軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 新人店員の研修初日②

「まずはお店でよく出すメニューを教えるわね」

「はい! よろしくお願いします!」

昨日ご近所さんたちに貰った野菜がたくさんあるから、今回はまずその食材を使おうと比較的よくメニューに使われる じゃが芋(パタータ) の料理をメインに教えてもらうことになった、……んだけど……。

「や、です! ぼくも、ここで、おぅえん、します!」

「じぃじやぁ~! ゆぅくんあっちいかにゃぃの~!」

……と思ったら、二人のいやだいやだの大合唱。困ったなぁ……。

いてもいいけど僕もまだ慣れてないし、火も刃物も使うから危ないんだよなぁ……。オリビアさんに一言断って、ちょっと家の方に行って落ち着くまで一緒にいようかな……。

「こ~ら! ユイトがちゃんと覚えるのに、二人がいたら遊びたくなって困るだろう?」

トーマスさんが二人を抱え、いきなりこんな事を言い出した。

え? 僕が遊ぶの?

「……おにぃちゃん、あそびたく、なる?」

「そうだ。ユイトは二人が大好きだからな」

「……にぃに、はるくんとゆぅくん、だいちゅきなの?」

「そうだぞ。な、ユイト?」

チラチラッと、僕に目で合図を送るトーマスさん。

「……そうだなぁ~! 二人がいたら、お兄ちゃん遊びたくなって覚えられないかも……! どうしよう~? こまったなぁ~~~!」

「「ぐふぅっ……!!」」

……オリビアさん、笑いたかったら笑っていいんですよ?

……トーマスさん、あなたが振ったのに、肩が震えてます……。

だけど、こんな下手くそな演技にも弟二人は騙されてくれたらしく、がんばってね、と手を振って大人しくトーマスさんに連れて行かれた。

……うん! お兄ちゃん、頑張るよ……!

何種類か作るので、まずはパタータをよく洗い、茹でる用と炒める用に取り分ける。

茹でるときは皮を剥いたほうが短時間で済むけど、仕上がりが水っぽくなってしまうから皮付きのまま丸ごと茹でるほうが美味しいそうだ。

大きめの鍋にパタータを並べ、かぶるくらいの水を入れる。

これは少し時間がかかるので、先に火にかけて茹でる間に他の料理に取り掛かる。コンロの魔石に触れるときは、少しワクワクした。

○まず一品目は『ブラートパタータ』

簡単に言うと、 じゃが芋(パタータ) の炒め物。

パタータを角切りにし、オニオンとベーコンと一緒によく炒めて完成。食欲をそそるいい匂い~! 塩・胡椒・砂糖は、他の国よりもマシだけど少し値が張るので、ベーコンに使われている塩分だけで十分だという。

○二品目は『ホッペルポッペル』

これはすごく簡単。フライパンで、さっき作ったブラートパタータに牛乳を混ぜて、溶いた卵液を注いで軽く混ぜ焼くだけ。具だくさんのオムレツっていうカンジ。

○三品目は『マッシュパタータ』

茹でたパタータの皮を剥き、バターと牛乳を混ぜて、滑らかになったら完成。これは絶対、ハルトとユウマが好きなやつだ……!

三品作ったところで、ちょうど昼食の時間。

今日は皆で、お店のテーブル席で食べることになった。パタータばっかりだとバランスが悪いから、トマトと レタス(レティス) 、 胡瓜(グルケ) のサラダも添える。

ハルトとユウマは並んだ料理を見てキラキラしてるし、トーマスさんもオリビアさんもよく頑張ったなって顔してる……。

うん、ちょっと恥ずかしい……。

「今日は僕が作りました! どうぞ、お召し上がりください!」

「「「「いただきます(まちゅ)!」」」」

僕はフォークを手に持ったまま、皆が食べるところを緊張しながら窺っていた。

「んん~! おにぃちゃん、これ、おぃしー!」

「ゆぅくんも! これちゅき!」

二人が美味しいと言ったのは、予想通りマッシュパタータ。

こっちの世界の食材は、日本のモノより味と旨みがしっかりしてる気がする。

パタータは日本でいうじゃが芋だけど、さつま芋に近い甘味があってかなり美味しい。あ、じゃがバター食べたいな。今度作っていいか聞いてみよう。

「コレも玉子がふんわりしてて絶品よ~!」

「こっちは酒が欲しくなるな。旨い」

オリビアさんは、ホッペルポッペルをパクパク食べて褒めてくれる。

トーマスさんも、いつもオリビアさんの美味しい料理を食べているのに、僕の作ったブラートパタータをお替りしてくれた。

僕は嬉しいのと照れ臭い気持ちがごちゃ混ぜになって、黙々とサラダを頬張っていた。

いつかこの人たちに、僕の故郷の味を食べてもらいたいなという密かな一つの『目標』ができた。