軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第434話 水晶花の戦い④

聖魚マクリスも戦いに参戦する中、新たにアレンたちの元に、全身は鱗で覆われ、頭には角が生えた馬のような風貌。

麒麟を思わせるその姿の調停神ファルネメスがやってきた。

そして、ゆっくりクレナの元に歩みを進める。

『乗りなさい。恐らく、今のあなた方では敵わないでしょう』

「え? ファルちゃん。うん、ありがとう!」

調停神を愛称で呼ぶクレナは、調停神に乗り、ビルディガに向け、「ふんすっ」と大剣を握りしめた。

『あん? 魔神石を抜き取られて、自らの意思に目覚めたってか?』

(魔神石だと。それがあると魔神になるのか?)

急に花柱の上に現れた来訪者にバスクも両手の武器を肩に担いて警戒をしている。

バスクが言う魔神石というのは、調停神の首に手を突っ込んで抜き取った漆黒の丸い何かなのかとアレンは考える。

邪神教と戦うときにバスクが上位魔神になる行動に疑問があった。

『貴方が力を欲するお陰で、私は解放されました。感謝しています』

バスクにも嫌味とも思える丁寧な口調で答える。

(調停神の首元からバスクが魔神石を抜き取ったお陰で自我を取り戻したってことか)

魔王軍側についていた調停神はクレナに協力の姿勢を見せた。

これで聖魚マクリスと共に、アレンたち側の味方が増えたことを意味する。

『……調停神』

キュベルは一言、呟いた。

『あなたを止めに来ました』

調停神とキュベルとの間に、ただならぬ緊張感が漂う。

『力を失った神に何ができるというのだ?』

『ビルディガさん。あなたは自らの行動の選択をしました。私もそうした。それだけのことです。全てを懸けてもあなた方を止めて見せます』

ビルディガと調停神の間にも何かがあるようだ。

『ふん』

ビルディガは調停神の決断に何も感じていないようだが、警戒は怠らない。

『クレナさん、行きますよ!』

『うん!』

クレナを騎乗させたまま、ビルディガとの戦いに臨む。

調停神は水中とは思えないほどの推進力で、花柱の上を颯爽と走る。

『力を失いつつある神が加勢したところで何になる。無駄なことだ!』

「ふぐ!?」

ビルディガのあまりにも重たい前足で全てを薙ぎ払うかのような一閃に、クレナは乗っている調停神ごと吹き飛ばされてしまう。

(調停神に乗っていたときのバスクほどの威力はないということか)

邪神教の教祖たちとの戦いの折に、調停神に乗ったバスクはメルスと互角以上の戦いをしていた。

魔神であったバスクにそれだけの力があってこそだ。

調停神に乗り勢いが増しても、今のクレナにビルディガを打ち負かすほどの力はないようだ。

『無駄なことだ』

諦めずに大剣を握りしめ、クレナは再度挑戦しようとする。

ビルディガに対してあまり力の差が埋まっていないようだ。

『全てを懸けると言ったはずです。私は全てを懸けにここにきたのです! 門を開きましょう!!』

現状を打破すると言わんばかりに、調停神は言い切った。

その瞬間、クレナの視界が変わった。

***

「え? 島の中? 転移しちゃったの?」

最初何が起きたのか分からなかった。

クレナが見たのは、皆で頑張って作ったヘビーユーザー島の中であった。

皆が戦っている中、こんなところに来てしまったとクレナが困惑して、辺りを見回す。

『ふふ。慌てなくてもいいのです。ここは神域。今見えている光景はあなたでもわかる形で、私の神殿を見せるため。よろしいですか?』

落ち着くようクレナに言う。

クレナと調停神が情報を共有したため、このような景色になったようだ。

「え? 神殿って何? あの山にある神殿のこと?」

しかし、クレナには話が難しすぎたようで、意味が一切分からなかった。

振り返って、島の中央に山を見つめる。

そこには火の神フレイヤの神殿がある。

『……まあ、いいでしょう。ただ、そこではありません。こちらです。この戸を開けてほしい』

理解できなかったが、調停神はお構いなく自らがやると決断したことを進めるようだ。

「小屋だ。ファルちゃん、これって? 駄目だよ。私戻らないとだよ」

調停神が首を向けたのは、調停神を飼っていた馬小屋だ。

馬小屋に入ってほしいと言うが、さすがのクレナでも、今はこんなことをしている場合じゃないと思う。

仲間たちが必死になって戦う場所に帰るとクレナは言う。

『……そうですね、ドゴラにフレイヤが与えたように力を与えると言うことです』

このままじゃ話が進まないので、クレナにも分かるように努めることにする。

クレナの説得に調停神が乗り出した。

「おお、力だ! 私も使徒になるってこと!!」

クレナは調停神の言葉に歓喜した。

どこか、ドゴラ、セシル、ソフィーやメルルが活躍する中、取り残された感はあったようだ。

力をくれると言うなら使徒にでもなんでもなる覚悟がクレナにはあった。

『いえ、使徒になる必要はありません。今の私の神力ではあなたの存在の全てを書き換えることはできないのです』

根が真面目な調停神は、説明が長く分かりにくい。

「使徒にならなくても強くなれるってこと?」

半分以上理解できなかったが、条件付きで強くなることだけ分かった。

『はい。私に乗って戦う限りの限定した力もありますので、その点もご注意なさい。新たな力も使いこの場を打破しましょう』

「おおお、新しいスキルが手に入る!!」

転職して剣帝になって随分時が過ぎた。

久々に新たなスキルが手に入ると聞いてクレナはワクワクする。

『しかし、1つだけ分かっていただかないといけないことがあります。私たち神々が開放者にするのは自らの神殿の門への立ち入りを許したものだけなのです』

「えっと?」

首をコテッとして、ほぼ意味が分からないという顔をする。

長い戦いを経て、色々経験をしてきたが、クレナの知性についての成長は見られない。

『我ら神が開放者にするのは1人だけ。1柱に1人。もし別の神の開放者になるのであれば、私の神殿を門から出ていかないといけない。それだけを覚えておいてください』

クレナの様子から全く理解できていないことが分かった。

調停神はさらに砕いて説明を始める。

「ふ~ん。神様の神殿にいるとずっと強くなれる? じゃあ、アレンもどこかの神殿に入った?」

クレナがぎりぎりの理解で、アレンに例える。

アレンは自らの成長限界がないことを学園にいたころから仲間たちに伝えてきた。

調停神の話から、アレンもどこかの神殿に足を踏み入れたのかとクレナは理解した。

『いえ、アレンさんは「超越者」。限界を知らぬ者。開放者とはまた別の理の中にいます。私の力をもってしても、いえ、他の上位神をもってしても、人を超越者にすることはできません』

上位神の力でも人を「超越者」にすることはできないと言う。

「そっか。えっと、うんと~、神様に認められて神殿の中に入ったら強くなる! ってことだね。それでアレンはちょうえつしゃ!」

クレナは頭が悪いながらも、今聞いた話が仲間たちにとって大切なものであることを理解していた。

必死に調停神の話をかみ砕き、自分で理解しようとする。

『クレナ、あなたはとても純粋でいい子です。もしも、仲間を思うなら、竜神の末裔たちが守る「審判の門」を目指しなさい。きっと仲間たちの力となるでしょう』

人間世界から神界へ通じる門があると調停神は言った。

「おお! りゅうじんたちがいる『しんぱんのもん』へ行けばいいんだ!!」

それだけ覚えたら、あとはアレンに丸投げしようと考える。

『末裔です。では、私の神殿へ』

クレナの記憶に若干の微修正を加えて、馬小屋に入ることを改めて促した。

「うん! 入るね!!」

クレナは外観が完全に馬小屋の中に、一歩、足を踏み入れた。

作り立ての馬小屋は下から捲れていくようにクレナの景色は変わっていく。

そこは随分殺風景な石畳の場所であった。

クレナの感想は馬小屋とそこまで変わらないなということだった。

『ここが私の神域。私の神殿。もう私に力があまり残されておりません。このような場所ですが、ようこそ、クレナ。中央に立ってください』

クレナの後ろから、調停神も神殿の中に入っていく。

クレナの感想も気にすることなく、調停神は優しい女性の声でクレナに語り掛ける。

「うん」

馬小屋から結構な広さの神殿に変わり、地面にはよくわからない神聖な模様が広がっている。

調停神に誘導されるかのように、中央に立つように言われる。

『ああ、キュプラスを止めないと。このような方法を望むお方ではないのです。お陰で神界は大きく動くでしょう』

今回の騒動が神界を大きく巻き込むと調停神は言う。

必死に何か強い思いを呟いている。

「え?」

調停神の言葉は良く聞こえなかった。

耳を傾けようとしたその時、クレナの中に圧倒的な力が目覚めたような気がした。

何か力強いものが漲ってくることに、調停神に礼を言おうとすると、見える光景がまた変わった。

***

『クレナさん、開放者になりました。自らの力を信じるのです!!』

「うん!!」

気付いたら花柱の上にいて、クレナは調停神に騎乗していた。

そして、自らの力の変化に気付いた。

自らの剣に込められる力が圧倒的に違う。

限界の先に達したことに気付いた。

(うは!! クレナがエクストラモードになった)

クレナの変化はアレンも気付いた。

クレナの体を覆う、限界突破の陽炎のようなものが無くなったからだ。

慌てて何が起きたのかと魔導書を見ると、ドゴラと同じ変化が見られる。

これはエクストラモードになったことを意味する。

【名 前】 クレナ

【年 齢】 15

【職 業】 剣帝

【加 護】 調停神(中)

【レベル】 60

【体 力】 4150+13000

【魔 力】 1832+8000

【攻撃力】 4150+13000

【耐久力】 3968+8000

【素早さ】 3510+13000

【知 力】 2250+8000

【幸 運】 2688+8000

【スキル】 剣帝〈1〉、真斬撃〈1〉、真鳳凰破〈1〉、真快癒剣〈1〉、真覇王剣〈1〉、限界突破〈1〉、超突撃(限)〈1〉、剣術〈6〉

【経験値】 0/6億

・スキルレベル

【剣 帝】 1

【真斬撃】 1

【真鳳凰破】 1

【真快癒剣】 1

【真覇王剣】 1

【限界突破】 1

【超突撃(限)】 1

・スキル経験値

【真斬撃】 0/100

【真鳳凰破】 0/100

【真快癒剣】 0/100

【真覇王剣】 0/100

【限界突破】 0/10000

【超突撃(限)】 0/10000

【クレナの主なアクセサリ】

・聖珠①:クールタイム半減、攻撃スキル威力2割増、体力5000、耐久力5000

・指輪①:攻撃力5000

・指輪②:攻撃力5000

・首飾り:攻撃力3000

・耳飾り①:物理攻撃ダメージ7パーセント

・耳飾り②:物理攻撃ダメージ10パーセント、体力2000、攻撃力2000、

【クレナの主な武器・防具】

・オリハルコンの大剣:攻撃力12000

・アダマンタイトの鎧:耐久力6000

・クレナの装飾品、補助等込みのステータス(+武器、防具)

【体 力】 43115

【魔 力】 16682

【攻撃力】 45975+(12000)

【耐久力】 27412+(6000)

【素早さ】 25363

【知 力】 14658

【幸 運】 13894

クレナのステータスが、この一瞬の間に一気に上昇した。

「んりゃああああ!!」

キン!

真斬撃のスキルを発動し、全力で振り下ろしたクレナの大剣はメタリックな光沢のある鎌状の前足に止められる。

『そうか調停神が開放者にしたのか。だが、開放者になろうと同じ事!』

ビルディガはエクストラモードになったクレナの一太刀で何が起こったのか理解した。

「んぐ!!」

大剣を受けたその前足を振り払うかのように調停神ごと振り払う。

(あかん。物理攻撃がほとんど通じないからな。スキルレベルも1に戻ってしまったし。エクストラモードのステータス上昇だけじゃまだ足りないのか)

『クレナさんエナジーダッシュです! 私たちの刃はビルディガさんに届きます!!』

吹き飛ばされたところで、体をしならせ着地した調停神はクレナにエナジーダッシュを使うように言う。

「ファルちゃん、分かった。エナジーダッシュ!!」

初めて使う「超突撃」というスキルであった。

まるでクレナが調停神と一体になったように、一塊になってビルディガに襲い掛かる。

『ぬ!? ぐは!!』

クレナと調停神が一つの強力な塊となって襲い掛かったため、ビルディガが悲鳴を上げて吹き飛ばされる。

『ビルディガ。大丈夫かい?』

『もちろんだ。んぐ、我の体が……』

キュベルはビルディガに問題はないかと言う。

かなりの距離を吹き飛ばされたビルディガは、クレナたちに攻撃を受けた腹部を前足で触れる。

ビルディガの光沢のあるメタリックな外骨格がかなり破損していることが分かる。

ボロボロと破壊され、外骨格の下から露出した部分から紫の血が流れている。

キュベルはビルディガの状況と、聖魚マクリスが定期的に「アイスジャベリン」をバスクに放つ戦況を見つめる。

『計画は必ず達成させるんだ。バスク、ビルディガよ。力を開放するのだよ。このために僕は長い時を生きていたのだ』

全ての手札を出しても、戦いに勝利しろとバスク、ビルディガに告げる。

既に水晶の種の放出が止まった頭上を見つめながら。悠久の時を生きてきたとキュベルは言った。

『あ? そうだな。遊びは終わりってか? うおおおおおおおおおおお!!』

バスクの体が掛け声と共に膨張し変貌していく。

『やむを得ぬか』

ビルディガもキュベルの言葉と共に凶悪になっていく。

(あれだ。戦況が良くなろうとしているところだったのに)

せっかくなんとかなりそうだったと思った矢先に、敵が本気を出してきた。

「ぐは!?」

「はう!?」

ドゴラとクレナが一緒になって悲鳴を上げる。

バスクとビルディガからの圧倒的な力に耐えきれなくなってしまった。

最初の苦戦した状態に戻ってきたように思える。

『うんうん、いい叫び声だ。これで問題ないと。ラモンハモン、そろそろ贄と聖獣石が必要だ。シノロムは何をしているんだい? すぐに迎えに行ってきて』

計画が遅れているとキュベルはラモンハモンに伝える。

『ああ』

『分かった』

(回復役がいなくなるのか。でも、この状況はそれだけで解決するのか?)

回復役のラモンハモンに魔法陣が現れ、転移してどこかに行ってしまった。

クレナが力強くなって戻ってきた。

これからというときにバスクとビルディガが一気に強くなっていく。

『バスク君もそろそろだよ』

変貌した2体の上位魔神に一気に押され始め、守りを固めたアレンたちの様子を見て、キュベルはバスクに指示を出す。

『ああ、分かったよ。さっきから、ちょろちょろとうっせんだよ!!』

上空100メートル以上の高さから長距離の魔法攻撃をするマクリスに対して、魔剣オヌガの漆黒の輝きが増す。

バスクは強力な必殺技を繰り出したようだ。

『ぬは!? なんだな!!』

狂暴になったバスクは、ドゴラやアレンを相手にすることなく、一気に水中を跳躍する。

漆黒の輝きと共に繰り出された魔剣オヌバによる攻撃は聖魚マクリスの頭を粉砕した。

頭の上部を大いに損傷した白いイルカの姿をした聖魚マクリスはその一撃を受け、大量の血を水中に漂わせながら、光る泡となって消えていこうとする。

『よしよし。マクリスも殺したね。どれだけ頑張っても全ては無駄になる。この世は絶望で満ちているんだ』

バスクと魔剣オヌバの圧倒的な攻撃によってマクリスがやられてしまった。

調停神も加わったアレンたちの戦いは厳しい状況が続いていくのであった。