軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130話 新たな出会い

王様からの呼び出しでビビりまくったが、皆様の協力あって、すんなり帰ってくることができた。王都見学もできたし、楽しかった。

ビルドーは帰ってから、スタンお兄さんとダイアナさんと長く話し込んでいた。夕食に現れたときはスッキリした顔をしていた。

お世話になったご挨拶をしたときに、スタンお兄さんからお礼を言われた。あの甘ったれが、君の考え方に感化されたようだ、と。自分は視野が狭かった、と。いろんな立場の人がいることは知っていたけれど、理解はしていなかったのだと。それを理解できるよう、自分にしたいことをみつけられるまで、もう少し時間が欲しい、学校を卒業するまでになんらかの答えは出すから待って欲しいと伝えたらしい。

ビルドーは手始めに、試験休みを利用して興味を持った場所に赴いたらしい。ずいぶん後にまた違う 伝手(つて) でビルドーの名前が飛び出し、わたしは驚くことになる。

帰ってきて、まずぴーちゃんに挨拶に行くと、何故か増えている。

ぴーちゃんの弟とその彼女だそうだ。そしてその友達も。

パズーさんがぴーちゃんのお願いで森に連れていくと弟たちがぴーちゃんの行方を探していて、話し合いの末、パズーさんがテイムすることになったらしい。

ぴーちゃんの弟はまだ小さいみたいだけど、ぴーちゃんよりも体はかなり大きかった。その友達だという子も大きいし、羽が青びかりしている。グリーンがかっている子もいる。雄ってこういうふうなんだ。弟の彼女ちゃんは人懐っこく、わたしの匂いをかぎに早速近寄ってきた。

ぴーちゃんと戯れていると、自分もやってほしそうにするので顎のところをかいてあげると首がもげそうなほど傾げてくる。愛い奴め。

ちなみに呼び方を決めてくれと言われ、パズーさんがつけてくださいよと押し付けあったが、結局わたしがつけることになった。ぴーちゃんの弟がペー君で、彼女はポーちゃん。お友達はマー君とムー君とした。

それから、ホルスタちゃんがいた。

「どうしたんですか?」

パズーさんに尋ねると頭をかく。

森に行った時に、遭遇したそうだ。ホルスタちゃんまで、すごい! メスだ! 牛乳だ!

パズーさんは凄腕のテイマーだね。テイムもそうだけどさ、元のテイムしたい子に会えなければ始まらないもんね。それができてるんだもん。ちなみにモーちゃんと呼ぶことにした。

ケイリーさん、ペクさんとも挨拶を交わす。作業に加わろうと思ったが、コッコやホルスタちゃんたちの世話も抜かりないし、畑もバッチリだ。手持ち無沙汰なので、外れたことをやらせてもらおう。山裾を少し探索したいと思っていたんだ。

水がチョロチョロ流れてくるなと思っていると、山頂からの雪解け水だ。驚くほど冷たい。地面が濡れているので、クーとミミがわたしの肩に登ってきた。ぴーちゃんだけはわたしについてきていた。水の流れを追って、少しだけ山を登ってみる。緩やかな傾斜を上り切ると、そこは雪解け水が溜まっていて田んぼみたいになっていた。その大きな水溜りの中にところどころ群生して見えるのは、まさか!

わたしの喉がゴクッと鳴った。

この特徴ある葉っぱはひょっとして。水たまりに入ろうとすると、洋服の背中部分をぴーちゃんに咥えられて、引き戻された。

『水の中に入るなんて、危ないわよ』

『そーよ、ティアはしゅぐ熱だしゅんだからダメよ』

おしゃま同盟が出来つつある。

でも、この世界に長靴ないだろうしな。パズーさんか誰かにわざわざ来てとってもらうのも悪いし。

「ねーちゃん、何やっているの?」

可愛らしい声で呼びかけられた。

顔を上げれば、小学低学年ぐらいの小さな子供が5人ほどいた。小さなどの手にも袋を持っていて、山の恵をいただきにきたんだろうことが窺える。

「それを取ろうと思ったんだけど、止められているの」

わたしは群生している、葉っぱを指差す。

「これが欲しいのか?」

明るい茶色の髪の男の子が、なんの躊躇いもなく水たまりにざぶんと入る。

水、すっごく冷たいのに。男の子は表情を変えることなく、突き進み、葉っぱに手を掛ける。

「根っこごと引き抜ける?」

「根っこごと?」

男の子は水の中に手を入れて、グイッと引っ張る。

水の中から現れたのは、あのフォルムは山葵だ!

「5つぐらい引き抜いてもらえる?」

少年はこくんと頷いて、葉ごとの山葵を5つ引き抜いてくれた。

まとめて渡してくれる。

「ありがとう!」

ズボンと靴を風魔法で乾かした。

「すげー、魔法?」

目を見開く。

そしてクシャミをした。

「風邪ひいちゃうから、家に来て」

5人にそういうと、オドオドした調子でわたしを窺う。

「こんくらいで風邪なんかひかないから大丈夫だよ」

「クシャミしたじゃん。家で暖まってから帰って」

「ねーちゃん、ボクジョーの人? おれたちが山に入ってたこと怒る?」

「山に入っちゃいけないの?」

危ないからかな?

「ここは領主様の地だから」

「そうなんだ。まぁ、とにかく、話は後で、家に行こう」

わたしは問答無用で男の子の手を引っ張った。働いている手だった。まだ小さいのに。

「みんなも来て。わたしはティア。この牧場主のひとりだよ」

怪しくないことを伝えておく。

みんなモジモジしている。

「コッコだよね。ねーちゃん、テイマーなの?」

「うん、そうだよ。ぴーちゃんっていうの」

「肩にいるのは猫ちゃん?」

「そう、クーとミミっていうの」

子供たちはぴーちゃんやクーやミミに興味を持ったみたい。話しかけてきてくれたのもわたしにというより、ぴーちゃんたちのことを知りたかったからかもしれない。キラキラした目で見て、触れたそうにしている。後で、ぴーちゃんたちがいいと言ったら触れてもらおう。

まぁ、まずはお風呂だ。

「ねーちゃん、もっと早く歩いていいよ。おれたちそんなやわじゃないから」

くっ。

と、ペクさんがわたしたちに気づいて、こちらに来る。子供たちがちょっと怯える。

「どうしたんです?」

「この子たちに収穫を手伝ってもらったの。濡れちゃったから、お風呂に入って温まってもらおうと思って」

「風呂!?」

わたしが捕まえている少年が素っ頓狂な声をあげた。

「ティアさん、コッコに乗せてもらって先に風呂の用意をしてください。子供たちは私が連れて行きます」

「コッコに乗って?」

わたしがぴーちゃんを見上げると、ぴーちゃんは首を振った。

いや、それはいくら何でも。

「ティアさんの速度だと、それこそ風邪ひいちゃいますよ」

そう、牧場はかなり広い。山裾からだとログハウスまで結構な時間がかかったりするのだ。家自体は見えているのにね。歩いても歩いても近づかないんだよ。

ぴーちゃんに服を引っ張られる。

「重たいよ?」

『ティアぐらいなんともないわ』

ぴーちゃんが屈んでくれたので、わたしは失礼してまたがった。

首の付け根に力は入れないよう気をつけてしがみつく。

「じゃぁ、ペクさん、家までみんなをよろしくね」

ぴーちゃんはゆっくりと歩いてくれたが、それでもわたしが歩くのよりずっと早かった。ひょっこひょっこ揺れるので、クーとミミは大喜びだ。内腿で体を支えるのは普段使わない筋肉を使ったけれど、ゆっくりだったのでなんとかなった。

これは牧場内の移動手段を考えねば。

ログハウスでお風呂を沸かし、というか栓をしてお湯を溜め、予備のタオルを用意する。男の子3人と女の子ふたり。服は着てたのを着てもらうしかないな。水で濡れたのは男の子だから、男の子たちが先で。あとはおやつ。何がいいかな。ホットケーキでいいか。リンゴン酵母の液を粉と馴染ませておく。ペクさんたちが到着だ。

ペクさんにお礼をいって、子供たちを迎え、そのままお風呂に案内する。お風呂の使い方を一応教えて、男の子たちに先に入ってもらう。ひとりじゃ入りづらいだろうから、まとめて入ってくれるといいなぁと思っていたら、一番小さな子が好奇心旺盛で入る気満々だったので、問題なかった。

女の子たちは居間に戻してちょっと待っててもらう。嫌な場合もあるかと、よかったらこの後、お風呂入る?と尋ねると、ふたりは顔を見合わせてもじっとしたけれども、入ることになった。人魚のお湯を出すところを見て歓声あげてたもんね、興味はあったと思う。

山で何を取っていたのか成果を見せてもらう。山菜を頑張って取っている。一つずつ、何を取ったか教えてくれた。

しばらくすると男の子たちが石鹸の匂いをさせて、火照った顔で飛び出してきた。女の子たちをお風呂に誘導して、男の子たちの髪をタオルでゴシゴシやる。逃げようとするので、とっ捕まえた。

ワサビを取ってくれた子がテオ、7歳。金髪のテオより小さい子がマロン、6歳で、赤毛のやんちゃっ子がロビン6歳。お風呂に入っている薄いグリーンの髪の子はシェイラ7歳。薄いピンクの髪の子はアイラ、6歳。みんな小学1年生ぐらいだね。

ご近所さんの子供たちかと思いきや、エーデルの孤児院の子たちだった。痩せてはいるけれども、目は生き生きしているし、パワーも十分な感じだ。服も古いものを大切に着ている感じはするが、大切に育てられているのを感じて、ほっとする。温かい街でよかった。

わたしがホットケーキを作り出すと、興味津々で男の子たちがついてくる。出会ってまもない頃のクリスとベルンを思い出す。

「それなぁに?」

赤毛のやんちゃっ子ロビンがタネの入ったボウルを指さす。

「生地だよ。ホットケーキを作ろうと思って。あ、なんか食べちゃいけないって言われているものある? 食べて苦しくなったことのあるものとか?」

みんな首を横に振った。

ちょっとだけ発酵。きれいに膨らみますように。

少しだけ願いをかけて、熱くした鉄板を一度フキンの上に置いて冷ます。

再び火の上に鉄板を置き、バターを入れて溶かす。ジュワーと溶けたら生地をオタマで落とす。円状に広がっていくのを眺める。

生地が膨らんでいく。泡がポツポツと出てきた。泡だらけになったら、フライ返しを鉄板の下に入れて、えいやとひっくり返す。きれいに剥がれたし、きれいにひっくり返すことができた。少し待って、焼けたらお皿にin!

この調子でどんどん焼くよ。5人のお客様で10枚。わたしとクーとミミで2枚。ルークさんとペクさんとパズーさんとケイリーさんで8枚。25枚ぐらい焼けばいいか。わたしはどんどん焼いていく。お皿を取ってもらったり、子供たちをどんどん使う。

途中で女の子たちがお風呂から上がってきた。

男の子たちに、さっきのペクさんにおやつだからログハウスに来てくださいって言ってきてもらう。その時にあと他のふたりに伝言をって伝えてくれる?とお願いする。

蜂蜜と追いバターを用意する。アイスは後からにしよう。飲み物はミルクだ。

ちょうどテーブルの用意が整う頃、ペクさんたちも戻ってきた。

みんなでいただきますだ。

わたしはみんなで食べている間に女の子たちの髪をドライヤーで乾かす。風邪ひいちゃったら大変だからね。

食べにくいだろうけど、勘弁だ。マナーも悪いけど。

終わるとありがとうとはにかむ。ご馳走様です。なんて可愛いんだ。

みんなの残り3口になったところで、待ったをかける。アイスをトッピングしてまわる。

これ美味しいけど、わたし的にはお腹が急激にいっぱいになるんだよね。だからアイスのトッピングは最後の最後にしているのだ。

こんなおいしいの初めて食べたと喜んでくれて、なぜか表情が暗くなる。

え? 何かしちゃった?

「ロビン」

テオが窘めている。

「いや、いいんだよ。どうしたの、ロビン」

ちらっちらっとわたしを上目遣いに見ながら、言っていいかどうか迷っているみたいだ。

「みんなに……」

「ロビン」

今度はシェイラから注意がとぶ。

あ、そっか。わたしの考えが足らなかった。

「そうだ、お近づきの印に、今度みんなを招待するから、ランチパーティーをしよう!」

いいことを思いついたと思ったが、みんなぽかんとしている。

「ええと。ご馳走を用意するから、みんなで食べに来てもらって、これからよろしくねって挨拶したいんだけど」

子供たちを送っていく時に、孤児院の方に挨拶すればいいかと思ったのだが、みんなからダメ出しをもらう。夕方からのわたしの足だと、帰りが夜になるって。今日はパズーさんがみんなを送ってくれることになり、わたしは明日、パーティーの話をしに孤児院に行くことになった。

わたしが冒険者だというと、みんな、すんごい顔をする。

「足が遅くても冒険者ってなれるんだ」

わたしはテオのほっぺを引っ張ってやる。

「足は遅くない」

「ねーちゃん、そう思いたいのはわかるけど、現実は見た方がいいよ。7歳のおれから見ても、ねーちゃん歩くの遅いよ」

「6歳のおれもそう思う」

「お姉ちゃん、あたしより、遅い」

アイラの言葉がとどめになった。

子供からも思うほど、遅いのか。

でもちょっと心当たりがある。子供の時より足は長くなっているはずだ。足が長くなるということは歩幅が広くなるはず。だから絶対に前より速く歩けているはずなのに、自分でもあんまり速さを感じられない。それよりも体が大きくなって重くなった分、疲れるのが増した気がする。

ん? 太ったってこと? まぁ、それはそうかも。好きな物を好きなだけ毎日食べてるもんね。それか、それで、遅くなったのか??

『歩くのがおしょくても俺しゃまはティアがしゅきだぞ』

『わたしもよ』

「ありがとう」

慰めになってはいないけど、気持ちは嬉しいので、頬擦りしておく。