軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

265.秋の嵐(4)

時空間魔法の時間加速を使っての脱穀作業は大成功だ。人数を増やして行う高速脱穀は山ほどあった小麦の束をあっという間に消化して、みんな小麦の実に変えていった。

もしかしたら、一日かかっても無理かもしれない。そんな量があったのに、昼頃になると後一息で終わる量まで減っていたのだ。私の魔法が役立って本当に良かった。これなら、今日中に脱穀作業が終わる。

みんな、残り少なくなった小麦を見て嬉しそうに作業を続けた。そして、最後の一山を終えた時、みんなで顔を合わせて声を上げる。

「やったー! 終わったぞ!」

「やりましたね!」

「よっしゃー! 間に合った!」

「やればできるんだな!」

喜びの声で溢れた。みんなの前には小麦の実が詰まった袋が沢山積まれていて、強い達成感を覚える。これを終わらせたのか……私たちってすごい。

すると、小麦の計量と記録をしていたコルクさんがやってきた。

「凄いじゃないか! 今日、終わるか分からなかった脱穀を終わらせるなんて」

「どうだ! 力を合わせればこんなもんだ!」

「私たちはできるって信じてました」

「うん、うん。信じて頑張ったかいがあったよ」

「俺も負けてはいられないな。こっちの作業もすぐに終わらせる」

そう言って、コルクさんは計量と記録に戻っていった。残された私たちは相談事を始める。

「まだ、終わっていないところもあると思います。そちらを手伝いに行きましょう」

「そうだな。ウチらは本物のノアの力でなんとか終わらせたけれど、他のところはそう上手くはいかないからな」

「俺らは先に他の農家の所に行ってくる」

「まだ人手が足りないところがあると思うからな」

そう言うと冒険者の人たちは早々にこの場を立ち去って行った。残された私たちはコルクさんと一緒に行動しないといけないから、コルクさんの作業が終わるまで待機することになった。

「それにしても、時間加速を使って疲れなかった?」

「いつもの二倍くらい速く動いていたので、疲れてはいますね」

「魔物討伐に比べたら、そんなに動いてないから平気だぞ。だけど、いつもよりは疲れているな」

「そうだよね。二倍の速度で終わらせたんだから、その分体も疲れるよね」

無理している顔をしてないし、しっかりと立っているから疲れて動けないっていう感じではなさそう。良かった、無理させたらどうしようかと思ったよ。

少し休憩をしていると、計量を終えたコルクさんがやってきた。

「計量と記録が終わったぞ。ノア、袋詰めした小麦をマジックバッグに入れてくれ」

「任せて」

最後の仕事が来た。山のように積み上がった小麦の前に立つと、魔動力を使って小麦の袋を浮かせた。次々に袋をマジックバッグの中に入れる。作業は十数分で終わった。

「よし、これでここでの仕事は終わりだ。すぐに次に向かうぞ」

「うん」

「次も早く仕事を終わらせてやるぞ」

「なんとしてでも、今日中に仕事を終わらせましょうね」

私たちはその場を離れて、次の現場へと向かっていった。

次の農家に向かうと、山のように積まれた小麦の袋が見えた。でも、まだ脱穀していない小麦は残っているみたいで、みんなが懸命に脱穀しているところだった。

その場所に到着すると、農家の子供が走り寄ってきた。

「ノア、イリス、クレハ! また来てくれたの!?」

「うん。もしかして、ここに私たちの分身がやってきた?」

「うん、来たよ。でも、かなり前に消えちゃった。その前は凄かったよ。ノアの魔法を使ったら、みんなの動きが早くなって脱穀が早く進んだんだ」

流石、私の分身。考えることは一緒だったみたいだ。どうやらここでも、時間加速を使って脱穀をしていたみたいだ。

でも、沢山魔法を使って沢山動いたせいか、私たちの分身は先に消えてしまったみたいだ。ここで消えたということは、他のところでも消えていることだろう。

「きっと、他のところの作業は終わってないよね。分身がいなくなったせいで作業が遅れてないといいんだけど……」

「ウチらが消えて、困ってないかな?」

「急に人手がなくなると困ると思います。どうでしょう、もう一度分身を作ってみるのは?」

「……うん、その方がいいかもしれない。日が暮れる前に作業を終わらせたいもんね」

全ての小麦を救うために全力を尽くそう。マジックバッグの中から魔力回復ポーションを取り出すと、二人にも渡す。

「これを飲んで魔力を回復させる。その後にまた分身を作るよ」

そう言うと、私たちは魔力回復ポーションを飲んだ。すると、使っていた魔力が回復し体の元気も取り戻せたみたいだ。

「じゃあ、もう一度分身魔法を使うね」

すぐに手をかざして分身魔法を唱えた。一瞬光ると、その後に私たちの分身が生まれた。よし、これだけいれば大丈夫だろう。

「じゃあ、分身のみんなは他の農家のところに手伝ってあげてね」

私がそういういと分身たちは急いで他の農家の所へと向かっていった。

「わぁ、本当に増えちゃったよ。ノアの魔法は凄いね」

「ありがと。さぁ、こっちの作業も進めないとね」

「うん、こっちに来て。まだ使ってない脱穀機があるんだ。それを使って小麦の脱穀をして」

農家の子に連れていかれる。ここでの作業も同じように進めて、早く終わらせるんだ。

新しく来た農家の所でも私たちは大活躍だ。私は小麦を運搬してみんなに時間加速をかけ、クレハは脱穀、イリスはふるいにかけて袋詰め。役割分担をしての作業が続いていった。

みんなで懸命に作業を続けると、残っていた小麦の束がみるみる減っていく。そして、とうとう最後の小麦の束を脱穀し終えた。時間は日が暮れるちょっと前だ。

「良かった、なんとか今日中に終わったよー」

「日が暮れる前に終わって良かったですね」

「間に合って良かったな! ウチらは最高のチームだぞ!」

疲れを感じる体で抱き合って喜びを分かち合った。

「僕もくたくただよ。でも、なんとか嵐の前に終わって良かった。他のところは終わっているかな?」

「もし、私たちの分身が思った通りに動いていれば、そろそろ終わっている頃なんじゃないかな?」

「じゃあ、残さず小麦を脱穀できたってこと? そうだといいなー。だって、丹精込めて作ったものだから、一粒も無駄にして欲しくないし」

「そうだね。無駄にして欲しくないよね」

みんなが大切に育てた小麦、一粒も無駄にして欲しくない。みんな同じ気持ちだったからこそ、なんとか今日中に脱穀を終わらせることができたんだ。

流石に疲れた私たちはコルクさんが計量と記録をしている間は休ませてもらうことにした。すると、空が赤く染まり始めた。

「空が赤くなっていきます。これで二か所目ですが、農家はまだまだあります。間に合うでしょうか?」

「他のところが終わっていたら、後は回収するだけだろ? きっと、残りの作業は無くなっているぞ」

「そうだといいね。もし、終わっていなかったら……」

終わっていなかったらどうなるのだろう? 暗くなった後でも作業を続けるのだろうか? それとも灯りをつけて強引に作業を続けるとか? きっと、他のところも終わっているはずだよね。

「ここでの作業も終わった。小麦の運搬を頼む」

「任せて!」

コルクさんに声を掛けられた私は小麦の山の前に移動した。そして、魔動力で小麦を浮かせて次々とマジックバッグの中に入れていく。その作業が終わると、私たちは急いでその場を離れた。

「ノアたち、頑張ってねー!」

農家の子に見送られながら、足早に他の農家の所まで急いだ。

次の農家の所まで行くと、そこには山のような小麦の袋。そして、見当たらない小麦の束の存在に気づく。もしかして、作業が終わっている? そう思っていると、農家の人が話しかけてきた。

「待っていたよ! ノアたちの分身が来てくれて、魔法を使って作業を進めてくれたんだ。お陰で今日中に小麦の脱穀と袋詰めの作業が終わったよ」

「良かった! 間に合ったんだな!」

農家の話を聞いたコルクさんは嬉しそうに声を上げた。私たちも顔を見合わせて、喜びのハイタッチをかわす。よくやった、私たちの分身!

「よし! 早く計量と記録を終わらせるぞ! 三人とも手伝ってくれ!」

「うん、任せて!」

「ウチらの出番か!」

「みんなで協力して、早く終わらせましょう」

ここでの農家の作業が終わったということは、他の農家も終わっているはず。ということは、残りは小麦の計量と記録と運搬だけだ。後は私たちが頑張れば、農家の人たちは救われる。

最後の大仕事だ、頑張るぞ!