軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

③⑨

リオネルの魔法がなくなったことでクリストフが起き上がり、叫びながらもこちらに手を伸ばす。

彼は顔から上半身にかけて土で黒く汚れていた。

怒りに任せて魔法を使っているのか、水を固めたトゲのようなものをこちらに飛ばそうとしているではないか。

リオネルがローズマリーを支えてくれたことで、彼の魔法が解けてしまったのだろう。

「俺を裏切るなんて許せない、絶対に許さないぞっ! ローズマリーッ」

クリストフが手を振り上げるのと同時に、リオネルもローズマリーを片手で守るように抱きしめながら手を伸ばす。

しかしこちらに水のトゲが飛んでくる前にクリストフは再び地面に倒れてしまう。

何が起こったかわからずにリオネルに視線を送る。

またリオネルが魔法を使ったのかと思いきや、彼は自分ではないと言いたげにわずかに首を横に振る。

再びクリストフに視線を移すと、彼の足元の方から体に巻き付くようにして植物の蔦が巻きついていく。

クリストフが「うわあああ」と、叫びながら花や草を払おうとしているが足先から太ももまでギチギチにキツく何重にも重なっていくではないか。

「な、なんだこれは! ローズマリー、助けてくれ! 俺を助けるんだっ」

クリストフは地面に爪を立てて抵抗しているが、ずるずると引き摺られていく。

先ほどローズマリーを襲おうとしていたのに、すぐに手のひらを返すクリストフに『このクソ野郎! ぶっ潰してやるからな』と、言ってやりたい。

そして倒れたクリストフの後ろには、彼を鋭く睨みつけているオパールとアイビーの姿があった。

クリストフは徐々に草花に締め付けられる恐怖に泣き叫んでいる。

次第に口まで覆ってしまい、くぐもった声しか聞こえなくなっていった。

「アイビーくん、オパールちゃん……!」

『ローズマリーはアタシたちが守るわ!』

『コイツ、悪い奴だ! またローズマリーを傷つけようとした』

「二人とも声が……!」

夢の中でしか話せなかったアイビーとオパールの声が聞こえてくる。

それに魔法まで使えるようになっているということは、二人がさらに成長したということなのだろうか。

どうやらクリストフを拘束したのは、リオネルではなくアイビーとオパールのようだ。

彼らはクリストフをぐるぐる巻きにした後、近くにあった木に吊るしてしまう。

植物に巻かれたクリストフはプラプラと風に揺れていて、なんだか不気味だ。

クリストフの横を通り過ぎて、こちらに向かって走ってくるアイビーとオパール。

二人はそのままローズマリーに抱きついた。ローズマリーも小さな体を抱きしめ返す。

「二人とも助けてくれてありがとうございます」

『ローズマリー、大好きよ』

『今度はボクがローズマリーを助けるからね!』

リオネルはお茶を運んできた侍女たちに、カールナルド国王や騎士たちを呼ぶように指示を出す。

侍女たちは状況を見て、慌てて元来た道を戻っていく。

彼はアイビーとオパールに頼んで、手首の部分だけ草花をどかしてもらうように頼む。

そこに魔法を使えなくするという腕輪をはめた。

これは本来罪人が嵌めるもので、これでクリストフは魔法を一切、使えなくなってしまうのだという。

騎士たちが到着するとリオネルは魔法を使い、クリストフを草や蔓で囲まれたまま簡単に浮かせると騎士たちに彼の体を渡す。

何かを言いたげに聞こえるくぐもった声がまた聞こえた。

同時にうごうごと芋虫のように体を動かしている。

「汚い声をローズマリーに聞かせたくないんだ。視界から消えるまでそのまま運んでくれるかな?」

リオネルはにっこりと笑いつつも怒りを滲ませた低い声でそう言った。

クリストフはリオネルの指示通りに地下牢へ運ばれていく。

ローズマリーはクリストフがいなくなり、ホッと息を吐き出した。

「バルガルド国王に魔法で連絡を送れ。今回の件の責任を追及する。それからバルガルド王国の人間をカールナルド王国に入れるな。今すぐに城周りの警備を強化してくれ……荷馬車や水路の隅まで誰も逃すな」

「はっ……!」

「父上と騎士団長に報告をしてくれ」

リオネルの声に騎士や侍女、侍従たちが頭を深々と下げて素早く動いていく。

ローズマリーはボーッとしながらリオネルを眺めていた。

「ローズマリー、二度とこのようなことがないように気をつける。許してくれ」

「……え?」

ハッとしたローズマリーがリオネルを見ると、彼は真剣な表情をしながらこちらを見つめている。

「ローズマリーに不快な思いをさせてしまったこと申し訳なく思うよ」

「リオネル殿下のせいではありません。わたしは大丈夫ですから」

「僕がそばにいながらこんなことが起こってしまうなんて……」

リオネルは悔しそうに拳を握る。

魔法を悪事に使ったクリストフにはカールナルド王国のルールによって厳重な罰が課せられるそうだ。

クリストフはもう地下から二度と表に出てくることはない。

ローズマリーはこれ以上、聞くことはなかったが恐らくクリストフとは二度と会うことはないのだろう。

アイビーやオパールはクリストフに向けてベーっと舌を出している。

『『アイツ、大っ嫌い……!』』