軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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南方連合の騒動以来、なぜかレオンさんとの距離が、近くなった。本当に急に。

「……エレナ」

「ひゃい!?」

騎士団本部の廊下で突然声をかけられ、私はびくっと肩を震わせた。レオンさんだ、今日も顔面が良い。最近、前より声をかけてくれる回数が増えた気がする。

「これ、総務部へ提出する書類でしょう」

「あっ、はい!」

「ついでに持っていきます」

「えっ、でも!」

「どうせ戻るので」

さらっと私の手から書類束を回収する。微かにふれる長い指。近い距離で香る、ふわっと落ち着く匂い。

心臓がドキドキと存在を主張し始める。

「……ありがとうございます」

「いえ」

そのまま自然に隣を歩き始める。

(隣!!いや自然すぎません!?)

最近こういうの多い。食堂行けば隣にいるし、気づけば迎えに来るし、帰りも送られるし。最初は偶然かと思ってた。でも…絶対違う。いや、違うと思いたい私の勘違い?

「副隊長〜」

向こうから犬獣人の同僚騎士が手を振ってきた。

「あっ、お疲れ様です!」

私が返事をした瞬間。

ゴ………………

空気が低く震え、廊下の窓が微かに揺れる。犬獣人の騎士がぴたりと止まった。

「…………」

「…………」

そしてなぜか、すごく気まずそうな顔をした。

「え、えーと……お先に失礼するっす……」

そそくさと去っていく。

なんで?

「……最近、風強いですね?」

「そうですね」

レオンさんが嘘くさい笑顔で返した。なんだろう、絶対違う気がする。

食堂でも。

「ここ、空いてます?」

気づけばレオンさんが向かいに座っている。

「わっ」

「嫌でした?」

「嫌じゃないです!」

慌てて否定する。するとレオンさんが少しだけ笑った。最近よく笑顔を見せてくれる。しかも、前よりずっと距離が近い。前はもっと壁があったような気がするのに。

「……ちゃんと食べてます?」

「え?」

「最近訓練増えてるでしょう」

そう言いながら、私の皿へ自然に肉料理を追加してくる。

「うわっ」

「細いんだから、もう少し食べてください」

「い、いやでも!」

「食べてください」

低い声で言われた。言い方は優しいのに、何故か逆らってはいけないような圧を感じ、思わず「はい」と返事してしまう。

なんなのこれ。なんか、すごい、恋人っぽい。……いや何考えてるの私!?

慌てて頭を振り正面に向き直ると、レオンさんが優しい眼差しでこっちを見つめていた。

カタカタ……

ときめくエレナの気持ちを表すかのように、テーブルの塩瓶が震えた。するとレオンさんからも優しい振動が返ってくる。

「わぁ」

最近これも増えた。レオンさんが返してくれる低周波と、私からもれる振動が共鳴しなんだか心地いい。

共鳴した空気はなんだか落ち着く。胸がぽかぽかする。

(……いやいやいや)

落ち着け私。ただのイケメンだ。ただの顔がいい、素敵なひと…

「どうしました」

「えっ」

「顔赤いです」

レオンさんが覗き込んできた。

近い!

近い近い近い。

心臓が爆発する。

「だ、大丈夫です!」

真っ赤な顔を隠すように、慌てて顔を逸らす。ふと、レオンさんの指先が私の耳へ触れた。

「ひゃっ」

耳がぴこんっと跳ねる。

「また動いてる」

レオンさんが小さく笑った。

だめだ。最近この人、私の耳触るの慣れてきてる。しかも自然に。

私は赤面しながら耳を押さえた。

「きゅ、急に触らないでください……!」

「すみません」

謝ってる。謝ってる?のに全然悪びれてない。しかも始末の悪いことに、指が離れた瞬間なんだか少し寂しかった。

(……あれ?寂しい?)

自分で思ってしまった事にはっとするが、その気持ちは消えてくれない。

その瞬間、耳はぺちゃんと垂れ

ビリリ……

私側から低い振動が漏れた。レオンさんの動きが止まる。2人のカップが小さく震えた。

私は慌てて口を押さえた。

「っっっっ!!」

(こんなの寂しいって言ってるようなものじゃん!何やってるの私の本能!!)

レオンさんが静かに目を細める。その視線が、妙に熱い。

心臓が跳ねた。

「……エレナ」

「は、はい」

「今日は送ります」

「えっ」

「夜道危ないので」

真顔だった。でもなんだろう、その声音が少しだけ低くて甘い。

私はますます顔が熱くなる。

「い、いや、一人で帰れますよ!?」

「駄目です」

即答だった。

「また他所の雄に絡まれたら困る」

低く優しい声。でもなぜか有無を言わさぬ迫力がある。

周囲のゾウ獣人達がさっきから、チラチラとこちらを見ていた。

「あー……」

「完全に囲ってる……」

「もう番じゃん……」

違うと思う、まだ恋人ですらない。でも、レオンさんの隣は落ち着く。匂いも、声も、触れられる手の感触も全部。心地いいと思ってしまうのだ。

そんな自分に戸惑う私の隣で、レオンは静かにコーヒーを飲みながら考えていた。

(……もう無理だろ)

囲う気しかない。他の雄に近づけたくない、触れられたくない、匂いを覚えられたくない。

番じゃない。

まだ。

でも心はもう、とっくに答えを出していた。