軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

②①

テーブルに並べられた料理は二人では到底食べきれない量なことに加えて、リオネルはどんどんとローズマリーに料理を渡してくる。

自分が食べるよりもローズマリーが食べているところを楽しげに見ているようだ。

(リオネル殿下はこんな美味しすぎる料理を前に何を考えているのでしょうか……まったくわかりません)

リオネルに見つめられると恥ずかしいような、くすぐったいような不思議な気分になるが、その気持ちの正体はまったくわからない。

今回も幸せいっぱいで食事を終えたのだが……ここで大問題が起こる。

「こ、これは……!」

「ローズマリーが喜ぶと思ったんだけど、どうかな?」

「この芸術品は……食べれるのでしょうか!?」

ローズマリーの前に並べられたのはキラキラと輝きを放っている。

ドーム状のように艶々と輝いているものや、プルプルと動く透明のゼリーらしきもの。

クリームがたっぷりと盛られているケーキに小さく飾られた茶色の塊。

丸く金色の皿に並べられたフルーツが美しくカットされていて芸術的だ。

「これはデザートのケーキやチョコレートだよ」

「これが噂のチョコレートなのですね……!」

「……デザートを、食べたことがないのかい?」

「いつもは果実、飴、砂糖菓子が多かったです」

「そうか……」

ローズマリーは手を合わせて感動していた。

今まで与えられたデザートとは格やレベルが違う。

これらは貴族たちしか食べられないものだと言われていた。

噂では聞いていたが、ケーキやチョコレートはずっと食べてみたいと思っていた。

しかしローズマリーには手が届かないものだ。

大司教に頼んでみたものの『不浄のもので力が弱ってはいけませんから』と言われてしまう。

クリストフやミシュリーヌも『平民にはもったいないものだからな』と言っていたことを思い出す。

いつか宝石のようなデザートを食べたいと思っていたが、まさかこんなところで夢が叶うとは思いもしなかった。

ローズマリーは食べるのがもったいないとじっとデザートを見つめていると……。

「まさかローズマリーにそんな扱いをするなんて……はらわたが煮えくり返りそうだよ」

リオネルが持っていたフォークがぐにゃりと曲がっていることに気がついて驚愕していた。

こちらの表情に気づいたのかリオネルは何事もなかったようにフォークを元に戻す。

(なんと……! 魔法みたいです!)

あんなにも固いフォークがチーズのように柔らかくなっていた。

ここでローズマリーはリオネルがどんな魔法を使うのか気になり問いかける。

ちなみにミシュリーヌは毒で、クリストフは水の魔法を使う。

ミシュリーヌの魔法は珍しかったが、クリストフの魔法は特に珍しくはなかった。

ローズマリーが気になっていると、リオネルはにっこりと笑みを浮かべながら腕を上げる。

するとサイドテーブルに置いてあった花瓶や花などがくるくると宙を舞って元の場所へと戻った。

「僕はこうして物を動かしたり、重さを操ったりできるんだ」

「初めて見ました……! すごい魔法ですね」

「ああ、だけど今は滅多に使うことはないかな」

土砂災害で被害を受けた町に行き、復興を手伝ったり重いものを持ち上げるのに役に立つそうだ。

こちらに向かってくる暗殺者や刺客を地面に押さえつけて動けなくすることもできると聞いて驚いていた。

「この魔法でも身を守ることはできるけど、なるべく剣術を使っているよ」

「どうしてでしょうか?」

「強い魔法ほど魔法樹の負担になってしまうからね」

リオネルは剣も得意らしく、大抵の人には負けないと言っていた。

それは魔法に頼りきりで『魔法があるのに護身術や剣術など馬鹿らしい!』と言って何も鍛錬をしていないクリストフとは真逆だろう。

「……それにしても本当に許せないな」

「……?」

「バルガルド王国やクリストフたちのローズマリーの扱いが垣間見えるたびに怒りが湧いてくるよ」

「そうでしょうか?」

「でもこうして君がこの国に来てくれてよかった。ローズマリーは僕が幸せにするから」

リオネルの真剣な表情でローズマリーにこう言った。

ローズマリーはリオネルの言葉の意味を理解しようと一生懸命考えていた。

(な、なんだかプロポーズのようではないでしょうか……!)

夜、暇な時に読んでいた流行り恋愛小説は古くはあったが一番盛り上がる場面でこのようなセリフを言っていたような気がした。

(やはりリオネル殿下は本物の王子様なのですね)

クリストフも本物の王子様なのだが何かが違う。

うまく説明できないがリオネルとは圧倒的な差があるような気がしていた。

ローズマリーはじっとリオネルを見つめた後に、そわそわとした気持ちを落ち着かせるようにチョコレートを一粒口に運ぶ。

その瞬間……体全体に衝撃が走る。

(チョコレートは……こんなにも美味しいのですか!? こ、これは幸せの味です……!)

あまりの美味しさに頬が内側からとろけそうになっている。

チョコレートの美味しさに惚けていると、リオネルがもう一粒ローズマリーに差し出してくれた。

ローズマリーはリオネルが指で摘んでいるチョコレートにパクリと食いつく。

今度は先ほどのチョコよりも甘くなくて中にとろりとした甘酸っぱい液体が入っている。

口の中に広がっていく酸味と甘み。

先ほどとは違う美味しさにローズマリーは椅子に座りつつ無意識に体を揺らしていた。