軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

219.出汁+うどん+天ぷら=(2)

「エリックお兄ちゃん、厨房貸して!」

食堂の中に入ると声を上げた。すると、厨房にいたエリックお兄ちゃんが出てくる。

「どうしたんだいきなり。これから昼食を作るところだから」

「昼食作らせて! これで!」

「それって……もしかして昆布か?」

「そうそう。エリックお兄ちゃんは分かるんだね」

「まーな。昆布を刻んで炒めて食べることがあるからな。でも、それはいつも見ている昆布とは違うよな」

昆布を知っているなら話が早い。

「この昆布、良い出汁が出るんだよ。だから、その出汁を使ってうどんを作りたいの」

「出汁……うどん……なんだか知らない名前もあるが、気になるな。それは昼食までには作れそうなのか?」

「うん、大丈夫」

「そうか、なら一緒に作ろう」

やった、厨房を借りれる。私はエリックお兄ちゃんと一緒に厨房に立つと、早速調理を始める。

「まずは鍋ある?」

「これくらいでいいか?」

「うん。じゃあ、水を入れて。長い昆布を切って入れて。火にかける」

「よし、かまどに火を点けるぞ」

私が昆布の出汁を出す準備をすると、エリックお兄ちゃんがかまどの準備をする。かまどに火が点くと、鍋の水がゆっくりと湯だってきた。

「へー、この昆布は乾燥してあるんだな。いつもは生のまま食べていたけれど、こういう使い方もあるのか」

「うん。というかこういう使い方の方が多かったよ」

「そうなのか。ん? どうしてそんなに詳しいんだ? 海は初めてじゃ……」

「えぇっ!? あぁっ、それは……本! 本で読んだんだよ!」

しまった、余計な知識を披露してしまった。一緒に調理をするのは楽しいけど、知識がバレるから焦るね。エリックお兄ちゃんは感心しているみたいだから、なんでもなくて良かった。

そうしている間に昆布のいい匂いが漂ってきた。鍋の中を見ると、乾燥して縮んでいた昆布が水を吸って大きくなっている。それにお湯に昆布の色が滲み出ていた。

「いい匂いだな。ちょっと味見をしてもいいか?」

「いいよ。私も味見する」

小皿を取り出すと、その中に昆布の出汁を入れる。その小皿を受け取ると、息を吹きかけて出汁を少し冷ます。それから、出汁をすすった。

口いっぱいに昆布の出汁の味が広がる。優しい海の味だ。うん、懐かしい出汁の味に体が喜んでいる。

「昆布の出汁美味しいね! ……エリックお兄ちゃん?」

隣を見てみると、エリックお兄ちゃんは目を閉じて何かを考えていた。真剣な様子に一体何があったんだと心配だ。しばらく、考え込んでいるといきなり目をカッと開いた。

「これだ!」

「えっ? どうしたの?」

「この出汁に合うのは……」

エリックお兄ちゃんは厨房の後ろにある食糧庫へと入っていった。何をするんだろう? 不思議に思っていると、エリックお兄ちゃんが手に何かを持って現れた。茶色くて、バナナみたいな形をしている。

あれは……どこかで見たことがあるような。どこで……。

「あっ! それっ……むぐぅ」

私は慌てて手で口を塞いだ。いけない、知識が出ていくところだった。

「これはな、魚に色々処理を施した乾燥したものだ。よく獲れる魚でな、長持ちさせるためとか保存をするためにこんな風になったんだ。それで、こいつの使い方は……」

鍋の前に立つと、出汁を取り終えた昆布を出す。それから乾燥した魚の身をナイフで薄く削り出した。削った身は鍋の中に入り、昆布の時と同じように煮立たせていく。

すると、厨房に漂っていた昆布の匂いに魚の匂いが混ざった。何とも言えない香ばしいような匂いだ。それはまさしく、鰹節のから出てくる出汁の匂い。

「うん、いい匂いだ。そろそろ、味見をしてみるか」

「私も、私も味見!」

「もちろんだ」

小皿に新しくとれた出汁を入れる。その小皿を受け取ると、匂いを吸った。鰹の香ばしい匂いが入ってくると、後から昆布の海の匂いがする。そして、一息ついて冷ますとすすって飲む。

瞬間、鰹節の出汁の味を強く感じた。香ばしい魚の味、独特の風味を持つ。それをゴクンと呑み込むと、後味に昆布の味が残った。合わせ出汁のうま味が口の中に残り、なんとも言えない幸せな気持ちになる。

エリックお兄ちゃんを見てみると、じんわりと出汁の味を堪能している。私の視線に気づいたのかこちらを向くと、どちらともなく手を上げて手のひらをパンッと合わせた。

「美味いな!」

「美味しいね!」

ずっと求めていた味がそこにあった。転生して十二年、再びこの味に出会えるなんて……幸せだ。

「これでスープは完成か?」

「ううん。ここから醤油とかを入れて、味を調えるんだよ」

「なるほど、醤油か。うん、この出汁に合うな」

「最後の調整は私がするね」

鍋の中から鰹節を取り出すと、醤油とちょっとだけの塩と砂糖を入れる。そうしてできあがったうどんのつゆはやっぱり懐かしい匂いになった。

「どれどれ……」

味がどんな風に変化したか気になったのか、エリックお兄ちゃんが小皿につゆを入れて味見した。味わうように飲むと、強く頷く。

「これ、美味いぞ! 出汁と醤油が合わさって、とんでもない味になってる!」

「でしょ! よし、後はうどんを作って……うどんに何を合わせようかな?」

ここですぐに作れる物と言えば……天ぷら! そう、野菜の天ぷらにしよう!

「なぁ、うどんって結局なんなんだ?」

「小麦粉をまとめて長くしたものだよ」

「麺かー。なるほど、それをあのつゆと合わせるんだな」

「それと、野菜の天ぷらも作りたい!」

「天ぷら?」

「刻んだ野菜を小麦粉を水で溶いたものと混ぜて、油で揚げるものだよ」

「あー、揚げ物か! ふんふん、なんとなく想像ができたぞ。よし、俺に野菜の天ぷらは任せておけ!」

「ありがとう! じゃあ、私はうどんを作るね」

エリックお兄ちゃんなら、きっと上手に野菜の天ぷらを作ってくれるはずだよね。私はうどん作りに専念しよう。

大きな木の器を貰うと、その中に小麦粉、塩、水を入れる。小麦粉と水が均一になるように混ぜると、しっとりとしたそぼろ状に固まってきた。そのそぼろ状になった生地をひとまとめにする。

台の上に生地を移すと、今度は平たく伸ばした生地を三つ折りにして上から押し込む。ここは力が必要だから、魔動力を使って生地を押した。その作業を何度も繰り返し、生地をまとめていく。

生地をまとめると、塗れた布を被せてしばらく寝かせる。もちろん、時間加速を使って生地の熟成を進ませた。生地の熟成が終わると、もう一度捏ねてまた寝かせる。

それが終わると台と生地に小麦粉を振りかけて、麺棒で円形状に伸ばしていく。十分な厚さに引き伸ばすと、また小麦粉を振りかけて折りたたんでいく。最後に折りたたんだ生地を包丁で切ると、うどんの完成だ。

「エリックお兄ちゃん、うどんができたよ」

「それがうどんなんだな。食べ応えがありそうだ。俺も野菜を切り終えて、小麦粉と混ぜておいたぞ。こんな感じでいいか?」

「うん、大丈夫」

これで昼食の準備が調った。すると、食堂のドアが開く。

「帰ったぞー! 腹減ったー!」

「帰りました」

丁度二人が戻ってきたみたいだ。ということは、昼食の時間だ。よし、うどんを茹でて、天ぷらを揚げよう!