軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.当然のようにいる

奏家でのパーティー後、最初の平日。

俺はあくびをしながら、目を覚ました。

「ふぁぁあ」

昨日は、約束通り奏が我が家に訪問してきて、勉強に耽ることとなった。

勉強時間はおおよそ三時間。お昼過ぎにやってきて、夕方手前くらいに奏は帰宅した。

『あっくん。あっくん。わからない問題があるんだけど、教えてくれない?』

しかし、帰宅後も俺達は互いの家での勉強に耽ることとなった。

そんな折、奏はわからない問題がある度に、俺に電話でその問題の解き方を尋ねてきた。

奏との通話は、一回五分の電話を数度行うこととなった。

数度……という表現をしたが、具体的な回数は覚えていない。

五分の通話後、五分が経ったら、また奏から電話がかかってきたためだ。

……何度も通話するくらいなら、ウチに泊まれば良かったのにな。

そんなことを思いつつ、俺は彼女に問題の解き方を教えつつ、自らの勉強にも励んだ。

『あっくん。あっくん。電話越しだとわかりづらいから、ビデオ電話にしない?』

奏の要求は留まるところを知らなかった。

最初は渋った俺だったが……。

『あっくん。もしかして部屋に別の人でもいるの?』

だとか。

『……いないなら問題ないじゃない。それとも、あたしにビデオ通話越しに見られたくないものでもあるの?』

だとか。

とにかく電話越しの奏の圧に押されて、最終的に俺はビデオ通話で三時間くらい彼女と電話をすることとなった。

『あっくん。もう眠い? 子守歌歌ってあげようか?』

最後の方は、眠気に襲われた俺を奏が介抱してくれる始末。

本当……申し訳ないばかりだったが、とにかくそんなわけで、奏との勉強が影響し、今日の俺は少し寝不足気味だった。

「おはよう、あっくん」

「おはよ。奏」

リビングに行くと、奏は朝食を食べていた。

「あっくん。なんだかすごい眠そうだね」

俺はまた、奏に体調の心配をされてしまった。

「もしかして、昨日はあの電話の後、しばらく起きていたの?」

「いいや。すぐに寝たよ」

「ふーーーーーん」

なんだか奏からの熱視線を感じたが、俺は眠い目を擦りながら、奏の隣の席に腰を下ろした。

「敦。朝ごはんは何を食べる?」

「うーん。なんでもいいよー」

「あっくん。なんでもいいが、一番困るんだよ? ちゃんと何を食べたいか言わないと」

「そうよそうよ」

「……じゃあ、卵かけご飯」

「オッケー」

俺はもう一度あくびをした。

「……あっくん。卵かけご飯、好きだったっけ?」

隣にいる奏から尋ねられた。

「ん? うーん。嫌いじゃないよ?」

「じゃあ、好きでもないの?」

「……好きか嫌いかで言ったら、好きかな」

「そっか」

……それが一体、どうしたのだろう?

「奏……」

俺が奏に、卵かけご飯のことで質問責めしてきた理由を尋ねようとすると。

「おばさん。卵かけご飯ってどんな風に作っているの?」

奏はキッチンへ向かってしまった。

……僅かな疎外感を覚えつつ、俺はテレビを点けて朝のニュース番組をぼんやりと眺めていた。

「あっくん」

キッチンから奏に声をかけられた。

「あっくんって、いつも朝はそのニュース番組を見ているよね」

「え? ……あー。そうかも」

深く考えたわけでもなく、朝、テレビを点けたらこの番組が映るから見ているだけだ。

掘り下げるような内容は特別ないはずだ。

「……もしかしてあっくん。その番組に出ているアナウンサーみたいな人が好みなの?」

丁度テレビでは、ニュース番組に出演している局アナウンサーが視聴者を虜にするような笑みを浮かべていた。

「いや、あんまり好みじゃないかな」

「ふうん。どうして?」

「……なんというか、作り笑顔って感じがして。打算的、というか。表面上、というか。彼女には少し裏を感じてしまう」

俺は苦笑した。

「裏表のない君とは大違いだね」

……しばらくの沈黙の後、

「も、もー。あっくんったら、何言うの? まったくもー」

奏は嬉しそうに体をクネクネさせていた。

「あんた達、イチャイチャしているのは良いけど、そろそろ家出ないと。遅刻しちゃうよ?」

母に言われて、俺はようやく寝ぼけていた頭の中がクリアになった。

「やばい。急がないと」

俺は慌てて立ち上がって、通学の身支度をさっさと整えた。

「それじゃあ、行ってきます」

「行ってきます。おばさん」

「はあい。いってらっしゃい」

玄関まで見送りに来てくれた母に手を振って、俺達は家を出た。

駅までの道を歩き、駅舎が見えてきて。電車に乗り込んで……。

「あれ」

つり革を掴んだタイミングで、俺は気付いた。

「奏、昨日はウチに泊まっていったっけ?」

「あはは。あっくん。何言ってるのさ。昨日あれだけ電話したんだよ? 帰ったに決まってるじゃん」

そりゃあ、そうか。

もしウチにいたのなら、電話越しに会話をする必要なんて更々なかったはずだ。

「……え? じゃあ君、どうしてウチにいたの?」

「どうしてって……あはは。おかしなことを言うあっくん」

奏は微笑んでいた。

「あっくんに会いに来ただけだよ?」

それなら……学校でも別に。

釈然としない顔をしていることを見破られたのか、奏の瞳に光は灯っていなかった。