軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

685 精霊たちとの早い再会

大地の精霊。

それは、我が農場に住む可愛い存在である。

そもそも精霊というのは姿形なく世界の運行の手助けをする霊的存在のことなんだが。

ここ農場では色々特殊な条件も重なって実体化し、まるで普通の生物のようにそこいらを駆け回っている。

小さくて丸っこい、可愛い女の子のような姿で。

やることは主に我が家の運行を手助け。

小さくても数いて働き者の頼れる子たちであった。

ただ、今はいない。

冬なので。

自然の霊的一部である彼女ら、自然の力が弱まる冬には彼女らの活動力も弱まるということで、その時は余計な運動をせず眠りにつき、力を蓄えている。

冬眠みたいなものだな。

春になるとまた目覚めて地中からモコモコ出てくる、ってことを毎年繰り返しているから心配ないのだが、それでもあの賑やかなのが一気にいなくなると寂しくなる。

だからこそ余計に冬は静かに感じる。

そして彼女たちが目覚めるからこそ春の賑やかさもひとしおになるんだが。

しかし今年はなんか様子が違ってきた。

* * *

「大地の精霊を見たって?」

んなバカな。

今はまだ冬の真っただ中だぞ。

冬は生物にとって静止の季節。大地の生命力そのものである精霊たちも止まって、俺たちの前に出てくることはない。

それでももう冬の盛りは過ぎたので、あと一ヶ月もしないうちに雪解け、つくしが伸びるのと同じように大地の精霊たちもモコモコ地面から出てきて再会となるはずだ。

しかしまだ早い。

早すぎる。

「何かの見間違いじゃないか? 夜中で視界も悪い時に、ポチたちか博士を誤認したとか?」

ポチとは犬で、博士は猫。

実際、精霊たちはそれくらいの小動物とほぼ同じスケールだし……。

「いえ、あれは間違いなく大地の精霊たちでした」

と言う報告のゴブリン。

誠実な彼らがウソをつくとは思えない。

「それに目撃したのは、夜ではなく昼間です。目撃者も多数おり、誤認の可能性は限りなく低いと……!」

「う~ん……!?」

そこまで強固に言われると信じないわけにはいかないような……!?

「……いや、もしや長いこと大地の精霊たちに会えなかったことで禁断症状が発し、幻覚が見えているということは?」

「そ、それは……!?」

まったくないと言い切れるか?

あんなに可愛い子たちだぞ?

「た、たしかに無邪気な精霊たちが足元を駆け回るのは心がほんわかして癒されますし、そんなあの子らに一冬会えないとなると飢餓状態で胸に穴が開いたようになってきた風が益々全身に染みます……!」

そうだろう、そうだろう?

「しかし! それでも正気を保てぬほど求めては却ってあの子らの迷惑です! 私たちが見たのは幻じゃない! たしかに大地の精霊たちでした!!」

わかったわかった。

あまりにも真剣ぶりに、俺ちょっとビビる。

ここは目撃者を信じて、俺も本腰入れて調査に乗り出してみるか。

果たして彼らが見たものは、本当に大地の精霊だったのか!?

冬にはいないはずの彼女らを追い求めて、今こそ謎に迫る!

「で、具体的に大地に精霊を見た場所って、どこなの?」

「ピラミッドです」

「え?」

* * *

そう、ウチにはあるんですよピラミッドが。

『何で世界遺産が庭先にッ!?』と思うことも時にあるが、建っちまったものはしょうがない。

異界から来た異神が張り切っちゃったその結果だ。

内部には出入り自由で、しかもダンジョン化しているから先生の洞窟、ヴィールの山と並んで我が農場のメイン狩場とならないか現在をもって模索中。

そのため少なくない頻度オークやゴブリンたちもピラミッドを出入りしてるんだが……。

「その最中に見たってことか」

「ハイ」

大地の精霊を。

目撃したというオークゴブリンを伴ってピラミッド内を進むが、そんな目撃者チームが案外たくさんいてビビッた。

こんなにいるの!?

これならたしかに見間違い説は否定されるかも!?

「オークボまでいる……!?」

「いつもあの子らが目撃されているのは、ピラミッドの探索中なのです」

大地の精霊をあの子呼ばわり……。

オークゴブリンの間でも、あのかわいい子たちがどれだけ人気者かがわかる。

「それでも最初は、たしかに見間違いかと思われました。あの子らは冬には出てこないのです……! まして危険なダンジョンと化しているピラミッド内にいるなど考えられない」

たしかにそうかも……。

そうかもね……。

「でももし本当にあの子らがピラミッド内にいるなら、一刻も早く保護しなければ!」

「迷子になっているということでしょう!? 寂しくて泣いているかも!」

「お腹もすいているに違いない!」

「こんな暗くて不気味な場所にあの子がポツンいると想像するだけで!」

「胸が押し潰されるうううううううッッ!!」

落ち着け!

落ち着いて!!

ダメだオークにゴブリンたちも、大地の精霊たち可愛さに平静を失っている!

心配しすぎていつものクールな彼らじゃない!!

「わかった、そう言うことなら急遽捜索隊を編成し、一刻も早く精霊たちを見つけ出そうではないか!」

「我が君! それでこそ我らの主君!」

ここで持ち上げられてもなあ……。

しかし彼らの心配事を聞いているうちに、俺までなんか心配になってきた。

ピラミッド内は、それこそ『盗掘者よ死ね』と言わんばかりに完全迷路。

そんな中を、一人迷子になって彷徨う大地の精霊、おうちに帰りたくて半べそ……。

という光景を想像するだけで……。

「うはあああああああああッッ!? ぐおおおおおおおおおおおッッ!!」

心が抉られる!?

捜索隊全力を上げろ! 匂いをたどることのできるポチたちも出動だ!! 狩人として索敵能力も高いエルフたちも動員し……!

大地の精霊を見つけ出す大走査線が躍った。

そして小一時間ほどして……。

* * *

「我が君、B班から発見報告です!!」

「なにぃ!?」

本当にいたの!?

と今さらながらに驚愕!

「本当に大地の精霊なのか? メジェド様とかと見間違えたんじゃなくて!?」

「本当です! 報告によると、ただ今対象を追跡中!」

追跡!?

なんで!?

追っているということは、探している対象は逃げているということか!?

大地の精霊は、どうして俺たちから逃れようと!?

「追跡班! 追跡班、報告を送られたし! 状況はどうなっている!?」

「ちょっと待って? さっきから何に呼び掛けてるの!?」

「通信魔法ですが?」

「そんなものが!?」

俺の知らない間に、新技術を導入しないでくれないかな!?

でもそれのお陰で入り組んだダンジョンで仲間と連絡とりあえるんだからいいか!?

『うおおおおおおッ!? ぐっほおおおおおおッ!?』

「どうした追跡班!? 今の野太い奇声は何だ!?」

『総員に通達してください! トラップです! あの子たちを追いかけていたと思ったら、トラップの設置地点に誘導され……、ぐほおおおおおおぉんッッ!?』

また野太い奇声が!?

何があったんだ無事なのか!? 答えてくれえええええッ!?

しかし通信魔法から聞こえてくるのはザザッと耳障りな砂嵐の音だけだった。

こんなところまで通信機なの!?

『……あー、あー、テステス。本日はせーてんなれどもナミたかし、ですー!』

「!?」

代わりに通信魔法から入ってきたこの声は!?

この幼い声は!?

『しんにゅーしゃ、ぜんいんに、つーたつするですー!』

『このばしょは、われわれがせんきょしたですー!』

『われわれの、りょーどですー!』

このたどたどしくも可愛げな発音は……。

まさしく大地の精霊の喋り声!!

『われわれは、じゆーとへーわのために立ち上がったですー!』

『かくめーのせんしですー!』

『あっせーには、けっしてくっさねーのですー!!』

本当に大地の精霊がいた!?

しかし一体何なの?

何がしたいの!?