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作品タイトル不明

678 芸術家襲来in雪まつり

天才芸術家ピソッホ!

雪まつりに来る!

久々の移動で足腰辛い!

寒さのお陰で余計にしんどい!

「巨匠、売れなくなったおかげで最近どこからも呼ばれてませんでしたからね。引きこもり期間長かったんじゃないですか?」

そんなこと聞くんじゃねえよ!

付き添いの画商!

お前は、私のモチベーションを回復させるためにここまで連れてきたんだろう!?

だったらもっと褒めそやせ!

おだてろ!

私の気分が高まるように盛り上げろ!

「メンドくせぇ」

では早速、素人作りのダメ雪像をこき下ろしに行こうかな!

私のごときプロから見れば駄作としか言いようがないモノどもを眺め、優越感に浸り自信を回復してやるのだ!

「本当ロクなもんじゃねえな芸術家。それより巨匠、あっち見ましょうよ。聞きしに勝る巨大雪塔ですよ凄くないですか!?」

そんなものは知らん!

どれだけ巨大だろうと建築物は芸術じゃない!

よって私の興味を引く資格はない!

絵と像だけが芸術なのだ!!

「またどこかから怒りを買いそうな物言いを……!?」

では進むぞ雪まつり会場を!

駄像を展示してあるのは……ここかぁああああああッ!?

うへひぇあッ!?

「うっほぉ、これは見事な! とても素人の作品とは思えませんなあ!」

目の前に聳え立つ二つの像。

一方は逞しい男の雪像で、もう一方も逞しい男の雪像。

二つとも同じじゃねえか。

なら何故わざわざ分けて語った、とか言われそうだが。

「話題を呼ぶのも納得の出来ですな。ただ造形が綺麗なだけではなく、趣に迫力が伴っています。ただ手先が上手いだけでは、このように心魂こもった一作にはなりますまい!」

煩いよ画商!

しかし、コイツの言うことももっとも……!

曲がりなりにも私の作品を扱って荒稼ぎしてきた辣腕商人だからな。見る目もあるし、美しいものへの正当な評価もできる男ではある。

だが私の前で他人の作品を手放しに褒めるな不快だから。

「一方が軍神ベラスアレスの像で、もう片方はドワーフの守護神ヘパイストス像ですか。なんと両方とも天空神。最近の時流ではありませんが、それでここまで人目を引くとは。作品自体に力があるというほかありませんな」

貴様その言い方は!?

私が作ったゼウス神やアテナ女神の図像に力がないかのようではないか!?

う、うるせえ!

天空神だけどもマイナーな部類ではないか、ベラスアレスもヘパイストスも! 物珍しさで人目を引こうという魂胆が見え見えだ!

このようなものを芸術と認定することはできないな!!

「ほう、我らの作品にケチをつけようというのか?」

だ、誰だ?

うおおおおッ!?

夜の妖精のごとき美貌に濃い肌ッ!?

実に美しい女が現れた!? あと、その後ろにやたら太くて小さな体つきの男!?

「アナタはもしやエルフではありませんか? 隣におられるのはドワーフ!?」

知っているのか画商!?

現れた二人と、私のことなどいないかのように放置しながら話を進めるな!

「このような人の賑わう場所でエルフに会えるとは!? もしやこの雪神像はアナタ方の作では? ベラスアレスはエルフ族の守り神でありますし、ドワーフ族が造形神ヘパイストスを崇めているのは有名な話です!」

「ほう、よく知っているではないか」

相手の小男の方も言う。

これがドワーフ?

「モノ作りにかけては世界一と称されるドワーフの作ならば、あのヘパイストス像があんなにも立派なのは納得です!」

「大したものではないよ。像作りなど我らにとっては生業の一つに過ぎぬから、これだけでドワーフの技術をわかったつもりになられるのも迷惑じゃ」

ぐぬぬぬぬ!

なんだその『全然本気じゃありませんよ』的な物言いは!?

「ベラスアレス神像を手掛けたエルフの手並みも素晴らしいですな! よければウチと継続的な契約を結んでいただけませんか!?」

「パンデモニウム商会と専属契約結んでるんで無理です」

「あの魔国一の大商会と!?」

なんだそれは自慢かあああああッ!?

デカい商会に取り立てられて偉いのか!? 芸術を金儲けに使おうとして汚らわしいとは思わんのか!?

「どうやらアナタ方、こうしたものを扱う仕事をしているようですね。ではもっと面白いものを私たちと一緒に見に行きませんか?」

と肌の黒い女の方が言う。

エルフだっけ。

そしてドワーフの方も……。

「ワシとミエラル殿もこれから見にいく予定なのじゃ。あの坊ちゃんは日々新しいものを作りおるから毎日チェックしに行かんと。目が離せん」

どういうことだ?

あそこまで立派な神像を作り上げる者たちが、さらに興味を強く引かれるとは一体何者か!?

天才芸術家である私もさすがに気になってきたな。

仕方ない、付き合ってやろうではないか!

「坊ちゃんは、今日はどんな神像を雪で作っておるかのー」

「神像じゃなくて仏像と言うらしいですよ」

そしてドワーフエルフのあとについて、しばらく歩いていくと……。

* * *

「これはなんだあああああああああああッッ!?」

到着した雪像展示の一区画には、見たこともない意匠の雪像が並んでいた!?

見たこともないデザインだぞおおおおお!?

「今日もジュニア坊ちゃんの雪仏像作りは捗っておるなあ」

「千手観音でしたっけ?」

なんだあの、背中から数え切れないほどの腕が伸びている雪像は!?

何故あんなに手がたくさんある!?

わからない!

わからないぞおおおおおおッッ!!

「はいはーい、ここに引いてある線より近づいちゃダメなのだー。ジュニアがせっかく作った像を壊してみろ。報復にお前らの村をおれ様が、焼く」

「ヴィール様、相変わらず坊ちゃんの付き添いと、雪像のガードご苦労様です。いつも坊ちゃんのことになると本気度が違いますねヴィール様は」

「当たり前だー。ジュニアが心を込めて作った雪像だぞー。万が一にも壊されることがあってたまるか! 竜魔法で時間を止めて、永遠に保存するのだー!」

なんだあの子どもは!?

どうやらあの奇妙な雪像群が壊れぬよう見張っているようだが……。

……いや、それよりも!

あの手がいっぱい生えている雪像を作ったのは誰だ!?

あのようなセンス尋常なものではあるまい!

きっと私と同レベルの天才に違いない!

一体どんなヤツなのか、是非ともこの目で確かめねば!

「ひとくぎり、ついたー」

「ジュニアお疲れなのだー! 腹減ってないか? ビスケット食べるか?」

え?

ええええええええええええええッッ!?

まさかあの子どもが!?

あの赤ん坊とも見分けがつかぬ小さな子どもが、あの雪像を拵えたというのかあああああああッッ!?

「こんどは、みろくぼさつはんかしゆいぞう、つくるー」

「おお、何でも好きなだけ作ればいいのだー。雪はまだまだたくさんあるからなー。足りなければおれ様が天候操作していくらでも降らせてやるのだー」

そんなバカな……!?

この天才芸術家ピソッホに勝るとも劣らない究極い芸術作品を、こんな小さな子どもが手掛けただと……!?

こんな若さで? ならばこのまま順当に成長していったら、成人した時にはどんな大芸術家になっているというのだ?

この私をも遥かに越える天才芸術家に?

今私は……生まれて初めて恐怖を感じている。

自分を超えるかもしれないほどの才能を前に!?

「う……、うおおおおおおッッ!! 負けるかあああああッ!!」

この天才芸術家ピソッホ! まだまだその才能は尽きず!

こんな子どもにまだまだ負けて堪るかあああッ! 私はまだ成長する! この衝撃を糧に新境地を開いてやる!

この辺の雪使っていいな! これで私も雪像を作ったらああああッ!!

「ここで作るな。お前何度の作ったのがジュニアの作品に混じったら紛らわしいのだ」

「向こうに自由作製コーナーがあるから、そっちで作るといいですよ」

よし、行くぞおおおおおッ!!

芸術がほとばしれええええええッ!!

* * *

よし出来たぞ!

腕が千本あるゼウス像だ!!

「丸パクリじゃないですか」