作品タイトル不明
725 ビルダーの世界へ
俺です。
なんか大人気らしいね。
例のアレが。
農場の技術力やらをもって量産に至った神のフィギュア。
いや『神のように素晴らしいフィギュア』とかいう意味ではなく、そのまんま神の形をしたフィギュアだ。
ノーライフキングの先生や、ロイヤルハニービーやらの協力を得て、さらにエルフとかドワーフとかの技術力も結集して築き上げた。
第一弾は冥神ハデスに海神ポセイドス。軍神ベラスアレスや造形神ヘパイストス他がラインナップされていて、安価でもあったことからそれなりに好調な売れ行きであったようだ。
『余勢を駆って第二段を!!』という話も出てきており、そのためにベレナが打ち合わせに出かけていく日もあった模様。
そんなこんなが行われて幾星霜……。
そんなある日……。
* * *
その神フィギュアが想定外の展開を見せているとのこと。
「いつものことじゃん」
我が農場で考え出されたものはいつだって予想外へ方向転換していくものだった。
いーーーーーーーーっつも。
「で、今度はどうなったの? 神像がひとりでに動きだしたりでもした?」
「はい、そのような感じです……!」
うそーん。
当てずっぽうに言ったことが図らずも的中するのやめてほしい。
こっちはまさか当たるなんて夢にも思わず言っているんですよ。
「当方も……まさかこんなことになるとは夢にも思わず……!」
と汗を掻きかき説明に訪れているのは、魔族の商人シャクスさん。
大きな商会の元締めで、今回の神フィギュア売り出しの大元でもある。
大体ウチで行われていることを嗅ぎつけて商売に転用しようとするんだこの人は。
「我々が発売した量産簡易神像が……、まさか両手両足を動かせるようになって、しかも魔法の制御を受けて遠隔操作可能になり、果てには武器を持って対戦するまでに至ろうとは……!?」
本当に一体何が起こっているんです?
武器を持って戦うとは穏やかじゃないな。でもそれあくまで手のひらサイズの人形の話ですよね?
それが可動して遠隔操作って……どういう経緯?
「事の始まりから説明いたしますと……。神フィギュアは中身を確認できずランダムにして販売するようにしたのです」
えッ?
それじゃあ中に何が入っているか買って開けない限りわからないじゃないですか?
ガチャは悪い文明だとあれほど言ったのに!?
「はい、そのお陰で同じ種類の神像を複数所持するユーザーが多く、重複したものの扱いに困っていたようです。そうした人の中にはみずから改造を手掛け、自分だけのオリジナル神像を作り出すこともあったとか……!?」
うむうむ。
みずからの工夫でダブリ品を有効活用するなんて、ユーザー魂の優れた人もいるようではないか。
「そうしていくうちに神像の改造が大ブームとなり、それでさらに売り上げた上がったという側面もあります。一番製造を多くしたハデス像が元も重複率が高く、その分改造素材にされることも多かったようです」
「何故ハデス像を多く?」
「それはもちろん我々魔族が崇め奉る神ですので……、もっとも人気が高かろうと……!?」
なるほど。
しかしダブリ率が高くなれば逆に嫌われてしまいますよ。
大いなる祖神になんてことしてるんですか。
「改造は様々な技術を生み出し、関節部の可動をもできるようになりました。そこへとどめとばかりに、魔法による遠隔操作まで導入されて」
「それさっきも言ってましたな」
「魔法力に反応して動く魔法石を組み込むことによって可能となった技術です。魔法石は元々高価なのですが、実用不可能なほど小さい石はむしろ安価なのです。我々の売り出した神像は元々小さいから、そうした安物でも充分に動作可能で、今までになかった需要が爆発してこれまた売り上げ好調になり……!」
しこたま売れたということですか。
結局のところ売り元であるアナタたちが濡れ手に粟でウハウハということになっておりますがな。
「しかし我々は不安なのです。恐れ多くも神の似姿をいじくりまわし改造し、あまつさえ対戦させるなどと……! まさに冒涜……! いずれ神の怒りに触れ天罰がくだらないかと……! 最近は恐ろしくて夜も眠れません……!?」
魔法石か……。
どっかで聞いた覚えがあるような気がしたが、いつだったか使った覚えがあるような?
そうだ、ずっと以前に陶芸をやろうとしたときだ。
ろくろを全自動で回そうとして魔法石を埋め込んだが、パワーが強すぎて使い物にならないんだったか?
たしかあれを勧めてきたのは……ベレナ?
「ねえベレナ、たしかあの時さあ……?」
記憶をたしかめようと傍らに居合わせたベレナへ視線を送った。
そしたら露骨に目を逸らされた。
なんで?
「まあとにかく……対戦させるというのは……なんで?」
さっきからちょくちょく話題に上っているが……。
「自分が心血注いで作り上げたフィギュアを動かせるとしたら……戦わせたくなりませんか?」
「なる」
それこそ少年ホビーマンガの王道。
少年少女たちが夢中になるホビーで何故か行われるバトル。
友だち同士の野良試合から始まって、いつしか話が大きくなって大会が開かれて世界各地から代表が名乗りを上げ、いつしか世界の命運が懸かったりしてしまう。
裏の犯罪組織が出たり、伝説の悪魔が復活したりして、なんだか大変なことになるんだがソイツらも勝負は律義にホビーで行うのだ。
何故か?
それがデュエリスト(決闘者)だからだ!
「今や神像は『ゴッド・フィギュア』などと呼称され、『ゴッド・フィギュア』同士で行われる戦いを『ゴッド・ファイト』と言うそうです。『ゴッド・ファイト』は今や魔都中で行われるようになり、近々有志を募って大会が開催されるとまで……!?」
「もうそんな段階に……!?」
ある程度連載が進んで長編が始まるフェイズじゃないですか。
「どういたしましょう聖者様!? こうなったら吾輩、この不敬なブームの元凶として処断されかねません……! どうか、どうかお知恵を……!?」
「……」
ふっふっふっふ……!
「……面白い!」
「ええッ!?」
このように面白そうなイベントに、俺が何も噛まずにスルーするなどありえない……!!
フィギュアを改造し、自分好みの世界で一つしかない形に仕上げるなんて……!!
まさしくプラモデルみたいではないかッッ!!
俺だって男の子、以前住んでた世界でも大いにハマって何体ものプラモデルを製作したものだ。
塗料も買い揃えたりしてなあ……!
もちろん一色だけじゃどうにもならないから複数何種類も買い揃えるんだよ。
ほんの小さい範囲の一ヶ所だけの色とかもあったりして、そのために何百円も出して買うか!? とお小遣いと相談しながら結局買った。
今思えば付属のシールでよかったじゃんとか思ったりして。
そして一回使ったきりの塗料をしばらく置いて、ある時またプラモデルを買って、今こそ残った塗料を使う! と思って開けてみたら渇いてカッチカチにに固まってたりしてな。
一回しか使ってないのに。
……いかんなんか思い出が怒涛の如く甦ってくる……!
そうするとまたプラモデルが作りたくてたまらないんじゃあああッ!
色を塗って改造したいんじゃああああッッ!
その『ゴッド・フィギュア』とやらが、俺の子どもの頃の思い出を再現させてくれるなら……!
是非ともそれに縋りたい!
大人になっても作りたいプラモデル!
対象年齢八歳?
知ったことではない!!
「俺もその大会に参加しよう! 参加するぜ!」
「えええええええッッ!?」
それを聞いたシャクスさん、衝撃と共に絶望を露わにする。
「お、お待ちください聖者様!? 聖者様には是非ともこの狂った催しを諌める側に回ってもらいたく! むしろ囃す側に回ってしまっては一層神々の怒りを買うことに……!?」
「問題ない! だって神々は大らかだから!」
大抵のことやったって笑って許してくれるに相違ない。
「でも聖者様……?」
ベレナが恐る恐る言う。
「その『ゴッド・ファイト』の大会に出るためには聖者様も自分用の『ゴッド・フィギュア』がないといけないんでは?」
「もちろん、今から作る!」
「「作る!?」」
ん? どうした?
シャクスさんもベレナも何故そこまで過剰に反応を?
「だって聖者様が作り出す『ゴッド・フィギュア』なんて……!?」
「どんな恐ろしいものができるというのでしょう? それこそ神をも恐れぬ最強のフィギュアが……!?」
そんな大層なものではないない。
所詮一ファンが作り出した労作に過ぎませんことよ。
まあ、下手に『至高の担い手』が発動してしまったらどうなるかわからんが……?
……発動しないよね?