軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

89 反省会

そんな感じでヴィールが改造した新生・山ダンジョンの体験会が終了した。

体験した皆から一通り意見を聞いていきたい。

「疲れた」

開口一番言い放つのはプラティ。

「そもそも今回ダンジョンを改造した目的は、難易度の上がったダンジョンに、有用な素材になる新しいモンスターが発生するかどうかチェックするためでしょう?」

たしかにそうだ。

「それなのに、あんなにバカ広くというか標高うず高くして、歩き回るだけで疲れるのよッ。有用なモンスターを捜し歩く場合じゃないわ!」

「エリアによってはバカに暑かったり寒かったりで、余計体力を消耗しますしね」

ランプアイも、プラティの意見に賛成なようだ。

まあたしかに、食肉なり毛皮なりに利用したいモンスターが急きょ必要になった時、遥か頂上の近くまで狩りに行くのは不効率だよなあ。

自然相手にそんなこと言う時点で舐めてんのかって話かもしれないが。

ダンジョンが自然であるかどうか、という段階から謎でもある。

「そんなこと言ったって、豊富にモンスターを発生させるには一定以上の広さは必須だぞ? それにマナが濃縮されどんなモンスターが生まれるかは周囲の環境が大きく関係する!!」

幅広い種類のモンスターが発生することを見込んで、様々な環境を用意したと?

「ダンジョンのエリアを四つ+一つに分け、まったく違う環境に整えたのもひとえに多種多様なモンスターを生み出そうとしたがゆえだ! 春エリアと秋エリアだって、実は湿度とかにけっこうな違いがあるんだぞ!」

と、弁明するヴィール。

「で、実際に獲れたモンスターの利用状況はどうなってる?」

「報告します」

モンスターチームを代表して発言するオークボ。

「まず一合目で獲れたスクエアボア十数頭ですが、これはいつも通り血抜きのあと解体し、しかるべく料理して美味しくいただこうと思います」

うむ。

アイツらはもうお馴染みだな。

「次に二合目で初めて遭遇したロータス」

「あの回転飛行亀か」

「甲羅の中身は、臭みの強い肉でとても食用にはできませんでした。ただ甲羅の方は硬く形もよいので、何かに転用できないか試行中です。皿とか、盾とか……!」

なるほど。

甲羅の盾とか強そうだな。

俺もあとで試作に参加してみるか。

「三合目……、夏エリアで出会ったハイリカオンは……。有効利用とかそれ以前の問題でですね……!」

生きたまま勝手についてきた。

あの狼型モンスターたちは、イヌ科動物の本能で俺を勝手に主と仰ぎ、ダンジョンクリアするまで進んで同行し、進んでこの農場に住み着いてしまった。

「何頭ぐらいついてきたんだっけ?」

「八頭ほどですね。現在は自分たちの意思で農場を周回し、縄張りを主張しているようです」

まあいいんじゃないかな?

我が農場も最近になってかなり広くなったし。作物を狙う鼠などを襲って食べてくれる狼は率直に益獣だ。

家畜を育てる場合は、それを襲わないよう注意する必要があるが。

ヨッシャモを食べてしまわないよう注意しないとな。

「ハイリカオンは、我が農場の新しい仲間として迎えることにしよう。あと秋エリアのオバケキノコは?」

「人を狂わせる胞子をばらまくアイツよね。やっぱり本体にも、人体によろしくない成分が入っていて食用にはできないわ」

プラティが代わって報告してくれる。

たしかにあのキノコは不気味すぎて食う食わない以前の問題だった。

でもやっぱり食べたいなキノコ。

菌糸類のシャクシャクした食感が懐かしくなってきた。ガラ・ルファ辺りと協力して育ててみるのもいい。

『至高の担い手』で苗床になる木でも触れば、シイタケやエノキとか発生しそうだし。

「最後に、五合目で出会ったクマモンですが、やはりダンジョンに居残った形跡はありません」

「…………」

「外の世界に旅立ったようです。修行の旅です。いつか強くなって再び我が君に見えようと……!」

……大丈夫だ。

アイツとはまたきっと出会える。

さて、では総括的な感想を農場主の俺から言わせてもらうとするか。

「たしかにちょっとアトラクション性が強すぎる作りになったな。新しい素材をゲットする目的から考えると非効率だ」

「ご主人様ぁ」

ヴィールが泣きそうな声を上げた。

彼女自身作ってる途中で楽しくなってきたんだろうな。

いずれダンジョンを攻略する俺たちが、この仕掛けにどんな反応をするんだろうなあ……? 的なワクワクをもってダンジョンを仕立てていたに違いない。

そんなものづくりの楽しさは大いに共感するところであるが、その楽しさに引きずられて『効率の良い狩場を作る』という趣旨から外れてしまったのは問題だ。

これは修正していかなければな。

「ただし」

「?」

「ダンジョン内をエリア分けして、それぞれ違う環境を整備したのは面白かった。あれを見て新たに思いついたことが色々あった」

一合目を通常エリアにして、二合目、春。三合目、夏。四合目、秋。五合目、冬。

今のところそれぞれの違いは気温程度だが、その気温こそ環境のもっとも基本的なところ。

一年通しての平均気温によって獲れる作物も大分変ってくるのではないか?

「今まで考えたこともなかったが……」

「はい?」

「ダンジョンで農作業する、というのもアリだな」

年間を通して気温の高い夏エリアや、気温の低い冬エリアに適した作物もあるだろう。

何を作っていくかはこれから具体的に考えていくとして。

「よくやったってことだよヴィール」

そう言って俺はヴィールの頭を撫でてやった。

「うん!」

そしてヴィールは心底嬉しそうに笑った。