作品タイトル不明
712 魔族学生の不敵な覚者
私は魔族オソ。
生まれながらにして魔王となる運命を自覚している。
え?
そう言うからには魔王の血族に生まれたのかって?
いや全然?
普通の一般魔族の生まれだけど?
しかし生まれとか身分とかに関係なく私は、魔王になることを運命づけられた女なのだ!
何故なら才能があるから。
物心ついた時から人並外れた魔力をもって、私以上の魔法の使い手は村には誰もいなかった。
同世代はもちろん大人すらも。
パパもママも『お前が天才だ!』と褒めたが、私を天才とは、まだまだ私の神髄をわかっていない証拠だ。
私は天才以上!
これまで天才と呼ばれた者たちよりも才能があるから、血統とかに関わりなく魔王になることができるに違いない!
このような超絶ぶっちぎりの才能を生まれ持ったからには、それを最大限に生かせる人生を歩まなければ、この才能をお与えくださった地下冥府の神々に申し訳が立たないというもの。
それで私は、魔王を目指して故郷を旅立った。
魔国の中心地、魔国へと行って魔王軍に入るため。
だって私は魔王を目指すんだから。
魔王軍で一番偉いのが魔王と聞いたので、魔王軍の中で偉くなっていったら最終的には魔王になれるんでしょう?
そう思って志願し、無事魔王軍へと入ることができた。
さすがは超才能ある私! 入隊するぐらい簡単ね!
特に試験とかはなかったけれど。
しかしこれから大驀進して上官になって、四天王になって、魔群司令になって、さらにその上の魔王になってやるのよ!
そう思って日々頑張っていると、ある時妙な通達が発せられた。
「農場学校への入学希望者を募る!」
そう言うのは上官のエリンギア殿。
ここ最近魔都へ転任してきたのだが、それ以前の任地がどこだったかいまだに謎という変な人。
「魔王軍の幹部育成プログラムの一環だ! このたび若く才能ある者を集めて、とある場所にてまとめての教育を行うことになった! その場所こそ農場学校!」
エリンギア上官は言う。
「我こそ魔王軍の未来を背負って立つという自負のある者は奮って参加するがいい。努力次第で、その意気ごみに見合った実力を手にできると約束しよう! 希望者は私のところに届け出に来ること! 以上解散!」
魔王軍を背負って立つ意気込み……!
……素晴らしい、それこそ私が日頃から持っているものじゃないか。
何しろ私は将来魔王になるのだから、軍どころか魔国すべてを背負って立つ覚悟がある!
この企画は、私のためにあるようなもの!
そう思えばすぐさま参加希望の届けを出した。
農場学校。
一体そこでどんな指導が待っているのやら。
しかしながら天才以上の超才能を持つ私にとっては、いまさら教えも指導も必要ないかもしれないがな。
きっと私が入学した暁には、そこにいる指導員も私の超才能に度肝を抜かされることだろう。
そして大絶賛するに違いない。
……ちょっと入学直後からの流れをシミュレーションしてみようか。
学校ということだから、きっと最初は各生徒の実力を測るところからするのだろう。
たとえば的を用意して、これに魔法をぶつけていけなんて測定があるのかもしれない。
それで各生徒の魔法威力や命中精度を測るんだ。
とはいえ入学したてのヒヨッコだから皆まだ大した魔法も使えない。
きっと初歩の火炎魔法で、的を焦がす程度のことしかできないだろう。
そこで颯爽と私が参上。
最上級火炎魔法で、的どころかその後ろの壁までぶち抜いて訓練場を半壊させる。
しかし私自身にとってはそれぐらいごく自然で、むしろ力を抑えてやったこと。
唖然とする教師生徒の方を振り返った私は、その表情を訝ってこう言うんだ。
――『私、なんかやっちゃいましたか?』と。
実にいい!
こんな感じで私の新生活はスタートダッシュを切る!
そして学び始めて一ヶ月もしたら、そろそろ慣れてきただろうということで実技っぽい授業も始まるんだな。
ダンジョンなんかに潜って、モンスターをバッタバッタと倒すんだ。
私以外にもちょっと要領のいい生徒が出てきて、オークやゴブリンぐらい瞬く間に蹴散らしてしまう。
調子に乗ってつい奥の方まで行ってしまうんだ、教師の注意を忘れてしまって。
そして遭遇してしまう、ダンジョンの主ノーライフキング!!
ドラゴンでもいいけど!
世界二大災厄と恐れられるモノたちに、学生程度では敵うわけがない!
絶体絶命のところへ心配した私が駆けつけ、立ちはだかる!
――『ここは私が抑える! 今のうちに逃げるんだ!』
カッコよく同級生を逃がし、ノーライフキングと戦闘する私!
いくら超天才の私でも、まだまだ若く成長過程では世界級災厄の前に力及ばず!
絶体絶命まで追い詰められながらも危機によって眠っていた才能が開花して一気にパワーアップ!
大逆転の勝利!
どう!?
そんなイベントが学校ではたくさん起こると見た!!
今から楽しみで仕方がない!
早くこいこい農場学校に行く日。
* * *
そしてついに農場学校へとやってきた日。
私は早速ノーライフキングと遭遇した。
『これから皆と一緒に勉強していくノーライフキングです。先生と呼んでほしい』
でも順番メチャクチャじゃない?
ノーライフキングと遭遇するのは、もっと先の予定だった気がするんですけども?
しかもノーライフキングがエネミーとしてじゃなく教える立場として登場している!?
『まあ、ワシの姿に戸惑う者もいるであろうが、細かいことじゃ。ワシは、キミたちのように才能あふれる若者の成長を見守ることが何より好きだ。キミたちと出会えたことを何より喜びと思う』
しかもなんか凄くいい人!?
私だけじゃなくて、一緒に農場学校に集まった生徒たち、全員どう受け止めていいのかわからず固まっている。
『今日は初日なので、キミたちの指導に関わる教師陣を紹介しよう。ワシの他にも専門分野に応じて担当教師がおるのでな』
そして何事もなかったかのように話を進めるノーライフキング?
『まずはオークとゴブリンたちじゃ。彼らはダンジョンで実習する時の引率役を務める』
え?
ダンジョンで襲ってくるのがオークやゴブリンじゃなく?
『ちなみに彼らは変異化して、単体でも四天王と同じぐらい強いから頼ってくれて大丈夫じゃ。ダンジョンで危なくなったら、すぐ彼らを呼ぶように』
四天王と同じくらい強いオークとゴブリン!?
どういうこと!?
そんなに強かったらダンジョンでバッタバッタと倒せない!?
『他にも専門授業でエルフやドワーフなどの講師もおる。年に数回、魔王殿にも来ていただき特別講義する予定じゃ他に……』
「私の紹介がまだなんじゃないかしらぁあああああーーーーーッ!?」
なんだッ!?
大きな声に反応して、その方向を見るとなんだかよく知らない女の人が、大きな岩を片手で持ち上げて立っている。
「今年から私も授業に参加するわ! 豆担当教師レタスレートとして!」
なんだぁああッ!?
あの謎の怪力女はぁああああああッ!?
「気づいたのよ、若い世代を教育して豆の素晴らしさを教えていけば、きっと同じ志を持つ者が集まってより広く豆が世界に広がっていくはずよ! そこで私が、歓迎を兼ねてデモンストレーションを行うわ!」
そうして怪力女、手にした巨大岩石を放り投げ、そして改めて突き上げるようなアッパーカットを……。
「浸・豆・勁ッ!!」
うわあああああッ!?
岩石へと叩き込まれた衝撃が、外側ではなく内側に浸透していって内部から粉々に破壊した。
『レタスレートちゃん、それは聖者殿へのお土産に持ってきたマナメタルの塊じゃぞ?』
「えー? ごめんなさい、ちょうど叩き割りやすそうな塊だったんでー?」
マナメタルを素手で粉々に……!?
本当かどうか目の前にしてもわからない私たちは、ただ呆然とするほかなかった。
「……あら? もしかして私なんかやっちゃった?」