軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

826 整う熱気

のんびりダラダラすることこそ真理。

至高。

昭和からの怪物……ノーライフキングの社長から得た教訓はそれだった。

人間仕事ばかりしていてもダメだ。

適度に働き、適度に休む。

そういうわけで今日はのんびりダラダラする回ということにする。

サウナを作るぞ!

……なんでそうなった?

いや、こないだも大活躍したコタツのことを思い起こすとね。

もっと強い刺激が欲しくなったというか……。

コタツに群がる犬や猫どもがね。

我先を争ってコタツに突入していくわけなんだけどアイツらには少々温度が高めなのか飽きたのか知らんけど、一時間もしないうちにすぐ出てくるんだ。

そして外で適当に涼んだり、水など飲んだあとにすぐまたコタツに戻ってくる。

その様子を俺はコタツに入りながらずっと見てると『コイツらサウナに入ってるみたいだな』と思って、それで自分もサウナに入りたくなった。

サウナといえば男のロマン。

吸った空気で肺も焼けつくような高温空間に閉じこもり、じっとり汗をかいて痩せようという野望を秘めた領域。

何故か男はサウナ好きだよね。

昔のボクシング映画に憧れるんだろうか?

何であんなみずから焼き尽くされるような行為を……マゾなのか? と思ったりもするが結局灼熱の熱さに耐えて耐え抜き、耐え抜いた果てのクリアとしてサウナから出て(決して逃げ出したわけではない)……その上で外の冷風を全身に浴びて急速冷却!

高熱から寒冷への乱高下で自律神経が目覚めて『整いました~』って言ってみたいじゃないか。

俺もまたその感覚を求めて、みずからを灼くサウナを作ることにしました。

元から農場にないものなので一から作るしかない。

場所は浜辺に作ることにした。

海のすぐそこ。

そんなところに作ったら嵐なんか来た日にゃ並やら風やらで一発倒壊するじゃんとか言われそうだが、どうせ夏の暑い時期には入らんだろうなと思って、冬の間だけ持てばいい掘っ立て小屋にする。

あまり本格的なものを建てようとするとまたオークたちの手を借りなきゃならんし。

……いや待て?

だったらそれこそしっかりしたログハウス風にこだわる必要はないんではないか?

世の中には、キャンプに行った先で気軽に使用できる点とサウナなるものがあるらしい。

テントの中に薪ストーブを持ち込んで、ガンガン燃やして室温を上げようというのだ!

アウトドアでめっちゃ楽しそう!

よし予定変更だ! 異世界手作りテントサウナの作成と行こうじゃないか!!

となると用意しなきゃいけないものは……。

・アウトドアなテント。

・熱源としてのストーブ。

・燃料としての薪。

……以上か。

薪ストーブは既にある。

我が農場の基本防寒設備だからな。

農場各居住空間のそこかしこにあって、万が一の呼びもたくさん用意してあるから、その中から一つ持ち出しても怒られねえや。

あと問題はテント。

テントはさすがに農場にはない。

なので一から作る。

幸いテントの素材となるフェルトなら農場にもたくさんあって、元が羊毛だからバティらのところで管理されている。

そこからいくらか貰って自分で裁断し、丈夫な竹で骨組みを作ってフェルトをかけて、熱が逃げないように隙間を念入りに潰して気づいたらできてた。

やったあ。

あとはテントの中にストーブを入れる。

火を扱うし高熱にもなるからテントのフェルト生地が触れたら一発アウト。充分な余白を取っておく。

そしてちゃんと煙が逃げるように煙突も立てて……。

「完成だ!!」

俺謹製、異世界テントサウナ!!

ここで俺は自分を整える!

さあ入るぞ! 灼熱空間に身を投じ、熱さにひたすら耐えるマゾ体験を満喫するぞ!

さあ服を脱いで裸になって……!

でも全裸はさすがに恥ずかしいのでパンツだけは脱がない!

そしていよいよ……と思ったがまだ火を入れたばかりで全然温まってねえ。

ストーブの薪に火をつけて、テント内が温まるまでずっとパンツ一丁で寒空の下で立ち尽くした。

寒い。

俺は灼熱地獄に耐え抜く覚悟でいたのに、なんで極寒地獄に耐え抜こうとしているの?

そしてとうとうテント内が温まってきたので突入だ!!

うお暑い!

想像以上に暑い!

あの施設サウナで体験したことのあるような吸い込む空気まで熱い感じ!

これよ、これよこれよこれよッ!!

この灼熱っぷりがサウナの醍醐味よ!!

しかも施設サウナで不特定多数と共有する場合、どうしても隣にいる人とか気になるじゃん?

あまり近づきすぎると気まずかったり。『絶対コイツよりあとに出る』という謎の対抗心に翻弄されたりもする。

しかしテントサウナは基本個人の使用なんで、そうした人間関係のトラブルに煩わされずに済む!!

ここが俺だけの楽園!

ちょっと気温が余りにも高い楽園!

汗がジンワリ出てきておるよ……。

入ってもう十分は立ったか? 十五分?

そんなことを思っている実際には五分も経ってないんだろうな。

この異世界テントサウナは時間を計るための器具が一切置かれていないので、達成感を得るためにも是非欲しいところだ。

砂時計でもいいかな?

今度開発してみよう。

という感じで……もっと達成感と整った感じを得るためにもう三分粘りたい。

しかしここで三分を計るためにできることは一つ。

自分で数える。

行くぞ一、二、三、四、五、七、十一、一三、十七……。

いつの間にか素数を数えていた。

なんで?

とにかくもうそろそろいいや! もう三十四時間は入っていた気がする体感的に!!

テントから飛び出て、ひんやりとした外気に晒される!

今は冬!

この寒暖の差こそサウナの醍醐味! だからこそサウナは今が旬なのだ!!

しかもそれだけじゃないぞ! どうしてテントサウナを浜辺に建てたか!?

その理由が今明らかになる!!

そう海!

目の前には大海が広がっている。

その海に一直線に向かってドボンじゃ!

「ひゃあああーッ! 冷てぇえええええええッッ!!」

サウナといえば水風呂までがワンセット。

クソ暑いサウナからクソ寒い水風呂にドボンする、そのギャップが激しいほどに整う感覚を味わえる!!

海こそ世界一大きな水風呂!

母なる海! マザーなる海で整える感覚を得られることのなんと幸福なることか!!

問題は塩水でベッタベタになることかな?

このままサウナに戻ったら体中が塩吹きそう。

でも俺は体を拭くことすらなくテントに戻る。

そして体をジワジワ温める。

すべて自然の中のテントサウナだから汚れることも気にしないぜ!

思ったより最高だなサウナ!!

「我が君、いかがいたしました?」

やべぇ見つかっちった。

まあこんな奇矯なことを行っていたら目につくのも当然か。

通常だったら大抵プラティかヴィールが真っ先に来るんだが、そうでなかった辺り食べ物ネタでない影響が色濃い。

「このようなところに一人閉じこもって何を……? うわ暑い? 何なのですこの布屋は?」

やってきたのは農場で働くオークの一人だった。

テントという概念を知らないために呼び方が『布屋』になる。

「ふっふぉふぉふぉ……凄かろう。これこそ冬を満喫する一つの答えだ……!!」

オークなんて筋肉厳つくてマッシブだから目に見えてサウナにハマりそう。

そうして農場サウナブームが静かに幕を開ける……!