軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第381話 町の完成

ペロムスがフィオナから結婚の条件である聖魚マクリスの涙を手に入れる話を受けてから数日が経った。

アレンたち廃ゲーマーのパーティー全員は、ヘビーユーザー島の東に集まっている。

今日はこれから、4つ目の町の移住を行う日だ。

「シア、転職後はどうだ?」

移住開始の作業まで少し時間があるので、普段別行動のシアに話しかける。

「ああ、問題ない。攻略を優先しているが順調だ」

久々に会ったシアに転職後の状況を確認する。

シアは5大陸同盟の会議の翌日に転職ダンジョンで無事転職し、拳聖から拳王になった。

そんなシアは拳を握りしめ、順調をアピールする。

アレンはそれを聞いて、獣王とのけじめも含めて随分吹っ切れてくれたのかと思う。

まだS級ダンジョンに行くことのできない、シア、ルーク、ペロムスはA級ダンジョンを既に2つ攻略を終え、3つ目に達している。

攻略が早いのはアレンが召喚獣を派遣し、攻略の手助けをしているからだ。

シアとルークは一緒に攻略している。

ペロムスは、エルフたちやレイラーナ姫、トマスと学園で攻略中だ。

シア、ルーク、ペロムスの3人にはレベルよりスキルレベルのカンストを目指すように伝えている。

レベルなどアイアンゴーレムを狩れるようになれば、1体目でカンストする。

「獣王にする話は進んでいるのか?」

「む? 既に話が始まっているようだがな。余の臣下を信じるほかないな」

アルバハル獣王国で、次期獣王を誰にするのかという話をシアに確認する。

「いや、試練も越えたし、獣王とはけじめを示しただろう?」

遠慮せずに獣王の玉座を奪うように言う。

「それも含めて、獣王陛下と大臣たちとの話が始まったみたいであるな」

(さて、2人試練を越えたことだし、テミさんの占いは変わったかな)

次期獣王を誰にするのか、獣王が5大陸同盟の会議から戻ってから話し合いが始まった。

ゼウ獣王子がS級ダンジョンの攻略して間もなく起きたエルマール教国の救難信号と魔王軍の侵攻。

そして、その後、魔王軍が後方にいることが分かった邪神教のグシャラを、シアが討伐する。

短期間に色々なことが起こりすぎて、3人いるどの子を獣王にすべきか、話し合いはこれからだと言う。

以前、占星術師テミはゼウ獣王子に「獣王になる」と占ったそうだ。

シアに対しては「連合国のある大陸で試練を与えよ」だったとか。

今占えばだれが獣王になるのかとアレンは考える。

付き合いがそれほど長くないシアだが、何となくアレンの行動原理は理解し始めた。

シアが獣王になることが、最もパーティーの強化に繋がる。

アレンの行動原理の1つにパーティーの強化がある。

アレンは召喚獣が絶対ではなく、パーティーを組んでいた方が強いとずっと考えてきた。

召喚士とは召喚獣を扱える一職に過ぎず、他の職業に比べて選択肢が大きい。

召喚士は有能な職業であると思うが、完ぺきとも万能とも言えない。

ドゴラを強化するために、島に1万5000人からなる4つの町を作る。

そして、パーティー強化のためにシアを獣王にする。

5大陸同盟に出席した成果はいくつもあるが、最も大きいことは獣王の可能性に触れることができたことだろう。

「貴族や大臣を買収する必要があるなら、いくらでも出すからな」

(玉座は金貨を積んで奪うもの。政治は金なり)

上2人の兄とは年がかなり離れ、1人は獣王太子だ。

きっと臣下も勝馬に乗りたいだろうから、2人の兄に比べてシアを推す臣下も少ないと考える。

臣下を買収するために金ならいくらでも出す。

だから、ペロムス廃課金商会の力を見くびらない方がいいとアレンは言う。

「そ、そうだね」

アレンの横にいるペロムスがとりあえず同意する。

フィオナのために頑張って大きくした商会が、こんなことに使われようとしているとは思ってもみなかった。

「……余が自らの考えを甘いと考えることになろうとはな」

戦姫と呼ばれ、あらゆる手段を使ってでも獣王となり、獣人による初めての帝国を築こうとしてきた。

しかし、アレンから当たり前のように臣下の買収を提案され、自らの覚悟が足りなかったのかと思う。

そんなシアとはアルバハル獣王国とS級ダンジョンの冒険者ギルドに設置してある通信の魔導具で連絡を取っている。

完全に冒険者ギルドを私物化しているが、アレン軍の活動の範囲だとアレンは思う。

「そ、それで、クレビュールは何て言っているの?」

獣王の話が一段落するのを待って、ペロムスがシアに話しかける。

シアは野性味溢れる容姿のため、これまではビビってペロムスはあまり話しかけることはなかったのだが、今はそうは言ってられない。

「いや、まだ回答は来ていないが、難しい感じがしたな。そもそも受け入れておらぬし」

シアには獣王国ともう1つ、クレビュール王国にも連絡するように伝えてある。

S級ダンジョン支部の冒険者ギルドで、シアはクレビュール王国からプロスティア帝国に入れないか交渉を始める。

アレン軍とは関わりのない用途で通信の魔導具を拝借しているが、バレなければ問題ないと思う。

プロスティア帝国に入れてくれとクレビュール王国に交渉するのは、ペロムスのために、マクリスの聖珠を手に入れるためだ。

(まあ、ちょうどよかった。どっちみち聖珠は皆の分いるしな)

圧倒的な効果のある聖珠は、アレンのパーティーに2つしかない。

マクリスの聖珠は後衛用のようだが、それでも10は欲しい。

「強気の交渉をしてくれ」

(開国は砲門をチラつかせ、ビビらせて行うもの)

アレンがクレビュール王国にガンガン交渉するように言う。

「クレビュールはどうもプロスティア帝国に気を使っているようであるな」

流石にあまりに乱暴な方法を取ると、今後クレビュールとはやりづらくなるとシアは言う。

そして、クレビュール王国はプロスティア帝国の属国だ。

海底に存在するプロスティア帝国の支配できている唯一の陸地とも言える。

海底にあるプロスティア帝国に行くためには、入国証がいることが分かった。

「じゃあ、俺たちの分の入国証の発行は厳しいと?」

「そうらしいな。まあ、これからの交渉次第だが、もう少し時間が欲しいぞ」

海底に住むプロスティア帝国に入るために必要な入国証がある。

それも2種類あるらしい。

クレビュールが発行する入国証は魚人のみしか使えない。

しかし、プロスティア帝国が発行する入国証は全ての種族が使えるという。

何でもプロスティア帝国の入国証は水の神アクアの加護があり、身に着けると魚人でなく他種族でも水中で呼吸ができるとか。

そんな特別な入国証はクレビュールには渡されておらず、プロスティア帝国のみが発行しているという。

邪神教グシャラの騒動の際、クレビュール王国はプロスティア帝国から睨まれている。

そんな状況で魚人ではなく人族や獣人、エルフをプロスティア帝国に入国させろとは中々クレビュールとしても言えないようだ。

シアはもう少し時間が欲しいという。

「あ、あのそろそろ始めてもよろしいでしょうか? ララッパ団長が準備は調ったとのことです」

アレンたちの会話の隙間でドワーフたちが話しかけてくる。

少し前に移住のための準備は調っていたようだ。

「ん? ああ、すみません。待たせてしまったようで。始めてください」

待っていたつもりが、話が長くなり待たせてしまっていたようだ。

「アレン総帥の指示がでました。じゃあ、そろそろ放水式を始めます」

(仰々しい呼び名だな)

アレンは対外的には仕方ないが、アレン軍内でもこの呼び名になるのかと思う。

「アレン総帥……」

そして、ソフィーがぶつぶつとアレン総帥という言葉を噛み締める。

アレンの総帥という肩書は5大陸の同盟会議で決まった。

アレンは、アレン軍の「代表」という肩書で問題なかったのだが、軍属の多いアレン軍としては肩書や格に重きを置く。

実は、何かそれらしい肩書が必要なのではという話がアレン軍で内々に行われていた。

そして、ソフィーを通してローゼンヘイムの女王に肩書をつけさせるという作戦が敢行されたという噂がある。

『「総帥」って素晴らしいですわ』と言って話を濁すソフィーを見て、何が真実なのだろうと思う。

しかし、5大陸同盟とこれから交渉していく上で、アレンの肩書が会議の中で総帥と決まったことはとても大きい。

これで大手を振って、どこに行ってもアレン軍の総帥と名乗れるようになった。

島の町民も軍も皆、アレンを「アレン総帥」や「総帥様」と呼ぶようになった。

魚人のためのクーレの町は、半径1キロメートルに渡り、地面を10メートル以上掘り起こした。

そして東南アジアやアマゾンで見たことある様な、1階部分が長い柱となった高床式の建物が広がる。

「お願いしますのじゃ」

クーレの町の町長に就任した魚人の老人も始めてほしいと言う。

「じゃあ、ため池生成の魔導具を起動してください」

アレンの言葉が魔導具起動の合図となる。

アレンの合図を待って、ドワーフたちが魔導具を動かし始める。

「「「はい」」」

1キロメートルに渡る窪みの端に置かれた魔導具を、アレン軍に加入した魔導具使いのドワーフたちが作業を行う。

「おおお! 水じゃ。水が出てきたのじゃ!!」

町長が感激する中、すごい勢いで水が湧き出てくる。

これはアイアンゴーレムの銀箱から出てきた魔導具で、水生成の魔導具(大)だ。

今までパーティーメンバーに魔導具に精通したものがいなかったため、明らかに魔導具の体積以上の水が何故出てくるのか分からない。

すごい勢いで水が四角い魔導具の1面に空いた穴から溢れて出てくる。

「このまま水位を上げていきなさい。明日までに水面を安定させるのよ」

魔導具を扱うドワーフの中でひときわ角が立っている女性のドワーフがいる。

周りにいるドワーフたちに指示を出しているようだ。

「「「はい! ララッパ団長!!」」」

完全に従順に作業するドワーフたちをみると、まるで女王様と下僕のような関係に見える。

「すみません。着任してそうそうに魔導具を動かしていただいて」

アレンはララッパ団長に無事魔導具が起動したことの礼を言う。

「そんなことございません。アレン総帥。貴重な魔導具がたくさんあって私も嬉しいわ」

ララッパという緑の髪をぱっつんと切りそろえた、おかっぱ頭をしているドワーフが笑顔で答えてくれる。

バウキス帝国帝都出身の女性で、魔導技師団の団長だ。

魔導具の才能で星3つの魔技師の才能がある。

バウキス帝国でも50人もいない才能の1人だが、今回99人の星2つの魔技工を引き連れやってきた。

年でいうとアレンより10歳上の25歳のお姉さんだ。

研究熱心な上に女王様気質があるようだ。

アレンたちがS級ダンジョンの最下層から出た貴重な魔導具を大量に持っていることを聞きつけて、アレン軍参加の希望を出したと聞いている。

アレン軍は魔王軍と戦うための軍隊であるため、魔導技師団は後方部隊であるが命の危険を伴う。

しかし、今回やってきた者のほとんどが自ら手を上げやってきた。

というより、参加を希望するドワーフはかなり多かったと聞いている。

S級ダンジョンの最下層から魔導具を安定的に持ってくるのは今のところアレンのパーティーのみだ。

アイアンゴーレムの銀箱から出てくるクラスの魔導具は、大変希少だ。

「じゃあ。ザウレレ将軍、浄化の魔導具を町の中央に運ぶよう指示をしてください」

随分水位が上がってきたようなので、新たな指示を出す。

指示を出したのは、見上げるほど大きいゴーレム隊だ。

「うむ、分かったのである。アレン総帥の命だ。皆の者、慎重に運ぶのだ」

「「「は!!」」」

ミスリル級ゴーレムに乗り操縦するちょび髭を携えたドワーフは、アレン軍に新たに加入したゴーレム隊の将軍だ。

ミスリル級のゴーレム使いであるザウレレ将軍率いる、アイアン級のゴーレム使い99人がアレン軍に入隊した。

ピエール感が半端ないある調の口調で、ララッパ団長といい、ドワーフはキャラが濃いなとアレンは思う。

ドワーフはキャラ芸人と心のメモ帳に記録を取る。

既に水に沈みつつあるクーレの町にゴーレムたちが浄化の魔導具を運んでいく。

クーレの町は5メートルほどの水面の上に存在することになる。

どうも、船を浮かして物を運ぶが、魚人の町民たちは結構そのまま泳いで街中を移動するようだ。

生活していく上で水が汚れ、感染症が流行らないようにするためだ。

アイアンゴーレムを倒して手に入れた銀箱から出てきた浄化の魔導具(大)を水底に沈め浄化させる。

殺菌効果や防腐効果が抜群と聞いている。

なお、この浄化水とため池の魔導具は、中に既に入っている魔石のお陰で1年間持つらしい。

魔導具(大)だとAランクの魔石なら1つで1年間利用できるそうだ。

ザウレレ将軍の指示で、水嵩が上がってきたクーレの町に浄化の魔導具(大)が配置された。

(これで町は4つとも完成かな)

水に浮く町ができてうれしいのか、クーレの町の魚人の子供たちがキャッキャ言いながら、泳ぎ始めるのを見る。

3000人の魚人たちがわらわらと自分たちに割り振られた建物目指して移動を開始する。

確かに魚人を見ると、中には潜って移動する者もおり、水中でも呼吸できることを改めて知る。

こうしてヘビーユーザー島の4つの町は完成したのであった。