軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第267話 ビービー②

「あれ。今日はヘルミオスさん遅いですね」

「お、おはよ」

2階からヘルミオスがフラフラしながら降りてくる。

「遅かったですね。もう朝食始めていますよ」

(お寝坊さんだね)

「アレン君、君には人の心があるのかな?」

拠点では、普段全員揃って朝食をとることが多い中、ヘルミオスが少し遅れてやって来た。

頭が痛いのか、こめかみをグリグリとしているので、アレンは草Cの覚醒スキル「香味野菜」を使って、具合の回復をしてあげる。

平然と言うアレンに対して、ヘルミオスが心の叫びを吐露する。

アレンのパーティーも、ヘルミオスのパーティーも仕方がないことだと何もできないので、小さくため息を吐く。

アレンはS級ダンジョンで手に入れた情報は冒険者ギルドにほとんど提供している。

それは階層ボスやデスゾーンから身を守る術であったり、金策の方法まで多岐に渡る。

これらは全てヘルミオスの名前で、冒険者ギルドが公表した。

その中でまず大きな影響を受けたのが2階層で金策をする獣人たちだ。

獣人たちが最も被害を受けるのはビービーだ。

ビービーがおおよそどの位置にいるのか、どれだけ近づけばビービーに索敵されるのか提供したアレンの情報は多くの獣人を救った。

その結果、ベク獣王太子が決めた1年のダンジョン攻略の任期を終え、獣王国に帰る獣人たちがヘルミオスにお礼を言うようになった。

ギアムート帝国の貴族という側面のあるヘルミオスであるが、それでも救われた命だと獣人たちは感謝の言葉を口にした。

ゼウ獣王子の周りにも、ヘルミオスに礼をして良いかの相談が少し前に頻発したらしい。

ゼウ獣王子はアレンがやっていることだと知っていたが、ヘルミオスに礼をしても良いと広く周知をした。

そこまでは良かった。

ヘルミオスはこの件で困ることはない。

しかし、先月発表されたデスゾーンの全体図及び避難経路についてはドワーフたちに激震が走った。

あのデスゾーンから確実とは言えないが、高確率で助かる方法がある。

ドワーフたちの多くが感謝した。

何故ドワーフたちなのかというと、これには理由がある。

隠しキューブに近づくと数パーセントの確率でデスゾーンに飛ばされるのだが、飛ばされるのはドワーフがほとんどだ。

この隠しキューブは報酬や交換が「石板」に偏っており、そして不要な石板は神殿が安く買い叩くという状況にある。

必然的に隠しキューブに近づくのは石板が必要なゴーレム使いのドワーフがほとんどであった。

そんな中での、ドワーフ救済とも思えるヘルミオスからの情報提供だ。

ドワーフたちは大いに感謝した。

冒険者ギルドの掲示板の前で号泣したドワーフも大勢いたとか。

ドワーフの感謝の言葉で、『一杯おごらせてくれ』というものがある。

当然お酒を一杯御馳走しますという意味なのだが、ドワーフにとって一番のお礼であったりする。

今、S級ダンジョンの街でヘルミオスは通りを歩いていても、この『一杯おごらせてくれ』を言われるようになった。

酒場やレストランの中での話ではない。

言葉のままの意味で、通りを歩いていてもだ。

ヘルミオスが通りを歩いていると、通りに面した酒場等からドワーフたちが木のコップを持ってワラワラとゾンビのように出てくる状況になってしまった。

ヘルミオスはこれほどに自分のステータスが高いことを感謝したことはかつてなかったという。

すばやさと全ての五感を駆使して、ドワーフたちの誘いを断っていたのだが、昨晩は油断があったのかドワーフたちに酒場に引きずり込まれたらしい。

夜中にようやく解放されて、現在に至る。

「では、今日はビービー討伐に行ってきます」

ヘルミオスの涙目を尻目に、アレンは本日の予定を口にする。

「……」

そんなアレンの発言に対して、無言でガララ提督は朝食のスープを飲んでいる。

アレンたちに対して止めることも、助言をすることもしないようだ。

ガララ提督は1ヵ月以上、アレンたちの拠点に滞在中だ。

アレンたちはビービーの討伐をすることにした。

仲間たちの転職が進み、スキルの強化も図られたからだ。

しかし、まだソフィーとメルルを除く転職組の職業スキルのレベルは5くらいでカンストはしていない。

ソフィーの最後の転職もまだなので、厳しそうだったら、1ヵ月ほどスキルレベル上げに集中しようという話だ。

神器が何に使われるのか分からない状況で、倒せる階層ボスを無視するのは効率が悪いと判断した。

また、倒せるなら魔獣の特徴も分析して冒険者ギルドに報告すれば、さらに冒険者の死者も減らせる。

そういった目的もある。

拠点から神殿に移動し、さらに2階層に移動する。

鳥Bの召喚獣に乗って、ビービーの元に移動する。

時間帯で8割がた位置を把握しているが、既に鳥Eの召喚獣が場所を補足しているため真っ直ぐ進む。

そして、ビービーの上空1キロメートルの場所に移動する。

「じゃあ、メルル先生お願いします」

「うむ、任されよ」

アレンのボケにメルルがノリ良く返してくれる。

メルルは片方の手で存在しないちょび髭をいじりながら、もう片手で魔導盤を掲げる。

「メルルいっきまーす!!」

メルルはそう叫ぶと、ためらいなく鳥Bの召喚獣の上から飛び降りる。

そして、超大型用石板をはめて全長50メートルに達したミスリルゴーレムを空中に降臨させて、その中に乗り込む。

こういった空中戦法も練習済みだ。

すぐにビービーの複眼が上空から迫るタムタムを発見するが、そんなことは関係ない。

重量に物を言わせて、完全に位置を捉えた両足でビービーを叩き潰す。

大地が衝撃音と共に土も岩も吹き飛ばし、巨大なクレーターを形成していく。

その中央にはタムタムと、足元に完全に埋没したビービーがいる。

「うりゃああああああぁああぁぁ!!!」

『ガシュー ガシュー!』

メルルは絶叫を上げクレーターの中央で、足の下で埋没したビービーを掴み、両手で握りつぶそうとする。

ミチミチと言いながら、全力で握りつぶそうとするタムタムに対して、ビービーは動かせる足の力を総動員して、タムタムから脱出を図る。

アレンたちは既にメルルが降下したことに合わせて、鳥Bに乗ったまま降下を開始している。

(む? やはりビービーの方が、攻撃力が高いか)

「アリポンたち! ギ酸で柔らかくしろ!!」

『『『ギチギチ』』』

力負けして、タムタムから抜け出しそうなところ、タムタムの腕ごと虫Bの召喚獣たちの特技「ギ酸」をビービーに浴びせる。

強固な外骨格に囲まれたビービーの耐久力を落としていく。

そして、タムタムから完全に抜け出たところで、クレナとドゴラが前面に出る。

「クレナ、ドゴラ、絶対に捕まるなよ」

「うん、分かってる!」

「おう!」

今回の作戦で最も大切にしたのは、この素早いビービーへの対処だ。

素早さで負けてしまえば、ビービーに体力を吸われてしまう。

ビービーは相手の体力を吸って自らの体力を回復させるため、まず何より捕まらないことが大事だ。

これには、メルルにはビービーの羽を破壊することを意識して攻撃するように伝えた。

とんでもない強固な外骨格に羽が覆われているため、上空からの襲撃によって押しつぶしても健在のようだ。

そして、動けない状態からのギ酸で羽を溶かすがまだまだ硬いように思える。

(むう、ちょっと外骨格硬すぎるな。まだ、早いか)

地形が変わるほどの完全なコンボだったと思う。

しかし、拉げて変形した羽を高速で動かし、空を自在に飛んでいる。

多少素早さを落としたが、完全に動きを封じることはできなかった。

Sランクの魔獣を相手では、まだまだ攻撃力が足りないのかと思う。

2人には素早さが3000上がる指輪を2つずつ装備させている。

アレンたちは3桁に達する宝箱を開封しており、ステータスが3000上昇する指輪を全種類20個ずつ持っている。

作戦に合わせて、ステータスを変更するためだ。

ドゴラとクレナが距離を意識しながら攻撃を加える。

クレナとドゴラの最優先事項は、後衛の元にビービーを行かせないことだ。

攻撃など二の次で良いと伝えている。

タムタムは大き過ぎて狙われて体力を奪われる可能性が高い。

この辺りでお役御免と、メルルは後方に下がる。

魔法の効かないビービーに対して、弓矢を使いソフィーとフォルマールが体力を削っていく。

アレンもドラドラを使い、遠距離から怒りの業火を浴びせ続ける。

それから10分以上経過する。

「随分体力削ったな。そろそろいいんじゃないのか。ソフィーいけるか?」

「……はい。アレン様。サラマンダー様お願いしますね」

(ん? 何だ今の間は)

ソフィーも「ソフィー先生」と呼ばれてみたかったので、残念な顔をする。

『アウアウ!』

火の幼精霊サラマンダーは巨大な火の塊に変わっていく。

そして、ソフィーの全魔力を使い、ビービーに突っ込む。

クレナとドゴラは退避したところで、巨大な火の塊がビービーを襲う。

『ギース、ギー……』

十分な一撃であったようだ。

ビービーは地面で小さく鳴くと姿をゆっくり消していく。

(精霊魔法と魔法は違うと。スキルも違うからな)

アレンの中で、また1つ分析が進んでいく。

『ブラッド=ブラスト=ビートルを1体倒しました。経験値1億2000万を取得しました』

(ぶっ。経験値1億2千万きた! 魔神は経験値入らず、レベル1アップだったが、魔獣は経験値なのか)

魔神レーゼルとの戦闘でレベルが1上がったことを思い出す。

Sランクの魔石とカブトムシとクワガタのような模様のあるブロンズメダルが地面に落ちている。

「うしうし、Sランクの魔石は初ゲットか。デカいな」

30センチメートルはありそうな巨大な魔石はギリギリ収納に入る。

「やったわね。私出番なかったわ」

ビービーは魔法耐性が高いため、セシルは出番がないと言う。

精霊の攻撃は通じるが、魔法は通じなかった。

「まあ、出番は必ずあるわけじゃないからな」

要所を攻めることができるからこそ、多様な職業で構成することが大事だと思う。

「それにしても、ソフィーは助かるぜ」

「はい。ドゴラさん。うまくいきました」

サラマンダーと聞いて、お尻を警戒したドゴラであったが、無事避けることができた。

ソフィーもずいぶん慣れてきたので、ドゴラのお尻を燃やすことが少なくなってしまった。

「さて、次はスカーレットだ。今日はこのまま倒しに行くぞ」

アレンは次の目標である3階層の階層ボス、スカーレット=サンド=ワームを目指すのであった。