軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

713 農場学校に弟襲来

こうして新たに始まります。

魁! 進撃の農場学校!

農場で学んだ生徒たちが卒業後大いに活躍している事実を受け『これだけ大きな成果を上げているならば』ということで続行が決定された。

ノーライフキングの先生の生き甲斐の話にも関わってくるしな。

若い子たちと触れ合いが何より嬉しい先生のためにも、新たな生徒新たな学級による新学期を始めたいのであった。

名前も改まって『農場学校』とよりしっかりとした表題になったこの企画。

前身となった農場留学生制度の反省を踏まえ、様々な改良も加えてみた。

その中でももっとも顕著な変化を上げるとすれば、アレだった。

昨年以前の農場留学生が学んでいた時から気になっていたことなんだが……。

人魔人魚、主だった種族がすべて集まって一緒になって学ぶ、というコンセプトであったはずなのに一つ決定的にかけたものがあったんだよね。

それは人魚族の……男。

元々なし崩し的な感じで始まった前身・農場留学生制度は、各種族の生徒を募集した際、人魚族から集まったのはマーメイドウィッチアカデミアの在籍生徒からであった。

そしてマーメイドウィッチアカデミアとは女子校なので、そこから送り込まれてくるのは女生徒以外にあり得ない。

ということで、留学制度時代は男人魚は一人として見かけられなかったわけだ。

それはいかん。

仲間外れはいかん、ということで今回入念に準備して若き男子人魚も農場学校にて学べるようになった。

男人魚といえば、何年か前からたびたび参加している武泳大会や相撲大会でお馴染みになったから、学びに来てくれるなら大歓迎。

まあ武泳大会に参加するような大人の人魚は学校に来ないだろうけれども。

まだまだ少ない海陸の交流のきっかけが我が農場で起こるなら大変光栄であった。

そして実際に入学しに来た人魚族の顔触れを確認し……。

意外にも見覚えのある顔を発見した。

* * *

「久しぶりだな義兄ちゃん! このオレが強くなりに来てやったぜ!」

薬を飲んで人魚の尾びれを地上人の二本足に変えて上陸せし人魚学生たち。

その一人が猛然と俺に駆け寄ってきてビビッた。

「ええとキミは……!?」

……。

…………。

……えっと。

ちょっと待ってね?

「なんだよ覚えてねえのかよ!? 義理の弟に対して失礼なヤツだなあ!」

「義理の弟?」

そのキーワードでなんとなく心当たりが出てきたよ。

ああ、あれか!?

「ナーガスさんの息子のテトラくん!」

今は退位してしまった前人魚王ナーガスさん。

奥様のシーラ・カンヌさんとアツアツでたくさんの子宝に恵まれているが、その一人で次男のテトラくんとは以前に面識があった。

俺の妻プラティもナーガスさんとシーラさんの間に生まれた長女なので、プラティとテトラくんは姉と弟。

だから彼には俺のことを『義兄』と呼ぶ理由は充分にある。

「そっかー、キミちょうどここで学ぶ年齢だもんなー」

ナーガスさんシーラさん夫妻は子だくさんで、その兄弟も世代的に幅広い。

長男長女であるアロワナさん、プラティがそれぞれもう家庭をもって独立しているのに対し、まだまだ成長過程の少年少女もいた。

……ホント仲いいよなあの夫婦。

ウチの子たちに年下の叔父or叔母が誕生するんじゃないかとちょっと心配。

「まあキミが来てくれてプラティもきっと喜ぶと思うよ。これから仲よくしようね」

「勘違いするんじゃねえ、オレはリベンジするために陸まで来たんだぜ?」

えー?

リベンジって、なんか復讐されるような因縁でもあったっけ?

……ああ。

あれか? 昨年の相撲大会の時に……?

「テトラくんゴブ吉に瞬殺されてたもんねー。いいところ一つもなしに終わったから気にしてたんだ」

「んぎゃああああああッッ! 言うなぁあああああああああッ!!」

絶叫する思春期。

多感な年頃の彼には、あそこまで無様な負けっぷりが相当心に堪えたらしい。

「ああそうだよッ!! この人魚王弟テトラ様は、今年やっと武泳大会に出られる年齢になって親父や兄貴みたいに大暴れできるのを楽しみにしてたんだよ! 去年の相撲大会はその予行演習のつもりだったさ! ちょっと早めのデビュー戦だと思ってなあ!!」

しかし、思い切り出鼻を挫かれたのでした。

ウチの高速移動&未来予知&時間停止を同時併用できるゴブリンのゴブ吉によって大敗北。

「あの雪辱のためにオレは陸に上がってきたのさ! オレを倒した連中のいるところで修行を積めば、オレの才能を持ってすればすぐさまヤツら以上に強くなれるんだろう!? アロワナ兄貴も、ここに通ったお陰で強くなれたって言ってたしなあ!!」

「テトラくん……やる気たっぷりなのはわかったけど、少し声を抑えてもらえる?」

何故かというと俺の腕の中には、去年生まれたばかりの次男ノリトがお昼寝中だからだ。

まだまだ寝る子は育つで睡眠時間の多い赤子。騒音で起こしたくない。

「勝ち誇ってられんのも今のうちだからなあ! オレがここで最強になって、住人全員ぶちのめした暁には、オレがここの主人になってやるぜ! 人魚国を兄貴に任せて、オレは陸で自国建国ってのもいいなあ!」

「ごめんテトラくん? 夢を語るにももう少し声を抑えて……!?」

いかん、ノリトが煩わしげに眉をムズムズさせる。

このままでは起きて泣いてしまう!?

「はーっはっはっはっは! 大器であるオレ様に強くなれる機会を与えるとは失敗だったな! 今のうちに精々最強の立場を楽しんで……ぐほッ!?」

なんだ!?

唐突にテトラくんが絶句した!?

まるで背中を強く打ったことで呼吸困難に陥ったような……!?

蹲るテトラくんの向こうに見える人影は……あれは……!?

「うるさいの、めー」

ジュニア!?

我が長男!?

次男であり弟のノリトがムズがる気配を察して急行してきたのか!?

そして騒音源であるテトラくんの背中に一撃を、呼吸を奪い取った!?

「ぐげげ……ッ!? 誰だ? このオレに不意打ちとはいい度胸じゃねえか……!?」

「ぼくー」

「こんな小せえガキっ子が!? ふざけんじゃねえぞ!?」

ジュニアを発見し、こんな子どもにしてやられたと憤るテトラくん。

プライドを傷つけられたのか!?

「あの……テトラくん? 子どものしたことなんで穏便に……!?」

「おうガキ……! この人魚国の暴れん坊王子と謳われたオレにケンカ売るとはいい度胸じゃねえか? 泣かされる覚悟はできてるんだろうなぁ!?」

ダメだ、この大人になりきれてない少年大人げない!?

無論我が子のピンチに黙っている俺ではないぞ、ノリトを抱きかかえて両手の塞がっている俺だが、我が子はどちらも漏れなく守り抜いてみせる!!

「下手なイタズラが大事に至ることもあるからな。このお兄さんが大人の怖さを教えて……、んぐほッ!?」

あッ、ジュニア強い?

もはや父親の援けも必要としなかった三歳児。

「んぐぼッ!? ぐえッ!? ちょっと待てなんでオレが子ども相手にこんな一方的に……!?」

「うじょうはがんけんー」

「ぐほぉおおおおおおおおおおーーーーーーッッ!?」

ジュニアが圧倒的に勝っている。

とりあえず腕自慢らしいテトラくん、これまでそうとうかがえる描写が一切ない。

「そんなバカな……!? 『荒磯の鉄弾兵』と呼ばれたオレが、子ども相手に手も足も出ない……!?」

「しんれいだいー」

「んぎょほおおおおおおおおおおおおおッッ!?」

これもう決着ついてるんじゃないかな。

気づけば、ノリトがパッチリ起きてキャッキャとはしゃいでいた。

あの戦闘を見て楽しんでいるのか?

キミのお兄ちゃん強いねー。父さんもびっくりだよ。

「ふざけんじゃねえクソガキーッ!!」

テトラくんの体から本気の闘気が!?

大人げなさが本領発揮!?

「大人しくしてりゃ付け上がりやがってー! これはオレの本気だと思うなよ!? 叔父より優れた甥っ子はいねえって教えてやりゃあああああッッ!?」

おっとこれはいかん。

さすがにそろそろ俺が止めに入って父親の威厳を示さなければ……と思ったところでまた別の介入者が現れる……!?

「あら、本気で何をしようというのかしら?」

「あッ、姉ちゃん……ッ!?」

テトラくんの年の離れた姉。

そしてジュニアのことを心から愛する母親。

すなわちプラティであった。

「テトラ……アンタ、ヒトんちにお邪魔して早速死にたいらしいわね? ウチの子にケンカ売るなんて姉を介した自爆行為としか思えないわよ?」

「ねねねねねね、姉ちゃん……!? ひさしぶり、違うんだコレは深いわけがあって……!?」

「魔女であるアタシが前後の状況も把握してないと思って? 騒音に悩まされたノリトの分も含めて、アンタにここで生きていく心得ってヤツを体に刻んでやるわよ……!」

「ぎゃああああああッ!? 許して姉ちゃああああああああんッ!?」

反省の声もむなしく、ガッチリ頭を掴まれて引きずられていくテトラくん。

今年からは彼も農場の一員として一緒に暮らしていくのか。

家族が増えるな。

「ぱぱー、おなかすいたー、おやつー」

そしてジュニアは先ほどの勇ましさなどどこへやらだった。

「そうだな、皆でおやつにするか」

農場の日々はますます賑やかとなっていきそうだ。