作品タイトル不明
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「……では、首尾良く終えたということですね?」
「ええ、デボラさんにあらかじめマール家の寄子について調べてもらった甲斐があったわ」
そして 無事に(・・・) 私たちは王城に戻ったわけです。
……そう、目的をばっちりと果たして、ね!
「では、何もなく」
「ええ、 恙(つつが) なく」
私はデボラさんと顔を見合わせてにっこり笑いました。
そう――スカーレットは成功したのです、何も問題を起こさない、ことを!
ええ、勿論彼女は成長しました。
今では侍女として立派にあれこれ仕事をこなしています。
でも世間は?
苛烈な令嬢の印象はすぐには拭えないものです。
では優れた侍女とは?
(別に何かすごいことができなくたっていいのよ)
マール夫人は たかが(・・・) 侍女と軽んじました。
彼女は正しい。
侍女は使用人にすぎませんからね。
ならばそこで〝優れた侍女とは〟となるのです。
使用人の美徳とは、主人の意向を汲み、補佐し、主人が成すべきことをする際の障害を減らすこと。
侍女として多く望まれるのは信頼関係を築いて社交などでの情報収集、スケジュール管理などがメインですかね。
で、マール侯爵夫人のお茶会に参加を決めたのは勿論プリメラさまです。
でも、お茶会のお誘い、その選定をしたのは私とデボラさんなのです。
別に他のお誘いに関して招待状を隠したとかそんな姑息な真似はいたしませんよ!?
ただ、リストアップして『ちょうど年の近い高位貴族の令嬢』との交流をメインとしたお茶会だから気軽にどうだろうかと推しただけです。
リストを見て、派閥やその他の情報などをプリメラさまがいくつか質問をした上で公務のスケジュールの兼ね合いを考慮し、参加をお決めになったのです。
うちのプリメラさまは!
しっかり者ですからあ!!
まあそれはともかくとして。
ご令嬢に関しては、また茶会があるならば招待を受けてもいいとプリメラさまが仰る程度には感じが良かったようです。
ただまあ、率先して友情を育む相手ではないってことですけどね……残念!
(でも同格の侯爵家が開いたお茶会で、スカーレットは問題を起こさなかった)
それどころか、控えていた護衛騎士たちによればプリメラさまが知らない部分などの補完や、令嬢たちから声をかけられても優雅に、そして控えめに全てをそつなくこなしたっていうから花丸ものでしょう!!
マール侯爵夫人は同じ侯爵令嬢でも自分の娘の方が有能と見せつけたかったのでしょうが、こちらもそれを利用してスカーレットの優秀さをお披露目できたってことです。
王城内では身内の情報操作だのなんだの、ケチをつける人が出てしまいますからね……。
スカーレットの失敗をあちらは望んでいたのでしょうが、そつなくこなした以上文句をつければ逆にみっともない振る舞いとして恥をかくわけですから……。
(今日のことは近く話が広まるはずよ)
王女が参加したお茶会ですからね。
みんなプリメラさまの一挙手一投足を気にしているのです。
こういうことを繰り返して、貴族社会でのスカーレットの評判をじわじわ上げていこうという作戦ですよ!
地味っていうな。
こういうのは積み重ねこそが大事なんですから。
「ただまあ、マール夫人が後日謝罪に訪れるっていう点は私と……そうね、次はライアンを同席させようかしら」
「かしこまりました」
「デボラさんには準備ばかりお任せしてごめんなさい。優秀な方ですのに」
「わたくしの本分は、いずれ王妃殿下の元で文官として務めることでございますから」
にっこり花のように微笑むデボラさん、かっこいいなあ……。
彼女にとってはこの王女宮の侍女はあくまで通過点。
それでも決して手を抜かないからこそ素晴らしい。
私も彼女を通して、貴族たちのやりとりをもっと学んでみせますよ!!