軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

広がる汚染術式①

翌朝、品川のビルに向かった。

会議室には既に鷹坂と神崎がおり、テーブルの上に書類が数枚並んでいる。

鷹坂が書類の一枚をこちらに向けた。

「昨日の報告、ありがとうございました。管理局からうちにも確認が来ました。現地は既に封鎖されています」

「護符は回収できましたか」

俺の問いに、鷹坂が頷いた。

「はい。同型のものがその区画でさらに2点見つかったそうです」

「……3点か」

俺の呟きに、神崎がはじめて口を開いた。

「少し、情報をお伝えします」

書類を1枚こちらに向けた。クラン名が並んでいる。

「先月から今月にかけて、複数のクランで装備の不調報告が上がっています。全部が護符というわけではないですが、共通しているのは購入ルートが似ていること」

「同じ業者から?」

「同じではないです。ただ、仕入れ先の上流を辿ると、1か所に繋がっている可能性がある」

俺は少し考えた。

「護符の汚染を業者が知らずに流したのか、知っていて流したのか」

「そこがまだ分かっていないです。ただ、ダンジョン内に直接設置されているなら、業者の話だけじゃない」

「第三者が置いた」

「その可能性が高い」

会議室が急に静かになる。

鷹坂がコーヒーを置きながら、間を置くかのようにゆっくりとしゃべり始めた。

「真壁さん、率直に聞きます。この件、引き続き協力していただけますか。今後も同系統の汚染品が出たとき、鑑定をお願いしたい」

「協力します。ただし、見つけたものは配信に出します」

「もちろん。それを含めて、です」

神崎が付け加えた。

「あなたが配信で動いてくれた方が、広く周知できる。うちにとっても都合がいい」

「分かりました」

俺が頷くと、神崎は黙って書類をまとめ、ファイルに戻した。

ビルを出たところで、スマホに通知が来た。

送信者:品川第七ふ頭ダンジョン管理局

『先日ご発見いただいた護符の件につきまして、鑑定士として正式にご協力いただきたく、書面をご準備しております。ご都合のよい日時をお知らせください』

「鑑定士」という単語が、少し引っかかった。

俺は鑑定スキルを所有しているだけで資格は持っていない。

そもそもだが、鑑定スキルは結構広く所持されているスキルで、応用範囲は相当に差がある。

現に俺が持っている鑑定スキルはまさしく『一般その他』レベルであり、とてもじゃないが深く鑑定が出来るレベルではない。いや、なかった、か。

それが今や俺の無資格の鑑定スキルが、他の鑑定士と同様に公的な場でも通用する判断材料になっている。

会社をクビになった1か月半前の自分に言っても、信じないだろうなと思った。

夜、9回目の配信を始めた。

登録者は3,420人になっていた。

「今日は配信外でいくつか動きがあったので、報告します。ダンジョンに罠が仕掛けられていた件の続きです」

コメントがすぐ流れ始めた。

『待ってた』

『続報きた』

『あの護符どうなったの』

「管理局が現地を封鎖して、追加で同型のものが2点見つかったそうです。合計3点。全部、似たような場所に置いてあった。偶然じゃないです」

『やっぱり』

『誰が置いたんだろ』

『目的は何』

「目的はまだ分からないです。ただ、あれに触れた探索者は何が起きるか分からなかった。配信してなかったら俺も触ってました」

『そう考えると怖い』

『回収屋さん配信してて本当によかった』

「これ以上詳しいことは言えないですが、関係する人たちと話し合いは始まっています。何か動きがあれば報告します」

『信頼してる』

『続報待ってます』

配信を続けながら、今夜は上層の浅い区画を軽くまわるも目立った発見はなかったが、コメント欄は終始賑やかだった。

視聴者が「一緒に考えている」感覚がある。

このやり取りが新鮮で、前とは違っていた。

配信を閉じたあと、1件メッセージが届いていた。

榊からだった。

『真壁さん、罠の件、うちのチャンネルでも取り上げたいんですが。情報提供という形で協力してもらうことはできますか。コラボじゃなくていいです』

コラボじゃなくていい、というのが気になった。

あの榊にしては、珍しく控えめな申し出だった。