軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

88 頂上

五合目を抜けると、またしても周囲の風景が様変わりした。

暑くもなく寒くもなく。

そして全方位に向けて見晴らしがよい。

俺たちが立っている地面はほんの小さな範囲で、地平の限り雲海が広がっていた。

「ここが……、終点?」

「そうだ! 頂上だ!」

作り主であるヴィール本人が言っているので間違いあるまい。

やっとダンジョンを制覇したか俺たち。

「はー、疲れたわねえ」

プラティや他のメンバーも疲労感いっぱいだ。

『聖者殿、よくぞここまで来られましたな』

「あっ、先生」

入り口付近でボッシュートされた先生とも合流できた。

「さあ、用が済んだらさっさと帰りましょう。夕御飯の前に体を洗いたいわ」

「わたくしもさすがに疲れました」

とプラティ&ランプアイ。

山登りなんてただでさえ疲れるのに、暑かったり寒かったりモンスターと戦ったりで消耗したことだろう。

「我らは、モンスターの素材を整理したく思います」

そしてオークボたちは勤勉だ。

そうやって全員がお疲れ様ムードになっていると……。

「何を言っている? まだ最後の一戦が残っているではないか?」

とヴィールが血迷ったことを言いだした。

「最後の一戦? 何?」

「ダンジョンを制覇したと言うなら、その主を倒してからでないとな。つまり、このおれを!!」

その瞬間、頂上の雰囲気が変わった。

苛烈なる闘気と共に、天空から飛来する銀色の鱗を持ったドラゴン。

ドラゴン形態のヴィールではないか!?

「あれ、でもこっちにも人間形態のヴィールが!?」

あっちにもヴィール、こっちにもヴィール。

ヴィールが二人いる!?

「ドラゴン姿の方はおれのマナを分けて作った分身体だ」

「そういやそんなの前にもやってたな……!?」

「めっちゃ薄めたから本体であるおれの百分の一程度の強さしかない。今回の催しの最終関門にはちょうどいいだろう」

それでも街一つか二つを壊滅させるパワーは充分あると思うな!

もう勘弁してください皆ヘトヘトなんです!

どうしたものかと戸惑っていたらドラゴン形態の分身ヴィール、迷わず炎のブレスを吹きかけてきやがった!?

本当にこれで百分の一程度なの!?

このままだと全員一瞬にして消し炭になるので、邪聖剣で炎を斬り払おうとした寸前。

何か巨大な影が、炎の向かって突進していった!

そして鉤爪一閃、巨大な炎を打ち砕く!

「あ……!」

「あれは……ッ!?」

さっき助けた熊モンスター!?

アイツがここまで追ってきて、ドラゴンの炎から俺たちを助けてくれたのか!?

「グルルアアアアアアアアッッ!!」

勇ましくドラゴンに向かって吠え掛かる熊。

全長三メートルに達する巨体のアイツだが、それでもドラゴンに比べたら鼠程度のスケールだ。

なのに……!

戦うつもりなのか、アイツと!?

まさか助けた恩を返すために!?

「グルアアアアア……!!」

『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!』

睨み合う巨獣二頭。

だが形勢は圧倒的に小さい方が不利。

しかし、自分が弱い側に回ったとしても猛獣は怯まない。

強者の誇りを曇らせず、果敢に立ち向かっていく。

そして……。

* * *

「倒した……!」

激戦の末、猛獣は巨竜を打ち倒した。

核を破壊されたヴィールの分身体は、自身を維持できず純粋なマナに還って霧散していく。

『勝つとは……!』

その結果に、不死の王である先生ですらビックリしているようだった。

『マナで作り出す分身体は、核を破壊しさえすれば簡単に倒せるという弱点を有していますが、しかしそれでもグリンツェルドラゴンであるヴィールを倒してしまうとは……』

「先生、あの熊モンスターって、相当な強豪種なんですか?」

『わかりませぬ』

ええー?

『初めて見る種のモンスターです。ワシに見覚えがないということは、恐らく新種でしょう。しかし分身とはいえドラゴンを倒すとは、過去最強と言ってよいかもしれません』

すげぇー。

ノーライフキングである先生に、そこまで言わせるとは。

お。

こっちに来た熊。

激戦でヨロヨロだけども、足取り自体はしっかりだ。

俺の目の前まで来て、頭を下げた。

なんだ?

助けてくれてありがとうって言ってるのか?

「お前も、一緒に来るか?」

頭を撫でてやろうとしたが、熊はすぐさま踵を返し、どこぞへと歩き出す。

去るのか?

一体どこへ行く?

「我が君……、同じモンスターである私にはわかります」

オークボが言う。

「彼は誇り高い獣なのです。敗北して軍門に下ること潔しとしません」

「そうなのか?」

「今の一戦で命を救われた礼とし、さらなる孤高の旅に出るようです。経験を積んで強くなり、いつかアナタの認められる強豪となるために……!」

別にそんなことしなくても認めるのに。

しかし去ってゆく巨熊の背中には、冒しがたい孤高の輝きがあった。

いつか彼に再び会う時が来るだろう。

それまで壮健で。

クマモンスター。

略してクマモン。