軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

819 問題児vs問題児

忘れている人も多いかもしれないが、俺はメインウェポンを持っている。

邪聖剣ドライシュバルツというので、由緒ある七聖剣の一つとか何とか。

本当は七本の聖剣が戦って、最後に残った一本だけが真聖剣っつって超物凄いパワーを出せるんだけど、俺の能力で普通の聖剣でも最大限パワーを引き出せる。

なので山をも砕く大閃光が撃てた。

普段は平和主義者な俺は、こんな乱暴なマネはけしてしたくないんだけど、あの問題児ズが余りにイラつかせてくれるのだからしょうがない。

あんな連中と一緒にいて冷静さを保てているシルバーウルフさんとマモルさんを心から尊敬する。

で、普通の少年漫画ったら一撃死しているぐらいの閃光を受けた問題児どもはどうしているかというと……。

「いきなり乱暴だなあ」

やっぱり生きてた。

チッ。

「農場の聖者は温厚有徳で荒事はけっしてしないと聞いたのに、噂はやはり当てにならないものだねえ」

などと言うベルフェガミリアさんは、折れた剣を手にもって無傷のまま佇んでいた。

あの剣の残骸こそ、彼が四天王として拝領した堕聖剣フィアゲルプ。遥か昔に敗れて聖剣としては死んだはずなのに、そこから聖剣の力を引き出せるのはベルフェガミリアさんの才能によるもの。

ちなみに俺は大抵の場合温厚だよ!

怒らせるキミたちが悪いんだよ!

「聖者とは、すべてを分け隔てなく慈しむ者をいうのではないのか? 誰彼かまわず閃光を放つなどとても聖者の所業とは思えん」

べルフェガミリアさんはまだしもゴールデンバットまで無事とは。

そして重ねて言うが、俺が厳しいのはキミたちに対してのみ!

「このアイテム『ゴールドノイズ粒子』略してGN粒子を自身の周りに散布し、高速移動するとその場に自分の分身をとどめおくことができる。相手はそれを攻撃して仕留めたと勘違いするわけだ。ドラゴン相手には有効な目くらましだな」

「さすがS級冒険者、回避の術も一級というわけだね」

ベルフェガミリアさんの方から称賛の声が上がるのも納得いかない!

とにかく! 実力も名声もこの上ないアンタらがいがみ合うと社会にろくな影響がないんだよ!

アンタらの同輩が必死こいて平和を築き上げようとしてるんだから、それを一挙にぶち壊しにするようなことをしないで!

「オレは何もしてないぞ。こっちの魔族が理不尽につっかかってきただけだ」

「おいおいすべてはキミの書いた本の間違いからじゃないか。事実を歪めるのはよくないなぁ」

この問題児どもは、みずからが間違いだなどと露ほども思わず、正しさを押し通すのみ。

だから問題児なのだが。

さらに俺の後頭部辺りでプッチンプッチンプッチンプリンと色々引きちぎれる幻聴がした。

「……わかりました。では争いの原因そのものを吹き飛ばしてしまえば争いも同時になくなるということですね?」

「何か物騒なこと言いだした? 争いの原因って何? まさかオレが書き上げた異世界百名山?」

違う。

たしかにあの本をベルフェガミリアさんが読んでお怒りになったんだが、さらに根源的な原因があるよな?

そう、百名山に書かれた不死山の記述こそが諍いの原因なんだから不死山こそ憎しみの根源。

それを消去することで平和を取り戻す!

幸い俺にはそれをできるだけの手段がある!

この邪聖剣ドライシュバルツが放つ閃光は山をも砕くとさっき実践したばかりゆえになあ!

まあ不死山ほど巨大な山を一撃吹っ飛ばせるかどうかはわからんが、一部を削り取るぐらいは確実にできよう。

不死山の標高、世界三位に下方修正とかすればいい。

「ちょっと待ってぇええええッッ! ダメだ不死山は人類の誇り! 世界一位の高さでないといけないんだッ!」

「人類の宝を傷つけるつもりかッ!? お願いだからやめてぇえええええッッ!!」

ダメです。

我は平和の味方、平和の敵になるものはすべて滅殺するのが俺のポリシーなのです。

「わかった! 争いはやめる! オレらこんなに仲よし! ね!?」

「一緒に夕日に向かって歌まで歌っちゃうよ! 歌で世界は平和になれる!」

とりあえず、血気に逸る人たちをなだめられたので俺も聖剣を収めた。

もちろん本気で不死山を吹っ飛ばすつもりなんてありませんでしたよ。この過激派どもの頭を冷やすためのブラフですって。

俺は平和の味方ではあるが、大自然の味方でもある。

「しかしあんな脅し方ができるのも世界中に何人いるものか……!?」

「やはり聖者様はただものではない……!?」

後方でクローニンズたちが戦慄していた。

* * *

そうやって何とかその場での激発を回避した俺たち。

しかし根本の解決には至ってない。

「まあ聖者くんやマモルくんの顔を立てて、平和的に話し合いでわかってもらおうじゃないか。不死山は魔国のものだということをね……!」

「そうだな、オレとて聖者には恩義があるし、シルバーウルフとて今は一定の敬意を払わなければならないギルドマスターの立場だ。ヤツらに免じて厄介な読者のお前に特別に作者としての立場から、自著の正当性を懇切丁寧に言い聞かせてあげよう」

「フフフフフフフフフ……!」

「ハハハハハハハハハ……!!」

双方、引く気がまったく見当たらないのが凄い。

とりあえず力ずくというのをやめただけで、自分の主張を引っ込めるつもりなんて露ほども持ち合わせてはいないんだろう。

厄介極まりない。

「それでも……、口論だけで済んでくれたら、それ以上は望まない……!」

ホントご苦労様ですクローニンズさん。

では、このまま終わらせても禍根が残るだけだろうからお互い納得行くまで議論してもらいましょう。

先手、著者ゴールデンバット。

「ふん、そもそも読者風情が著作者の行いに文句のあること自体おこがましい。それこそ不遜というものだ」

角の立つ主張やめて?

「このオレが異世界百名山を書き上げるのにどれだけの取材、情報集めをしたかわかっているのか? 掲載されている百の山すべてに実際登り、それ以外にも多くの山に登った。そうでなければもっとも優れた百をピックアップするなどできないからな」

「だから何だと?」

「つまりオレは、それこそ数百登った山の中から比較して、不死山こそがもっとも素晴らしいと自信をもって言える! 積み重ねた実体験を元にした実感だ。これだけの実感をもって不死山を愛せる者はオレ以外にないと思っている! ……それに対してお前はどうだ!?」

ゴールデンバットの意地悪な視線がベルフェガミリアを向く。

「お前はさっき言っていたな? 登山の経験もなく、山に入ったのは精々仕事からだと? そのような登山初心者に不死山を愛する視覚があるのかな!? そんな連中よりも登山を極め、誰より山を愛するオレの下にいた方が不死山も喜ぶであろう!」

だから不死山は人間国に帰属する方がいいと?

というかコイツ、今ドサクサ紛れに『オレの下にいる不死山』って言ったぞ?

コイツ実際のところは人間国とかいう括りすらどうでもよくて不死山を自分個人のものと見做してるんじゃねえか恐ろしい。

「ふむ、たしかに僕は登山なんて面倒くさいからまったくやってこなかったねえ。自分から体動かしてキツい思いするぐらいなら寝てた方がいいよ」

「ははは、だろうだろうそうだろう?……って登山をバカにするかコノヤロウ!?」

面倒くさいやりとりだなあ。

「しかし、そんなこと私には関係ない。何故なら私は若い頃の数年間……不死山で修行していたことがあるからだ!!」

「なな、なんだとぅ!?」

「懐かしいねえ、不死山で寝起きしていたあの頃の日々……。そんな私だからこそ個人的な思い出を胸に秘め、『アイラブ不死山』と叫ぶことができるのだ。いわば私は不死山一極集中の愛情を注いでいる。それに比べればキミは色んな山に目移りしている浮気者じゃないのかね!?」

「な、なんだってぇーッ!?」

見事な反論を食らって絶句するゴールデンバット。

しかしベルフェガミリアさんにそんな過去が?

実際どうなんだろうかと確かめてみたが、視線を向けたマモルさん(同僚)は首をブルブル振るのみ。

「知りません知りませんよ!? ベルフェガミリア様が不死山で修行していたなんてまったくの初耳です! そもそもあの人自体前半生が謎に包まれている人ですし……!」

「しかし魔王軍の重鎮が修行していた経験があるなら、それこそ不死山は魔国側ってことになるんじゃ?」

シルバーウルフさんが言わんでいい余計なことを言った。

おかげで彼らのヒートがアップ。

「はぁああああーッ!? そんなことないね幾多もの山を見て登ったからこそ本当の不死山の価値が見える! それこそが正義! だから不死山はオレのいる人間国側に来た方がいいんじゃあああああッ!!」

「本当に不死山を愛する者なら直感で不死山の素晴らしさを理解できるはず。わざわざ他のサンプルと比較しなきゃわからないなんて、その程度だって証拠だよ。そんなハンパ者に不死山を預けるわけには行けないね。私のところで引き取らせてもらおう!」

何言ってんだアイツら?

平和を信じて話し合いをさせていたがやっぱりそれだけじゃ解決しそうもない。

かといって俺にはもう『不死山を削る』脅し以外の手段はないし、どうすればいいかわからない。

こうなったら、さらに別の人に望みを託すしかないかな。

「ちょっと一旦農場に戻る」

「「えッ!?」」

驚き慌てるクローニンズの二人。

俺がもう付き合いきれなくなって匙投げたと思っているのだろう。

「いや大丈夫。これから呼びたい人が農場に戻らないと渡りをつけられない人ってだけで」

さっきのベルフェガミリアさんの言ってたことで思い出した。

彼ってあの人の弟子だったんだって?

だったら一時期、不死山で修行していたというのも辻褄があう。

不死山に住まい、不老不死を我が手のものとした仙人。

ノーライフキングの老師。