軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68話 君を想う④コッコのダンス

ウコン、パクチー、そしてクルミ。今日は逆探索をしてみようと思う。森の探索者を募ると、今日はトーマス、カルラン、マッケン、エバンスが一緒に来てくれた。

まずはクルミだ。これはいくつかの大木をみつけられた。みんなに場所を覚えてもらう。

トーマスにはスラム専用のマジックバッグを渡す。

「お前、これ」

「わたしの持ってたものだけど、所有者をスラムにした。スラムの子と、スラムのボスが認めた人が使えるバッグだ。他の人には普通のバッグとしてしか使えない」

「いいのか?」

「うん」

「ありがとう」

茫然としている。

「誰かに見られたときは、所有権あるって言ってね。じゃないと自分のものにしたいって思う人が出てくるから」

スラム用は街ぐらいの大きさで、それぞれのリュックはアジトの大きさはあるから、不自由はないだろう。

クルミは落ちているのを殻のままバッグに入れていく。エバンスのフットワークが軽いので早く終わった。みんなが普通に歩いて移動している時でも、エバンスは急に走り出して、何かをみつけたり取ってきたりした。なんでそれで疲れないんだ!

ウコンとパクチーがみつからない。ダメか、とため息を落とすと、危険アラームが鳴り出した。

そっちにエバンスが走って行こうとするから止める。

「エバンス、無闇に走ったら危ないって」

「でも、なんかいそうだからさ」

コイツ、勘でわかっているのか? すげーと思っていると、ぎゃっと甲高い音がして、そちらを見ると、そいつもこちらを振り返った。

二本足で立った、カンガルーのような獣だった。口にはネズミのような血塗れなものをくわえている。お食事中でしたか!

そいつはこちらを見てふと動作を止める。なんとなく、今自分が口にしているものと、わらわらいるわたしたちの重量を見て、こっちの方が食い出があると、食べ物認定された気がする。

鑑定をかける。

「カンダーだ。二本足でぴょんぴょん跳んで動き回る。可愛らしげな見目と違って、非常に獰猛で、爪から毒が出るからかすり傷でも負ったら動けなくなるって」

「この場は逃げよう」

トーマスが判断を下して、みんなで走り出す。

「エバンス、ランディーを連れて逃げろ」

「ボス、もっといい手があるよ。おれ、あいつと追いかけっこしてくる」

え?

わたしたちに口を挟む暇を与えず、エバンスはわたしたちの前に躍り出て、カンダーにお尻を向け、その尻を叩く。

そんなのカンダーに効くわけ……、カンダーは挑発と受け取ったようだ。口からポロリと獲物を落として、その視線をエバンスに合わせた。

「カルラン、ランディ連れてけ」

その指示でカルランに手をひかれ走り出す。

その後ろをマッケン、トーマスと続き、わたしたちは走り出す。

息も切れ切れになり、もう走れないと足がもつれたところで、止められる。

みんなは息が荒いぐらいだ。

エバンス、大丈夫だよね? わたしの足が遅いから囮になってくれたんだ。

少しするとひょっこりエバンスが戻ってきた。

「エバンス、怪我ない?」

「大丈夫だ」

息もあがってない。

「あいつはどうした?」

「向こうの方でグルグルしてまいてやった」

「お前、足はえーな。けどヒヤヒヤした」

「わたしの足が遅いから囮になってくれたんだね、ごめん。ありがとう」

わたしが言うとニッと笑う。

「でも、エバンス、囮はダメだ。危険すぎる」

トーマスが注意する。

「気をつける。でも勝算はあったんだ。前にアイツと追いかけっこしても負けなかったから」

「カンダーと?」

「おれさ、盗賊団に拾われてさ。見張りとか囮とかおれの役目だったんだ。ちっちゃいし、スバしっこかったからな。森でも狩りに出て獣を罠まで導いたりとかさ。それで結構足早くなってさ。アイツの名前は知らなかったけど、何度かあったことがあって、障害物があるとこ走るの苦手なんだよ、アイツ。だから大丈夫だと思ったんだ」

ニシシと笑って見せて、笑顔のままトーマスに尋ねる。

「おれ、盗賊団の出身なんだ。嫌だと思った? 次のボスおれって言うけどさ、考え直していいよ。それよりも、スラムもいちゃダメ?」

トーマスはエバンスの頭に手を置いた。

「どこ出身でもお前はお前だ。俺たちはお前のこと知ってるから、お前はリーダーにふさわしいと思う。逃げられて助かった。ありがとう」

そう言われると、少し困った顔で笑った。

「でも、囮はダメだぞ。自分が犠牲になるってのは癖になるし、考えが周りに 感染(うつ) るからな」

「感染るの?」

「感染るんだ」

「わかった」

カルランとマッケンもエバンスの頭を撫でて、助かったと口にする。

ふと視線を落とすと、ミントが目に入った。

「あ、ダメ。エバンス踏まないで!」

ちょっと突き飛ばすようになってしまった。

「お、お前、助けてくれた奴にそれはひどいんじゃねーか?」

マッケンからもっともなご指摘が入る。

「ごめん、エバンス。感謝はしてるんだ。本当に。心から。だけど、ミントを踏まないで欲しくて。みんなも動かないで!」

わたしは無心にミントを摘んだ。サラダのアクセントになるし。涼しげで爽やかでこれからの季節にぴったりだし。たくさんあればお茶にもできるし。

「スーッとする匂いだな」

「そう、ミントって言うんだよ。爽やかなんだ」

エバンスがそのまま食べてモグモグしている。

「ほんとだ。すーっとする」

みんな摘んでちょっと齧っている。

と、後ろにでっかい鳥がいた。

え? アラーム鳴ってないよね。ってことは危険じゃないってこと?

そいつはわたしの目の前に来ると、急にお尻をむけて、後ろ足で土をかけてきた。

「え? 何? なんなの?」

「お前の会いたがってたコッコだよ」

コッコは真っ黒な、小柄なダチョウみたいな鳥だった。足と首が長い。飛ばずに地を走るはずだ。

わたしにしばらく土をかけて気がすんだのか。

エバンスをじーっと見る。そしてマッケンを見て。そしてカルランとトーマスを見た。

さっきとは違い、優雅な動作で一歩、二歩と、カルランとトーマスに近づき、立派な羽を広げ震わせて囲おうとするかのようにカルランとトーマスを追い込む。

わたしはこの光景を見たことがある。伊豆シャボテン動物公園で。公園内を動物が闊歩するのが有名なところなのだけど、時間でそこらへんにいた孔雀が一斉に羽を広げて威嚇かと思う勢いで追い込んできたときには、みんなびくりとした。孔雀が人を襲ったなんて話は聞いたことがないし、近くには飼育員さんもいるし、怯えるなんておかしいんだけど。

人はみんな怯えていた。なんかね、目が違ったのだ。迫力がね、通じない怖さっていうか。元々、言葉で話せないから通じたことはないんだけど、その時、そう、通じないってなぜか思ったのだ。

今目の前ではそれと同じことが起こっている。カルランとトーマスが、翼を広げ震わせたコッコに威嚇されているかのように追い込まれている。

「だから、何がしたいんだよ、お前は」

トーマスがコッコを避けて逃げる。攻撃されそうなら反撃できるけど、向こうにその気がなくただの威嚇だから対処しづらいのだろう。

「な、嫌な目つきと鼻息だろ」

「わたしには全然だけどね」

と言えば、そういえばという表情。自分たち限定ということに気づいたみたい。

「わかったよ、カルランとトーマスが嫌な目つきと鼻息っていう理由が」

「え?」

「ふたりはコッコに求愛されてるんだよ」

「「求愛?」」

コッコはメスが求愛するのか。

カルランとトーマスは微妙な顔つきだ。他のコッコにもふたりは目をつけられたのだろうから、コッコの胸に突き刺さる何かを持っているんだろう。

「へー、ボスとカルランはコッコ好みなんだ」

マッケンがニヤニヤする。

「これが求愛のダンスか。へー、ボスもカルランもコッコに愛されるなんて、すげー」

エバンスの本当にそう思っているんだろうなと思える褒め言葉にふたりが顔をしかめる。

求愛のダンスをしても 靡(なび) かないからだろうか、コッコは優雅な足取りで森の中に消えて行った。

クルミとミント、いくつかのハーブと、獰猛なアヒルみたいなコタンダ、プラムみたいな果物プラモを戦利品に、帰ることにする。