軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

940 七五三、集団編

俺のダイエットも長続きしてきた。

ジュニアが授けてくれる『海上ジョギング』も功を奏し有酸素運動もいい感じで行えている。

当初は出くわした漁師に妖怪変化の類と間違えられるトラブルもあったりしたが、段々と理解を得られて今ではすれ違うたびに挨拶してもらえるようになった。

プラティからは『水泳じゃダメだったの?』と正論パンチを頂くこともあるが、これはこれでいいんだ!

海面なら、踏みしめる際にショックを吸収して、膝に負担がかからない。

本当なら足ごとズボッと沈み込むべきなんだろうけどその辺はファンタジー設定だ。

さらには地面のように小石なり、ガラス片などが埋まっていて足を傷つけるということもないし。

実は『海上ジョギング』とは、体に負担なく脂肪を燃焼させられる理想的なダイエットだったのだよ!!

……まあ、皆ができればそうなのかもしれないが。

そんなして時間が過ぎていき……。

ここ数年恒例になっていた行事がやって来る。

我が子ジュニアとノリトの誕生日だ。

本来なら誕生日は人それぞれにあるものだが生憎この異世界に暦はない。

なので一年の同時期に生まれたこの兄弟を、この時期一緒に祝うようにしている。

さらには異世界からの風習を取り入れて、七五三の祝いも執り行うようにしてきた。

七五三。

俺もそこまで詳細に把握しているわけではないが、子どもの成長を喜び祝うための行事。

遥かな昔は医療も整わず、幼児がちゃんと成長する可能性が低かったので、なおのこと切実な喜びと祝いだっただろう。

その名の通り三歳、五歳、七歳の節目に行われる。

ただやはり昔の行事なので『正確にはいつやるの?』『昔って数え年だったんだよね?』『生まれた時点で一歳?』『ホントいつやるんだよ』的に悩んだものだがもうそこはもうルーズにやろうという方向性で固まっている。

現在は、具体的に『七五三で何やるの?』という疑問に応えて、建築された異世界天満宮へ詣でに行くという行動も固まっている。

今年はスンナリと進みそうだな。

もちろんジュニアとノリトのために誕生日プレゼントも事前に用意しておいた。

ジュニアには、こないだのS級昇格試験の最中に興味を持ったらしい教王護国 寺二十一尊立体曼荼羅(レプリカ) を。

ノリトには、仮面セイジャーグッズとして開発されたDX召喚器セイジャバイザーをそれぞれ作成しておいた。

これで我が子たちが大喜びなのは間違いない。多分。

そしてあとは当日に異世界天満宮に詣で出てお札を納めて、ついでに御朱印でもいただいて帰れば上出来だ。

……という甘い目論見を持っていた。

しかし今年の真の問題は、自分の家族の外にあったのだと……。

* * *

異世界天満宮は、その日も梅の花で満開だった。

「さすがに節操がねー」

本来ならば梅の花の季節はとうに過ぎ去っているのだが、ここに植えてある梅の木がいささか特殊で、こうして特別な日には無理難題聞き入れてロケーションに協力してくれる。

有難いやら恐ろしいやら。

そしてこの異世界天満宮に、さらに他なる家族も一堂に集っていた。

人魚王アロワナさんとパッファ夫婦、その息子モビィ・ディックくん。

その側近ヘンドラーくぅんとランプアイ夫婦、その一女ハーフムーンちゃん。

さらに魔王ゼダンさんと第一魔王妃アスタレスさんの第二子ベルゼビアちゃん。

そしてウチのジュニア&ノリトブラザーズ。

さらには第二魔王妃グラシャラさんの長女マリネちゃんも来ている。

我が農場に関わる新世代たちが一堂に会する催しとなっております。

……あれ?

新世代ということで引っかかったんだけど、そう思うと一人たらなくない?

そう、魔王さんとこの長男こと魔王子ゴティアくん。

「ゴティアは……、今日はわけあって留守番させている。守役に預けてな」

ええ?

そんな、魔王一家総出で参拝しているのにゴティアくん一人だけ?

可哀想に。

農場ベイビーと称すべき中で一番最初に生まれたゴティアくんも、今日の催しにお呼ばれする資格は充分あろうに。

あ、もしかして七五三ということで七歳五歳三歳しか参加資格ないと思われました?

大丈夫ですよその辺の基準かなり緩やかにしてありますから、遠慮なく呼んでいただいても!

「いや……ゴティアを連れてこなかったのには、他に今一つ理由があってな……」

「?」

なんかいつになく歯切れの悪い魔王さん?

「このあとで相談に乗ってもらいたいのだが、よろしかろうか?」

はい?

魔王さんの頼みとあれば喜んで?

まあ、とにかく今は子どもたちの成長を祝おうじゃないですか。

そのためにお出ましいただきたい御方がいる。

『……今年は千客万来じゃのお』

この大集合を一番驚いているのはここ異世界天満宮の祭神でもある菅原道真公。

勉学の神様でもあらせられる。

「子どもたちの成長を祝う行事だと聞きつけて参加者が増えまして……!」

『いいことじゃ、いいことじゃ。子どもらで賑わうのはいいことじゃ』

元々子ども好きらしいこの神様、参拝客が増加するのも大歓迎らしい。

成長の祝事はしめやかに行われた。

『ではこの北野天神みずから子どもらに成長の祝いを捧げよう。払いたまえ清めたまえ……!』

冷静に考えて神様みずから祝ってくださるって大概じゃね?

普通、神様の代理人というべき宮司の仕事だろうそこは。

代理人がおらずに神様が直接神事を執り行う異世界天満宮ヤベェ。

『羨ましいですぞぉ……!』

『はッ!?』

そこへ現れる怨念。

怨霊のごときおどろおどろしさで出現したのはノーライフキングの先生ではないか!?

『ワシだって子どもらの成長を寿ぎたいというのに……! 神だからと言って美味しいところをかっさらっていきすぎではありませぬかぁ……!!』

『何を言う! これこそ平安の御世より受け継がれし神の役割ではないか! 文句があるならお前も神として崇め奉られればよかろう!』

『ワシだって不死の王となってより千年が流れているのですからほぼ神と言ってもよかろうでしょう! 神事を執り行う資格はあると思いますが!?』

『ワシとて神なる身となってから千百年の歴史を積んどるわぁあああッッ! 勝ってはいるが思ったよりギリギリだった!』

先生も子どもらのことになるとムキになるんだから。

ハデス神やポセイドス神じゃないんだから仲よく祝ってやってくださいませ。

そんな感じで子どもたちはこれまでの成長を喜ばれ、そしてこれからの成長に災いなきことを祈られるのであった。

本当に、この世界こうした神事が全盛だった頃の時代に近い文明世界なので子どもが無事育つかどうかも決して楽観できない。

そんな世界観で生まれた子どもたちが誰一人として欠けずにここまで成長してくれたことは素晴らしいことだ。

これは素直に感謝すべきことだろう。

子育てに関わってくれたすべての人々に、天に地に、そしてそこから生み出される恵みのすべてに。

もちろん俺と一緒に子育てに尽力してくれたプラティや、他すべての父親や母親。

ここまで育ってくれた子どもたち自身にも。

さらには神様にも。菅原道真公とか。

ハデス神やポセイドス神?

……。

うーん……。

うん!

「いやぁ、まあ? 本当にめでたいわよね、皆無事に育って……。でも、無事に育てるだけが子育てじゃない、とは思わない?」

「は?」

いいえ?

無事に育ってくれたらそれだけで充分ですけど?

わんぱくでもいい逞しく育ってほしい。

しかし誰だ、そんな過大な要求を我が子に寄せている人物は?

……ウチの嫁だ。

プラティだ!

「いや失礼、何も我が子に負担を掛けたくてのセリフじゃないのよ。むしろ期待というより結果? ウチの子はまあまあ、よそ様より立派に育ちましたって言うの?」

なにやら自慢げに言う。

「聖者と呼び声高い旦那様と、人魚国の王女にして『王冠の魔女』でもあるあたしとの間に生まれた子どもなんだから、まあよそ様の子どもより優れているのは致し方ないけれど……!」

「うっせぇ! ふざけんなよ!」

打てば叩くように反応するのは、もう一人の魔女パッファ。

人魚王妃にして、プラティからすれば『実兄の嫁』と関係性も深い彼女とはいわば昵懇の仲だ。

それだけに軽口も、容易にヒートアップしやすい。

「アタイの前でよくも言えたものだねぇ! ウチのモビィ・ディックくんは次期人魚王に相応しい才覚の持ち主なんだよ! もう三歳にしてその出来のよさは滲み出てるんだからね!」

「それこそ身内の贔屓目ってヤツじゃないの? それに比べてウチの子と言ったらねえ……!」

あッ、ヤバい……。

これは悪い流れだ。