軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

里帰り編最終話 あなたの隣にいるために

変なの。少し前と同じなのに、家の中が急にガランとしてしまった気がする。

里帰りも嬉しいし、楽しいし。帰ってくるのもほっとするし。黄虎に顔を埋めまくったし。モードさんがいるのだから嬉しいことこの上ないんだけど。ワイワイガヤガヤしていたのが、人数が一気に減ってしまったわけだから……わたしは淋しさを感じているみたいだ。そして淋しくなってくると、いらないことまで思い出して、いたたまれない気持ちになる。

わたしは自分のステータスを呼び出す。やはり、変わらない。変わっていない。

思いを振り払うようにして、洗濯物を洗うぞと外に出れば、ぴーちゃんたちのおはよう攻撃だ。

「おはよう!」

籠を下に置いて、1人ずつにハグしたり頭を撫でたりしていく。

ん? 籠を漁っている。新入り君だ。

「こらこらこらこら」

わたしのスカートを咥えて持ち去ろうとしている。少し走って逃げて、こちらを見ている。

追いかけてくるのを待っている、ぴーちゃんより一回り小さなコッコ。

昨日パズーさんが森に行ったら、ついてきちゃったそうだ。街にも入ってこようとするのでテイムしたそうだが。人の持ち物を咥えるとかまってもらえると学んでしまったみたいで、昨日もパズーさんが追いかけまわすはめになっていた。

「それはこれから洗うものだから返して」

ああ、首を振って振りまわしている。楽しそうに……。まだちっちゃいんだなー。

「ぴーちゃん、返すように言ってくれない?」

『ティア、あの子はまだ分別がないの。遊びたいだけだから、言っても無駄』

えーーーー。

と心の中で叫び声をあげていると、ぴーちゃんの弟のペー君が、新入り君を追いかけた。逃げようとした先にマー君とムー君が先回りする。

そして逃げ道を塞いだところでペー君が新入り君の首をカプっと噛んだ。

「ビーーーー」っとすごい声があがる。

「ぴーちゃん?」

『群れのボスを教えているの。大丈夫よ。本気で噛んでないから』

「コッコのボスはペー君なの?」

『何言ってるの? ここのボスはティアよ』

あ、わたしなんだ。

横をマー君とムー君に挟まれて、振り回していたスカートを返しにきた。わたしは受け取って、頭を撫でる。

「わたしは足が遅いし体力ないから追いかけっこは無理だけど、ブラッシングは得意よ。後でしてあげるね」

新入り君は真っ黒な大きな瞳で2回ゆっくり瞬いた。首を伸ばしてわたしの手を首に誘導する。掻いてあげるととても嬉しそうにした。

「ペー君もマー君もムー君も、ありがとうね」

どういたしましてと言っているのか羽をバタバタさせる。

籠を持ち上げて洗濯樽まで移動する。コッコたちもじゃれあいながら、牧草地へと移動していく。みんなどんどん成長していく。どんどん大人になっていく。それは嬉しいことだが、それに引き換え……。

洗濯物を干し終え家に戻ると、キッチンでモードさんが水を飲んでいるところだった。

「お茶入れようか?」

尋ねると、モードさんは首を傾げる。

「お茶は今はいい。それより、どうした?」

「どうしたって?」

わたしは聞き返す。

「泣きそうな顔してる」

「泣きそうなんかじゃないよ」

「じゃあ、何を考えていたのか言ってみろ」

…………。

「新入り君がオイタをしたら、ペー君たちが群れの洗礼っていうの?序列を教えたんだよ。もうちびっちゃいのに教える立場になっててさ。成長したなーと思って」

腕を組んだモードさんがじーっとわたしを見るので、居心地が悪い。

「ティア、俺に何か言いたいことがあるんじゃないか?」

モードさんにはいつも先回りされてしまう。

「うん、……ある」

モードさんを引っ張って行って寝室のベッドに座った。隣に座ってもらう。

わたしはモードさんがとても大切だ。だからモードさんの喜ぶことをしたいと思うし、幸せでいつも溢れているようにしたいと思う。幸せでいてほしいから、聞くべきことがある。その答えによっては、わたしは覚悟を決めなくてはならない。

でも、いざ話そうとするとひよって、一番聞きたいのとは違うことを聞いてしまう。

「なんでペクさんやパズーさんのことわたしには黙っていたの?」

モードさんはそれか、という顔をした。

「俺は時々留守にする。そんなとき困ったことがあって、お前知ってたら頼れないだろ?」

わたしのためだろうことは想像がついていたが、ショックを受けるとか、命じられてだったんだとかそうわたしが受け止めるからかなと予想していたので、少し新鮮だった。そうか、ふたりのバックには国がついているが、変わりなく頼れとモードさんは思っているんだね。了解。

そしてまた、聞きたかったことではあるが、微妙に違うことを尋ねる。

「モードさんは今まで我慢してくれてたのかな? わたしはね、家族以外に寝室に入られるのが嫌みたい。そういうの、モードさんも何かあるよね?」

「ないと言えば嘘にはなるが、我慢するとはまた違うな。嫌なことは伝えているぞ」

「そう?」

「あ、ひとつあった」

わたしはモードさんを見上げる。

「なんでも話して欲しい。……お前のことなのに他の男から聞かされるのは、ものすごく嫌なんだ。特にあの王子からは」

「……わかった」

「じゃあ、早速話すことあるんじゃないか? そんな顔してる」

「モードさんから見て、わたしはパズーさんとかペクさんとか。ルークさんとか王子とか、親しすぎ?」

モードさんが苦笑いする。

「誰かに言われたのか?」

「ゼフィーさんに」

「冒険者の結婚している女性はティアみたいな感じだけどな。貴族女性にしたら、お前はよく話したりする方かもな」

モードさんがわたしの手をとって指先にチュッと口をつける。

「親しすぎると思ったことはない。ただ言っておくと」

「言っておくと?」

「……お前と王子が必要以上に親しいとは思っていないが、縁があるとは思っている」

「縁?」

「結局、こちらに呼んだのはあいつが発端ではあるし、何かというとあいつが絡んでいる。ティアの前の姿も知っているし……」

いや、そんなの知らなくて全然いいと思うんだけど。

「今回だって、大変な時に俺は留守にしていたのに、あいつはここにいたわけだからな。助けてもらってもいるが。だから……他の奴はともかく、王子には嫉妬するって話だ」

そ、そうか。かなり意外な目線で驚いたが、肝に銘じよう。

「他には?」

えーーーと。促されて、尋ねようと思うと指先から冷えてくる。

「……モードさんは貴族だから。だから、お家的に後継者がいないとなんじゃないの? やっぱり子供がいないといけなくて、第二夫人が必要なんじゃないの?」

モードさんは驚いたように、目を大きくした。

「確かに、貴族は一夫多妻が認められていて、後継者のために妻を複数持つことが多い。が、おれは7子だし、幸い兄に後継者がいるから俺にいなくても問題ない。この前言った通り、お前の他に娶るつもりはないし、それに何より、俺はお前だけで手いっぱいだ」

わたしは横のモードさんにしがみついた。

ふわっと頭に乗せられた手がゆっくりと撫でてくれる。

「なんだ、不安にさせたか?」

不安?

「……不安はそのことでもあるんだけど……」

「なんだ、話してみろ」

「本当に子供がいなくてもいい? できないかもしれないよ?」

「なんでそう思うんだ?」

本当に泣き言だ。モードさんにだってどうしようもない。言っても仕方ないことはわかっている。子供の話がチラついて、余計に滅入り方が増して自分の胸に留めておけなくなった。モードさんにしがみついたまま告白をする。

「……もう2年も成長していない、17歳のままなの」

魔素が安定したら26になれると思っていたけれど、このままずっと安定しなかったら?

だって、2年だよ。髪は伸びるし、代謝も普通にある。それなのになんで年を取らないってことになるんだろう? 知らない間にリセットされてるの? 仕組みも何もかも未知だから本当に怖い。

「ずっとこのままだったらどうしよう。ずっと成長しないで、置いていかれるの、すっごく怖い。どうしよう。モードさん、どうしよう」

言われたってモードさんだって困る。それはわかっている。だからずっと言えなかった。でもどうにも怖くて……。

「そんなことを心配していたのか」

頭の上にキスが落ちてくる。

そんなこと? そんなことなんかじゃない。

取り残されるのは、ものすごく怖い。こんなに怖いのに。

「魔素が安定すれば、26になるんだろ?」

なんでもないことのようにモードさんは言う。

「俺はてっきり、女性は歳をとりたくないものだって言うから、お前もそうしているのかと思っていた」

「どういう意味?」

「街中は魔素がどうしても少ない。お前この2年、ほとんど街から出てないだろ? 森に行ってもいいとこ半日だ。レベルと同じで魔素も歳によりいる分が増えていくんだろう。だからある程度森やらダンジョンに籠るとかしないと、魔素がたまらないはずだ」

「え?」

「そんなことで悩んでいたなんて。魔物を倒すと魔素をかなり浴びることができるぞ」

確かにここ2年、ほとんど街の中にいた。森に行っても半日いないぐらいだ。

嘘、そんなことでだったの? 力が抜ける。

「泣くほどだったか。ごめんな、気づかなくて」

モードさんの仮説が立証されたわけではないが、わたしは安心したみたいだ。首を横に振る。

「成長しないから、子供ができないのかなって思って。ずっとこのままだったら、ずっと子供もできないのかと思って。後継者が必要なら、第二夫人にお願いしなくちゃいけないかと思って……」

モードさんはわたしの顔を手で包み、目尻を親指で拭いてくれる。

「……そうだモードさん、子作り休暇申請する?」

わたしは自然に任せればいいと思っていた。子作り休暇ってなんだよとさえ思っていた。だけどさ、2年で区切りをつけられる世界では、そりゃ躍起になることだ。モードさんはわたしだけって思っていてくれるけど、周りはそう思ってくれないのが実情だ。だったらわたしも躍起になるべきだ。

おでこに優しく口づけされた。

「子作りの件は、そりゃできればそれで嬉しいが神の采配に任せるのがいいと思う。だってお前、まだこの世界に来てから5年経ってないだろう? 子供を宿し産むのは体にそうとう負担をかけることだから、お前の体が心配なんだ。自然にできたのなら、それは体の準備ができたってことなんだと思う。だから自然に任せるのがいいと思うんだ」

そうか、モードさんはそんなふうに思っていてくれたんだ。

「なぁ、ティア」

わたしの顔から手を離し、今度はわたしの手を取る。

「俺は冒険者になれば、身分のことは関係なくなると思ってたんだ。でも、きっと、周りはそう思ってくれないんだ」

やっぱりモードさんも同じように感じたんだね。わたしたちがどう思っていようが関係なく、思われる像により判断されてしまうのだ。

「隙を見せなければ、悪い人たちでもないんだがな」

ん?

「昔は貴族がいけすかなかった。身分をカサにきて、情勢で主軸がコロコロ変わって。なんでもないように上辺だけ取り繕って。そんなふうに見えていて、俺はそうはなりたくないと思った。けれど、護りたいものができてわかった」

わたしの頭に顎をのせる。モードさんの声が響いて伝わる。

「隙がある者がいると、そこにいつ付け込まれてどう情勢が変わるかわからない。生き残るためには。家族、一族を護るには情勢に敏感になり、隙自体をなくし、隙のある奴は排除する必要があるんだ。俺は都合のいいことに侯爵家の一員であるし、SS級冒険者でもあり、だから護りきれると思った。でも隙を攻撃された」

それはやっぱり、わたし……か。

「表に出る必要はないと思っていた。それで護りきれると。でも却ってお前を傷つけた。お前はすごい奴らに認められているから、もうそんなのを増やしたくなかったんだ。お前はこもり花で、アルバーレンの第一王子の特別だ。竜人族の次期長にも気に入られている。高位魔族にも知り合いがいて、神獣に好かれている。いろんな角度からお前は護られる。でも、人、特に貴族からだけは弱い。貴族は政略結婚が多いから、平民出身のお前になんの良さがあるのかと勝手に見下してお前を排除できると考える者が出るんだ。だから隠すのではなく、これからは出ていく必要がある」

出ていく必要?

うわぁ。浮遊感に心の中で声をあげてしまう。

モードさんに抱き上げられてモードさんの膝の上に収まる。後ろからしっかり抱きしめられる。

「時々、夜会に出席しよう。そこで、俺がお前を……どう思っているかは見ればみんなわかるだろう。ゼノ兄たちと相談してになるが、そこでふわふわパンをお前が発案したと世に出す」

え?

「あれを食べれば、この2年、ローディング家で出してきたものに、全てお前が関わってきたことだと推察するだろう」

そうか、ただの平民から発案者、アイデアを生む者であり、だからモードさんはわたしを選んだって思わせるってことね。

「多くの貴族はただの平民と思っていたお前が、金を生む卵だから俺が見つけだし囲ったと思うことだろう」

モードさんは笑っている?

「そんなふうに評価されていいの?」

「ああ。それで俺がお前を溺愛してると噂でも出れば、第二夫人なんて不愉快な思想を持つ奴はいなくなるだろう。お前は不労所得だけで十分暮らしていける財力はあるし、これからも金を生みだせるだろうからな。そんなことができる者はなかなかいない。世間に知らしめれば、お前にちょっかいをかけにくくなる」

「そしたら、わたしも守れる? モードさんや牧場や、ぴーちゃんたち、ここにいる人たち。そして大切にしたい人たちを」

「誰も手を出せないくらい……俺たちも、俺たちの愛する大切なものたちにも手を出せないくらいになろう。そうしたら護れる」

だからこれからは夜会に出るぞとモードさんは言う。ダンスもワルツだけでいいから練習するように言われる。

「練習するんだぞ、約束できるか?」

首の後ろに鼻の頭が当たっている。

ダンス全般じゃなく、一種類なところが、わたしのことをよくわかっている。

そりゃそれがベストだとは思うが、いかんせんわたしは運動音痴。どうしても嫌な気持ちがむくっと起きて、すぐに返事ができない。

「返事は?」

首の後ろに口をつけるから、モゾモゾする。

膝から降りようとすれば、抱きしめられた手に阻まれる。

「わかった、それやめて」

「ちゃんと約束しないとやめない」

「口をつけたまま喋らないでってば」

「ちゃんと約束しないとやめない」

モードさんは繰り返す。仕方なく約束する。

「わかった、練習する」

「よし、絶対だぞ?」

モードさんは機嫌よくわたしを持ち上げて角度をずらし、膝の上に横抱きにする。

おでことおでこが合わさる。鼻と鼻があたり、このときいつもモードさんって鼻が高いなって余計なことを思う。離れたかと思うとおでこに優しく唇が触れ、まぶたにもしてくれる。離れていく気配がしたので目を開けると、水色の瞳と目が合う。それはとても愛おしいものを見る目で、トクトクと胸の鼓動が高まっていく。わたしの耳たぶに触れて、顔を近づける。優しく下唇を喰まれて、身の置き所がなくなるような、キュンとした甘い予感が走る。

と。シュタタタタタ。

あ。唇が離れ、モードさんは残念そうに微笑う。

クーとミミのための出入り口がパコンとこちら側に飛び上がって、ふたりが滑り込んでくる。

『眠りゅの? ティア、具合わりゅいの?』

ベッドにいたからだろう。

「違うよ。モードさんを抱きしめてたの」

クーとミミの尻尾がピンと立った。

『おもしゅりょそう、わたしもやるー』

『俺しゃまも!』

ぴょんとベッドに飛び乗ってきて、モードさんに張り付く。いつもと同じで張り付いているだけだけど、ふたりは抱きしめてるつもりだろう。

ぴとっと平たくなってくっつく様が可愛い。

『ティア、ティアもやって』

『ぎゅーって』

ふたりに被さるようにして、モードさんを抱きしめる。

わたしのとても大切な人。

「よし、じゃあ、お返しだ」

モードさんの腕がわたしたちを取りまとめ、3人一緒にぎゅーっとしてくれる。

わたしは牧場のオーナーであり、モードさんの妻である。それを手に入れたと思っていたのに、居場所というのは時と同様に1秒毎に姿を変えるみたいだ。

そうだね、行きたかった先が妻やオーナーだったわけではない。わたしは愛するモードさんと一緒に時を重ねたいのだ。増えてきた大切なものを手をいっぱいに広げて護りたいだけだ。

けれど、それらはいつまでも同じように手にしていられるわけでなく、常に様相を変えてくる。わたしは一緒にいたいなら、護りたいのなら、その居場所を勝ち取っていかないとなんだね。オーナーとしてこの牧場を護り続けるのに奮闘しているべきであり、モードさんの伴侶でいるためにわたしは奮闘して勝ち取っていないとなんだ。その立場に甘えているだけなら、いつ流されるかなんて誰にもわからない。

そう勝ち取るのだ。甘えた考えの自分から。いつでも、その居場所を。

抱きしめたモードさんの鼻の頭にキスをする。ずーっと一緒にいたいから。モードさんの横にいつもいられるように願いを込めて。

下からの視線が熱い。ふたりの期待に応えて、クーとミミの鼻先にもチュッとする。

モードさんが軽くわたしたちを抱きしめたまま、後ろに倒れる。浮遊感にクーとミミは大喜びだ。

『もういっかい!』

リクエストに

「どうすっかな?」

とあしらいながら、わたしの頭の天辺に口を寄せる。

「今のが気に入ったなら、もっと凄いのをやってやろう。まずはお茶にしよう。1階に誰が一番先に着くかな?」

クーとミミはすっごい勢いでモードさんの胸からベッドにおり、床に降りて、出入り口に頭を突っ込みシュタタタタタと軽快な足音をさせ一階へと降りていった。

モードさんはわたしを横だきしたまま起き上がり、しっかり名残惜しそうに口づけをした。

「さ、お茶にしよう」

お姫さま抱っこのまま立ち上がるので降りるよとは言ってみたが、モードさんはそのまま歩き出す。

『俺しゃまが1番だった!』

『わたしがしゃきに席に着いた!』

クーとミミはどちらが先に着いたかで揉めていた。

わたしはお茶の準備をして、モードさんはクーとミミの仲裁に入っている。

余談だが、モードさんが言っていた〝もっと凄いの〟とは、クーとミミでジャグリングすることだった。見たときわたしは固まったが、クーとミミは飛べるし、大喜びだから……いいのだろうか。それにしても生き物で……ブルードラゴンでジャグリングなんて……。神獣でジャグリングなんて……。

モードさんとわたしはミルクティーにして、クーとミミはホットミルクだ。作り置きのフレンチトーストを一口大に切って盛り付け、アイスをトッピングする。

テーブルに持っていくと、クーとミミは目を輝かせ、機嫌もなおっている。

熱々のフレンチトーストにアイスが溶け絡まって、より濃厚になる。

『ティア、これしゅき! いっぱい、じゅあーって』

『おいしー。これしゃーわせ!!』

「うまいな!」

フレンチトーストだけでおいしーのに、さらにアイスのせだからね!

「次の休みはホリデのダンジョン行くか? 森がいいか?」

「……ホリデのダンジョン、いいね。お魚獲れるし。あ、でもわたしのレベルだと」

「これからはしばらくお前が主で戦うんだ。フォローはするから。魔素を浴びるんだろ?」

「うん、そうだね」

魔素を浴びて、早くモードさんの歳に追いつかなくては。

日の当たる居間で、大切な人たちとおいしいものを一緒に食べたり飲んだりする。わたしはそれが大切で、他にも大切なものがいっぱいある。欲張りだから大事なものは全部諦めたくなくて護りたい。それにはいっぱい自分に課することがあって、時々挫けるかもしれないけれど、でもやっぱり、諦めたくないと思う。

わたしは勝ち取りたい。

怠惰な自分から、手を広げればきっと護れる自分の未来を。

<里帰り編 完>