軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第212話 木の下で

離れた位置からアレン達の止めを刺そうとする魔神レーゼルに対して、最後はセシルのエクストラスキル「小隕石」とヘルミオスのエクストラスキル「神切剣」を使い、3つ目の心臓を潰すことができた。

(ふむ、まだ魔神レーゼルの倒されたログが出ないんだが?)

アレンは、魔神の生死を魔導書で確認している。

しかし、今のところ「魔神を倒しました」というログは流れていない。

魔神レーゼルは神殿からかなり離れた位置で、地面に激突したと思うが、神殿に戻ってきたり、また遠距離から魔法を使って攻撃をしてきたりするような気配はない。

(ダメージを受け過ぎて逃げたのか? まさかな。死にかけているなら止めを刺さないとな)

魔神レーゼルは世界樹を捨てて逃げだすような敵には思えない。

「どうしようか? 魔神がいるところまで行くんだけど。ドゴラ、起きないと置いていくぞ?」

「……」

「ドゴラ? 何だ、寝ていたいのか?」

目をつぶり、地面に横たわっているドゴラは何も言わない。まるで死んでいるかのようだ。

「ねえ! ドゴラは無事なの?」

アレンがドゴラに話しかける中、クレナが駆け寄ってくる。仲間達が皆駆け寄ってくる中、ドゴラは動かない。

「キール、成功しなかったの?」

「い、いや、クレナ。たぶん今回は成功したと思う。何だろう? なんか精霊王の祝福を受けて少しうまくいきそうだったんだ」

(なるほど、あまり実験のできるエクストラスキルではないが、知力上昇で蘇生確率が上がる感じか? 割合でいうと1万くらいで100パーセントってところかな)

アレンはキールのエクストラスキル「神の雫」の効果の理解が今回の戦いで進んだ。

エクストラスキル「神の雫」は死者を蘇生する効果があることは分かっていた。

しかし、その確率は100パーセントではなく、一定ではなかった。そして、確率が定まらなかった。

あまり実験のできるものではなかったが、前世のゲームで、知力依存で確率が変動する蘇生魔法があったので直ぐにピンときた。

エクストラスキル「神の雫」の特徴

・死者を1人蘇生

・死んでからあまり長い期間を過ぎると蘇生不可

・蘇生の確率は知力1000で1割、知力10000で10割

・クールタイムは1日

(たぶん、今回ドゴラが2回目で蘇生したのは、精霊王の祝福によるステータスの底上げでキールの知力が上がってくれたおかげだな。それにしてもキールの知力を何が何でも1万にしないとな。S級ダンジョンで知力上昇リングを探すぞ)

分析結果と今後の課題を魔導書に記録する。

「ありがとうございます。精霊王様、お陰で仲間が助かりました」

『いいよ。別に。はは』

通常の大精霊ならすでに顕現が解けていなくなっている頃なのに、何故かソフィーの肩に乗り、まだこの場にいる精霊王に礼を言う。

「ちょ、ちょっとアレン、何でそんなに落ち着いてるのよ。ドゴラが目覚めないじゃない」

「いや、ドゴラの体力は全快している。何か知らないが起きようとしないんだよ」

「「「え?」」」

そういって改めて仲間達はドゴラを見る。アレンがドゴラに話しかけているのはドゴラの体力が魔導書上では全快しているからだ。

「……ドゴラでも、スキルが使えるじゃねえ」

ドゴラが目をつぶったまま呟いた。

「うん?」

「聞こえたぞ。『ドゴラでもスキルが使えた』って言っていたじゃねえか」

(うん? そんなこと……言ったか)

クレナがエクストラスキル使用時にドゴラでも使えるから使えと言ったことを思い出す。

どうやら、ドゴラは拗ねているようだ。

その辺りで蘇生に成功して、意識があったようだ。

「あの、その、なんだ。ごめん」

すると、ドゴラが目を開け立ち上がる。

「「「ドゴラ!!」」」

仲間達がドゴラに駆け寄りもみくちゃにする。やっぱり、起きなかったのはこれが本当の理由なのかなと、恥ずかしそうにするジャガイモ顔を見てアレンは思う。

「それで、魔神は結局どうなったんだ?」

「ああ、まだ止めを刺し切れていない。あれからどうなったか確認が必要だなって、フォルマールもちょうど戻って来たな」

魔神レーゼルとの戦いで大きく壊れた神殿の天井から鳥Bの召喚獣に乗ったフォルマールがやって来る。

「ソフィアローネ様ご無事ですか!?」

「さて、まだ魔神レーゼルはやられていない。止めを刺しに行くぞ!!」

「「「おう!!!」」」

アレン達も鳥Bの召喚獣に乗って、魔神レーゼルの下に向かって行く。

(これはひどい)

アレンは街並みを見る。

「ちょっと、セシル、これはひどいんじゃないのか?」

「ちょ!? なんで人のせいにしてんのよ! あ、アレンがやれって言ったんだから!!」

とりあえずセシルのせいにしてみたが、駄目だったようだ。

「ぐ、ぐるちい……」

アレンの後ろに乗るセシルがアレンの首を絞める。

セシルの小隕石と魔神レーゼルの魔法球の威力が合わさり、とんでもない威力になったことが窺える。辺り一帯がごっそりと丸く凹み、フォルテニアの街は3分の1が削り取られるように無くなっている。崩壊していない場所も、小隕石と魔法球が落ちた衝撃で建物が崩れ悲惨な状況だ。

「お、いたぞ!!」

ごっそりと凹んだ中心に誰かがいるようだ。

アレン達が鳥Bから降りて近づいて行くと、横たわった魔神レーゼルがそこにいた。

『……』

魔神レーゼルは無言で天を見上げている。

魔神レーゼルの体は、セシルのエクストラスキル「小隕石」と自らの魔法で両腕とも無くなり、左胸にはヘルミオスのオリハルコンの剣が突き刺さっている。

誰が見ても分かる瀕死の状況だ。

「魔神レーゼル」

『来たか……。もう少しこのままにしてくれないか?』

天を見上げる魔神レーゼルが止めは刺さないでほしいと懇願する。

アレンは「そうか」と言い剣を鞘に戻す。

「ちょっと、アレン!?」

「いいんだ。もう助からない。体の崩壊が始まっている」

「え?」

そう言うとセシルが魔神レーゼルの全身をよく見る。

体の至る所から何かがくすぶるように煙が上がり、今にも燃え尽きそうだ。

魔族のグラスターやヤゴフと同じで、倒すと灰となって燃え尽き、死体も魔石も残らないのだろう。

それでも天を見上げる理由が、見上げた先にある。

『素晴らしい木だ。離れた地にいる同胞に見せてあげたかった……』

魔神レーゼルは最後の力を振り絞って、世界樹を目に焼き付けるように見ている。

「魔神レーゼル。これはお前の望む結果だったか?」

アレンは思わず尋ねてしまう。

世界樹をダークエルフのものにできず、自らも朽ちて灰になりそうになっている。

どこからどう見ても満足な結果ではなさそうだが、世界樹を見つめるその表情はどこか安堵しているように見える。

『約束の地で死ねるのなら、それは悪くないのであろう。しかし、夢が叶わぬままの同胞らを思うと……』

魔神レーゼルの体全体の崩壊がどんどん進んでいく。

「そうか」

『祈りの巫女の末裔よ。覚えておくがいい、我が死んでも第二、第三の、いや違うな。……もう良いのだ。そうだ。我は望んでいたのだ。世界樹の木の下で……』

そこまで言うと、そのまま魔神レーゼルは灰となって消えていった。

『魔神を1体倒しました。レベルが76になりました。体力が50上がりました。魔力が80上がりました。攻撃力が28上がりました。耐久力が28上がりました。素早さが52上がりました。知力が80上がりました。幸運が52上がりました。』

(レベルが上がった? まだずいぶん経験値が必要だったんだけど。というか経験値いくらだったのか表示がないんだけど。もしかして、魔神は1体倒すとレベル1アップするのか?)

今までずっとあった経験値の数値が表示されていない。必要経験値が何であれ魔神を倒すとレベルが1上がるのかなと思う。

ヘルミオスがオリハルコンの剣を回収する中、アレンは魔神レーゼルとの戦いで分かったことを魔導書に記録する。

「本当にあるのかもしれないな。エクストラの門ってやつが」

(この異世界のどこかにエクストラだか何だかの門があり、開放する手段があるのかもしれないな)

「え? 何か言ったアレン」

「ああ、クレナ。もしかしたら、エクストラの門ってやつが本当にあって、それを抜けたらエクストラモードになれるのかもしれないと思っただけだ」

「え~、手が6本になっちゃうよ」

クレナが手をぶんぶんしながら答える。

(精霊王は当然知っていると思うけど)

アレンがソフィーの肩の上に乗る精霊王に話しかけようとしたその時だった。

『……』

今まで柔和であった精霊王の顔つきが一気に険しいものに変化し、中空を睨みだした。

そして、精霊王の全身が一気に輝きだした。

「「「な!」」」

精霊王が纏う光はどんどん巨大になり、そしてソフィーの肩から離れる。

地面に着くと4足歩行の獣のような見た目に変わっていく。

(お? 精霊神になるのか? どこかライオンっぽい見た目だな)

神化せずにいた精霊王が、ここにきていきなり精霊神になったようだ。

『はは。こそこそ見ているなんて趣味が悪いね。出てきたらどうだい?』

誰もいない中空を見据えて精霊神が語り掛ける。

皆、何事だという風に何もない中空と精霊神を交互に見る。

『おお、こわいこわい。ちょっと覗きにきただけなんだけど…………』

何もないところから声がする。

「「「え?」」」

すると道化師かピエロのような格好をした者が出てくる。

仮面を被っており、何なのか分からないが、その雰囲気は人間ではないような気がする。

「ば、馬鹿な! 上位魔神キュベルがなぜここに!!」

ヘルミオスが、道化師のような格好をした者に叫んだのであった。