作品タイトル不明
759 披露宴会場
早速ブラッディマリーさん用に仕立てられたウェディングドレスを試着してみることとなった。
男性の俺、一時離席。
許可を得て再び入室。
「凄いわ! 本当に凄いわ!」
式当日より一足先に花嫁姿となったマリーさんは、たしかに美しかった。
もちろんプロポーションは絶世美女たるいつもの形に戻して。
ボンキュッボボンのダイナマイトバディで傲然たる体つきでありながら。それをふんわり包み込む純白の衣!
普段のブラッディマリーさんからは窺えない清純さ、包容さを感じさせる一方で、元から備える妖艶さや凶悪感もしっかり存在している。
これほど絶妙なデザインをしてのけるとは、さすがバティのデザインセンス。
「やっぱり思った通りですぅー。そのドレスは巨乳が映えますねぇー」
一方で製作者当人は、まだプロポーションの差を見せつけられた衝撃から回復できていなかった。
向こう三日は尾を引きそう。
「ありがとうバティ! アナタは天才よ! 褒美に我が友を名乗ることを許してあげるわ!」
「ありがとぅございますぅー。あはははは、まだ友だちですらなかったんですねぇー」
気をしっかり持つんだバティ!
心を遠くにやってはならない!
「それでマリーさんは何しにこちらへ? ドレスが完成したって報せはまだ出してないよね?」
もしや待ちきれなくなって不意打ちで来た?
「ドレスの完成を確認できたのは嬉しい誤算だったけれど本題は別にあるわよ! こっちも完成したの!」
「何が?」
「結婚式の会場よ!!」
「ほほう」
そう、結婚式には会場がいるよなあ、ということで場所探しは当初から進んでいた。
最初は、全員にゆかりのある場所ということでここ農場が選ばれようとしていたんだが、物言いが入って止められた。
――『どうか、農場に無作為にヒトを入れるのはやめてください……!』
――『まだこの場所を公にはしたくないのです……! どれだけの混乱をもたらすか……!』
と魔王さんとアロワナさん両名から止められた。
式を挙げるとなると参列者も多数招待しないとだからなあ。
ということで別の候補を探すことになった。
とりあえず合同で式を挙げるのに、人魚族の夫婦と魔族の夫婦がそれぞれいるから、その両方が過ごしやすい場所がいい。
かつ行き来もしやすいところ。
それでいて折角のお祝い事だから、できるだけ特別な感じの出る舞台がいい。
滅多に来れないような場所?
だからそんな特別で晴れ晴れしい、夏と冬の有明みたいな舞台はどこかにないものか!?
ということころで絶好の場所を提供してくださる方がいた。
自身も合同結婚式に参加するブラッディマリーさんだ。
「そもそも私が主役の結婚式に、相応しい場所など一つしかないじゃない! 我が夫のアードヘッグが居城! ガイザードラゴンの棲み処、龍帝城よ!!」
という鶴の……というかドラゴンの一声で決まった。
なるほどたしかに合同結婚式の参加者であるアードヘッグさんブラッディマリーさん夫婦の居城で結婚式をするのは理に適っているし、何より特別感がハンパない!!
だって龍帝城って言えば、ガイザードラゴンの住むお城ですよ!?
下等な人類ごときにとってはドラゴンの存在自体が凶悪であり神秘だというのに。
その頂点に立つ皇帝竜ガイザードラゴンともなれば、人の世からは夢のまた夢。
特別感ぶっちぎりじゃないですか!!
結婚式場として百点満点中の百三十四点!!
ということでアッサリ決まった。
行き来はどうするかって?
転移魔法があれば世界のどこだろうと瞬時に行ける。
龍帝城はかつて、魔王軍四天王vsS級冒険者のダンジョン攻略競争の舞台になり、その際多くの観客を行き来させたことでノウハウも溜まっている。
どこから見ても絶好の条件なので反対する理由は何もなかった。
ただそれでもちゃんとした結婚式場とするために設営とかもいるから、ドレス作りと並行してそちらの準備も着々と進められていた。
そして今に至る。
「すべての準備が整ったのよ! 誓いの祭壇も宴の会場もバッチリチンよ! 我らドラゴンの偉大さを知らしめたくて、すぐさま呼びに来たのよ!」
「そりゃ凄え!」
こんな短期間で進めてしまうなんてさすがドラゴン!
それでは完成した結婚式場の確認すべく、現場へ飛んで行ってみようじゃないの!
『ほんだば行くわよぉおおッ!! 私の背に乗るがいいわ!!』
ドラゴン姿に戻ったブラッディマリーさんに乗って、文字通り俺たちは空を懸けた。
* * *
びゅーん(音速を超える音)。
到着。
竜の帝王の城……龍帝城は絶海に浮かぶ孤島にある城だ。
当代のガイザードラゴンであるアードヘッグさんが主となっていて、着くと当人から出迎えてもらえた。
「聖者殿! よく参られた!」
アードヘッグさんは最初に出会ったのが現人魚王のアロワナさんで、そのアロワナさんの妹の夫である俺とは友だちの友だちみたいな関係だが、今では仲よくしてもらっている。
「今回も面白げなことを思いつきましたな! 聖者殿が思いつくたび我が城も豪勢になっていきますんで歓迎ですぞ!!」
「本当に歓迎していいんですかねえ、それ……!?」
アードヘッグさんは皇帝に相応しい大らかさで何でも受け入れてくれるのだった。
皇帝竜の懐は大きい。
「あの……つかぬことをお伺いしますが、マリーさんとの結婚式ですが……!?」
「聞いています! マリー姉上もニンゲンの真似事がしてみたいとは、変わられたものだ! ニンゲンたちとの歩み寄りが実現するのはよいことなので私も全力で協力していきましょう!!」
果たしてきっちり理解できているのかな?
結婚が男にとって、絶対に引き返せない一線を踏み越えることだというのが。
とはいえアードヘッグさんはドラゴンの割にとても真面目で誠実だし、ブラッディマリーさんのことも一人の女性として大事にしているようなので細かい説明もなしに進めたところでまあ、大丈夫だろう。
……多分。
そういう風に自分を誤魔化して、話を進める。
「そういえばアードヘッグさんちに来るの、ダンジョン攻略競争の時以来ですね」
「あれから我が城も随分変わりましたぞ! 発展したというべきか! ははははは!」
なんか久々に会うとテンションの高いアードヘッグさん。
「かつてはイメージがまとまらずに貧弱なダンジョンしか生み出せなかったおれだが、成長したのだ! 見てくれ! この新ガイザードラゴン、アードヘッグによる新生龍帝城の威容を!!」
とババーンと見せつけられたお城は、いい感じで立派だが、どこか既視感があった。
石垣の土台。
漆喰の壁。
屋根に飾られたしゃちほこ……。
「日本のお城ですかね?」
異世界で出会った竜のお城は、何故か懐かしさを感じさせた。
だってまんま姫路城か名古屋城かって風情なんだもん。
「見事な城でしょう!? 聖者殿がよく遊んでいる風雲オークボ城を参考に作ったのですぞ!」
「それあんまり参考にしちゃいけないヤツ!?」
そんなあれウチのオークたちが趣味全開で作ったもんですよ!?
アトラクションとしてならともかく、日常を過ごす場所としてはアレですって!?
「仕掛けもこりましてな! 天守閣がこう……パカッと開いて……!」
本当にパカッと開いたぁーッ!?
そして中から何か出てきたーッ!?
それは竜の頭部を模した……模型!?
「どうして竜の顔が……?」
「それは……カッコいいからだ!!」
さっぱりわかんね。
ともかくアードヘッグさんがよくない影響を受けているのでそこは正していかねばと思うのだった。
「実は建築には農場のオークたちにも協力してもらっていましてな」
「影響どころか直接関与していた!?」
ウチのオークたちは普請道楽だからなあ!?
俺何も聞いてないよ!?
「今回マリー姉上が俄然やる気の結婚式場?……というのもオークたちに協力してもらいました。さらにドワーフたちにも金を払って細かいところを飾り付けてもらいましてな!」
ドワーフってソイツらプロじゃん!!
元から他種族より報酬を貰って色んなものを作ったり立てたりする種族だぞ。
受注だ! もはや受注をしている!!
「会場内の花や調度品はエルフたちに頼みました! 花を活ける花瓶や木の像など、場を厳かにする様々な調度品を貸し出してくれましたよ!」
「アイツらまで!?」
もはや農場総出演じゃん!?
もはや全員の力を合わせてバティと、ゾス・サイラと、カープ教諭と、そしてブラッディマリーさんたちの一世一代の晴れ舞台を演出していくのであった!!