軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

壊れた装備が30万円になりました

浅田から通話が来たのは、翌日の昼だった。

「認証端末の件ですが、解析が出ました。内部の術式が外部から書き換えられた痕跡があります」

「外部から、というのは」

「誰かがダンジョン内に直接入り込んで操作したということです。使われた手法が、先日ご報告いただいた呪詛護符の術式構造と、かなりの部分で一致しています」

返事をするまでに、少し間が空いた。

「同じ人間が、やったと考えていいですか」

「断定はできませんが、可能性は高いと思っています」

護符の汚染が業者の話だったのが、ダンジョン内の設置物になり、今度は境界の認証端末まで繋がった。

点が線になってきた。

「真壁さん、正直に言うと、これは管理局単独で追える話の規模を超えているかもしれません。今後もご協力いただけますか」

「もちろんです」

通話を切って、しばらく考えた。

誰かがダンジョンの管理システムに手を入れながら、探索者の装備にも汚染を混ぜている。

目的が分からない。ただ、規模は小さくない。

夜、11回目の配信を始めた。

登録者は4,380人になっていた。

今夜はB4Fを中心に回る予定だ。

認証端末の件は配信では触れない。

浅田から「公開はまだ待ってほしい」と言われていた。

30分ほど進んだところで、通路の角に大きなものが転がっていた。

大剣だ。

全長は1メートルを超えている。

刀身が根元から折れていて、柄だけが壁に立てかけてある。

折れた刀身は床に放置されていた。

「デカいですね。完全に折れてる」

『拾う?』

『折れてたら価値ないよね』

『でも鑑定してほしい』

念のため、柄の部分に【鑑定】を向けた。

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魔鋼大剣・上位種(損壊状態)

希少度:A

現在価値:低(損壊のため)

修復可否:可能

修復後推定価値:28万〜35万円

備考:魔鋼の純度が高く素材価値は健在

折れた部分は再鍛造で接合可能な状態

修復には専門の鍛冶師または魔鋼専門業者が必要

推奨:魔鋼修復専門業者への持ち込み

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「……修復できます。しかも修復後の価値が28万から35万円」

コメントが止まった。

「折れてるので今の状態では値段がつかないんですが、材料としての価値が生きてる。ちゃんとした業者に持ち込めば直せると出ました」

『え、折れた剣が30万?』

『素材が高品質ってこと?』

『修復費用いくらかかるの』

「修復費用は業者によりますが、たぶん3万〜5万円くらいです。それ差し引いても十分残る」

『それ完全に儲かるじゃん』

『捨てた人が知ったら泣く』

『回収屋の真骨頂これだよな』

柄と刀身の両方を回収した。

めちゃくちゃ重い。

配信しながら持ち帰れるか微妙だったが、帰りに引きずりながら、なんとか外までもっていくことが出来た。

「今日はこれを持って帰ります。修復の様子はまた報告します」

『絶対報告してほしい』

『完成品見たい』

『続きが楽しみすぎる』

配信を閉じたのは日付が変わる少し前だった。

視聴者のピークは4,700人を超えていた。

スマホを見ながら帰路につくと、見慣れないアカウントからの引用通知がいくつか来ていた。

榊の動画がアップされていた。

タイトルは【ダンジョン配信界の異端児・回収屋の正体に迫る】

昨日榊からドラフトの確認依頼が来て、内容にOKを出してあった。

タイトルだけは公開時に決めると言われていたが、「正体に迫る」は思ったよりも尖った付け方だった。

内容は、呪詛護符の発見から認証端末の件まで、俺の配信を中心に据えた10分程度の解説動画だった。

動画の中で何度も『回収屋チャンネル』という名前が出てくる。

コメント欄には「初めて知った」「チャンネル登録してきた」という書き込みが並んでいた。

翌朝、目が覚めると登録者数が5,240人になっていた。

昼ごろ、神崎からメッセージが来た。

『護符の汚染ネットワークについて、新しい情報が入りました。できれば今日か明日、お時間いただけますか』

『明日の午前中であれば』

『ありがとうございます。鷹坂から詳細を送ります』

いつもより文面が短い。

急いでいるか、あるいは書けないことが多い内容なのか。

どちらにしても、動きが早くなっている。