軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

198 アドルフのお気に入り

「おぉ~い! ユイト! 肉の追加あるか~!?」

「こっちも無くなりそうだ! 野菜の追加も頼む!」

「はぁ~い!」

森への転移の事は一先ず置いといて、先に皆のお腹を満たす事を優先に。

「「「「美味~いっ!!」」」」

「「お前ら食うの早過ぎだ!」」

手伝ってくれていたイドリスさんとギデオンさんは、最初の内は楽しかったみたいだけど、若手冒険者のお腹を甘く見ていたのか、汗だくになりながら焼いても焼いても無くなるお肉に悲鳴を上げていた。

野菜もユウマとレティちゃんが作ったタレに漬けると美味しいらしく、順調に減っている。

「オリビアとユイトは、いっつもこんな連中を相手にしてんのか……」

「オレは耐えられんかも……」

二人とも開始して早々、早くもギブアップ……?

用意した食材の三分の一も減ってないのに……?

「大袈裟ですねぇ……。イドリスさんとギデオンさんが加わったら、もっと凄いんですよ?」

「そうよ~? お店の食材無くなるくらいにはね?」

「「うぅっ……、すまなかった……!」」

漸く自分たちの食べる量を実感してくれたのだろう。

僕とオリビアさんと焼くのを交代し、その後は二人でお肉と野菜を美味いと噛み締めながらゆっくり味わっていた。

まぁ、最初に持って行ったサンドイッチは、ほとんどイドリスさんとブレンダさんが食べちゃったみたいだけど。

チラリと見ると、トーマスさんたちと楽しそうに喋っているブレンダさんのお皿にはフルーツサンドが山盛りに……。

二人ともサンドイッチ大好物だからなぁ……。

またキッチンから追加で持ってこなくちゃ。

「おにぃちゃん、ぼく、やきおにぎり、たべたいです!」

「ゆぅくんもねぇ、おににりたべりゅ!」

僕が焼く側に回った途端、待っていたとばかりに可愛い弟たちから焼きおにぎりの催促が。

持っているお皿には、ハルトとライアンくんがタレに漬け込んだお肉と、ユウマとレティちゃんが作った甘めのタレに絡めたお肉、そしてユウマの大好物の とうもろこし(マイス) が美味しそうに盛られている。

そしてそのマイスの横には……、

「うん、すぐ用意するからね! あ、玉子焼きも食べてるの? 美味しい?」

「「うん!! おぃし~!!」」

久し振りに玉子焼きも作ってみたけど、弟たちの評価も上々の様だ。

僕は出汁入りか塩だけが好きなんだけど、今回はハルトたち子供組が好きそうな砂糖入りの卵焼き。

ライアンくんもレティちゃんも、白米のおにぎりと一緒に嬉しそうにもぐもぐと頬張っていた。

「二人とも、これトーマスさんに持って行ってくれる?」

「「はぁ~い!」」

さっきからメフィストにミルクをあげて、皆の話し相手になって……、と、あんまり食べてないみたいだし。

ハルトとユウマがお皿いっぱいに盛ったお肉と野菜を大事そうに持って行くと、トーマスさんは顔を綻ばせて受け取った。

あ、トーマスさんが食べる間はフレッドさんが抱っこするみたいだ。

それなら慣れてるし、安心だな。

「ユイトくん! おれ、この肉お替りしてもいい?」

「私も~! すっごく美味しくってぇ……」

この集まった人数の中では新人になる犬耳のケイレブさんと、猫耳のケイティさん。

申し訳なさそうにこちらの様子を窺いながらお願いする姿は、年上なのにとっても可愛い。

だって耳が垂れてるんだもん……!

二人ともこの二種類のタレを気に入ってくれたみたいだ。

「はい! まだまだ用意してますからね! いっぱい食べてください!」

「「やったぁ~!」」

直前になって、犬人族と猫人族にオニオンはダメなんじゃないかと焦ったんだけど、二人とも関係なくタレに漬け込んだお肉をペロリと食べてしまった。

二人ともオニオンは大好きらしい。

ケイレブさんのお兄さんのコーディさんも、このお肉を絶賛してくれたって。

今は尊敬するトーマスさんの近くに座り、嬉しそうに尻尾を振っている。

メフィストはそのふわふわと揺れる尻尾に釘付けだ……。

「ほら、ユイト! お前も食え! あ~ん、だ!」

「え? あ、あ~ん……」

僕が皆のお肉を焼いていると、イドリスさんがのっそりと現れ僕の口にタレを絡めたお肉を入れてくれる。

ひとたび噛むと、途端にジュワァ~っと肉汁が溢れ、噛めば噛むほど旨みが出てくる……。

口の中が一瞬で美味しいで一杯になる。

う~~~っ! お、お米が食べたい……!

「い、イドリスさん……!」

「ん? どうした? お替りか?」

もぐもぐと頬張る僕に食べさせる気満々なのか、イドリスさんの持つお皿は僕用のお肉が山盛りだ。

ちなみにギデオンさんは 鶏の唐揚げ(フライドチキン) を気に入ったのか、何度もお替りに走っていた。

「あの、そこにあるおにぎり……、白いのと一緒に、お肉を食べさせてください……!」

「白いの……? あぁ! これか? よしよし、ちょっと待ってろよ~?」

思わずイドリスさんにお願いし、ハルトとユウマの握ってくれた小さなおにぎりと一緒にお肉のお替りを催促してしまう。

その間、僕はケイレブさんたち用にお肉をせっせと焼いていく。

だけど僕の欲しがるおにぎりに興味があるのか、チラチラとそちらも気にしているみたいだ。

「ほら、これなら食いやすいだろ?」

イドリスさんは器用にサンチュでお肉とおにぎりを巻くと、僕の口にポイッと詰め込む。

もきゅもきゅと噛み締めると、爽やかなサンチュと甘いタレに絡まったお肉の間から、念願のお米が顔を出す。

ハルトとユウマ、どちらが握った物かは分からないけど、絶妙な力加減で握られているせいか、ほろほろと口の中で柔らかく解れ、塩加減もとってもいい塩梅……。

( ん~~~! 最高~~……っ!!)

「ユイトくん、美味しそうに食べるわねぇ~!」

「そんなにこの白いのが美味いのか?」

「おれも食べてみよっかなぁ~……」

「私も~……!」

僕の真似をして、オリビアさんとイドリスさん、ケイレブさんとケイティさんはサンチュと焼いたお肉、そしておにぎりを一緒にパクリ。

もぐもぐと咀嚼し、ゴクンと飲み込むと……、

「「「「最高~~~っ!」」」」

四人は顔を見合わせ大興奮。

「何これぇ~? おコメと一緒に食べると、また美味しくなっちゃったわ!」

「この満足感、一体何なんだ……?」

「おれ、この白いのいっぱい食いたい……!」

「このタレだけ漬けて食べても、すっごく美味しい~!」

皆は口々に美味しいを連呼し、すぐにお替りを取りに走る。

ふふふ、やった! またお米の虜になる人が増えた……!

これなら順調にお米のメニューを増やせるかも!

僕もイドリスさんにお替りを口に運んでもらいながら、黙々とお肉とハルトとユウマの欲しがる焼きおにぎりを焼いていく。

これは僕が焼きおにぎり用に握った物で、塩は予めつけていない。

最初にそのまま焼いていき、両面に焼き目が付いてきたら 醤油(ソーヤソース) とミリンを混ぜたソースを塗っていく。

そしてもう一種類、ユウマとレティちゃんが作ったタレを塗ったもの。

ん~、いい匂い! このソースの焦げる匂いが堪らない……!

その匂いに誘われたのか、ハルトとユウマの傍にいたアドルフが尻尾を揺らしながら駆けてくる。

口元にはタレが付いているから、もしかしたら先にお肉を食べたのかもしれない。

オニオンが心配だったけど、キースさんに訊いたらアドルフも大丈夫だそうだ。

「あれ? アドルフも食べたいの?」

「ワフッ!」

「まだ熱いから、ちょっと冷まそうね」

「フンフン……ッ!」

出来上がった焼きおにぎりを二個ずつお皿にのせると、アドルフはひとしきり匂いを嗅いだ後、お行儀よく冷めるのを待っている。

時折、もう冷めた? とばかりに前足でちょいちょいとおにぎりを触っているのが可愛らしい。

だけど尻尾をはち切れんばかりに振っているので、ちょっと心配になってしまう。

「ハルト~! ユウマ~! 焼きおにぎり出来たよ~!」

「「はぁ~い!」」

トーマスさんの近くにいた二人を呼ぶと、ライアンくんもレティちゃんもそれにつられて駆けてきた。

ライアンくんが来るという事は、必然的にフレッドさんとサイラスさんも来るという事で、それを見た他の人も何だ何だと集まってくる。

「あっ! やきおにぎり、ふたつ、あります!」

「どっちもおぃちちょ!」

アドルフのお皿を見て、二人は二種類あるとすぐに分かった様だ。

ライアンくんもレティちゃんもそれを見てソワソワしている。

「ユイトさん、私も食べたいです!」

「わたしも……!」

「大丈夫だよ~! ちょっと時間は掛かるけど、いっぱいあるからね!」

「「やったぁ~!」」

二人の分は今から焼くんだけど、ハルトとユウマは一緒に食べたいのか、自分の分を半分こしようと二人に提案している。

「まだ熱いから、ちゃんと冷まして食べるんだよ?」

「「はぁ~い!」」

ハルトとユウマに二種類のせたお皿を渡すと、顔を綻ばせライアンくんとレティちゃんと一緒に半分こしている。

ちゃんとフレッドさんに毒見用の一口も忘れずに渡し……、あ~んしてるな……。

フレッドさんは照れながらも、ハルトとユウマから一口ずつ食べさせてもらっている。

何て平和な光景なんだ……。

「なぁ、ユイトくん! あれ、俺も食いたいんだけど!」

「私も興味がありますね」

「おれもおれも~!」

やって来たのは大食いのダリウスさんと、キースさんの仲間のちょっと見た目は怖いけど優しいブラントさん、そして笑顔で元気いっぱいのビリーさん。

アーチーさんとキースさんは、テーブルに並べている料理に夢中らしい。

何の料理だろう? 気になるなぁ。

三人ともテーブルに並べてあった大皿料理は一通り食べた様で、この香ばしい匂いのするこちらにやって来たらしい。

お肉は食べたけどこの焼きおにぎりに興味があるようで、ハルトたちの美味しそうに頬張る姿をにこにこしながら眺めている。

「皆さん一つずつにしますか?」

「いや、美味そうだから俺は二個ずつ!」

「私は一つずつでお願いします」

「おれは二個ずつ~!」

「分かりました! 今から焼くので他の料理も食べててくださいね!」

まだまだ三人のお腹は余裕そうだし、これは気に入ったらまたいっぱい食べる気がするなぁ……。

三人の分を焼き始めると、イドリスさんがせっせとお肉を僕の口に運んでくれる。

どうやら僕の世話を焼く事が楽しいらしい。

何だか餌付けされてる気分だ……。だけどお肉とお米、すっごく美味しい!

お肉を頬張っていると、ビリーさんが焼きおにぎりが冷めるのを待っているアドルフの下へ。

「アドルフ~! もうさすがに冷めてんじゃねぇの?」

「クゥ~ン……」

あれからアドルフは、ジッと伏せの状態のままで焼きおにぎりが冷めるのを待っていた。

一口齧った形跡があったけど、どうやら中が熱かったみたいだ。

ちゃんと冷ましてからあげればよかった……。

「ちょっとごめんな? ん~……、もういいと思うぞ? 中も大丈夫っぽい!」

「ワフッ!」

ビリーさんが中身が冷めているか割って確認してくれ、アドルフはすっくと立ちあがると尻尾を振りながら大喜びで焼きおにぎりをガブガブと食べていく。

その勢いは凄まじい……。

どうやらお気に召したみたいで、ペロリと平らげると唐突に上を向き……、

アオォオオ──────ン……

どうしたんだろう、そう思った瞬間、アドルフの遠吠えが響いた。

その声にその場の全員が固まっている。

トーマスさんもブレンダさんもこちらを目を見開いて凝視しているし、キースさんとアーチーさんは顔面蒼白だ。

当のアドルフは焼きおにぎりがお気に召したのか、尻尾をフリフリしお皿をちょいちょいと動かしてお替りをおねだりしているみたい。

「ごめん……、ユイトくん、オリビアさん……」

「え? えぇ、ビックリしちゃったけど大丈夫よ……?」

「は、はい……! 遠吠えって近くで聞くと、迫力ありますね……!」

ビリーさんの項垂れた様子に、オリビアさんも僕も慌てて何でもない振りをする。

正直かなり驚いたけど、嬉しそうなアドルフを見たら何も言えないな……。

あの声はご近所さんたちにも絶対聞こえてるな……、後で説明に行かなきゃ。

そう思っていると、不意にビリーさんが顔を上げた。

「いや、たぶん……。あいつらが来る……」

「あいつら?」

「誰か来るんですか?」

オリビアさんと顔を見合わせると、いつかの会話を思い出した。

『グレートウルフってとっても賢いのよ? 群れのリーダーには絶対服従だし、どんなに離れていても声が聞こえたら集まってくるしね!』

『アドルフが呼んだら集まるかもしれないわね?』

も、もしかして……。

「アドルフの……、仲間……?」

声も無く、静かに頷くビリーさん……。

その向こう側では、キースさんが頭を抱えている……。

ま、まさかねぇ……。森の中でもあるまいし……。

だけど……、

「く、来るとしたら……、何頭ぐらい……?」

あの時は確認してなかったけど、結構な数がいたよね……?

「確認してるのは十六頭……、だったかな……?」

「じゅ……、じゅうろく……」

その声に周りは全員固まっている。

「グレートウルフが……」

「十六頭も……」

魔物を一噛みで仕留める事の出来るグレートウルフ。

それがもし、ここにやって来るとしたら、村は大騒ぎなんじゃ……?

「ワフッ!」

「あ~ぃ!」

頭を抱える僕たちを余所に、嬉しそうに飛び跳ねるアドルフと、それを見てキャッキャと手を叩くメフィストの声だけが、この庭に響いていた。