軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第448話 引っ越し

アレンたちのプロスティア帝国での戦いが終わってから1ヶ月ほどが過ぎた。

年末の忙しい時期に、ヘビーユーザー島の市長宅では引っ越しが行われていた。

ペロムスがフィオナへの告白に成功し、フィオナがヘビーユーザー島でペロムスと一緒に暮らすことにした。

市長のペロムスが綺麗な嫁さんを連れてきたと、島にある4つの町の町長も、島の住人も総出で引っ越しの手伝いをしている。

アレン以外だと、アレンのパーティーではセシルがこの場にいる。

本日のパーティー廃ゲーマーは自由行動にした。

クレナは白竜の幼体であるハクの世話をしに島の中央の山に行ってしまった。

セシルは副市長としてこの場にいると言っているが、きっと幼馴染のフィオナの動向に目を光らせるためだろう。

婚姻は既に済んでいるのだが、結婚式はまだあげていない。

ペロムスが興し、ラターシュ王国最大の会社となった廃課金商会は、本店を置くグランヴェル領に税を納め領内の民を多く雇っている。

グランヴェル伯爵からは「盛大に行う故に結婚式は少し待ってほしい」とのことだ。

「結構な荷物だな。これは、お手伝いさんの荷物が建物に入らないぞ」

引っ越しの手伝いをしているアレンが一言感想を漏らす。

流石はラターシュ王国でも有数の富豪の娘ということもあり、収納の魔導具も使い、移動させたのだが家具の一部が入らない。

フィオナの引っ越しの折に、ささやかな問題が起きた。

「そうだね。う~んどうしよっか。フィオナ」

ペロムスはどうしたらよいのかフィオナの顔を窺ってしまう。

「何よ、市長なのに、家が小さいんじゃない!」

優柔不断な顔をしてしまったために、フィオナは感情的になってしまう。

(完全に尻に敷かれているな。これも1つの幸せの形か)

元々、ヘビーユーザー島は八丈島ほどの大きさに4つの町に15000人ほどの住人が移住した。

島がそこまで広くないため、市長の家であっても、居住スペースはそこまで大きくない。

フィオナの声が思いのほか大きかったため、市長のペロムスを庇おうと町長たちが慌てて集まってくる。

「やはり、会議室や相談部屋は別に作るというのはどうかの? せっかくの新婚生活、儂らが頻繁に家に来るのはどうかと思うの」

エールの町の町長が解決案を提示する。

「そうですね。だけど、これまで結構会議も多かったし」

町長の提案にペロムスは難しい顔をする。

ペロムスはかなり勤勉で、市長としての仕事はきっちりとしてきた。

町長が住民から集めた要望や相談を受けるために用意した、自宅の会議室や相談部屋を取り除きたくないようだ。

アレンやアレン軍と町民との調整役、町民の働き口の確保、住民が学校や医療施設を立ててほしいなどの要望など、あらゆる相談を市長としてペロムスは受けている。

これらをアレン無しで話を進めてくれるし、アレンにも月に数枚の資料にまとめて報告してくれる。

「だったら、ペロムス。隣の家とくっつけるのはどうだ。家を3倍にするぞ。建物を高くしてもいいし」

(功績を残した商人は家が城のようにデカくなるものだ)

ヘビーユーザー島の住人の活動を支えているのはペロムスの働きが大きい。

プロスティア帝国でも活躍したペロムスの仕事の支障になることは全て取り除くつもりだ。

「え? アレン、家を作り直すの?」

「え? アレン様、そこまでは」

ペロムスとフィオナの声が被る。

フィオナが愚痴をこぼし過ぎたと反省する。

わがままが過ぎて、迷惑をかけてしまったことに気付いたようだ。

(まあ、フィオナがいなければ、ペロムスとの関係も切れていたし)

アレンが従僕をしていた時、学園に通っていた時も、ペロムスはフィオナのことでアレンに相談をしていた。

その結果、プロスティア帝国のペロムスの活躍を考えると、こんなものはワガママでも何でもない。

たしかに、ペロムスがさらなる活動をするのにお手伝いもいた方がいいだろう。

「せっかく引っ越してくれたんだ。家は島の住人に任せて、この島を案内するぞ」

「え? アレン。いいの?」

「もちろんだ」

せっかくパーティーを1日休日にしたのに、アレンがこのまま引っ越しだけで一日がつぶれるのはもったいないと思った。

土の精霊の力を借ることができるエルフたちに任せたら1日もかけずに家を改築できる。

まだ島の全容を見ていないフィオナに、鳥Bの召喚獣を召喚して案内をしてあげることにする。

ペロムスとフィオナ、アレンとセシルで2人乗りだ。

フィオナがおっかなびっくり召喚獣に乗るので、ペロムスがフィオナに自然と手が出る。

「なんかいいわね。アレンも見習いなさいよ。一度も手を差し伸べたことないじゃない」

「ん? 必要なのか」

「必要よ!!」

召喚獣に乗るだけでも手を取り合っていることに、セシルは何かうらやましい顔をして本音が溢れ出る。

「そうだな。次からな」

アレンが適当な返事をして移動コースをどうすべきか考える。

「まあ! ここから見ると本当に空に浮いた島ですわね!!」

島の上空に上がると、幻想的な景色にフィオナが驚いている。

鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」で転移してきた為、本当に浮いた島であることが信じられなかったようだ。

「そうだ。浮いた島なんだ。ここがエールの町で……」

町民たちへのフィオナの顔見せも挨拶も十分できただろう。

後ろからペロムスの背中に抱き着くフィオナに対して、ペロムスが指を差しながら、島のあちこちの町並みや施設を案内してあげている。

市長ということもあって、ペロムスはアレンのパーティーの誰よりも島に詳しい。

(ふむ、何か締め付けが厳しいな。なんか耐久力が発動している気がするぞ)

フィオナのまねをして、セシルが後ろからアレンの腰を締め上げてくる。

耐久力の発動に違和感があるなと思っているとマクリスが寄ってくる。

『これはアレン様なのら~』

「やあ、マクリス。元気にしているか?」

『もちろんなのら~』

アレンたちと、ペロムスたちの乗る鳥Bの召喚獣にぶつからない距離まで寄ると、またゆっくりと上空の遊泳に戻っていった。

召喚獣になったマクリスの分析もほぼほぼついている。

【マクリスの特徴、覚醒スキル「聖珠生成」の特徴】

・マクリスは1体しか召喚できない

・覚醒スキル「聖珠生成」は月に3個のペースで聖珠を生成できる

・覚醒スキル「聖珠生成」は、クールタイムを短くしたり、なくしたりできない

1体しか生成や召喚できないというのはメルスと同じ仕様のようだ。

特殊な方法で召喚獣になると魂を分割できないのか、聖珠ポイントを15ポイント使っても2体目のマクリスは生成できなかった。

聖珠生成の覚醒スキルは固定で10日に1個の聖珠を生成する。

クールタイムを下げる装備品や、精霊王の祝福のようにクールタイムをなくす効果の特技やスキルでも、生成するスパンを短くすることはできない。

10日に1個、月に3個の聖珠を生成の完全固定だ。

なお、10日で生成できる聖珠を11日目に生成すると、次の聖珠は9日目で生成できた。

召喚獣であるマクリスの中でストックすることも可能ということだ。

きっと涙腺の中に涙が溜まっていくのだろう。

アレンの分析の思考が進んでいく中、島の風景が変わり、魚人たちの住む町の上空にやってきた。

「この辺りが、魚人たちの住むクーレの町だよ」

「まあ、私たちのお祝いをしてくれた魚人たちね」

エルフも獣人も祝ってくれたのだが、ロザリナを筆頭にプロスティア帝国宮廷音楽隊が圧倒的な印象をフィオナに与えた。

「ちょっと寄ってみようか。フィオナの腕輪ができたかもしれないし」

「まあ、そうですわね!」

エールの町から南東にあるクーレの町にやってきた。

ここには3000人ほどの魚人が暮らしている。

その中に、1つ最近作ったばかりの大きな工房が見える。

中に入ると、プロスティア帝国でも取引をしてくれたカサゴ面の男と目が合った。

「やあ、アレン様、そしてペロムス市長も。フィオナ様の腕輪出来ていますよ」

目が合うなりカサゴ面の男は自らの工房にやってきた理由が分かったようだ。

「え? 本当ですか。カサゴマさん!!」

「はい、奥さんに是非つけてあげてください」

マクリスの腕輪がすでに完成していると言うカサゴマの言葉に、ペロムスの顔が一気に明るくなる。

青く輝く宝石のついた腕輪をカサゴマから渡されると、フィオナの元に向かう。

「はい。フィオナ。腕を出して。つけてあげるから」

「はい、って、綺麗ですわね」

腕を突き出したフィオナにペロムスができたばかりのマクリスの腕輪をつけてあげる。

「綺麗だ」

「ペロムスが頑張って涙を取りに行ってくれたから」

「いや、綺麗なのはフィオナだよ」

「もう!」

(ふむ。何を見せられているんだ。なぜか、セシルに睨まれている件について)

イチャイチャな雰囲気が工房に広がっていく中、何故か、セシルからは睨まれている。

ブツブツとつぶやいているセシルの言葉を解釈すると、「クレビュール王国での腕輪の渡し方、ペロムスを見習いなさいよ」ということらしい。

2人の世界を作るペロムスとフィオナを置いて、アレンがカサゴマの元に近づく。

「工房を作る上で、必要なものがあったら言ってください」

必要なものにはお金はいくらでも出すと言う。

「それはありがたい。工具というよりも人手をもう少し欲しいですの」

アレンはカサゴマと工房の活用と人手について話を進める。

出来た聖珠は涙が結晶した状態で装備ができない。

涙の状態から腕輪への加工には特殊な才能が必要であった。

アレンが学園のダンジョンに行くころから手に入れ始めた魔法のアイテムや装飾品は、魔法具とも呼んでいるのだが、これらの扱いには才能が必要だ。

単純に手に入れるだけならダンジョンに行けばいいのだが、加工したり、性能を向上させたりするのに必要な才能がある。

魔法具を作る才能を魔法技師という。

魔導具を作ったり、加工するのに必要な才能が魔導技師というので、これの魔法具バージョンだ。

魚人には槍使い、歌姫などのバフ使い、そして魔法技師の才能を持つものが多い。

クレビュール王国にも、ヘビーユーザー島のクーレの町にもマクリスの聖珠を腕輪に加工する者がいなかった。

そこで、プロスティア帝国から加工できる職人を呼ぶことにした。

魔法師以上の才能が有れば、聖獣の涙を腕輪に加工することができるらしい。

帝都パトランタに何十人もいない貴重な才能だ。

女帝ラプソニルに、最も腕の良い者をアレン軍に協力させてほしいとお願いをした。

ラプソニルは二つ返事で協力してくれたのだが、頼んだ魔法技師職人曰く、店もあるから行くのは厳しいと渋っていると言う。

誰が渋っているのか確認すると、現在プロスティア帝国に1人しかいない魔法匠の才能がある「カサゴマ」というこの時期には店の店主もしている者だと言う。

商売っけの強い職人で、唯一の才能があるゆえに店も繁盛させたいと言う。

なお、魔導具を扱う魔導技師、魔法具を扱う魔法技師の才能一覧は以下のとおり。

【魔導技師、魔法技師の星の数と才能名一覧】

・魔技職人★、魔技工★★、魔技師★★★、魔技匠★★★★

・魔法職人★、魔法工★★、魔法師★★★、魔法匠★★★★

交渉の結果、カサゴマ本人が食い気味に「明日から仕事に行かせていただきます」と即決してくれた。