軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

881 神々の宴・新旧入り乱れ

大神クロノスとの和解交渉が大団円を迎えそうです。

『……よかろう、そういうことであれば。所詮、「ティタノマキア」も幾数億万年ほど昔のこと。皆とっくに忘れ去って水に流されるべきであろう』

『余も誰が誰を殴ったのか忘れましたわ』

適当なことを言うハデス神。

『ウンウン、仲よきことは美しきことね。これで創世以来の気がかりがなくなったわ』

と満足げなガイア母神。

しかしですよ?

上手くいったからいいものの、この事態一歩間違えれば神々の戦争の再来になってたかもしれないって、そんなの何の躊躇いもなく敢行できるところが神って恐ろしいなあとつくづく思う。

『あんまり一緒にしてほしくないがな』

などとボヤき口調なのはハデス神。

冥界の主にして地上の守護者たる善神の、あまりにも濃厚なため息。

『ガイア様は世界とすべての神々の創造主。同じ神でも、我々とすら一線を画している。あの方にとって世界とは積み木細工のようなものであり、間に挟まった木を組み替えるような感覚で世界の理を変える。ほんの小さなきっかけですべてが崩れ去ることもおかまいなしに』

うわぁ……。

『それでいて、自分の生み出したものをそれこそ我が子のように慈しむ心も備えている。世界の母の思慕は子どもらの理解を超えるものだ』

母ちゃんの気遣いが子どもにとっては困惑の元となることもあったりする話で……。

世界全体に対してそれをするのが万物の母ガイア……。

『しかしまあ、晴れて父上が娑婆に戻ってきたとなれば余らも息子としていわわねばならんな。また険悪となって神々の戦争を強いられたら迷惑でしかない』

同意率400%。

『というわけで聖者よ。いよいよお前に働いてもらう時が来た。よろしく頼むぞ』

「と仰いますと?」

俺たちの仕事はもうとっくに終わったものと判断しておりましたが気のせいでしょうか?

既に農場の力自慢腕自慢たちが総動員で古代の神々を抑えつけたことですし。それだけでも充分な成果でしょう?

あとは神々みずからお働きになって世界を守護しているっていう自負を示してくださいよ。

あといつの間にか事態の主導がガイア母神からハデス神に移り変わってない?

『何を言うお前にしかできぬ重大な仕事がまだ残っているではないか。父上との完全な和解もそれにかかっている』

だから何だよ?

重大な仕事って?

『神々の戦争再勃発の行く末はお前にかかっているということだ』

だから追加でプレッシャーかけてくるのやめて!

一体何をすればいいんですか!? 平和を維持できるって言うなら何でもしますけれども!!

* * *

そして開かれたのが大宴会。

なんてこともねえ、またいつもの神々の食って騒げであった。

農場に戻って、酒を飲めご馳走食らえのてんやわんや。

今回はクロノス神が主賓となって皆で持て成し、という形になっているがハデス神やポセイドス神も一緒になって飲んでるのに変わりない。

結局酒飲みたかっただけじゃねえのかアンタら!?

『いやいや、そんなことはないぞよ』

俺の不満を察しとってハデス神がフォローにやってくるが、その手に大ジョッキ携えてきている時点で説得力ゼロ。

そしてカラッポのジョッキを差し出すな。

おかわりは注がんぞ!!

『聖者よ、お前は自分の居場所で作っているものの貴重さをちゃんと理解していないらしいな。農場で作られるビールやニホンシュを始めとする酒も、ビフテキやソーセージやたけのこご飯や明太子やスパゲティやうどんラーメン。それにアイスクリームやケーキといった御馳走は神といえども驚嘆せずにはいられない究極の美味と言えよう』

そすか。

そんなおだてられたところで俺は調子になんか乗りませんよ?

ビールをジョッキに注ぐ。

『この農場での料理を一口食べたならば、どんな悪神だろうと虜となってしまうことだろう。そして農場料理の素晴らしさを知った者同士なら誰でも仲良くなれるに違いない。だからこそ我々は父上を招待したのだ、この農場レストランに!!』

レストランちげーが。

ここは神々御用達の隠れ家系居酒屋とかじゃねーが。

ウチの料理を褒めてもらえるのは嬉しいが、それで何でも解決できるなんてそんな都合のいい考え、あるわけがない。

万能の蒼いネコ型ロボットじゃねーんだから。

招かれたクロノス神だって、ご馳走してもらって気持ちが傾くなんていうご都合展開が……。

『ふぉおおおおおおおーーッッ!! うめぇええええええええええッッ!!』

……あった。

クロノス神は、どこぞの料理アニメもかくやというほどのオーバーリアクションで目から星を飛ばしている。

『地上にはこのような美味が溢れかえっているというのかぁああああッッ!! 私が支配した黄金時代にもなかったぞぉおおおおおッッ!! ここにある食べ物をすべて神の食物に認定するぅううううッッ!!』

『父上、それはもう我々がやりました』

マジかよ。

どうして神々は味に対してこんなにチョロいの?

クロノス神としては長い間タルタロスに囚われていて『娑婆の飯は美味い』的な雰囲気になってるんだろうけれど、そうした補正を差っ引いたとしても反応がオーバーすぎん?

『……息子たちよ、お前たちには感心したぞ。父である私を倒してまで、いかなる世界を育て上げたいと思っていたのか。しかし実際に見てみたら、これほど素晴らしい世界を築いたのだな』

メシの美味さですべてが語られる世界。

まあ重要か。美味いメシが食べられることは。

『はい、頑張りました』

『ゼウスの妨害多々ありましたが頑張りました』

都合のいいこと言っておる地と海の主神。

ちょっと過大な主張ではありませんか?

『とはいえ、本当に力を尽くしたのは地上に生きる者たち。命ある者たちはその限りある人生の中でできる限りのことを行い、次代へと受け継いでいきました。そこにいる聖者もその一人です』

お?

意外とこっちの働きも純粋に評価してくれた。

『父上からもお褒めの言葉をかけてあげてくださいませ。旧世代の支配者、大神クロノスの言葉となれば、人の子にとってはこの上ない栄誉となりましょう』

『ふぉむ……』

クロノス神、口の中に大いにご馳走を詰め込んだまま俺の方へ向き直り。

『ふぉへのへ、ふぇひらぎふぉ……』

『父上、ちゃんと飲み込んでから話しましょう』

『ふむ……ゴックン。脆弱なる人の子よ、限りある命持つ身でありながらよくぞここまでの実りある成果をえた。その根気と実行力を褒めて遣わそう』

「恐縮です」

俺もわざわざ荒立てることもないだろうと思って素直にひれ伏す。

せっかく神々の和解の場なのでな。

『特に、大地からの実りを収穫し、有効に活用してみせる技術とひた向きさ。実に好ましく思うぞ。我が司りし農耕の領分ゆえに』

「え?」

今なんて言いました?

『私が封じられて幾星霜も過ぎ去ったがゆえに伝わってはおらぬのか。私が神として司るのは農耕。土を耕し種を撒き、大地の彩りと共に時の移り変わりを示すのが我が役割よ』

「主祭神様!!」

『えええええええッッ!?』

俺は躊躇わずダイビング五体投地した。

農耕神クロノス!!

農家である俺にとっては最強の守護神ではありませんか!!

ここに来て、俺の生業にもっともフィットした神様が現れるとは!!

今日からアナタを崇拝します! ヘパイストス神の次に崇拝します!!

捧げものも毎日行います優先的に!

『ちょちょちょ、ちょっと待て聖者よ! それでは我々への捧げものは!?』

『そうだぞ! 今日まで我々には長く深い付き合いがあったではないか!』

ハデス神とポセイドス神が慌てるがアンタらはちょくちょくタカりにくる時に食わせている分で充分だろう。

俺はこの農耕神を崇拝して今年の豊作を祈願する!!

『い、いいのかそれで? 私は神であるうちに時間を司る権能も得たんだが、そっちの方がよくないか? 時間止められたり過去に遡ったりできるぞ?』

「そんなの必要ありません!」

時間止められるからなんだ!? そんなの主人公に時間止め返されたら終わりじゃないか!

過去に遡るのだって俺はそんなに魅力的とは思わない。何故なら日々を精一杯生きて後悔をしていないからだ!

だから俺は農耕神の御利益の方がずっとほしい!

農業は常に天候や気温に左右されるし、人事で賄えない領域が数多く存在しているのだから。

だからこそ神頼みをするんじゃないか!!

農耕神様! 毎年の豊作を!!

季節の気候変動は穏やかに、雨は多すぎず少なすぎず、台風直撃するとしてもお手柔らかな瞬間風速で、害虫害鳥害獣は滅ぼしてください!!

『うう……、こんなに熱心に祈られるなんて……!』

農耕神クロノス様は目頭を押さえた。

『長く幽閉されてもはや忘れ去られた神になったかと思ったが、今なおこんなに信仰してくれる者たちがいるのだな……! わかった。こんな私でよければ精一杯地上の行とし生けるもののために加護を与えようではないか!!』

そんな感じで農耕神クロノス様は世界との融和を果たしていくのだった。

『おいポセイドスよ……ヤベーよ。このままでは聖者からの供物をすべて父上の独占に……!?』

『いっそもう一度パパ上をタルタロスに封印するか?』

あっちで現役主神たちが不審な相談をしていた。

アナタたちはちゃんとした手段で信仰を勝ち取ってください。