軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

219 楽しい時間と親子丼

今日は朝からライアンくんたちのお見送りに出た為、お店の開店時間をずらしての営業だった。

見送りから帰って買い出しに行き、ノアたちと梟さんのお菓子を作り、お店の仕込みをして慌ただしく開店準備。

しかも妖精さんたちは森には帰らず、そのまま梟さんと一緒に家の庭でのんびり日向ぼっこを楽しんだ様だ。

もちろん、姿は消してね?

開店前からお客様が並び出し、営業開始と共に今日も満員御礼。

メイソンさんの所のお弟子さんたちもほぼ毎日交代で来てくれているし、お持ち帰りのハンバーガーを買いに今日も警備兵の人たちが笑顔でやって来る。

相席したお客様同士で仲良くなっているのもよく見かけるなぁ。

最後のお客様たちをお見送りし、オリビアさんと一緒に後片付けと明日の仕込みを進めていく。

何ともバタバタとした一日だったな……。

それと……、

「トーマスさん、オリビアさん……。いつにも増してご機嫌ですね……」

この二人は営業中からず~っと笑顔を浮かべている。

嬉しくて仕方ないというのがこちらまで伝わってくる様だ。

「あら、そ~う? そんなに分かりやすいかしら~?」

「やっぱり分かるか……?」

二人がご機嫌な理由……。

それは、営業開始直前に貰ったハルトとユウマからの手紙が原因なんだけど……。

「おじぃちゃんも、おばぁちゃんも、ごきげんです!」

「たのちちょ! ゆぅくんも、うれち!」

「そうでしょう~? 笑顔が一番よね~?」

「家の中が明るい方がいいからな!」

トーマスさんとオリビアさんはデレデレと頬を緩め、二人の頭を撫でている。

ハルトとユウマがもじもじしながら渡すものだから、感激のあまりお二人は泣きながら接客をする羽目に……。

お客様たちも何があったんだと驚いていたけど、理由が分かると皆さん呆れた様に笑っていた。

まぁ、ライアンくんたちがいなくなって、家の中がしんみりするよりはいいよね……?

「♪~」

すると、隣から可愛い鼻歌が聞こえてくる。

「ん? レティちゃんもご機嫌だね?」

「え? わたし……?」

洗い物を手伝いながら、どうやら自分でも無意識だった様だ。

「うん、鼻歌歌ってたから」

「え……!?」

鼻歌と聞いて、レティちゃんは顔をまっ赤にさせ口を噤んでしまった。

そのまま無言で洗い物をテキパキと……。

少しだけだったけど、レティちゃんって歌上手いんだな……。

どうやらレティちゃんの機嫌の良さは、例の求人募集の貼り紙。

ライアンくんたちのお見送りから帰ってくると、店内の求人募集の貼り紙が取り外されている事に気付き驚いていた。

レティちゃんの知り合いの人たち、もしかしたらここで働いてくれるかもしれないんでしょ? と訊くと、レティちゃんは満面の笑みを浮かべ、コクリと大きく頷いてくれた。

レティちゃんがこんなに嬉しそうにするんだから、絶対悪い人ではないと確信している。

「おにぃちゃん、きょうは、なにつくってますか?」

仕込みを終え夕食の準備をしていると、ハルトがカウンター席から顔を覗かせる。

いいにおいです! と鼻をくんくん。

にこにこと笑みを浮かべながら僕の手元をじっと眺めている。

「ん~? これはまだ内緒かなぁ~?」

「えぇ~!?」

「ハルトは前に食べた事あるよ? ユウマも好きだと思うなぁ~? 完成するまでのお楽しみ!」

「はやく、たべたいです……!」

「出来たら呼ぶからね。もう少し待っててね」

「はぁ~い!」

ハルトは返事をすると、そのままカウンター席に座って僕の作業を眺めている。

頬杖を突きながらいいにおい~、と楽しみにしてくれている様子。

これは美味しいご飯を作らないと!

「だぅだぅだぁ~?」

「だぅだぅだぁ~!」

その奥ではユウマが、お店での定位置になってしまったベビーベッドにいるメフィストと柵越しに顔を見合わせ、謎の掛け声と共に楽しそうに遊んでいる最中だ。

「めふぃくん、たのちぃねぇ!」

「たぅたぁ~!」

トーマスさんとオリビアさんは堪らないと言った様子でデレッと破顔中。

メフィストが言葉を発するようになったら大変な事になりそうだなと、僕は今から覚悟している。

「おにぃちゃん、これくらい?」

「丁度いい量だね! ご飯を盛ったら、器をここに並べていってくれる?」

「うん!」

レティちゃんは夕食の準備のお手伝い中。

今は炊けた白米を人数分、器に盛って僕の前に並べていってくれる。

僕はそれを一つずつ手に取り、出来上がったものを白米の上にかけていく。

「ふわぁ……! おいしそう……!」

「はやく、たべたいです……!」

器に盛った料理を見て、二人は我慢できないとさらに覗き込む。

くぅううう~~~……、

すると、とっても可愛い音が二つ重なって聞こえてきた。

「おなか、なっちゃった……」

「ぼくも……」

「あはは! 二人とも気に入ってくれるといいんだけど!」

恥ずかしそうに笑うレティちゃんとハルトに癒されながら、テーブルに料理を並べていく。

二人ももちろんお手伝い。早く食べたいんだなぁ~、とっても可愛い。

トーマスさんたちを呼び、早速皆で夕食だ。

「お? 初めて見る料理だな?」

「とってもいい匂い! 色合いもそそられるわね~」

テーブルに着くなり、トーマスさんとオリビアさんは初めて見る料理に興味津々。

メフィストもトーマスさんの腕の中からこっちを覗いている。とっても可愛い。

「僕たちの故郷で人気のあった料理です。急に食べたくなっちゃって……。食材が揃えば良かったんですけど、今ある分でも作れるので……」

「ほぉ~、知らない料理が出てくるのは楽しいな」

「そうよねぇ~! 私も毎日、楽しみだもの~!」

「そう言ってもらえると嬉しいです。メフィストの分もあるからね~?」

「あ~ぃ!」

メフィストは僕の顔を見て、両手をパチパチしながらにぱっと笑顔を浮かべてくれる。

「じゃあ早速食べましょうか! いただきます!」

「「「「「いただきます(しゅ)」」」」」

「あ~ぅ!」

今日の夕食は、

・親子丼

・野菜たっぷりのけんちん汁

・ 大根(ホワイトラディッシュ) と 蕪(リューベ) のピクルス

「ん~~~! とっても、おいしいです!」

「にぃに! これ、ゆぅくんちゅき!」

「たまご、とろとろ……! おいしい!」

ハルトとユウマ、レティちゃんの三人は、目を輝かせながら口いっぱいに親子丼を頬張っている。

ぷりぷりの鶏肉に、オニオンの甘味とふわふわトロトロの卵でとじて……。

子供受けしそうな丼物は、次からリピート確定だ。

「ん、旨い……」

「優しい味で止まらないわ……」

トーマスさんとオリビアさんは、そう言った後、黙々と親子丼を頬張っている。

スプーンを持つ手が休まる事を知らないみたいに、どんどん、どんどん、口へと運んでいく。

そして時折ピクルスで箸休めし、また黙々と親子丼を頬張る……。

( ふふ、気に入ってもらえたみたいだな… )

お替りも作りますからね、と伝えると、トーマスさんが嬉しそうに頷いた。

昆布(ケルプ) とジュンマイシュ、ミリンに 醤油(ソーヤソース) 。

これがあるだけで、グンと料理の幅が広がった。

昨日試しに作った干し椎茸は、残念ながらまだ乾燥し切っていないので今回は断念。あともう少し干さないとダメかも。

前にも作った具沢山のけんちん汁は、体が温まると好評だった。

「メフィストも食べようね~」

「あ~ぃ!」

僕はメフィストを抱え、離乳食を食べさせていく。

今日はケルプと鶏肉の出汁、 人参(カロッテ) と ほうれん草(シュピナート) を細かく刻み、卵黄を加えた十倍粥。

旨味もたっぷりで、満足してもらえる筈……!

「ほら、メフィスト~? あ~ん」

「あ~」

小さなお口を開けて、パクリと一口。

すると、口に含んだ途端にメフィストの目が輝いた。

「ん~まっ!」

両手をほっぺに当てて美味しいのポーズ。

これだけで僕は大満足だ。

「ん、美味しい? もう少しご飯に慣れてきたら、お肉も食べれるからね~?」

「あぃ~!」

お替りを催促する小さな弟に、僕は心がほこほこと温かくなるのを感じた。

「ユイト、今度イドリスの家に泊まりに行くだろう? いつにするか決めたかい?」

ライアンくんたちを見送った後、イドリスさんが僕たちの下に来ていつ泊まりに来るんだ? と訊いてきた。

どうせなら皆で泊まりに来い、と豪快に笑っていたけど……。

「あ、はい! 定休日の前日がいいなと思うんですけど、イドリスさんのお休みが分からないからどうしようかな、と……」

イドリスさんが仕事の日だと、僕たちが家にいたら疲れちゃいそうだしね。

「なら今度行ったときに訊いてくるよ。あいつの休みと合えばいいんだがな」

「はい! お礼に料理を作るって伝えてはいるんですけど、何か食べたいものはあるか訊いて来てくれますか?」

「あぁ、分かった。イドリスの事だから、十中八九サンドイッチだと思うんだがな」

トーマスさんはそう言うと、笑いながら目を細める。

「ふふ、僕もそう思ってます!」

「あら、私もよ!」

「ぼくたちも、です!」

「「ねぇ~」」

どうやら皆、同じ意見の様だ。

イドリスさんのサンドイッチ好きは、ギルド中に知られているらしい。

「イドリスの家は広いからな。ベッドも広いし皆で寝れるかもな」

「わぁ! ぼく、いっしょに、ねたいです!」

「ゆぅくんも~!」

「ハハ! それもイドリスに訊いておかないとな?」

イドリスさんの家のお風呂、どんな感じなのかな~?

皆で入れると楽しそうかも!

そんな事を考えながら、今日も楽しい夕食の時間が過ぎていった。