軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第514話 5大陸同盟会議ローゼンヘイム編①

待合室を出て会議室に向かうことにする。

事前にある程度説明をしていたが、同行するアビゲイルは何か大ごとだなと辺りを見回している。

時間ギリギリまで霊獣グラハンに聖水をかけるなどしていたため、ローゼンヘイムに戻って早々に会議に参加となってしまった。

「こちらです」

役人兼精霊神の神官のエルフがアレンたちを案内してくれる。

魔神レーゼルとの戦いで半壊し再築した神殿はとても広く、5大陸同盟に参加する各国の代表などで少し騒がしくなっていた。

この神殿には100に達する国々の代表やその配下がやってきている。

案内された広間は壁の上部が開いている半個室の形になっており、アウトドアな感じが若干する。

上部の広く開いたところから、外にいる2体の竜がこちらを見ている。

「ハク!!」

外から大きな顔を会議室内に差し込み、鼻息を荒くするハクにクレナが声をかける。

『ギャウ!!』

『……』

ハクの横で竜王マティルドーラが黙ってハクとクレナの様を覗き見ている。

竜王マティルドーラも神官や神兵の竜人を引き連れて、ローゼンヘイムにやってきた。

時間がそんなになかったのでメルスに転移させて移動した。

竜王や竜人が5大陸同盟に参加するのは今回が初めてだ。

ソフィーとフォルマールが広間で案内をしていた。

「アレン様、こちらです」

いつものごとく、アレンたちパーティー用の円卓が用意されている。

ソフィーとフォルマールも同じ席のようだ。

こちらに座って必要な時に発言を求められるのだろう。

ヘルミオスとガララ提督のパーティはリーダーだけ会議に参加する様だ。

全ての発言をリーダーに任せるスタイルのようだ。

「アビゲイル様はあちらの席です」

「こちらか」

ソフィーがアビゲイルだけ、5大陸同盟の盟主の席に案内する。

(アビゲイルは一番の上座っぽいな。ああ、そうか。今回もプロスティア帝国は参加すると)

盟主席に座るプロスティア帝国の女帝ラプソニルが、下半身を水桶に付けた状態で微笑みを送りアレンに挨拶をしてくる。

(獣人も普通に参加すると)

数ヶ月前に行われた前回の会議では、魔王がゼルディアスという名の元恐怖帝だったことが分かり、獣人を中心に怒りを露わにして会議の途中で解散となってしまった。

今回の会議は人族の国で会議するのに反対する獣人国家も多く、復興にもちなんでローゼンヘイムになった。

(だが、それだけではないと。打算もあるだろうし)

アレンたちを中心に行ったこの数ヶ月の事態も、同盟各国が全て参加する結果となったと予想する。

座って、配られたお茶を飲んでいると会議が始まるようだ。

5大陸同盟の盟主の席に座るエルフの女王レノアティールが立ち上がった。

「それでは、これより5大陸同盟会議を開始します。まずは、全ての同盟国がまた顔を合わせることができとても感謝をしております」

議長国の女王が会議の開始を宣言する。

「ほほほ。また一堂に会するとは思ってもみなかったよ」

女王の発言に、横に座る小太りおじさんのバウキス帝国の皇帝ププン3世が、ギアムート帝国の皇帝レガルファラース5世を見てニコニコと笑っている。

「ふん」

レガルファラース5世は鼻息を軽く立て目をつぶっている。

その横でヘルミオスがまあまあと苦笑いをしている。

ヘルミオスとガララ提督は5大陸同盟の盟主の席に座っている。

なお、連合国のあるギャリアット大陸の盟主は今年からダークエルフの里の王であるオルバースが務めている。

ルークは母にはベタ甘えだが、寡黙で厳しい父のオルバースは苦手なようだ。

オルバースのいる待合室にソフィーのように挨拶には行かなかったようだ。

そのオルバースはダークエルフの長老や将軍を引き連れやってきたのだが、首都フォルテニアにやってくるのは生まれて初めてのことだ。

ここでもソフィーが影で動いたようだ。

本来であれば、ダークエルフの里は5大陸同盟に加わって月日が短い。

ギャリアット大陸では、中小の国が連合国を構築しているため、ダークエルフの里が連合国を代表して盟主になるのは随分先の事だった。

ソフィーはまだ王女という立場でありながら、ダークエルフとの関係回復を自らの使命と考えているようだ。

『次の5大陸同盟の会議の際、盟主はダークエルフの里にしてほしい』

連合各国に要請し、今回はダークエルフの王オルバースに盟主の席についてもらった。

全てはオルバースにローゼンヘイムに来てもらうためだ。

そもそもの話だが、各国の代表は国家元首である王とは限らない。

王にも行けない事情があるため、相応の立場なら代理を寄越しても良いとしている。

なお、力を見せるため、5大陸同盟の盟主は盟主自らが参加する。

盟主でなければ、長老など代理の者を送ってくるかもしれない。

実際に、今回の5大陸同盟会議は前回の会議からそこまで日が経っていないと言う理由もあり、各国の代表は国王ではなく王太子や宰相の国もある。

ローゼンヘイムは連合国に対して大きな貸しがある。

邪教徒が溢れ、数百万の犠牲が出、農夫も減り畑も荒らされた状態で、ローゼンヘイムは大量の食糧を提供した。

支援がなければ、連合国で数十万単位の餓死者がでるほどの状況であった。

これはローゼンヘイムの復興の中でも、同じく魔王軍に攻められた連合国に対して行われたことだ。

ソフィーの発言を連合国は無碍にはできなく、強い反対もでなかったため、ダークエルフの里が今回の会議で盟主として参加した。

食糧支援は今なお続いている。

アレンがエルフとダークエルフについて考えていると不穏な空気が顕在化する。

「おい、そこのエルフ! 何を睨んでおるのだ!!」

今回参加を許可されたオルバースの配下の将軍がエルフの視線に反応する。

同じく参加を許可されたエルフの女王を守護する一族であり、最強のエルフと呼ばれるガトルーガが殺さんとばかりに睨んでいた。

「ふん、ダークエルフがこの場にいることになるとはな!!」

何だやったるぞとガトルーガが立ち上がった。

それに呼応するかのようにオルバースの配下の将軍もゆっくりと立ち上がる。

その状況にフォルマールも立ち上がり、ソフィーの一歩前に進む。

「ガトルーガ、いい加減になさい!」

女王自ら窘める。

「も、申し訳ありません……」

ダークエルフの里ファブラーゼの長老たちは難色を示したらしい。

このような形で長い間、エルフの女王が盟主を務める会議に参加するなど、ダークエルフが取り込まれると思ったようだ。

だが、オルバースは長老や将軍たちの意見を一蹴し参加を決める。

アレンのパーティーメンバーの1人となっている里の王子であるルークの将来のためにも会議に参加すべしというオルバースの意見が通った形のようだ。

(まあ、数千年の溝はそう簡単に埋まらないと)

ここには各国の国王など首脳級が参加するのだが、オルバースの頼みを聞いてダークエルフの長老や将軍も数名会議に参加しているらしい。

何かあればやったるぞ感のダークエルフの長老や将軍たちが、エルフたちを睨みつけている。

逆にエルフ側もダークエルフ側が護衛をつけるならこっちも付けるとガトルーガを会議に参加させている。

アレンはソフィーを見る。

「それでも参加させることに意味があるんだな」

「アレン様、もちろんです。王がやってきた史実は変わりませんので」

両種族のいがみ合いはこの会議を通して、少しでも溝は埋まっていけばいいとソフィーは考えているようだ。

ダークエルフの将軍もガトルーガも座ったところで、女王は口を開く。

「では、今回の会議に先立ちまして、新たに会議に参加する竜神の里を治める竜王を紹介させてください」

アレンの思考は他所に、会議はそのまま進行していくようだ。

女王の発言で、全長100メートルはある竜王の鼻先が会議室の中に少しだけ入る。

『発言の機会を感謝する。我は竜王マティルドーラ、竜神の里マグラを治める竜だ。此度は5大陸同盟へ参加するため、久々にローゼンヘイムにやってきた』

竜王は端的に自らやってきた目的を伝え、鼻先を会議室の中から出し、ゆっくりと自らの巨大な竜の瞳を会議室の中に向けた。

(なんだか、何度も恐竜が逃げ出してしまう映画のワンシーンだな)

竜王の行動は随分ホラーだと思う。

体を震わせる各国の代表も何人かいるようだ。

『ギャウ!!』

「ひいぃ!?」

竜王の隣で会議を覗き込んでいたハクが、自らに注目が集まったと勘違いしたようだ。

顔を丸ごと会議室に出してしまった。

会議に出席する国王たちに顔を近づけていく。

ハクは壁に全身でもたれ掛っており、新築の木製の壁が今にも壊れそうになっている。

「め! もう駄目だよ!!」

「クレナ、ハクを頼む」

制止しようとするクレナに浮遊羽を使ってあげる。

外壁の上部が開いたところからクレナはふわりと外に出て興奮したハクを宥める。

(パニック療法ってやつか。これはこれで助かる)

ハクの首が会議室からなくなって、静けさが戻っていく。

お陰で、ダークエルフとエルフの険悪になりかけた雰囲気も吹き飛んでしまった。

「また、後の議題となっておりますが、この度、神界より守人長を務めるアビゲイル様にお越しいただいております」

「こ、このような場に参加させていただき感謝する」

女王はアビゲイルも会議に先立って紹介する。

「アビゲイル様は、神界において治安を守る大事な要職にも就いており、『守人長』という立場もあるのですが、魔王との戦いにも協力すると仰っていただきました」

自らの役目もある中、協力してくれると女王はアビゲイルのついての説明を付け足した。

「おおおお!!」

各国の国王たちが声を上げる。

今回の議題の1つにアレンたちが神界への道を開いたことが書かれてある。

神界に至るなんてことはあるのかと理解できなかった各国の代表も多かった。

しかし、盟主の中で一番の上座に座るアビゲイルの立場を女王が語るため、皆が理解した。

「いや、協力はするが、そのように持ち上げられても困るぞ!!」

アビゲイルは焦って声を荒らげるが、神界の要職に就いている者が来たとあって各国の王たちのざわつきで全く届かない。

否定の声が広がらないよう、アビゲイルの席の拡声の魔導具がオフになっていたのは誰の仕業だろうか。

エルフたちは読心術に長け、政治的な駆け引きが上手いことで知られている。

(各国に与えたいのは希望と)

【盟主たちが座る席の順位】

・守人長アビゲイル(神界からやってきた要職の人物)

・ローゼンヘイムの女王(議長)

・バウキス帝国の皇帝(皇帝の中で年長者)

・ギアムート帝国の皇帝

・プロスティア帝国の女帝(5大陸同盟の盟主ではない)

・アルバハル獣王国の獣王(王国)

・ダークエルフの里の王(連合国の代表国)

・勇者ヘルミオス

・ガララ提督

「流石、キール様! 既に神界とこのような関係を築くとは!!」

女王の発言にエルメア教会のクリンプトン枢機卿が声を上げる。

「おい、俺は何もしてないぞ!!」

枢機卿も教皇見習いのキールを持ち上げることを忘れない。

見習いの立場が無くなる日も近いかもしれない。

「さて、神界については後程議論するとしまして、まずは中央大陸の魔王軍について勇者ヘルミオス様より協力の依頼があります。決を採りますのでよろしくお願いします」

会議室がざわつきながらも、女王は議題通りの話を進めていく。

会議で最も大事なことはこれからの同盟国が方向性を決めるため、賛成反対の決を盟主も含めた全ての国に判断してもらうことだ。

予算や人の命に係わる決断をする際に、決を採ることが多い。

情報提供の場であり、話し合いの場だが、この賛否を決めることは最も大事なことだ。

なお、盟主と各国の代表の席の前に置かれたボタンのような魔導具を押して、青は賛成、赤は反対で意思を示す。

会議室正面の大きな魔導板に青と赤の面積が表示され、会議の結果を示すことができる。

賛成多数で今後の方針は可決される。

なお、5大陸同盟の盟主は拒否権があり、盟主の国の賛成反対の面積は同じだが、数字も表示される。

赤の側に数字が表示された議題は否決される。

「では、僕から話をさせてもらうよ。今月行った魔王軍の拠点掃討作戦は成功し、中央大陸の魔王軍の拠点は全て壊滅したよ」

「そうだな。あんなに早く全ての拠点が破壊できるとは思わなかったぜ」

ヘルミオスが魔王軍の拠点殲滅作戦の話を始め、ガララ提督がそのフォローに回った。

各国の代表である国王たちは、そんなに早く魔王軍を殲滅させることができるのか真剣に話を聞いている。

(だから各国は前回の騒動があったが会議に参加したと。打算も大事だな)

5大陸同盟の盟主に信用ならないギアムート帝国の皇帝がいる。

だが、魔王軍の拠点が殲滅され、中央大陸から魔王軍の軍勢がいなくなったという情報が盟主主導で通達が来た。

ヘルミオスの話を関心を持って聞く各国の代表の顔を見ると、勝ち戦には乗った方が良いと判断する国も多いと分かる。

「これから、各国には防衛のために必要な資材の調達にご協力いただきます。中央大陸を中心に巨大な要塞を築き、魔王軍からの侵攻に備えなければなりません」

その結果、より多くの才能あふれる若者が、勤めを全うし今一度祖国に戻れるようになると言う。

魔王軍は殲滅したが、いつまた軍勢を出して再侵攻をしてくるか分からない。

今必要なのは巨大な要塞を築き、戦いに備えることだとヘルミオスは訴え、各国の協力を求める。

「なるほどの。戦局が変わり、必要なものが変わったということだの。これは賛成だな」

ぽちっとなと、バウキス帝国の皇帝は魔導具のスイッチを押して賛成に票を入れる。

バウキス帝国の皇帝はいつも賛成と反対の決断が早い。

要塞に建築資材を運ぶ魔導具や、要塞に配置する魔導具兵器などでどうやって儲けられるか思案しているようだ。

「その通りです。以前から議題に上がっていた強固な要塞を作る時なのです」

ヘルミオスがさらに語気を強め、判断に迷う各国の代表に問う。

魔王軍が攻めてくる状況の中で十分な規模の要塞を造ることができなかった。

作った先から攻め落とされるからだ。

今回は十分な時間があるので、強力な要塞を築城するので、何卒協力してほしいと真剣な表情で語り掛ける。

その言葉に各国の代表は賛成に決を入れ始めた。

「まあ、素晴らしい全会一致でございますね。では、具体的な予算配分や配置する場所などは専門家の意見も交えながら早急に決めていきましょう」

「ふん、当たり前のことだ」

女王は感動し、ギアムート帝国の皇帝はすぐに皆が賛成しなかったことに不満の態度を示す。

この要塞の築城がローゼンヘイムならもっと早く賛成票が集まったのかもしれない。

巨大な要塞の築城は各国からの兵の命を守るため、メリットは計り知れなく大きい。

(ギアムート帝国と魔王の関係をまだ疑っている国もあるかもしれないと)

なんとなく、まだ疑心暗鬼が晴れたわけではないことをアレンは理解する。

「それでは、次にアレン様からもご提案がございますので。こちらも決を採るため、賛成、反対の意思を示してください」

「ぬ? アレンの意見に評決と。ああ、議題にもそうあるな」

女王の言葉に一瞬意味が分からなかったバウキス帝国の皇帝が、今一度会議の議題の書かれたレジメを確認する。

たしかにアレンの発言する順番だが、決を採ることも書いてある。

これはアレンがソフィーを経由して、会議で議論してほしいと5大陸同盟の会議にねじ込んだものだ。

「はい」

(さて、マッシュのためにもここはお兄ちゃんとして頑張んないとな)

エルフの女王に話を振られ、アレンは返事をして力強く立ち上がった。

各国の代表が「アレンが議題?」と疑問符を投げかけるのであった。