作品タイトル不明
763 ドラゴン披露宴
神様の説得やらなんやらで思た以上に時間を取られてしまい、何とか結婚式を再開。
長い道のりだった……!?
「バティとオルバくん夫妻はハデス神に祝福してもらって……、他の二組はポセイドス神マターだよね?」
新婦となるゾス・サイラとカープ教諭は人魚族なんだし。
で一旦まとまるかと思いきや……!?
「ブラッディマリーさんとこはどの神に誓うんですか?」
病める時も健やかなる時も共に歩んでいくことを?
神前の誓いなんだからして神に誓うんだけど最強生物ドラゴンはどの神に誓うというのか。
なんかそもそもの根本的な話になってきたぞ!?
『そう言うことならおれ様に任せるのだー!』
乱入してくるのはウチのドラゴン、ヴィール!?
ドラゴン姿でどうした!?
『おれにはご主人様とプラティの誓いを受け止めてやった実績があるのだぞ! 今回もこの縁結びドラゴンが、姉と弟のために一肌脱いでやるのだ!!』
「じゃあ、それで」
軽いッ!?
それでいいんですかドラゴン夫婦!?
「ヴィールって言ったら、今やドラゴンの次元を超えた強さになってアレキサンダーお兄様に唯一追随できると言われているのよ? そんなヴィールに誓いを立てるんではちょうどいいんじゃなくて?」
……ヴィール……!?
いつの間にそんな超越的な存在に?
オークボゴブ吉だけでなく先生やプラティやレタスレートなど、何故農場に住んでいる子たちはいつの間にやらズンズン常識の壁をブチ破っていくのだろう?
『お疑いならおれの力を証明してやってもいいのだー。おい、そこの神。二神まとめてでいいからかかってこい』
『いえいえいえいえいえいえ……ッッ!?』『滅相もない! 遠慮させていただきます!!』
ハデス神とポセイドス神が本気でブルッている。
それぐらいヤバいってことか。
『このおれに誓いを立てたからには反したヤツは殺すのだー。安全安心の契約だ!』
『恐ろしい……!』『我々神だってそこまで過酷な制約を課さないぞ、ドラゴンって怖い……!?』
神々すらブルわせるヴィールという存在。
『それではこの地母神の夫ハデスと……』
『大海の王者ポセイドスと……』
『ドラゴンのヴィール様で、ここにいる者どもに夫婦の契りを交わしたと認めてやるのだー!!』
天が光り輝き、それぞれの夫婦を照らす。
これにて彼ら彼女らは晴れて夫婦となり、その仲を引き裂くことは誰にもできなくなった。
何しろ神が認めたんだから。
ああ、これで何組の夫婦が神によって認定されたのか。
魔王さんとアスタレスさんとの件で、先生がはずみから神を呼び出して以来だよねえ。
ちょっと神を濫用しすぎだと反省しがちであった。
この模様を見ている参列者たちも呆然としているし。
『オレたちは何を見せられているんだ……!?』って顔してる。
それが常識的な反応だよね、ゴメンナサイ。
神なんて初めて目撃する人も多いから、衝撃を受けて手を組んで祈りを上げている人も多数。
主に魔族の人たちの方が衝撃度は大きいようだ。
人魚族は、アロワナさんとパッファの式で一度ポセイドス神を呼び出されたことがあるからね。
アレに出席した人は本日二度目の経験になるので、ワンクッションで衝撃を和らげられるのだろう。
……でも人魚族でも五体投地して震えてる人もチラホラいるなあ。
神との邂逅は何度やっても衝撃的なんだろうなあ。
まあ。
かくして今日、花嫁衣装を着た女性たちは晴れてそれぞれが想う男性と結ばれたのだった。
めでたい。
バティもゾス・サイラもカープ教諭もブラッディマリーさんも、長年の想いが実を結んで大変めでたい。
式典がつつがなく完了したからにはあとは無礼講。
場所を映して披露宴が行われることになる。
とはいえ龍帝城に設えられた披露宴会場。先日確認した通りにオーク、エルフ、ドワーフが一致団結して築き上げたスペースは、どんな宮殿にも負けない豪華さと芸術性で溢れ返っていた。
そちらに移動した参列者たちは、しっかり会場の豪華さにも圧倒されてくれたようだった。
よっしゃ!
ここはオークやエルフやドワーフたちの頑張りが認められてよかったぜ!!
しかしそれだけでは終わらない!
披露宴と言ったら、それこそ美味しいお食事、それにお酒が欠かせない。
ここからは俺の出番だ。
農場の料理担当ことこの俺が、見たこともないご馳走を振舞ってくれようではないか!!
農場ゴブリンチームの皆! 協力してくれたまえ!!
「当然ですとも我が君! オークやエルフたちが頑張ってあとこそ我らゴブリンの出番!!」
「ゴブ吉リーダーの晴れ舞台に我らが奮わずしてどうするか!!」
「バンバン皿を出していけ! テーブルを御馳走で埋め尽くそうぞ!!」
日頃から慕うゴブ吉の人生もっとも輝かしい瞬間の一つに、ゴブリン仲間たちが裏方ポジションから全力の祝辞を挙げていた。
酒の方はバッカスに任せておけばいいから、俺たちはひたすら料理を出していくぜぉりゃあああああああああああッッ!!
あと、婚礼の誓いを見届けた神々だが……。
『よっしゃああああッッ!! 聖者の作った料理であるぞぉおおおおおッッ!!』
『全部食う! 残らず食う! さあドンドンもってくるがよい!!』
ハデス神もポセイドス神も用が済んだらもう帰って。
今日の料理は、新たな人生の門出に立つ花婿花嫁のために用意したんですから。
神前の供物はまた改めて用意する。
そして招待されてきた参列者たちも、提供された料理に舌鼓を打っている模様。
頑張って作ったんだからその美味しさに驚くがいい。
そんな絶品ご馳走披露宴を開くことのできるウチのオークボやゴブ吉やバティを讃えるがいい!!
宴の最中には、魔王さんやアロワナさんが芸を披露してくれたちもして盛り上がった。
国王クラスが率先して芸を披露する、ヤバい宴。
そうして宴もたけなわになった頃……。
* * *
……一人の子どもが壇上に上がった。
「……なんだ子ども?」
「あんな少年がどうして? 迷子か? 親とはぐれたのか?」
「だから高いところに登って探しているのかしらねえ?」
と一般客はのん気に言っているが、そうではない関係者各位は瞬間ゾワッた。
あの子どもは……!
一見あどけない少年に見えるアイツの正体は。
先代ガイザードラゴンのアル・ゴール!?
かつて全ドラゴンを巻き込み未曽有の大混戦を引き起こした戦犯。
現ガイザードラゴンとなったアードヘッグさんに敗れて力のほとんどを失い、人間に変身するにしてもあんな少年の姿にしかなれないが、それでも不気味な存在感を放つヤツだ。
アイツがみずから目立つところに現れるなんて……。
何とも不気味な予感がするぞ。
「……あーえー、本日は我が息子アードヘッグと、我が娘ブラッディマリーの成婚のために集まってくれてありがとう。まあ、他の夫婦もいるからまんざらアイツらのためだけじゃないんだろうが……」
とスピーチを始める。
事情を知らない一般の人々にもことの不気味さは少しずつ伝わってくる。
いかに力を失ったとはいえかつて竜の頂点に立っていたモノ。さっきのオークボほどではないが、醸し出す気配は充分に威圧的。
「まあ、奇妙な時代になったものだ。ドラゴンが結婚するとはな。竜とは完全無欠、唯一無二の存在。だからこそ増える必要もなく進化する必要もなく常に一つであり続けた」
淡々とスピーチを続ける先代。
何の意図だろうか?
まさか本心、自分の子どもたちの門出を祝うという気持ちなのか!?
かつての陰謀竜も、皇帝の座から降りることで肉親の上が芽生えた!?
そんなわけない。
「この変化はドラゴンという種にいかなる意味をもたらすのか? このめでたい日におれはたしかめてみたい。そこでおれは客を招待することにした。宴なんだから楽しむのは大人数の方がいいだろうからな……!」
改めて言うが、披露宴会場に指定されているのは野外の青空庭園。
見上げれば竜魔法で保たれた真っ青な空が広がっている。
その青空に、一つ二つと浮かぶ小さな黒影。
それがどんどん数を増やしていき、また輪郭も大きくなっていく。
大きくなれば形もハッキリしていく。
翼に手足、そして凶悪なアギトを持ったあの姿は……ドラゴン。
「史上初のドラゴンの結婚式だ。ドラゴンの招待客がいるのも当然だろう?」