軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第222話 ただいま会①

王都では、ローゼンヘイムとの国交を祝い、いくつかの舞踏会などの社交行事が催された。

アレンは国王にキールに対する先王の約束を迫ったこと、そのような催しに興味のないこともあり参加を見送ろうとした。

しかしグランヴェル子爵に、ハミルトン伯爵など魔王軍の一件でお世話になった貴族もいるから1日だけでもいいので顔を出してほしいと言われた。それなら仕方ないですねと1日だけ王城の煌びやかな催しに参加した。

この時着たのが、用途が限られ売ってしまおうか悩んでいた「豪華な服(男用)」と「豪華な服(女用)」だ。

A級ダンジョンでは有用な武器やアイテムも出たが、宝箱から貴金属などの装飾品や今回みたいな上級貴族が着そうな防具も出た。

耐久力的にはほとんど意味がない装備であるが、何かに使えるかと思って取っておいて正解だと思った。

その後、正式にキールを貴族に戻す儀礼が行われた。

魔導書のステータス欄もキールが貴族になったことが自動的に反映され、キール=フォン=カルネルとなった。

カルネル家が子爵家となり、領土の全てを元の状態にするには今後の働きが大事であるという話であった。

ルキドラール大将軍とフィラメール長老は、ラターシュ王国の王都に当面の間滞在することになる。今は王城にそれぞれ1室宛てがわれているが、今後王都の貴族街に、外交官のための領事館のようなものが置かれる予定だという。

ラターシュ王国としてもローゼンヘイムとの国交ができたという既成事実を作るためか、動きがとても早いように感じる。

そのルキドラール大将軍とフィラメール長老2人には、グランヴェル子爵とハミルトン伯爵を紹介した。

これから王城内での貴族たちへの根回しに動きだすという。

アレン達はキールが無事に貴族に戻れたので、王都を発ちグランヴェル領に戻ることにした。

王都からグランヴェルの街に魔導船で移動し、グランヴェル子爵の館で一泊した。

セシルは父親であるグランヴェル子爵とは学園にいるころから度々会っているし、兄のトマスにも王都で会えた。しかし、やはり寂しかったのか、久々に母に会えてとても嬉しそうだった。

「見えてきたぞ」

「去年から作っているのでしょ。ずいぶん大きいわね」

「ああ」

アレン達は鳥Bの召喚獣に乗って、ロダンが作る開拓村に向かった。

開拓村は去年から作り始めたので、まだ1年しか経っていない。

しかし、開拓して間もない頃から召喚獣が手伝ったこともあり、開拓はずいぶん進んでいる。

村の大きさはクレナ村の倍で、簡易的な柵と堀で囲まれている。柵は農奴達が作ったのだが、堀は攻撃力1500に達したボアの姿をした獣Cの召喚獣に掘ってもらったため、綺麗に深く掘られている。

獣Cの召喚獣に木の根っこを取り除くことを協力させたお陰で、畑は開拓2年目にして耕せる状態だ。

今は4月過ぎなので、種まきは既に始まっているようだ。

雑草やら何やらで地面に緑色の絨毯が敷かれている中、農奴達があくせく働いている。

住宅街が村の入り口付近に作られているのはクレナ村と同様のようで、大工が木槌を振るって家をいくつも作っている。

この開拓村はクレナ村の開拓同様に農奴と平民合わせて100人程度から始めたと聞いている。そして、今年になって平民の受け入れを増やすという話だった。

住宅街に行き交う人の多さから、どうやら冬の終わりには既に平民の受け入れを始めていたようだ。

そんな中、既に出来ている家が住宅街の中央にある。

アレンの両親と弟と妹の住む村長の家だ。

早い段階から村長の家は作り始めた。

お陰で、クレナ村でアレンが住んでいた家の数倍の大きさの建物ができている。

3世帯は住めそうな村長の家の前にアレン達は降り立つ。

農奴達は去年から獣Cを中心に何種類かの召喚獣を見ているので、大なり小なり慣れているが、春になってやって来た平民たちは腰を抜かして驚く。

「ふむ、やはり結構驚かれたな」

そんな開拓村の様子を見てアレンが呟いた。

「だから言ったじゃない」

「まあ、今後も召喚獣に乗って村に帰る予定だからな」

随分驚かれたが、父ロダンにはそのうち召喚獣に乗って村に帰ると伝えてある。

「おいおい、どういう騒ぎだって、アレンか!?」

「うん、父さん、今帰ったよ」

最後に会ったのは、グランヴェル家の従僕から客人になった時だ。

久々の帰省にアレンもじんわりと感じるものがある。

「お、クレナとドゴラもいるのかって結構な人数で帰って来たな」

アレンの仲間たち全員で帰省をした。

ソフィーからもアレンの親御さんに挨拶がしたいと言うので、せっかくだから全員でやって来た。

セシルやキールもここにいる。

今日は開拓村で1泊する予定だ。

アレンはロダンに頭をワシワシとされるのを、仲間達から驚いた目で見られる。

「なんだか、新鮮だな。アレン殿にも父親がいたんだな」

「それはどういう意味でしょう?」

「そのまんまだな」

フォルマールが当たり前のように家族と接するアレンを見て感想を漏らす。

あまりに常識はずれな力と行動が多いアレンが人間に見えた瞬間なのかもしれない。

高床式になっているので階段を数段上がり、入口の扉を開く。

「アレン兄ちゃん」

「お! マッシュ大きくなったな」

「うん」

「あれんにいに!」

「ミュラもな」

「うん、おおきくなった!」

弟のマッシュとミュラが抱き着いてくるので、両手で抱擁する。

今度は弟と妹の頭をワシワシしてあげる。3人でもみくちゃになっているところで、母のテレシアが玄関までやって来る。

「あらあら、急に帰ってきて。どうしましょ、あなたちょっと食材を買ってこないと」

「ん? ああそうだな」

アレンはローゼンヘイムの戦争中に、この開拓村に置いていた召喚獣をカードに戻した。

魔王軍の予備隊の数が多く、村のために召喚獣枠を使う余裕がなかったためだ。

そのため、村に召喚獣もいないので今回やって来ることを事前に伝えることができなかった。

客人が多くいることを知って、テレシアがロダンに買い出しに行くように伝える。

するとアレンは、肩に担いだ袋の中身を見せる。袋には王都で買った、収納に入らないほどの肉やら野菜やらの食材が入っている。

そして、クレナは王都で買った大樽を持っている。中にはロダンやゲルダの好きな果実酒が入っている。

「いや、王都で食材は買ってきたからその必要はないよ。それより、せっかくなんでゲルダさんところの家族も呼んでよ。ドゴラの両親はもう開拓村に着いているかな?」

「本当か、準備いいな。もちろんだ、って酒じゃねえか!」

食材以上にクレナの抱える大樽にロダンが反応する。

「あん? なんだよ。別に親父なんて呼ぶ必要ねえぞ」

(何を言ってんだ。魔神と戦ったとき、親父によろしくって言っていたくせに。照れるな照れるな)

今年になってからドゴラの両親も開拓村に引っ越してきている。この開拓村で武器屋を開くためだ。

「荷物はあっちに置いてろ。ドゴラはデカくなったな。そんなものを持っていると床が抜けそうだな」

ドゴラは両手斧と両手盾を持ったままの状態のため、結構頑丈に作られた村長宅の床がミシミシと音を立てている。

まだ使われていない部屋にアレン達は荷物を置いておく。

それからしばらく過ぎて、夕飯になった。

クレナ一家とドゴラ一家も呼んでの3世帯に、アレンの仲間たちもいるのでかなりの人数になった。

昔のアレンの家の居間だと絶対に入らないが、今は大きな村長の家だ。

十分な広さの食堂もあるので、全く問題はない。

村長のロダンが夕食前の挨拶をしている。

村長になって1年、挨拶をする機会も増えたんだなとアレンは思う。

「きみ、なまえなんていうの?」

ミュラが両手に抱えたパンにかじりつくモモンガの姿をした小動物に話しかける。

『僕はローゼンっていうんだよ。はは』

「わ~しゃべった。これもあれんにいにの?」

「ぶっ!!」

ミュラがパンごと精霊神を抱きかかえて膝の上に置き、頭をナデナデし始める。

それを見てフォルマールが吹き出してしまう。

「いや、俺のじゃない。そこにいるソフィーのだよ」

言うことを聞く動物は全部アレンの何かだという認識をミュラは持っている。

精霊神が話をしたため、アレンの何かだと思ったようだ。

「それもなんか違うんじゃない」

ソフィーが同意も否定もできないようなことをアレンが言うので、セシルが否定してくれる。

「あれ、そういえば、君はどこかで」

ロダンがセシルに気付いたようだ。

何年も前に見覚えのある薄紫の髪に、勝気でやや釣り目がかった深紅の瞳をした少女だ。

実はまだ、アレンの仲間たちを皆に紹介していない。

夕食を作るまで部屋でアレンと仲間たちは、アレンとクレナの弟妹と一緒にいた。

夕食が始まればドゴラが照れ臭そうに父親と再会していたため紹介の機会がなかった。

「そうそう、まだ仲間達を紹介できていないな。セシルって言うんだ」

「あれ? どこかであったかな?」

確実にどこかで会っているが、ロダンはすぐには思い出せない。

「たぶん、初めてクレナ村に来た時にお会いしているかと思いますよ。ロダンさん」

そう言って座ったままセシルが挨拶をする。

「あらあら、かわいい子を連れて帰ってきて。アレンどうしたの?」

セシルを見てテレシアが何かを勘違いしたようだ。

「ん? セシルはグランヴェル家のお嬢様だよ。お嬢様っぽくないけど」

「あら? それはどういう意味かしら?」

「へぶっ!!」

「「「え!?」」」

アレンがセシルからアイアンクローを食らう中、ロダン達の驚きの声が食堂に響くのであった。