軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

波乱だらけのお茶会 3

そして迎えた、シャーロット主催のお茶会当日。私は先日ゼイン様から贈っていただいたドレスとアクセサリーを身に付け、馬車に揺られていた。

「グレースお姉様、とっても素敵です! 流石お兄様、よく分かっていますね」

向かいでは、両手を合わせたマリアベルが嬉しそうに微笑んでいる。

今日のドレスは淡いレモンカラーで、華やかなレースと繊細な花の刺繍がかわいらしさを引き立てていた。髪飾りもピアスもドレスに合わせたもので、華やかさが増している。

胸元ではゼイン様に以前いただいた、イエローダイヤモンドのネックレスが輝いていた。

「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ」

──ゼイン様に嫌われようとするのをやめたため、悪女のフリをする必要はない。もうド派手な原色カラーの装いや、顔がきつく見える化粧はやめるつもりだった。

それだけでもかなり印象が変わるし、この先もゼイン様の隣で生きていくと決めた以上、少しずつ社交界での悪いイメージも払拭していけたらと思っている。

やがてクライヴ子爵邸に到着し、馬車から降りて、おとぎ話に出てきそうなかわいらしい真っ白なお屋敷を見上げた。

ヒロインの実家にぴったりだと思いつつ、緊張しながらメイドに案内されてマリアベルと共に敷地内へと足を踏み入れる。

「わあ……」

庭園もかわいらしくて素敵で、シャーロットによく似合うという感想を抱く。

その奥へと進むと、真っ白なテーブルの上には豪華な料理やお菓子がずらりと並び、既に十五人ほどの令嬢の姿があった。

お茶会というより、ガーデンパーティーに近い気がする。想像していたよりも規模が大きくて驚いてしまう。

「まあ、グレース様よ。本当にいらっしゃったのね」

「なんだかとても雰囲気が変わられて……一瞬、誰かと思いましたわ」

楽しそうにお喋りしていた令嬢達は私に気が付くと、分かりやすく眉を寄せる。その様子からは、グレース・センツベリーへの嫌悪感がはっきり見てとれた。

これまでもこういった目を向けられることはあったけれど、この場にいる全ての人からそれを感じて、冷や汗が流れる。

ゼイン様と交際中、ランハートと浮気作戦をした噂が流れ、よりイメージが悪くなったのかもしれない。

「あちらのダナ様はとてもお優しい方で、以前からお世話になっているんです」

「そうなのね。ぜひ後でご挨拶したいわ」

私の不安に気付いたらしい天使のマリアベルは、少し離れた場所にいる桃色のドレスを着た美女を手で指し示してくれた。

ラベンダー色の髪がよく似合う彼女は、私と同じ侯爵令嬢だという。

マリアベルがそう言うのだから、よほど優しくて素敵な方に違いないし、ぜひ親しくなりたい。後で勇気を出して声をかけてみようと決意した。

「グレース様、マリアベル様、来てくださりありがとうございます!」

そんな中、愛らしい笑みを浮かべたシャーロットが駆け寄ってくる。今日も彼女は可愛くて眩しくて、小説のヒロインそのものだった。

同時にシャーロットが以前ゼイン様へ向けていた、恋する表情が脳裏に蘇ったものの、ぎゅっと両手を握りしめて笑顔を作った。

「本日はお招きいただき、ありがとうございます」

ひとまず招待に対する形式ばったお礼をする。私に続いて挨拶をするマリアベルはお辞儀もとても綺麗で、流石の公爵令嬢の貫禄に思わず見惚れてしまった。

「私、お美しくて凛としたグレース様に憧れていたので来ていただけて嬉しいです!」

予想外の言葉に驚きつつ、両手を握りしめて熱く語る姿を見る限り、事実らしい。

以前ランハートといる時にも「素敵」「見惚れた」なんて言っていたし、真逆な相手に惹かれるものがあるのだろうか。

なぜ招待されたのかという、一番の疑問の答えを早速知ることができてしまった。

「あ、ありがとうございます」

「私には敬語なども必要ありませんし、ぜひシャーロットとお呼びくださいね」

そういえば前は悪女のフリをしていたから、敬語もなく強い物言いをしてしまっていたことを思い出す。急に態度が変わって、変に思われてしまったかもしれない。

「どうか楽しんでいってください」

ゼイン様に対する彼女の気持ちや、聖女の力について気になったものの、直接尋ねられるはずもなく。再び挨拶回りへと向かう彼女を見送ることしかできなかった。

後でまた話をする機会があることを祈っていると、二人の令嬢がこちらへやってきた。

「マリアベル様、ご無沙汰しておりました。お会いできて嬉しいですわ」

「はい、お久しぶりです」

「あまりにも愛らしくて妖精かと思ってしまいました」

彼女達は完全に私を視界に入れておらず、マリアベルにだけ話しかけ続けている。

「今日はこちらのグレース・センツベリー様と一緒に来たんです。良ければご紹介を」

「いえ、グレース様のことはよく存じ上げていますわ」

「そうそう。以前わたくし達、あなたにはとーってもお世話になりましたから」

マリアベルも気を遣って、私を紹介してくれようとしたけれど。彼女達はどうやら過去にグレースとトラブルがあったらしく、棘のある言葉や態度からは関わりたくないというのが伝わってくる。

どうせグレースが全面的に悪いに違いない。