軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第515話 5大陸同盟会議ローゼンヘイム編②

女王に発言するように言われたので、アレンは立ち上がった

発言者のために演台も設置してあり、拡声の魔導具も置かれてあった。

演台から各国の代表をゆっくりと見つめ、視線を回収する。

アレンの発言に盟主を含む各国の代表は、賛否を決めなければならない。

ヘルミオスが言った通り、巨大な要塞を築くことは最も大事なことの1つだ。

魔獣はランクが上がるたびに巨大になっていく。

30メートル級の高さを誇る要塞も多い中央大陸北部の要塞だが、50メートル、100メートル級の要塞も築いていきたい。

だが、それだけでは足りないとアレンは考えている。

今回の発言の目的は、学園を卒業し魔王軍と戦う兵たちの犠牲を減らすことだ。

各国の代表がアレンに視線を向ける。

「お時間を頂き、ありがとうございます。私が発案する内容は学園制度についてでございます」

まずは何の話をするのか議題について分かりやすく伝える。

アレンは学園制度を何らかの形で変更したいと各国の代表は理解した。

「現在の一国一学園制度について提唱があるということですか?」

既に話の内容を知っている女王がアレンの発言に相槌を打ち、会話を繋げてくれる。

「はい。魔王軍との戦いの中、エルメア様には転職ダンジョンを学園に設けていただきました。学園も転職ダンジョンに合わせ制度を見直すべき時かと存じます。年制をもっと長くすべきです」

拡声の魔導具で発言するアレンの声が広い会議場に響き渡る。

アレンは学園制度の改正について提唱を始めた。

アレンは自らの席の後方にある魔導板を使ってプレゼンを行っていく。

各国の代表たちは近くの席にいる他の代表たちと相談しながらも話を聞く。

これはアレン軍の魔導技師団に要請して作成したものだ。

現在、3年制の学園となっている。

これを4年制や5年制に変更し、一度転職を済ませてから、王侯貴族など兵役のある者たちは魔王軍との戦いに臨むべきだと説明する。

「ほう、余の国のように年数の長い学園にすると」

ギアムート帝国の皇帝はなるほどとすぐにアレンが何をしたいのか理解した。

ギアムート帝国には20もの学園があるが全て同じカリキュラムではない。

1年制、3年制、5年制の3つの学園がある。

1年制は雑兵用で広く公募した平民や農奴などに向けて最低限の学習と訓練をして戦場に送るためのカリキュラムとなっている。

3年制は各国で広く導入されているカリキュラムで、バランスよく学習と訓練を行っている。

平民や騎士家の子供が多く在籍している。

5年制は、王侯貴族や星3つ以上の優れた才能がある者専用のカリキュラムだ。

上級士官として大軍を指揮したり、特殊な作戦などの教育や訓練を受ける。

勇者ヘルミオスのパーティー候補生も5年制であらゆる訓練を受ける。

上級指揮官や特殊作戦を訓練にするのはどうしてもそれなりの年月が掛かってしまう。

「ほほ、なるほどの。たしかに転職ダンジョンができているのに今の制度の変更を行わないのは愚策だの。ただ、……」

バウキス帝国の皇帝も賛同するところもあるようだ。

しかし、肉付きの良い顎に手を当て、目をつぶり何やら思案している。

「ププン3世よ。何かお困りですか?」

議長国の女王が何やら考え込むバウキス帝国の皇帝に尋ねる。

「いや、年制を伸ばすとなると随分お金がかかることになるのではないのか?」

(お? 流石金満国家の皇帝だ。いいところに気がつくな)

良い話の流れになったが、アレンは表情に出さないようにする。

自国が負担する学園についても長く生徒が在籍する分、負担が大きくなるのではとバウキス帝国の皇帝は尤もなことを言う。

たしかにと学園を支える各国の代表は頷いた。

各国が魔王軍のために負担しているのは、兵への給金や食料などの兵站ばかりではない。

自国内にある学園についても各国が予算を立て、維持している。

先立つものがなければ、学園は維持できない。

存亡がかかっているからといって無尽蔵に予算をかけるわけにはいかないとバウキス帝国の皇帝の話に皆同意する。

「確かに予算は掛かります。しかし、転職を済ませた生徒の生存率は飛躍的に上がります。長期的な視野をお持ちの各国の代表なら、その点については理解できるはずでございます」

1つ星程度の才能ではBランクの魔獣でも死ぬかもしれない。

Aランクの魔獣だったら相手にならない。

剣士など星1つの才能であっても、転職できればステータスは半分引き継ぎの上剣豪になれる。

魔王軍との戦いでの生存率は格段に上がるはずだと言う。

「ほむ、学園制度の変更を投資だと思って考えよということかの。だがな、この発案は厳しいのではないか?」

バウキス帝国の皇帝が頬に片手を当て、金勘定をしている。

「厳しいでございますか?」

「そうだの。アレンよ。溢れた生徒をどのように受け止める予定だ?」

学園制度の年数を増やすと言うことは、その分、各国の学園に留まる生徒は増えるということだ。

そのあたりについて、具体的な話をするようバウキス帝国の皇帝は言う。

「そちらについては、こちらをご覧ください。ラターシュ王国の学園都市傍に、転職用に新しく生徒を受け入れる街を建築します」

転職希望を受け入れるため、転職ダンジョンのあるラターシュ王国の学園都市の面積を倍増する計画を、魔導板をプレゼン用に活用して説明をする。

「ほう? この程度の規模で収まると」

それはラターシュ王国の学園都市が2倍になるほどの大きさだ。

「基本的に新たに設備された街に受け入れるのは、魔王軍と戦うことを前提にした生徒だけですので」

全世界の学園都市で3年間を過ごした生徒全て受け入れることはしない。

魔王軍と戦うための生徒に限れば、学園1つ分で収まるとこれまでの出兵の記録を元に説明する。

「予算はどう見積もるのだ?」

「そうですね。金貨5000万枚を新たな街の建設に見ていただけたらと考えています」

魔導板の表示を切り替えながら、初期投資に必要な額を提示する。

初期の街づくりも考えれば、最低限必要な額だと言う。

日本円に換算して5兆円ほどあれば、達成可能だと各国の代表に説く。

「ふむふむ、たしかに。最低限それくらいか」

バウキス帝国の皇帝とアレンの会話が続く。

「はい。いかがでしょうか?」

具体的に何がしたいのかも、どれだけの予算が必要なのかも説明もしたとアレンは言う。

「アレンよ。忘れたわけではないが、たった今中央大陸北部の要塞に各国の代表より多額の予算を頂くという案が通ったわけだの」

各国の代表は一様に難しい顔をしている。

現状でもかなり厳しい予算繰りの中、国家運営をしている各国において、更なる予算の要求に即答できないでいる。

多額のお金を投資して送り出した生徒は自国に帰ってこそ、国は繁栄する。

そんなことはこの場にいる各国の代表ならほとんどの者が理解できる。

だからと言って無尽蔵に予算が配分できるわけではない。

「アレン、どうするのよ」

発言権のないセシルは小さくつぶやいた。

アレンはセシルの不安が聞こえたので、軽く振り向いてニヤリと悪い顔を見せる。

その表情にアレンの行動に裏付けがあることを仲間たちは知る。

「転職ダンジョンのあるラターシュ学園はアレン軍の活動拠点があり、特に負担の大きいと予想される転職時の安全に配慮した軍の派遣など、協力ができるかと」

「ほう? 学園運営に協力すると」

アレン軍は転職ダンジョンに拠点がある。

ダンジョンの攻略ルートも転職する生徒に数名随行して、転職に協力することもできる。

バウキス帝国の皇帝はなるほどと思ったようだ。

「私たちの軍はたった1名の犠牲もなく転職ダンジョンを1年以上利用しており、5000人を超える者たちを転職させてきました」

アレン軍もいるので、転職ダンジョンによる犠牲はないと伝える。

「実績もあり、安全と。しかし、金銭的な解決にはならぬの」

話は分かるがなとバウキス帝国の皇帝は言う。

「その上で更なる協力が私たちアレン軍にございます」

「さらなると? 何かの。是非聞かせてくれ」

アレンは間を置き、盟主たちや各国の代表たちの視線を集める。

「金貨1億枚の予算を学園制度の変更のため、提供する用意があります」

日本円にして10兆円の提供するつもりだとアレンは断言した。

その額は最低限の街を建築する2倍の額であった。

(バウキス帝国のお陰で、予算で話が進んで助かったでござる)

「なんと!? ま、誠かの!!」

バウキス帝国の皇帝の声が大きすぎて、拡声の魔導具から絶叫が会議室に鳴り響く。

「当然です。既に学園都市を管理する口座には前金として金貨3000万枚を入金しております。残りについても3ヶ月以内に入金する予定でございます」

(用意するのは結婚に浮かれて会議に出席しなかったペロムスだがな)

ペロムスがいないところで話は進んでいく。

「確認する。ちょっと待っておるのだ」

バウキス帝国の皇帝は配下の者にタブレット式の魔導具を持ってくるように言う。

配下から奪い取るように受け取るとポチポチと魔導具を押して、何かを確認しているようだ。

「いかがでしょう?」

皇帝に尋ねつつ、アレンはソフィーに視線を送って、バウキス帝国の皇帝の拡声の魔導具の声の大きさを大きくするように指示をする。

「た、たしかに数時間前に送金が完了しておるようだの。な、何故ここまでして……」

広い会議室にバウキス帝国の皇帝の呟き声が響いた。

戸惑いにも似た声に、各国の代表もなぜそこまでするのか疑問にすら思う。

「全て魔王軍への勝利のためです」

自らも語気を強めアレンは言い切った。

「お、おい、アレンもしかして、神界の……」

(おい、キール。余計なことを言うんじゃない)

アレンはキールに視線を向け、無言の圧をかけ黙らせた。

キールはアレン軍の予算についても、ある程度把握をしていた。

たしかにそれくらいの余剰資金はあるので金貨数千万枚を動かすことはできるだろう。

しかし、それはアレンの魔石を買わなければという話だった。

魔石を買わずに金貨1億枚を用意など土台できそうにない。

ではどこで用意するのか。

キールは神界の街の市場での出来事を思い出した。

アレンたちはモルモの実が1つ金貨3枚もする買い物を数日前にしている。

ヘルミオスから5大陸同盟の会議への参加の要請を受け、神界の街で高額なモルモの実を食べていたころ、アレンは本件の案を考えていた。

神界との取引で、学園の年数制の変更の金策をする予定だ。

「では、情報は全て出揃い、趣旨も理解できたかと思います。決を採りたいと思います」

アレンは後方の巨大な魔導板の画面をプレゼン用から決を採るために変更する。

「その前にもう1つ、これは余裕があれば、朕の帝国も出資をしても良いのかの?」

まだ話があるとバウキス帝国の皇帝は言う。

(この狸、予算が確実に集まると分かって、旨味を得ようとしてきたな)

ニマニマと金勘定を頭の中でしていることがアレンにも分かる。

「もちろんでございます。既に初期投資及び直近数年の運転資金に全く問題ありませんが、投資いただけるなら、歓迎します」

笑顔のアレンはさっきまで金が無いなんて言っていただろとは決して言わない。

「では、これも賛成と」

「ありがとうございます。皆さんもご採決をお願いします」

バウキス帝国の皇帝が賛成の意思を示すと、5大陸同盟も含めて、各国の代表は全会一致で賛成の意思を示していく。

「ほほ、全会一致は珍しいの。だいたい、こういうのはギアムート帝国の皇帝が反対するのだがの」

「ふん、金を出すなら文句はないさ」

バウキス帝国の皇帝の発言を、ギアムート帝国の皇帝は軽く悪態をついて聞き流す。

(これで、マッシュの学園生活がさらに1年以上長くなったかな。我が弟よ、卒業するまでに魔王なんていない世界にしてやるから、もう少し学園にいてくれ)

アレンには、魔王軍との戦いが何年も過ぎていく中で、大きな心残りがあった。

学園に通うマッシュは4月から2年生で、まもなく魔王史を学ぶはずだ。

もしかしたら、既に貴族の友人から魔王について知っている可能性もある。

魔王との戦いを望むかもしれないマッシュのためにも、学園制度の改正は必要だ。

世界も大事だが、それ以上にアレンにとって家族は大切な存在だ。

アレンは神界で、クレナ村でよく食べたモルモの実をかじりながら、故郷や学園にいるマッシュを思い出していた。

アレンの発案が通り、こうして会議は続いていくのであった。