軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

820 喧嘩両成敗

「こっちが下手に出てりゃつけあがりやがって! やっぱりお前とは話し合いなんて不可能だ! 愛する不死山は力づくで奪ってこそ愛!」

「面倒くさいけど不死山に関してだけは面倒くささも厭わない! 我が愛する思い出を守るために人族には死んでもらおう!」

俺が農場に一旦戻った隙に、一気に話がこじれていた。

あの二人は一切自分が引く気はないのだろうか?

もう少し妥協することを知れば世の中はもっと平和でいられるのに。

そしてより巨大な力でねじ伏せられないで済むのに。

というわけで助っ人さんお願いします。

この方をお呼びするために農場に戻ってきたんだ。

『「雷公打神鞭」』

「「ほげぇええええええええッッ!?」」

突如飛来してきた雷が、過たずベルフェガミリアさんとゴールデンバットの両方に落ちて二人を弾き飛ばした。

俺が放った聖剣の閃光には慌てもしなかった二人が。

「ぐべえ……、今のは狙った相手を自動的に追尾し、当たると必ず戦闘不能のダメージを負わせる、あの方の秘術……!? それが使われたってことは……!?」

そうです。

ここにお越しいただいたのは、現在話題沸騰の不死山に大変関わりのある御方。

というか不死山を現住所としている人類を越えた超越者……ノーライフキングの老師です!

『小人閑居して不善を成す』

「「老師ぃいいいいいいいいッッ!?」」

すべてのアンデッドの王といわれるノーライフキング。

その中でもさらに最強最悪と名高い究極の不死上王が三人いるとされている。

そのうちの一人がただいまご紹介に預かりました通称、老師といわれるノーライフキング。

世界最恐最悪とされるノーライフキングの中でもさらに最恐最悪の御方なので、実力的にもこの人類トップクラス二名を抑えるのに申し分ない。

それだけでなく今回の元凶となった問題児ズそれぞれとも何らかの関わりがあるようなので、連絡を取ったら快く駆け付けてくれた。

最恐の不死王、フッ軽。

大抵のノーライフキングは死を超越したモノとして骨だけだったり、もしくはミイラのような干からびた姿でいかにもアンデッドという風合いをしている。

しかし老師は、そんなテンプレに反して表面ツルリとした端正な顔立ちをして、まるで石膏か大理石で作られた仏像のようだった。

それがむしろ生命感を失わせてアンデッドっぽいが。

そんな老師、自分の棲み処……不死山をダシにみっともない争いを繰り広げる連中を取り締まりに来てくださった!

「ふおぉああああああッッ!! 誰が止めようと相手も止められなかった二人が!」

「本当にありがとうございまぁあああああっす!!」

シルバーウルフさんマモルさんのクローニンズコンビも老師へと縋りつくように。

いや、本当にあの人たち可哀想。

『老いて弟子に恵まれず』

老師さんは基本的にいい人らしく、下界のこのみっともない集まりを憂いて調停に降臨してくださったのだ!

まず問題の一方……ベルフェガミリアさんに石膏像が迫る。

「やあ師匠、相変わらずの脂漏顔ですねえ。こんな平地まで降りてきて面倒くさくないですか?」

『面倒くさいことをさせているのは、お前だ』とツッコミたいところだが、ここはグッと堪える。

静やかなアルカイックスマイルで老師が圧をかけてくる方が、あの人類最強の面倒くさがりには辛そうだから。

ただそんな様子にもう一方の問題児、ゴールデンバットが物言いす。

「くぉおおおおッ!? お前ッ! 何故老師とそのように親しげなのだ!?」

「アレ知らない? 私はこの御方の弟子なんだよ?」

昔どっかで聞いた覚えがあるような。

ベルフェガミリアさんは老師の直弟子、人でありながらそれを超越した不死王の秘術を余すことなく伝授された。

それこそ彼の人類最強たるゆえんだと。

それを聞いてゴールデンバッドの阿呆は……。

「なにぃッ!? だったらオレも老師の弟子となる! どうかオレをご指導ください!」

「何故そうなる?」

ゴールデンバットもいくつもの山を登った末に霊峰・不死山へとたどり着き、そこを治める老師に何かしらリスペクトされてるようだ。

明確な面識もある。

元々ヤツが異世界百名山を書くために不死山を実際登って取材する必要があったが、その最大の障害が老師だったのだから。

不死山を根城にする老師を避けて不死山アタックするのは不可能ということで、俺たちが仲立ちをすることでやっと希望が叶ったっつー話が前にあった。

「オレはそれ以来、もっとも愛する山不死山に棲むアナタを理想として崇め奉っているのです。そんなアナタに弟子入りできるならオレだってしたい!」

この期に及んでも自分の希望だけを一心不乱に推し進めるヤツであった。

彼の迸る不死山愛が、そこに住む老師にまで波及している。

「それにそっちの男が老師の弟子というなら、ヤツとの不死山争いで一方的に不利ではないか。だからオレも老師の弟子となって公平を期さねば」

「は?」

「いや、公平どころではないな。アイツは老師の教えを受けたおかげで魔王軍最強になった! さすればオレは独力でS級冒険者まで成り上がった、その上で弟子入りしたら軽くこんなヤツ超えられる! そしてヤツを粉々にし、完璧に不死山を我がものと、うわーーーーッ!」

あまりに身勝手なことを言うゴールデンバットを再び雷撃が吹き飛ばした。

ベルフェガミリアさんもまとめてついでに。

『剣に生きる者は、剣に死す』

「老師の言う通りです。いつまでも自分勝手な理屈を通すのはやめてください二人とも」

俺自身老師の言ってることが何なのかイマイチ理解していないが、話をまとめるためにテキトーに乗っておく。

「そもそも不死山は誰のものでもない。皆のものです。誰が見ても美しいと感動できる。それこそが重要であって、それが誰のものかなんか関係ないでしょう」

そもそも不死山には見ての通り、老師がいる。

人間を遥かに超越する最強者……ノーライフキングが君臨する土地なんだからこそ、人類のどこそこの国の帰属だなんていうのはおかしいんじゃないか。

「そう、不死山は強いて言うなら老師の領域。この世界には人類よりも強力な存在がたくさんいます。そういう方々を無視して人類の線引きだけを主張するなんて愚かしいことでしょう。そんなことを繰り返していたら、いつか大きなしっぺ返しを食らうことになりますよ。ねえ老師?」

『因果応報す』

いかに人類最強を誇る二人でも、人類を凌駕する超越者の中で最強を誇る老師には何も言えない。

何度か言い返そうとするのをグッとこらえて、二人の問題児はここに意志の陥落を示した。

「……たしかに、人類の狭い枠に不死山を押し込むのは無粋なことか。不死山はあくまで雄大なのだから……」

「異世界百名山も、次の増刷の際には内容を修正しておこう。不死山は魔国の帰属でも、人間国の帰属でもない。そう、ノーライフキングの老師に帰属するのだと」

ここに和解が成立した。

「「やったーッ!!」」

それに一番歓喜したのはシルバーウルフさんとマモルさんの二人。

あわや自分たちの責任範囲内で人魔戦争が再勃発しようとしていたのだ。それに対する彼らの不安たるや相当なものであっただろう。

そして無事回避できた喜びも。

「ありがとうございます聖者様あああああッ! やっぱりアナタに頼んで本当によかった!!」

「今度からヤバいことになったらすぐさま聖者様を頼るようにする!!」

やめて。

アナタたちの苦労は察するに余りあるが、その苦労に俺を巻き込まんといて。

俺のクローニンズ加入断固NO。

そして一方、反省の態度を見せた問題児ズたちは……。

「ゴールデンバットくん、さっきまでは無礼な態度をすまなかったね。よく考えればこれほど不死山を愛する人に会ったことはなかった。我々は同志と言えるのかもしれない」

「たしかに好きなことを語り合える相手がいるとは素晴らしいことだ」

と握手を交わし合っていた。

雨降って地固まるということでいいのか。

あの放っておけば問題しか引き起こさない連中が重なり合うことで互いの厄介さを打ち消し合うのか? それとも相乗させるのか?

「今度でもじっくり話を聞かせてくれないか? 人間国側から見る不死山の裏側の景色のことをね」

「は?」

もちろん厄介さが相乗されるしかなかった。

「何を言っているのかな? 表裏から言えば、人間国側から見る美しい不死山の景観こそ表。魔国側こそ裏不死だろう?」

「本まで出版しておいて見識が浅いねえ。ちゃんと表裏両側から不死山を眺めたことがあるのかい? あるならどっちが美しいかなんて一目瞭然。議論するまでもないだろう?」

不死山の帰属を争い会った次は、どっちから見た方が不死山が美しいかで揉めとる。

やはりコイツらに平穏を期待するだけ無駄だった。

俺と同じ思いの老師からもう一回雷撃を食らって二人は吹き飛んだが、それでもシルバーウルフさんマモルさんの苦労に終止符を打たれることはないんだろうな。