軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

679 バベルの東京タワー

おは、芸術と太陽の神アポロンです。

怖い。

何が怖いかと言うと、地上の人の子また塔を建てている。

前にも人の子たちが塔を建てて、それで神々の住む天空へと攻め込む道筋にしようってんじゃないかって滅茶苦茶ビビったことがあるんですが。

今回見かけた雪の塔は、以前のそれとは比べ物にならないくらい高い!

天空から見下ろした目測で五倍近く高い!

あの本気入った高さ、今度こそ人間は天空へ攻め込もうとしているのか!?

ここ最近は、地上も天空も平和なばかりで穏やかな時間が過ぎ去っていると思ったのに!

私が天地海の神々の和平を結んで、それで何故か義母神ヘラが大反発を起こして、あわや神話大戦の勃発?

しかし、様々な交渉や裏工作が功を奏して、神々の戦争は未然に防がれて、今は大変平和に過ごしている。

私も芸術神としての本分に打ち込めて具合がいいぞ。

こないだも渾身の持ちネタ『ああぁ~~~~ッッ!! ッポロン!!』というのを披露してみたところ、ヘルメスから『下ネタはよくないっすよ』と言われた。

そして妹神アルテミスからはいつも通り『死ね』と言われた。

……っていやいや話が逸れた。

そんな風に平和に過ごしていたのに、またもや塔の恐怖が迫ってきたという話!

今度こそ高すぎて人の子たちの攻めっけを感じる!

どうする!?

今回こそ神マニュアルに従って塔を倒して人々の言語を乱すか!?

あまり気は進まないが神々にも防衛の権利というものがあって、先制攻撃もやむなしというか……。

……。

もうちょっと地上の様子を観察するか。

雲から身を乗り出して……。

前みたいに足を滑らせて下界に落ちないように……。

つるッ。

あッ?

* * *

(落下中)

* * *

「対空サマーソルトなのだー」

『ぐるうぼおおおおおおッッ!?』

雲の端で足を滑らせ、天界から落ちてきた私が地上に激突する寸前、何者かが地面から飛び上がって私のことを迎撃してきた。

めっちゃ蹴り上げられたぞ!?

一体何者の仕業だ!?

「アホか貴様。そんな勢いつけて空から落下したら地面に激突した瞬間、衝撃で雪像が吹き飛ぶではないか。ジュニアが一生懸命拵えた作品には傷一つつけないのだー」

ぐえっふコイツめ……!

そんな理由で神にサマーソルトキックを……!

しかし一旦蹴り上げられて落下スピードを減殺できたお陰で、ふわっと着地することができたが……。

私を蹴り上げたのは……、ドラゴンか。

何故か人間の姿に変身してはいるが、ドラゴンならば神すら蹴り上げるのも可能か……。

で。

『なんだここは? 白い諸々で溢れかえっておるな?』

「雪まつり会場なのだー。神のくせに雪も知らんのか?」

うっせい。

神なれば雪ぐらい知っておるわ。

なるほど。

雪を固めて様々な形に整えているのだな、芸術性を感じるぞ?

そして周囲には、神なる私に気づいて人の子たちが集まってきておる。

やはり神。どこにいても注目を受けてしまうものだな……!

人間たちのヒソヒソ声が聞こえる……。

「また神……?」

「ずっと前に現れたヘラみたいにとんでもないヤツでは……!?」

あれ?

不審がられている?

* * *

なるほど。

詳しい事情を聞いてみたが、あのやたら高い塔は雪まつりの一環で、天へと攻め込むものではないそうな。

一安心だ。

「まあ折角来たんだから、雪像でも見ていくといいのだ。お前、芸術を司る神なんだろ? なんならジュニアが作った雪仏像に高い評価と祝福を与えてくれてもいいんだぞー」

ドラゴンのヤツがなかなか押してきおるわ。

たしかに雪で像を作るというのは斬新な発想で、面白いものだ。

よし、この太陽神にして兼、芸術を司る神でもあるアポロンが見学してくれようではないか。

天空から落っこちてきて何もせずに帰るのもアレだしな!

まずは……。

『この千手観音像の群れは……?』

「おお、早速気づいたか! お目が高いではないか! これこそジュニアの自信作なのだー!」

人化したドラゴンは実に興奮気味に言うが……。

なんでこの世界の人間が、別世界の超高次的存在である仏のことを見知っているんだ?

しかもこんな像に仕立てられるほど詳細に……!?

この像を作った者は、異界との交信をも可能にする大魔術師ではないのだろうか?

もしやノーライフキング?

はしゃぐドラゴンに作者を紹介してもらったら、これまた驚いたことに子どもだった。

『ベビーッ!?』

まだ年端もいかない、言葉も満足に操れないのではないかと思えるような子どもが、真剣な眼差しで雪を押し固めたり削ったりしながら、新たな仏像の形を整えている。

『あんなに作ったのに、まだ作るのか……!?』

こことは別の世界では、神すら超える存在として仏があり、その仏に近づく行為として、その似姿を作り出す修行的なものがあるという。

もしかしてこの子ども……創作行為というよりは、修行という意味合いで……!?

「……あきたー」

「そうかジュニアー! じゃあ今日はこれくらいにして、あったかいミルクでも飲もうなー!」

ドラゴンが子どもを抱えてどこかへ飛び去って行った。

……神である私のことは置き去りかい。

まあいいや、せっかくだし一神で勝手に色々と見て回ろう。

おッ、コイツはベラスアレスくんの像ではないか。

迫力がそっくりではないか。出来がいいな。

こっちはヘパイストス像?

似てねー。

などと見て回っているうちに、さらに人が多く集まってきて……。

「……芸術神アポロン様ッ!!」

勇ましく私を呼び止めるものは誰だ?

「天才芸術家たる私にとって、もっとも崇め称えるべき芸術の神に、このような場所でお会いできるとは何たる幸運! どうかこの機会に、我が最高傑作をご覧いただきたく思います!」

『そう言うキミは?』

「私はピソッホ! 天才であるだけでなく芸術家も兼ねているを自負しております!」

それって天才的な芸術家ってことでは?

「その私が今日、新たに作り出した傑作をご覧いただきたいのです! 長いスランプの果てに生み出すことのできた秀作だと自負しております! この天才的発想で生み出した……、新ゼウス像です!!」

何ぃーーーーーーーーーッッ!?

これは、雪で形作られた像の容貌は、まさしく我が父神ゼウス!?

「私の作品歴でもっとも数多く手がけたゼウス像に、つい今しがた電撃的に浮かんだ発想を盛り込んでみました! 腕を千本に増やしてみたのです!」

「だからそれ丸パクリじゃないですか」

「それだけでは芸がないので、さらに頭と足も増やしてみました。複数に」

ゼウス父上が、めっちゃせわしなくバタバタしているような図柄になっている……!?

「さらに、より猛々しいイメージを盛り込もうと、胴体を獅子にしてみました! 今までにない斬新なゼウス像になったと思います!!」

斬新なら何してもいいってわけじゃねーだろ。

『今まで誰もやらなかったこと』というのは、それなりの『今まで誰もやらなかった理由』と言うのがあるものだぞ!?

どうしたものか?

目を輝かせながら私の評価を待つ自称天才芸術家に対して……。

『あー……………………………………!!』

………………………………………………うん。

『いいんじゃ、ないで……しょうか?』

「やったああああああッ!! 芸術神よりお墨付きを頂いたぞおおおおおッッ!!」

欣喜雀躍する変なのを作った人。

……うん。

でもまあ大丈夫だろう。

父上は昔から狙った女を落とすために牡牛やら白鳥やら黄金の雨やら、相手の旦那やらに変身することがあったから、こういう姿になることもあるだろう。