軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

05 そうだと良いけど

今日の放課後はオフだったので、同級生たちとカフェに来た。

メルシエ系列なので、事情は共有されているし個室なので安心。

「それにしても大変ねディア。ミラヴェール様があなたのこと探し回ってるんでしょ?」

「まだ二週間だから……どれくらいかかるかはわからないのよね」

「ええ!? 二週間だって、わたくしだったら発狂してしまいそうだわ」

「うーん、そうよね。でも最新型の魔道具を色々試せるから悪いことばかりじゃないんだ。むしろラッキーだと思ってる! 最近つきまといって話題になってるから、魔道具に限らず護身用の製品の問い合わせは増えてるの。やっぱり実際使った人の言葉は説得力あるし、頑張りどころなのよ」

「……そこの前向きさがディアのいいところよね」

「そうね」

友人二人がため息をついた。

ベルサンさんが来た日から、オールインワンタイプのペンダントだけではなく、様々なつきまとい対策用魔道具を試している。

まず、認識誤認用の魔道具。これが普及品レベルでもかなり優秀で、本店内をうろついていても誰にも気付かれないことに驚いた。気配すら消してしまうらしい。

ベルサンさんに聞いてみたところ、みんなが認識しているわたしとは違う波長を感じ取り、知らない誰かだと判断し素通りするのだそう。

家ですら誰にも気付かれなかった時には、驚きを通り越して少し引いてしまったけれど、それくらい効果は抜群。

ちなみにこちらから話しかけると認識はできる。認識はできるけれど波長が違うから相手は違和感が生じるのだとか。

『正しく相手を認識することで阻害を解除させる技術も開発されているんですが、まだ実用化には少し時間がかかりそうなんです』と、ベルサンさんは言っていた。

今は、対象を絞らない出力低めの認識阻害と、魔力データを登録した特定のターゲットにだけ強い認識阻害がかけられる設定にしている。

護身機能は今のところ出番はない。出番がないのが一番だけど、少々残念ではある。

今は、記憶させた魔力パターンの持ち主と物理的に接触すると、相手を無力化する設定にしている。これは本当につきまとい対策。

逆に、人を限定せず危害を加えられそうになったら発動する設定もあるが、これは使用者の精神状態に依存するところがあって、肝が据わった人だと実際危険に晒されても発動しないことがあるらしい。

そのため事前に精神状態を学習させる必要があるのだとか。めんどくさ!

細かいカスタマイズをするためにはそういった使用者本人の情報も不可欠なんだなと今回初めて知った。金額の幅はこういうところに出るんだなと再確認するきっかけになって、ちょっとホクホクしている。

「んー、やっぱりティズリーのケーキは絶品ねぇ」

「でしょ! 紅茶も最近、グレードの高い新しいものを仕入れたの」

「そうなのね。確かに前に飲んだ時と違うなと思ったの。すごく美味しいわ」

「あとは、お値段変わらないけど香りがたつものもあったかな。ここでも買って帰れると思う」

「お土産に買って帰るわ。もう、ディアマンタってば本当に商売上手よね」

「えへへ」

裏口から二人を見送ると、店内へ戻る。

「いちごのケーキ、美味しかったわ。ただもうちょっと見た目が映える方が女の子のウケは良いかも。味のバランスはあれくらいが良いから、何を足すのか悩ましいわね」

「ありがとうございます。ディアマンタ様のご意見はいつも的確で大変助かります」

「また調整したものができたら教えて。食べに来るわ」

パティシエと会話をしていると、表で来客を告げるベルが鳴った。

スタッフがこちらに顔を出す。

「ディアマンタ様、メノー様がお見えです」

「お兄様!」

フロントヤードに出ると、ディスプレイを見ていた兄がわたしを認めて手を上げた。

「ディディ、迎えにきたよ」

兄は王城で騎士をしている。今日は早番で明日が休みという勤務だったので迎えを頼んだのだ。

「ごめんねお兄様、面倒をおかけして」

「いやいや、こういうのもたまには……本当にたまにであればいいけど」

その言葉に兄と顔を見合わせ深くため息を吐く。

そう、たまにであれば良いけど、これがいつまで続くかわからない。

「帰りは本当に歩きで良いの?」

「魔道具の性能がかなり良いから、そろそろ街を歩いてみようということになったの。試すのは今日からだけど、お兄様がそばにいれば安心でしょう?」

「そうだと良いけど」

兄が肩をすくめる。

「アマランは血眼になってお前を探してるみたいだぞ。

前の彼女だったカミラ嬢にはもう全然興味なさそうでさ。仕事終わりのあいつを待ち伏せて迫ったり、しつこく手紙を出したりしているらしい。アマランはともかく、カミラ嬢がお前を逆恨みしないか心配だ」

「あのお姉さんの逆恨みは考えてなかった……」

魔力サンプルは、運命野郎ことアマラン=ミラヴェール様の分しか取れてない。

「お兄様、もしも接触してきた時にサンプルを採ることってできるかしら?」

「どうかな、俺も採取器は持たされてるけど、父さんほど上手くはできないだろうからなあ」

「お父様を基準にしてはダメよ」

はあ、とため息をつく。

「あの手癖は異常。スリでも生きていけそうだもの」

「確かに」

兄が苦笑する。

「逆恨みについてはすぐベルサンさんに相談する。今日ならもし襲われてもお兄様がいるから大丈夫でしょ」

「そうだと良いけど……」

魔道具の出力性能を最大にしたことを確認して、兄と店を出た。

室内では出力を切るか弱の設定だ。今までの研究だと、壁を抜けるような強烈な波長は普通の人間は持っていないらしい。なので、メルシエ系のお店であれば完全に切るし、それ以外の建物は弱に設定するようにしている。

「今日の夕食はなんだろうなあ」

「何よお兄様、子どもみたいなことを言って」

兄と二人並んで道を歩いていると、後ろから声がかかった。

「やあ! メノーじゃないか!!」

背中がゾゾゾゾと粟立つ。初日にして引き当ててしまう自分の運が恐ろしくて振り返れない。

代わりに兄がギギギギと音がしそうなぎこちなさで振り返った。

「お、おう、アマラン。どうしたんだ今日は」