を出させた。

フィオナとしても、ペロムスにはこのまま満足せず、立派な商人になってほしいようだ。

ペロムスへの激励が終わったところで、アレンたちは魔導船に乗り込む。

皆で操舵室に乗り込むと、ララッパ団長のドワーフたちに、操舵士のピヨンもいた。

これから神域に突入するので、なにやら操縦方法をお互いに確認し合っているようだ。

神域にいる神の神殿などを探すには、方向を指し示すものが必要だ。

航路を指し示す羅針盤ならぬ、羅神盤がそれにあたる。

神のいる浮島や大陸などの神域は、地球の世界よりも、この世界の人間世界よりもはるかに広い中に点在している。

また、たまたま神のいる神域を見つけても、羅神がないと足を踏み入れてはいけないという決まりもある。

アレンは操縦室の中央にある羅神盤が取り付けられたところに向かい、魔導書の収納から30センチメートルほどの大きさの棒を取り出す。

取り付けた羅神盤に、商神マーネの羅神を取り付けると、一定の方向を指し示す。

「この船でも羅神は機能したみたいですね」

ピヨンが羅神盤の機能に問題がないか確認をする。

ララッパ団長も、ドワーフたちに各魔導具の機能に問題がないか改めて指示をする。

「問題なさそうね! 魔導炉を点火なさい!!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

ララッパ団長の掛け声と共に魔導炉への起動操作を魔導技師団のドワーフたちが行っていく。

高い推進力を維持するため、この魔導船の魔導炉はララッパ団長に魔改造してもらっている。

魔導炉の動力が動き始めた振動音で、魔導船が揺れているようだ。

外では、魔導船を止めていた巨大な鎖が外されていく。

「よし、点火も問題ないわ! 発進よ!!」

掛け声と共に、操作盤のタッチパネルを叩き、ドワーフたちが魔導船後方に取り付けてある推進エンジンを起動させた。

魔導船が一気に加速したため、心臓を押され、圧迫感を全身で感じる。

(うほ、結構なGを感じるぜ)

「素晴らしい速度ですね。これなら1日くらいで商神マーネ様の神域に到着するかと」

ピヨンが速度メーターを確認しながら、問題なく発進できたことに安堵する。

魔法神イシリスの造った天空船に引けを取らない速度で商神マーネの神域を目指すアレンであった。