作品タイトル不明
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まあ話は単純なんですよ。
マール侯爵夫人は 同じ(・・) 侯爵家の中で自分の家だけが動けていないことを把握しています。
例えば、レムレッド侯爵家は侯爵家そのものはともかくとして、息子であるハンスさんがアルダールの従者となるのです。
国王陛下の 名指し(・・・) で爵位を与えられた名誉ある騎士の、です!(ここ重要)
そしてその伴侶となる私もまた、王女殿下の信頼厚い(ここ重要)専属侍女であり王女宮筆頭。
そして王女殿下……プリメラさまは国王陛下の溺愛する愛娘!
(現在侯爵家の中で二番目、いえ、一番になるのではないかしら)
ちなみに今一番侯爵家の中で力があるのはナシャンダ侯爵家ですよ。
なんたって、ご側室さま……いえ、オリビアさまの養父ですもの。外戚強い。
ナシャンダ家、レムレッド家が強く、バルトチェッラ家は先日末息子が起こした騒ぎのおかげで影響力が下がりました。
以前、王妃さまのお茶会でご息女が失態を犯したロレンツィオ家は今も静かです。
ピジョット家はそういう意味では貴族家同士の争いに関与しないっていうか、できないっていうか……。
お金の問題もありますが、ありとあらゆるところと繋がっているのでよっぽどのカリスマがないとそれを使って上に立つなんて厳しいですよ。
逆に平和な綱渡りをしているのもすごいと思いますけどね!!
で、本題。
マール侯爵家もこれが勝機だと、このタイミングで動いたのです。
「王女殿下に娘を紹介したいと思っていたのもそうですけれど、王女宮筆頭とも一度ゆっくりお話をしてみたかったのよ。これからは貴族夫人としてもこうした場に参加なさるでしょうし……ね?」
(ほほう、つまり……これからの社交界で味方になってやってもいいぞってことかしら)
まず第一にプリメラさまに自分の娘を紹介して、スカーレットよりいい子ですよアピールしたかったってのを隠さないところが素直だなあ!
「彼女たちのことはマール侯爵家の手落ちです。また後ほど王女殿下にも正式な謝罪をさせていただくために主人と相談させてくださいませね」
「……かしこまりました」
ははあ、なるほど。
あの寄子の二人は 体(てい) のいい見せしめだけでなく、王宮に足を運ぶための捨て石かあ……。
寄子教育と一緒にここまで見越していたのだとしたら、なかなかのものです。
いや失態を犯すとわかっていたと思うと、王女殿下のいたところで何してんの? って話ではあるんですが……私に突っかかる前提でいたなら、それこそプリメラさまのところに誠心誠意謝罪を! って形が整いますからね。
そういうところ、貴族らしいなあと内心感心しつつ、私もこれに対応していかなきゃならないんだなあと思うと今から胃が……。
まあマール侯爵家からお話が来たところで、プリメラさまがマール家のご息女をスカーレット以上に評価するとは思えませんけどね!
スカーレットは努力の子。
確かに空回りすることも多いですが、その頑張りをプリメラさまも見ておられましたもの。
(……マール家のご令嬢が本当に良い子でプリメラさまの侍女になりたいと真剣に願うなら、試験を受けることになるでしょうし)
高位貴族だから楽をしようなんて許されませんよ、特に王城ではね。
そのあたりは夫人の方がわかっていそうなものですが……。
「では、この場は侯爵夫人にお任せしてもよいということですね?」
「ええ。そうしていただけると助かるわ」
「今回の件は王女殿下がご参加された茶会での出来事ですので、どのようなことがあったかは報告をしなければならない点をご理解くださいませ」
「……あら、こんな些細なことも……?」
マール夫人は少し眉をひそめましたが、私はニッコリ笑顔です。
そう簡単にそっちだけがいい思いができると思うなよって話です。
確かに たかが(・・・) 使用人が絡まれた……が、茶会の主人がそれを取りなした。
それだけならむしろ騒ぐ方がマイナスイメージになるので仕える主人のためにも使用人が口を閉ざし、相手方の貴族に頭を下げるのがベターでしょう。
ですが、私は王女宮筆頭。
そして招かれた貴人は王女殿下。
しかも騒ぎの元凶となった寄子たちの言い分は『王宮侍女になりたい』ですからね。
「陛下は、王女殿下に関することは何事も知りたいと仰せですので」
「……」
マール夫人の扇子からなんかミシミシッて音が聞こえたんですけども。
えっ、意外とパワー派でいらっしゃる……?