軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

715 レクリエーション

こんなして農場学校・入学式はつつがなく進んでいった。

生意気盛りの魔王軍若手仕官とか、プラティの弟のテトラくんとか、今回も活きのいい生徒が散見する。

そんな彼らも、これから先生やその他農場の強豪たちによって『修正』されていくんだろうが……。

「その前に楽しいイベントでも体験してもらわんとす」

学生生活には、辛く苦しい試練だけじゃない。

楽しい思い出も、いずれ必ず将来の財産になるんだ!

というわけで入学したての皆にレクリエーションを用意した。

レクリエーションとは、勉強や仕事の合間などに行われる休養、娯楽のこと!

人族魔族人魚族と、これまで決して交わることのなかった異種族のこらが一緒になるんだからまずは遊びを通じて一体感を高めてほしいと思う!

そのためにも楽しい催しは必要なのさということで、入学式が終わったらすぐさまレクリエーション開始だ。

具体的にどんな楽しいことをするかというと、それもまた知恵を絞ったぞ。

新入生らに楽しんでもらい、また農場らしさをアピールするという利点も持ったイベント……。

おいもほりだ!

農場の一角にある芋畑から好きなだけ芋を掘りだすがよいぞ!

掘り出したあとは好きなように調理して腹を満たすがよい!

これこそが最高のレクリエーション!

じゃんじゃん掘れ、じゃんじゃん掘れ!

いきなり『芋掘れ』と言われても戸惑うことだろう。生徒たちの中には農作業も経験したことのない貴族の子もいるんだろうし。

しかしそれも想定の内!

彼らの手本となるように農場のベテランメンバーもレクリエーションには参加していた。

「魔王ゼダン!」

「人魚王アロワナ!」

「「これより芋掘りに参戦す!!」」

ホラね。

彼らに倣って掘っていけば面白いようにお芋が掘れるさ。

各王様たちは家族づれで、奥さんや子どもらと共にお芋掘りを楽しんでいた。

ただの家族サービスだ。

かく言う俺もプラティと連れたって、ジュニアやノリトがたどたどしく芋を掘るのを優しく見守っているがな。

他にも先生やヴィール、入学式にゲストとしてお越しくださったS級冒険者のシルバーウルフさんや魔王軍四天王のマモルさん、人魚王の片腕ヘンドラーくぅんも家族連れで訪れている。

アードヘッグさんも皇帝竜として参列してくださったし、錚々たる面子で楽しむ芋掘り大会だった。

「わあああ!? なんだこの黄金色の丸い芋は!?」

それはジャガイモですなあ。

「む、紫の皮の芋……!? しかし土から出た瞬間から何とも甘そうな香りが……!?」

そっちはサツマイモですなあ。

フッフッフ、聖者の農場のお芋畑を舐めてもらっては困りますなあ。

土を掘って、どんな芋が掘り出されるかは掘ってみなければわからない完全ランダム性。

これが農場特製、芋ガチャだ!!

「さあ俺も農場主の沽券にかけて凄い芋を掘り出してくれよう」

さーて何が出るかな?

山芋だ!?

またの名を自然薯!?

他の芋より遥かに長いゆえに格段の掘り出しにくさを誇る、難易度EX!?

この農場主の俺にとって不足ない相手! 絶対に折らずに掘り出して、擂ってとろろにしてくれる!

ジュニア! ノリト!

見ているがいい父の勇姿を! ほりゃあああああああああッッ!!

「我が君! 我が君大変です!!」

とヒトがやる気になっている時に、一体何事だい!?

芋掘りのサポートを担当してくれているオークの一人か?

「生徒の一人がとんでもない芋を掘り出しまして! 我々では手に追えません! 我が君にお出ましいただかねば!」

なんだとう!?

よしわかった、掘り出す途中の山芋はそのままにしておいてくれね!

「ぱぱー、ぼくがあとほるー」

なんだってジュニア!?

しかし山芋掘りは子どもが簡単にできるほど安易な作業では……。

「ほれたー」

二メートル以上ある山芋が一瞬のうちに!?

そうだウチのジュニアは普通の子じゃなかった! なんてったって俺とプラティの息子だからな!!

よぉし、これで憂いなく騒動の起こっている現地へ向かえるぜええええ!

やったぜ、チックショォオオオオオオッ!!

* * *

ついた!

で、どんな厄介な芋が掘れたんですかい!?

『我は男爵イモ……!!』

芋が喋っている!?

我が農場ではついに芋まで喋り出すようになったか!?

まあ柿とかカカオとかドリアンとか、主に果樹系で喋るヤツはたくさんいたからそこまで衝撃も少ないけれど……!

ついに地下茎まで喋り出すようになったか……!?

やっぱり衝撃だ……!?

「ふッ、何を呆けて突っ立っている? 頭が高いぞ、ひれ伏すがいい」

そしてなんか偉そう。

芋のくせになんでそんなに偉そうなの?

『私は偉くて当然なのだ、何しろ男爵イモだからな!! 爵位もちの貴族の芋! これが偉くなかろうはずがない!』

男爵っつっても爵位の中で最下級じゃん。

ライトノベルを読んでいたら自然と身につく無駄知識!

『そうですよ……男爵風情で偉ぶるなど、とんだ身の程知らず。節度を弁えなさい……』

『なッ!? 誰だ!? 男爵様に無礼な口を利くのは!?』

またなんか新キャラが現れた?

『無礼ですって? たとえそうだとしても、わたくしなら無礼は許されるのです。男爵相手ならなおさらに……。何故ならわたくしはメイクイーン!!』

また新しいジャガイモが喋っている。

事態は益々混沌に!?

『めッ、メイクイーン!?』

『いかにもメイのクイーンです。クイーン即ち女王! 男爵ごときが女王に対し頭が高いと思いませんか!?』

『は、ははぁあああああッ!?』

権力に驕る者がより高い権力によって屈服させられた。

劇中なら『ざまぁ』と言いたくなる展開だが、しかし今は『何を見せられてるの?』としか思えない。

『ぐぬぬぬぬ……!? まさか男爵を上回る権力を持ち出されようとは……!? しかしまだ屈さぬ! 権力者は引かぬ、媚びぬ、顧みぬ!! いかなる困難も乗り越えてこその権力者なのだ! うおおおおおおおッ!!』

おおッ!?

男爵イモが光に包まれて……!?

進化した!?

『ハーハハハハハハッ!! 私は進化した! 男爵から一段階アップして子爵イモとなったのだ!』

『それでもまだ全然女王より下なんだけれどね』

『ぐぶおうッ!?』

哀れ子爵イモ。

偉くなるために頑張ったんだろうがまだ全然頑張りが足りなかった。

『ちなみに、もっと進化して爵位で一番上の公爵イモになったとしても、女王より下よ』

『そんなぁ!? 何故だ!?』

むしろここでイモ同士の権力争いが繰り広げられていること自体が『何故だ?』なんだが?

衝撃を受けた男爵イモ……もとい子爵イモはワナワナと震えて……。

『メイのバカ! もう知らない!』

と言って走り去っていった。

芋が走り去っていった?

『ああッ、もうからかいすぎたかしら? ねえ待ってよー』

それを追うメイクイーン。

何アイツらイモ同士でいちゃついてるの?

本当に俺たちは何を見せられているんだ? という気持ちは居合わせた人たち全員が共有した感情だった。

特に今日初めて農場を訪れた新入生にとっては尚更であろう。

彼らの混乱を収めるためにも、ハッキリ言っておかなければ。

「皆覚えておくがいい! これが農場だ!!」

これくらいで驚いていては、これからの農場生活でついていけないぞ!!

異常な日常にも慣れておくことだ!

交流のための娯楽と銘打ちながら、しっかりとこの地で暮らしていくための洗礼も行う!

どうだ、実に計算され尽くした妙手だろう!?